核移植によるβ細胞の作成

1型糖尿病患者の線維芽細胞から核移植の手法で、β細胞の分化誘導が成功している。

線維芽細胞の核を研究用に提供された卵細胞に移植し、ES細胞を作成後、β細胞を誘導する。
この細胞は体外でまだ未成熟であるが、マウスの皮下に移植20日後、プロインスリン/インスリン比は膵島に近づき、インスリンとグルカゴンが二重陽性となる細胞はほとんど認められない。

streptozotocin 処置により、移植を行わないマウスでは高血糖となるが、皮下に作成されたβ細胞を移植したマウスでは、ヒト膵島を腎被膜下に移植したマウスと同様に正常血糖が保たれる。

Sui L et al. β-Cell Replacement in Mice Using Human Type 1 Diabetes Nuclear Transfer Embryonic Stem Cells. Diabetes. 2018 Jan;67(1):26-35.

Nishizawa M, Chonabayashi K, Nomura M, et al. Epigenetic variation between human induced pluripotent stem cell lines is an indicator of differentiation capacity. Cell Stem Cell 2016;19:341–354
iPS細胞には分化誘導が難しい細胞とES細胞のように分化する細胞がある。
iPS細胞から成熟細胞への分化能は、リプログラミング期間における DNA methylatin のパターンが影響する。

Yamada M et al. Human oocytes reprogram adult somatic nuclei of a type 1 diabetic to diploid pluripotent stem cells. Nature 2014;510:533–53

アラキドン酸の代謝産物 20-HETEは、autocrine および paracrine によりFFR1 (GPR40) を活性化する。

GPR40は、ライガンドの刺激によりPhospholypase C (PLC) を活性化する。PLC は、Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate (PIP2) を diacylglycerol (DAG) と inositol trisphosphate (IP3) に加水分解する。
IP3の増加は、ER からカルシウム誘導のトリガーとなり、インスリン小胞の開口放出が促進される。
DAG/PKC、PKD 経路もインスリン開口放出に関与する。1)

GPR40 のライガンドをスクリーニングした結果、20-hydroxyeicosatetraenoic acid (20-HETE)が見出された。FFAR1を強発現させたCOS-1細胞で、20HETE はパルミチン酸、リノール酸、α-linoleic acid よりも細胞内カルシウム濃度を増加させる。

β細胞では、グルコース濃度依存性に20-HETE が産生される。
グルコース刺激によりβ細胞内のカルシウム濃度が上昇、phospholipase A2 が活性化されリン脂質からアラキドン酸が合成される。cytochrome P450-dependent ω-hydroxylase によりアラキドン酸が 20-HETEに変換される。(論文内に図があります。)
β細胞で、20-HETE は autocrine、paracrine により GPR40を介してインスリン分泌を増強する。2)

1. Prentki M, Matschinsky F M, Madiraju SR, Metabolic signaling in fuel- induced insulin secretion. Cell Metab. 18, 162-185 (2013).
脂肪酸がインスリン分泌を増強する機構はこちら

2. Tunaru S et al. 20-HETE promotes glucose-stimulated insulin secretion in an autocrine manner through FFAR1. Nat Commun. 2018 Jan 12;9(1):177.
 

semaglutideとdulaglutide の比較試験 SUSTAIN 7

semaglutide 0.5mg 1.0mg、dulaglutide 0.75mg 1.5 mg 投与40週後、

低用量および高容量の比較で、semaglutideの方が、A1C、体重の減少量が大きい。

Dulaglutide は分子量が大きいため Blood-brain barrier を透過するとは考えられていない。一方、semaglutide による脳内GLP-1受容体の活性化がマウスで報告されている。
胃腸症状による Adverse event は2剤で同等。

心拍数の増加は、high-dose semaglutide で、high-dose dulaglutide に比べて認められる。sinoatrial node に発現するGLP-1受容体に作用するため、GLP-1作動薬で心拍数の増加が認められる。

SUSTAIN 7 trial: semaglutide versus dulaglutide once weekly in patients with type 2 diabetes

希少糖 D-alulloseは、GLP-1分泌を促進し迷走神経を介して食欲を抑制する。

日本では希少糖として知られる D-allulose が、マウスでGLP-1分泌を促進し、迷走神経を介して食欲を抑制するという報告です。糖負荷試験前のD-alluloseの経口摂取は血糖値を低下させる。インスリン負荷テスト前のD-allulose 投与では、迷走神経を介して肝糖産生抑制も認められる。他の甘味料では、Sucraloseがヒトの糖負荷試験前の摂取で血糖値が低下させGLP-1分泌を増加させると報告されている。

D-allulose はGLP-1分泌を促進する
D-allulose はマウスの摂餌量をコントロールに比べ減少させる。
D-allulose 1g/kg 経口服用後、門脈内活性型GLP-1濃度は30分後に上昇し、1から2時間でプラトーに達する。
糖負荷試験60分前に D-allulose 1g/kg 経口で投与した結果、0分の血糖値および負荷後血糖値が低下する。
高脂肪食マウスで、インスリン1.5 IU/kg 負荷では、 D-allulose 1g/kg 60分前投与により、インスリン負荷30分後の血糖値がコントロールに比べ低下する。D-allulose 経口投与後のピルビン酸負荷試験で血糖値が低下するのため、D-allulose 経口投与により肝糖産生が抑制されている。
D-allulose は、blood-brain barrier を通過しない。

sucralose は、健常者で炭水化物の存在時にGLP-1 分泌を促進する。
健常者で、sucralose 15分前に服用した後におこなった糖負荷試験では、グルコースの the total area under the curve (AUC) が生理食塩水よりも低下し、GLP-1 AUCが増加する。
aspartameではグルコースのAUCの変化はない。
2型糖尿病では、糖負荷試験前のsucralose によるグルコースの AUC低下は認めない。

1. Iwasaki Y et al. GLP-1 release and vagal afferent activation mediate the beneficial metabolic and chronotherapeutic effects of D-allulose Nat Commun. 2018 Jan 9;9(1):113. doi: 10.1038/s41467-017-02488-y.

2. Temizkan S et al. Sucralose enhances GLP-1 release and lowers blood glucose in the presence of carbohydrate in healthy subjects but not in patients with type 2 diabetes Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):162-6. 

3. Wu T et al. Effects of different sweet preloads on incretin hormone secretion, gastric emptying, and postprandial glycemia in healthy humans. Am J Clin Nutr. 2012 Jan;95(1):78-83. 

4. Ingestion of Diet Soda Before a Glucose Load Augments Glucagon-Like Peptide-1 Secretion Diabetes Care 2009 32 (12) 2184-2186
ダイエットコーラには人工甘味料sucralose、acesulfame-Kが含まれていて、糖負荷試験10分前にダイエットコーラ240mlを飲ませたところ、血糖値に差はないが、GLP-1のarea under the curve (AUC) は増加した

ピルビン酸キナーゼ M2の活性化による腎保護作用

糖尿病歴50年以上で腎症を発症しない患者のブロテオミックス解析結果で、解糖系、ソルビトール、methylglyoxal (MG) の代謝酵素が増加している。
ソルビトール、MG、diacylglycerol は、toxic glucose metabolitesとして知られている。Methylglyoxal は、advanced glycation end products (AGEs) の前駆体である。

pyruvate kinase M2 (PKM2) は、ペプチドレベルでコントロールに比べ 2.7倍に増加、PKM2 ペプチドレベルと eGFRに相関を認めた。
PKM2の活性化は、グルコース代謝の促進、toxic metabolitesの産生阻害により、ミトコンドリア生合成(mitochondrial biogenesis) を増加させミトコンドリア機能を回復させる。

Qi W et al. Pyruvate kinase M2 activation may protect against the progression of diabetic glomerular pathology and mitochondrial dysfunction Nat Med. 2017 Jun;23(6):753-762.

DPP4阻害薬と創傷治癒 (wound healing)

DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition を誘導し創傷治癒を促進する。

NRF2と創傷治癒
NRF2 (nuclear factor-E2-related factor 2)は、抗酸化作用を促進し、reactive oxygen species の産生を抑制する。keap1はactin-binding cytoplasmic proteinで、通常状態では、NRF2と結合してNRF2を細胞質にとどめている。高血糖下では、NRF2の核内移行が抑制されている。
糖尿病潰瘍の病変周辺部では、酸化ストレスが増加している。
keap1の抑制による酸化ストレス改善は線維芽細胞の再生能 regenerative capacity を増加させる。1)
薬理学的にNRF2を活性化する sulforaphane、cinnamaldehyde が糖尿病マウスで創傷治癒 wound closure を促進した。2)

DPP4阻害薬はNRF2とは別の経路で創傷治癒を促進する。
DPP4阻害薬はNRF2を活性化するためNRF2を介して糖尿病マウスの創傷治癒と促すと考えられていた。予想に反し、NRF2を発現しないマウスでDPP4阻害薬が創傷治癒を促進することから、NRF2以外の経路も重要であることが明らかになった。
DPP4阻害薬を添加したケラチノサイトで、E-cadherin (上皮細胞マーカー)が減少、vimentin、snail が増加する。DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition (EMT) を直接促進する。
さらにDPP4阻害薬は、線維芽細胞のSDF-1α産生を促進する。SDF-1αはケラチノサイトのEMTを誘導する。
糖尿病マウスの皮膚病変においても、DPP4阻害薬によりSDF-1αが増加し、EMTがみとめられる。3)

DPP4阻害薬と腫瘍転移のリスク
ROSの減少は、遊走能を促進し、腫瘍の転移能を増加させる。
Wang らは、α-linoleic acid (ALA)による抗酸化作用、あるいはシタグリプチンやサクサグリプチンによるNRF2 の活性化が、xenograft mouse model で腫瘍転移のリスク増加を示した。4, 5)

1. Soares MA et al. Restoration of Nrf2 Signaling Normalizes the Regenerative Niche. Diabetes. 2016 Mar;65(3):633-46.

2. Long M et al. An Essential Role of NRF2 in Diabetic Wound Healing. Diabetes. 2016 Mar;65(3):780-93.

3. Long M et al. DPP-4 Inhibitors Improve Diabetic Wound Healing via Direct and Indirect Promotion of Epithelial-Mesenchymal Transition and Reduction of Scarring Diabetes. 2017 Dec 18. pii: db170934.

4. Tschöp MH et al. Opposing Effects of Antidiabetic Interventions on Malignant Growth and Metastasis. Cell Metab. 2016 Jun 14;23(6):959-960

5. Wang H et al. NRF2 activation by antioxidant antidiabetic agents accelerates tumor metastasis. Sci Transl Med. 2016 Apr 13;8(334):334ra51.


CRISPR-Casによるブタレトロウイルスの不活化

ヒトへの移植でブタの臓器を使う場合、ブタのウイルスがレシピエントにも影響することが懸念されている。CRISPR-Cas の技術によりDNAに組み込まれたレトロウイルスが不活化されたブタがすでに得られている。

まとめ
ブタ胎児線維芽細胞 embryonic fibroblast あるいは胎児線維芽細胞 Fetal fibroblast で、CRISPR (clustered regulatory interspaced short palindromic repeats) -Cas technologyにより、DNAに組み込まれたレトロウイルス を不活化した。
レトロウイルスを不活化したブタの細胞核をブタの胚 embryo に核移植し、代理母となるブタの子宮に生着 implantationさせた。
その結果、これまで知られている全てのブタレトロウイスが不活化されたブタが得られている。
E型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、Porcine circovirus についてはまだ未解決である。

Denner J. Paving the Path toward Porcine Organs for Transplantation. N Engl J Med. 2017 Nov 9;377(19):1891-1893

日経新聞の記事(有料会員限定)
「臓器工場」実現なるか 東大など、種類違うネズミで成功 人向け、技術の壁高く 倫理面でも課題

糖尿病性網膜症のフォローアップ間隔

DCCT/EDICのフォローアップスタディの結果
網膜症の悪化はAICと相関する。
増殖性網膜症あるいは黄斑浮腫のリスクは以下の網膜症スクリーニング期間では5%程度である。

網膜症なし 4年
Mild retinopathy 3年
Moderate retinopathy 6ヶ月
Sever non proliferative retinopathy 3ヶ月

editorial では、
網膜症がない場合、3−4年の網膜症スクリーニングとすることで医療費削減の可能性に言及している。
DCCT/EDIC では、増殖性網膜症、黄斑浮腫を悪化の指標としている。
DCCT/EDIC以後に開発された抗VGEF 抗体治療は、retinal perfusion を増加させる。
今後、retinal non-perfusion area のイメージングが汎用化した場合、スクリーニングアルゴリズムや間隔に影響するだろうとしています。

The DCCT/EDIC Research Group. Frequency of Evidence-Based Screening for Retinopathy in Type 1 Diabetes N Engl J Med 2017; 376:1507-1516 April 20, 2017

Rosenberg JB, Tsui I. Screening for Diabetic Retinopathy. N Engl J Med. 2017 Apr 20;376(16):1587-1588.

Levin AM et al. Retinal reperfusion in diabetic retinopathy following treatment with anti-VEGF intravitreal injections. Clin Ophthalmol. 2017 Jan 21;11:193-200.


心筋のGIP受容体シグナリングは脂質代謝を制御する。

GIP受容体は心房および心室に、GLP-1受容体は主に心房に発現している。

GIP受容体シグナリングは心臓の脂質代謝を制御している。
GIP受容体の活性化は、心筋の脂肪酸酸化を増加させる。
GIP受容体の除去は、hormone sensitive lipase (HSL) phosphorylation を減少させ、心筋で中性脂肪蓄積が増加する。

GIP受容体を除去したマウスで、心筋梗塞による心筋障害が軽減される。
高血糖下では、心筋エネルギー代謝の25%がTAG蓄積から得られており、心筋の中性脂肪蓄積増加により、心筋梗塞時の心筋が保護される。

Inactivation of the Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide Receptor Improves Outcomes following Experimental Myocardial Infarction

リラグルチドはアルツハイマー病でBBBのグルコース輸送能を改善する。

Blood-brain barrier (BBB)では、Astrocyte と微小血管に発現するGLUT1が主な役割をはたす。
Neuron にはGLUT3が発現する。

アルツハイマー病患者リラグルチド18人プラセボ20人の比較試験
アルツハイマー病では、罹病間が長いほどBBBのグルコース輸送能 (brain glucose transfer capacity, Tmax) は低下している。
Cerebral metabolic rate for glucose は認知機能と正の相関を示す。

リラグルチド投与6ヶ月後、プラセボに比べ脳皮質のTmaxは上昇し、healthy volunteer と同等となった。

リラグルチドが、Transporter の密度 (density) 、基質への親和性を変化させる、あるいは BBBでグルコースの gradient 変え、Tmaxを改善すると考えられている。

Gejl M et al. Blood-Brain Glucose Transfer in Alzheimer’s disease: Effect of GLP-1 Analog Treatment. Sci Rep. 2017 Dec 13;7(1):17490

タンパク質制限は糸球体内圧を低下させる。

長期にわたる1.5g/kg 以上のタンパク摂取は、糸球体過剰濾過とproinflammatory gene expression を増加させる。
動物のスタディで、低タンパク食が、糸球体輸入細動脈を収縮させ、糸球体内圧を低下させる。高タンパク食は輸入細動脈を拡張させ糸球体内圧を上昇させる。

タンパク制限は、尿素の産生を低下させる。高尿素血症 (azotemia) ではタンパク質のcarbamylation が増強され、reactive oxygen species が増加するため酸化ストレスが生じ、炎症、血管内皮障害となる。

Moderate-to-advance kidney disease (eGFR <45)、尿タンパク 0.3g/日 では、0.6-0.8g/kg のタンパク制限が推奨される。

ナトリウム制限がCKDの悪化を遅らせるかどうかは分かっていない。ナトリウム摂取と腎臓病の悪化が無関係というデータもあり関係するというデータもある。
2.3g/日のナトリウム制限は、心血管病患者にはベネフィットがあるが、腎臓病患者にベネフィットがあるというエビデンスがない。したがって腎臓病全般にナトリウム4g/日、浮腫やタンパク尿がある場合ナトリウム3g/日を推奨する

Kalantar-Zadeh K, Fouque D. Nutritional Management of Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2017 Nov 2;377(18):1765-1776.

SGLT2阻害薬は心筋細胞のNa+/H+ exchanger (NHE)を抑制し、細胞質内Na+、Ca2+濃度を低下させる。

SGLT2阻害薬は、マウス心筋細胞のNa+/H+ exchanger (NHE) を抑制し、細胞質内Na+、Ca2+濃度を低下させる。

まとめ
エンパグリフロジン EMPA、タパクリフロジンDAPA、カナグリフロジンCANA の心筋Na+/H+ exchanger (NHE)に対する効果を検討した。心筋細胞のpH recovery の遅延をNHE 活性抑制の指標とする。

マウス心筋細胞にこれらのSGLT2阻害薬を添加した結果、細胞質内Na+、Ca2+濃度は低下し、細胞内のpH recovery は遅延する。In silicon analysis で、三製剤ともNHEのNa+ binding site に結合する部位を持つ。

ラット心臓の還流モデルで、EMPAとCANA は、血管拡張による還流圧低下が認められた。
三製剤とも、phosphocreatine/ATP、酸素消費量は変化しない。

Uthman L et al. Class effects of SGLT2 inhibitors in mouse cardiomyocytes and hearts: inhibition of Na+/H+ exchanger, lowering of cytosolic Na+ and vasodilation Diabetologia 2017 Dec 2. doi: 10.1007/s00125-017-4509-7. [Epub ahead of print]

リノール酸のバイオマーカーは2型糖尿病リスクと逆相関する

10か国、20プロスペクテイブコホートスタディの結果で、総脂肪酸に対するリノール酸バイオマーカーの比率が高い群では2型糖尿病リスクが低い。
リノール酸はアラキドン酸に代謝される。アラキドン酸のバイオマーカーと糖尿病リスクは関連しない。

PUFAs は炭水化物や飽和脂肪酸に比べ血糖値を改善、インスリン分泌、インスリン抵抗性を改善する。
リノール酸がリン脂質への取り込まれることにより膜の流動性 fluidity が変化し、インスリン受容体を変化 させるかもしれない。
リノール酸はナッツ、ヒマワリ油やコーンオイルに含まれる

Wu JHY et al. Omega-6 fatty acid biomarkers and incident type 2 diabetes: pooled analysis of individual-level data for 39 740 adults from 20 prospective cohort studies Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Dec;5(12):965-974

Kroger J, Jacobs S, Jansen EH, Fritsche A, Boeing H, Schulze MB. Erythrocyte membrane fatty acid fluidity and risk of type 2 diabetes in the EPIC-Potsdam study. Diabetologia 2015; 58: 282–89


リノール酸 linoleic acid 18:2(n-6)
α-リノレン酸 α-linoleic acid 18:3(n-3)


血漿量減少が、EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡リスク減少に強く関与する。

EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡のハザード比に関して、Cox 回帰モデルの解析ではヘマトクリットとヘモグロビンの寄与が大きい。尿酸値、空腹時血糖値、A1C は Smaller mediation effects で寄与する。

多変量回帰分析 (multivariable models) では、ヘマトクリット、空腹時血糖値、尿アルブミン・クレアチニン比が心血管死亡減少に関連している。

血漿量(plasma volume) 変化のマーカーが、EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡リスク減少に関与している。

Inzucchi SE et al. How Does Empagliflozin Reduce Cardiovascular Mortality? Insights From a Mediation Analysis of the EMPA-REG OUTCOME Trial. Diabetes Care. 2017 Dec 4. pii: dc171096. doi: 10.2337/dc17-1096. [Epub ahead of print]

GDF15とメトフォルミン

GDFは食欲抑制を示し、メトフォルミン服用によりGDF血中濃度の増加が示されている。

まとめ
GDF15は25kDaの分泌タンパクで、血中GDF15の上昇は体重減少と関連している。ヒト以外霊長類のモデルで、GDF15の投与は食欲低下作用を示す。

GDF15の受容体、GDNF family receptor α-like (GFRAL)は、最後野 (the area postrema)、孤束核 (the nucleus of the solitary tract)に発現している。GDF15 の食欲低下作用は、GFRAL を介している。
GFRALのないマウスで、レプチンとGLP-1は食欲低下作用を示すため、GDF15-GFRAL system は、レプチンやGLP-1の経路とは独立している。

ORIGIN study でメトフォルミンとバイオマーカーを測定した結果、メトフォルミン服用により、血中GDF15レベルが増加する。メトフォルミンがGDF15の分泌を刺激するか、あるいは分泌抑制を解除すると考えられている。

Cimino I, Coll AP, Yeo GSH. GDF15 and energy balance: homing in on a mechanism. Nat Med. 2017 Oct 6;23(10):1119-1120

Gerstein HC et al. Growth Differentiation Factor 15 as a Novel Biomarker for Metformin. Diabetes Care. 2017 Feb;40(2):280-283. 

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進

脂質は、腸管内腔側 (apical site) のFFA1 (GPR40) やGPR119 を介してGLP-1、GIPを分泌することが知られている。
長鎖脂肪酸はFFA1を、モノアシルグリセロール、特に2-オレオイルグリセロールは、GPR119 を 活性化する。

カイロミクロンは、マウス十二指腸培養細胞やプログルカゴン遺伝子由来産物を産生する培養細胞 (GLUTag)で、GLP-1およびGIP分泌を刺激する。

カイロミクロは腸管細胞で合成される。カイロミクロンの中性脂肪は、血管内皮に存在する lipoprotein lypase (LPL) により長鎖脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解される。

GLUTag で、LPLの抑制やFFA1の阻害によりカイロミクロンのインクレチン分泌促進作用は低下する。
またカイロミクロンよりGLUTag 細胞内カルシウム濃度が上昇する。

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進には、毛細血管側(basolateral site) のFFA1あるいは他の脂質受容体が関与している可能性がある。

カイロミクロンはCCK上昇を介してGLP-1分泌を促進することも報告されている。

Psichas A et al. Chylomicrons stimulate incretin secretion in mouse and human cells Diabetologia. 2017 Dec;60(12):2475-2485

Ekberg JH et al. GPR119, a major enteroendocrine sensor of dietary triglyceride metabolites coacting in synergy with FFA1 (GPR40). Endocrinology 157:4561–4569

J-DOIT3

2型糖尿病、45-69歳、2542人、強化療法群ではA1C 6.2%、血圧120/75 mmHg、LDLコレステロール80mg/dl (冠動脈疾患では70 mg/dl)を目指す。フローアップ8.5年で強化療法群と従来療法群でプライマリーアウトカムは有意差なし。脳血管イベントは強化療法群で有意に低下した。ハザード比 0.42

強化療法 vs 従来療法
A1C 6.8% vs 7.2%
収縮期血圧 123 mmHg vs 129 mmHg
拡張期血圧 71 mmHg vs 74 mmHg
LDLコレステロール 85 mg/dl vs 104 mg/dl

強化療法と従来療法でプライマリーアウトカムに有意差がつかなかった理由として、従来療法群でも血糖値、血圧、脂質が良好にコントロールされ、イベント数が少ないことがあげられている。

J-DOIT3の死亡率は、8年間で4%であった。多くのnational diabetes surbeyで年間死亡率が2-3%であるので、J-DOIT3の死亡率は低い。2)
JDCSスタディに比べベースラインのデーターはほぼ同じだが、微小血管合併症や死亡率は半減した。1)
J-DOIT3の死亡原因の約60%はガンによるもので、強化療法群と従来療法群で差を認めない。1)

メタアナリシスで、血圧を120/80未満であることと脳卒中発症およびアルブミン尿の減少との関連はこれまでも報告されているが、冠動脈疾患でのベネフィットは示されていない。2)

Ueki K et al. Effect of an intensified multifactorial intervention on cardiovascular outcomes and mortality in type 2 diabetes (J-DOIT3): an open-label, randomised controlled trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Oct 24.

Chan JCN. How can we optimise diabetes care in real-world practice?Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Oct 24.

ナトリウム制限は、RASS阻害薬の効果増強を介して尿アルブミンを減少させる。

RASS阻害薬服用中にナトリウム制限を行なった結果、尿アルブミン値が改善した。
ナトリウムはACE活性増強作用がある、ナトリウム制限はRASS阻害薬効果を増強する。

まとめ
2型糖尿病、ロサルタン100mg服用
尿アルブミン300mg/day以上
血圧140/90未満、
血中クレアチニン2mg/dl未満の患者にナトリウム2.4g/dayあるいは4.8g/day のナトリウム制限を行う。
ナトリウム2.4g/dayは塩分6g/dayに相当

ナトリウム2.4g/dayの食事で、3ヶ月後に尿アルブミン値は724mg/dayから481mg/dayへ減少した。
ナトリウム4.8g/dayの食事では尿アルブミンの変化は認めなかった。
塩分制限がRASS阻害薬の効果を増強する。1, 2)

ナトリウム負荷は腎臓内のACE 活性を増強するため、Angiotensin IからAngiotensin IIへの転換を促進する。
Angiotensin II は、glomerular barrier permeability を増加させる。
ラットやヒトで、高ナトリウム摂取が、RASS阻害薬の効果を減弱させることが報告されている。

ビタミンDは尿アルブミン減少効果が示されていたため、paricalcitol とプラセボの比較試験も同時に行われた。
paricalcitol は、塩分12 g/dayでアルブミン尿を減少させるが、塩分6g/dayではアルブミン尿に対する効果なし
paricalcitolは、Sodium-induced albuminuria を減少させる。

Parvanova A et al. Moderate salt restriction with or without paricalcitol in type 2 diabetes and losartan-resistant macroalbuminuria (PROCEED): a randomised, double-blind, placebo-controlled, crossover trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov 2. 

Kwakernaak AJ et al. Effects of sodium restriction and hydrochlorothiazide on RAAS blockade efficacy in diabetic nephropathy: a randomised clinical trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 May;2(5):385-95

ビタミンD受容体活性化は、アルブミン尿を減少させる。 (VITAL study)


スマートインスリン MK2640

スマートインスリン(MK2640)は、インスリンに糖鎖 (saccharide units) が付加されているため、レクチンに結合する。

マンノース受容体は膜貫通型レクチンである、MK2640 はインスリン受容体だけでなくマンノース受容体にも結合する。インスリン受容体に対する結合率はレギュラーインスリンに比べ30%減弱している。

低グルコース濃度で MK2640 がマンノース受容体によりクリアランスされるので、MK2640 ではレギュラーインスリンに比べ低血糖が起こりにくい。

Engineering Glucose Responsiveness Into Insulin Diabetes 2017 Nov; db170577

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
102位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
12位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム