GLP-1作動薬の腎保護作用 AWARD7

糖尿病腎症ステージ3から4の患者で、デュラグルチドDulaglutide (1.5 mg/week、0.75 mg /week) とインスリングラルギン52週の比較試験の結果、デュラグルチド群では、インスリングラルギンに比べeGFRの低下が抑制される。

デュラグルチドは、顕性アルブミン尿(尿アルブミンクレアチニン比 >300 mg/g )の患者でインスリングラルギンに比べ、eGFRの低下を抑制する。
顕性アルブミン尿がない患者では、eGFRの低下は少なく、デュラグルチドとインスリングラルギンで eGFRは有意差なし。

デュラグルチドは 顕性アルブミン尿を改善し、その効果はデュラグルチド0.75mg に比べデュラグルチド1.5 mgでさらに強い。

SGLT2阻害薬の腎保護作用は糸球体過剰濾過の減少と尿細管糸球体フィードバックの回復による。
GLP-1受容体作動薬による腎保護のメカニズムは明らかでない点が多い。
糸球体、尿細管、腎血管内皮細胞にGLP-1受容体が発現している
抗炎症作用、酸化ストレスの改善、血管内皮保護によりGLP-1受容体作動薬による腎保護を示すと考えられている。

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は共に近位尿細管のNa+/H+ exchanger isoform 3の活性化を低下させ、NaHCO3の輸送を抑制する。

Dulaglutide versus insulin glargine in patients with type 2 diabetes and moderate-to-severe chronic kidney disease (AWARD-7): a multicentre, open-label, randomised trial

Farah LX, Valentini V, Pessoa TD, Malnic G, McDonough AA, Girardi ACC. The physiological role of glucagon-like peptide-1 in the regulation of renal function. Am J Physiol Renal Physiol 2016; 310: F123–27.
近位尿細管のNa+/H+ exchanger isotope 3 (NHE3)はNaHCO3の輸送を担う。PKAは、NHE3 serine 552をリン酸化し、NaHCO3の輸送を抑制する。ラットでGLP-1受容体拮抗薬 exendin-9 の投与は、尿中cAMPの減少、腎皮質のPKA活性が低下し、糸球体濾過率やナトリウム排泄が減少する
GLP-1は、PKAを介してNHE3を抑制しナトリウム利尿を促進する。

Pessoa TD, Campos LC, Carraro-Lacroix L, Girardi AC, Malnic G. Functional role of glucose metabolism, osmotic stress, and sodium- glucose cotransporter isoform-mediated transport on Na+/H+ exchanger isoform 3 activity in the renal proximal tubule. Am Soc Nephrol. 2014 Sep;25(9):2028-39.

1型糖尿病のneoepitope とautoreactive T cell

学術講演会の1型糖尿病のシンポジウムでは、Roep先生が、neoepitope の講演をされていた。neoepitopeはタンパク質翻訳後、スプライシングの異常やタンパク質の修飾により生じる

まとめ
1型糖尿病の自己抗原 1)
<膵島に存在する分子 naive autoantigen>
・insulin (NOD マウスでは B:9-23)
・proinsulin
・islet-specific glucose-6-phosphatase catalytic subunit–related protein (IGRP)
・Zinc transporter 8 (ZnT8)
・islet-amyloid polypeptide (IAPP)
・GAD65
・tyrosine phosphatase–like insulinoma- associated antigen 2 (IA-2)

<Neoepitope (アミノ酸への翻訳以後の修飾 post translational modification) 1)
・insulin A chain epitope
・defective ribosomal insulin gene product (DRiP) 
インスリンの翻訳開始部位の変異により生じる。thapsigarginは、ER内部のカルシウムを低下させERストレスを誘発する。DRiPは、thapsigargin による実験的なER ストレスで増加する。古典的なER stress では、misfolded proteins が増加する。
2)
・Tissue transglutaminase (tTG) substrate 
グルテンを脱アミド化した生成物が1型糖尿病感受性 HLA-DQ8cis/trans molecule と結合してautoantigen となる。
4)
・InsB30-C13
脱アミド化されたInsB30-C13はHLA-DQ2cis、HLA-DQ2trans、HLA-DQ8trans、HLADQ8cis全てと結合能を示す。
4)

1型糖尿病患者では制御性T細胞(Treg) の機能異常やエフェクターT細胞(Teff)の抵抗性があり、末梢での寛容(peripheral tolerance)に障害が認められる。1)

1型糖尿病患者のautoreactive T cells はproinflammatory cytokine profilesを示し、健常者では regulatory profilesを示す
InsB30-C13 対するautoreactive T cell は、1型糖尿病患者、健常者ともに存在する。
autoreactive T cellの反応は、1型糖尿病ではIFN-γを、健常者ではIL10を分泌する。4)

1型糖尿病のリスク遺伝子は免疫制御に関連する。
PTPN22 (encoding protein tyrosine phosphatase, non-receptor type 22) TCR signaling コントロール
CTLA4 (encoding cytotoxic T lymphocyte–associated protein 4) T 細胞の反応抑制
IL2RA (encoding the IL-2 receptor α-chain, IL-2Rα) Treg の反応と機能のコントロール

1. Pugliese A. Autoreactive T cells in type 1 diabetes. J Clin Invest. 2017 Aug 1;127(8):2881-2891.

2. Kracht MJ et al. Autoimmunity against a defective ribosomal insulin gene product in type 1 diabetes. Nat Med. 2017 Apr;23(4):501-507.

3. Wei J, Yewdell JW. Autoimmune T cell recognition of alternative-reading-frame-encoded peptides Nat Med. 2017 Apr 7;23(4):409-410.

4. van Lummel M, Duinkerken G, van Veelen PA, de Ru A, Cordfunke R, Zaldumbide A, Gomez-Touriño I, Arif S, Peakman M, Drijfhout JW, Roep BO. Posttranslational modification of HLA-DQ binding islet autoantigens in type 1 diabetes. Diabetes. 2014;63(1):237–247.

5. James EA, Pietropaolo M, Mamula MJ. Immune Recognition of β-Cells: Neoepitopes as Key Players in the Loss of Tolerance. Diabetes. 2018 Jun;67(6):1035-1042.
Neoepitopeの総説(Diabetes)

6. Strollo R, Vinci C, Napoli N, Pozzilli P, Ludvigsson J, Nissim A. Antibodies to post- translationally modified insulin as a novel biomarker for prediction of type 1 diabetes in children. Diabetologia 2017;60:1467–1474
Posttranslational modification により酸化インスリンに対する抗体が1型糖尿病発症前から認められる。


リラグルチドの食欲抑制作用には glutamatergic neuronのGLP-1受容体を必要とする。

リラグルチドは glutamatergic neuron、GABAergic neuron の両方を活性化する。
リラグルチドの食欲抑制、体重減少作用に、glutamatergic neuron のGLP-1受容体が必須である。
area postrema AP、lateral parabrachial nucleus IPBNのGLP-1受容体はリラグルチドで直接活性化されている。

まとめ
皮下注射したリラグルチドは glutamatergic neuron、GABAergic neuron の両方を活性化する。
リラグルチドliraglutide が活性化する5つの部位
・central amygdala CeA
・lateral parabrachial nucleus IPBN
・bed nucleus of the stria terminalis BNST
・caudal nucleus of the solitary tract cNTS
・area postrema AP
IPBNでは glutamatergic neuronが、CeA、BNST ではGABAergic neuronが占めている。cNTSとAPでは両者が混在している。

リラグルチドは、lateral septum、paraventricular thalamus、paraventricular hypothalamus、arcuate hypothalamus、ventromedial hypothalamus、lateral dorsal tegmental nucleus、rostral NTS でニューロンの活性化に影響しない。

GLP-1 受容体が glutamatergic neuron に発現しないマウスで、リラグルチドの体重減少、食欲抑制作用が認められない。GABAergic neuron に発現しないマウスでは、リラグルチドの効果は保たれる。
リラグルチドの作用にはglutamatergic neuronの発現するGLP-1受容体が必須である。

GLP-1受容体とGFPを発現するマウスの検討で、リラグルチドによるFos+ニューロンの割合はIPBN、APで高くCeA、BNST、cNTSで低い。
IPBN、APのGLP-1受容体発現ニューロンはリラグルチドで直接活性化されている。

Liraglutide Modulates Appetite and Body Weight Via GLP-1R-Expressing Glutamatergic Neurons
http://diabetes.diabetesjournals.org/content/early/2018/05/04/db17-1385

SGLT2阻害薬のβ細胞保護作用

ルセオグリフロジンを4週間投与したdb/dbマウスでは、10週令(6週例から4週間投与)、14週令、18週、28週令でβ cell mass がコントロールに比べ増加している。

BrdUで評価したβ細胞の増殖は、10週令マウス(6週例から4週間投与)のみルセオグリフロジン群でコントロールに比べ増加している。BrdUとインスリンの共陽性細胞数は週令と共に減少する。TUNEL 法で検討した apoptosis は、10週令マウスでルセオグリフロジン群でコントロールより少なく、28週令で有意差はない。

MafA とインスリン共陽性細胞も週令と共に減少するが、ルセオグリフロジンではコントロールに比べ週令にかかわらず増加している。MafAの発現がβ細胞の機能と量に関係しているかもしれない。

Takahashi K et al. Effect of the sodium–glucose cotransporter 2 inhibitor luseogliflozin on pancreatic beta cell mass in db/db mice of different ages Sci Rep. 2018 May 1;8(1):6864.
https://www.nature.com/articles/s41598-018-25126-z

運動時のdual-hormone closed loop

dual-hormone closed loop は、single-hormone closed loopに比べ45分間の運動で低血糖が少ない。
血糖値70–180 mg/Lに入る時間はsingle-hormone closed loop、dual-hormone closed loop で有意差なし。
Closed-loop では心拍センサーと加速度センサーが搭載され運動時に適したアルゴリズムが使われている。

まとめ
大人の1型糖尿病20人、
・dual-hormone closed loop
・single-hormone closed loop
・predictive low glucose suspend (Medtronic 640G)
・continuation of current care
の4つのアームで運動時の血糖コントロールを比較した

午後2時から60% VO2max のトレッドミル45分間運動を4日間続ける。
Wearable Sensorsを使用する。CGMデータは参加者にはblind で、安全のためremote monitor される。
Current care では、運動前にインスリン量の自己調節が許可されている。

dual-hormone closed loop、single-hormone closed loop では、ZephyrLife BioPatch の心拍モニターと加速度センサーを取り入れ、運動に適したアルゴリズムを使用する。運動が開始されたのち、インスリンは30分中止、その後60分は通常インスリン注入の50%がおこなわれる。

dual-hormone closed loop は、single-hormone closed loopに比べ45分間の運動での低血糖と4日間の低血糖頻度が少ない。

血糖値70–180 mg/Lに入る時間は single-hormone closed loopで一番長いが、dual-hormone closed loop と有意差なし。predictive low glucose suspend、continuation of current care が続く。

current care は、dual-hormone closed loop と同等に低血糖が少ない。
運動前のインスリン自己調整が、Current care のみ許可されていたためで、患者教育の重要性を示している。

single-hormone closed loop も血糖値70–180 mg/Lに入る時間が長く良い結果を示している。
グルカゴンは毎日溶解して作成する必要があり、吐き気の副作用についても考慮しなければならない。

Castle JR et al. Randomized Outpatient Trial of Single- and Dual-Hormone Closed-Loop Systems That Adapt to Exercise Using Wearable Sensors. Diabetes Care. 2018 May 11. pii: dc180228. doi: 10.2337/dc18-0228. [Epub ahead of print]
 

Masked hypertension と死亡リスク

Ambulatory blood presser は、clinic blood pressure より心血管死、全死亡の強力な予測因子である。

Masked-hypertension、Sustained hypertension、White-coat hypertension は心血管死、全死亡と関連する。
Masked-hypertension との関連がもっとも強い。

全死亡 all-cause mortality との関連は、ハザード比で
Masked hypertension 2.83
Sustained hypertension 1.8
White-coat hypertension 1.79

Banegas JR et al. Relationship between Clinic and Ambulatory Blood-Pressure Measurements and Mortality. N Engl J Med. 2018 Apr 19;378(16):1509-1520. doi: 10.1056/NEJMoa1712231.

IL-6は胃排出能を抑制する。

IL-6は胃排出能を抑制する。胃排出能抑制により食後血糖が低下しインスリンの Area under the curve (AUC) が低下する。

まとめ
健常者で、食事負荷前のIL-6 の注入は、胃排出能抑制が認められ食後血糖値が低下する。
IL-6の注入によりインスリン分泌のAUCは低下、グルカゴンは生理食塩水注入と同様のピークをとる。
心拍数の増加が認められるため、IL-6が交感神経を刺激しているかもしれない。
十二指腸に直接食事を注入した場合、IL-6による食後血糖値抑制効果は認められない。

GLP-1受容体阻害薬 exendin 9-39 (ex-9-39) とIL-6の併用は、ex-9-36単独より胃排出能を低下させる。IL-6はGLP-1分泌を促進するが、GLP-1の作用とは独立して胃排出能を抑制している。

食事負荷前のトレッドミル60分の運動は血中IL-6を5倍に増加させる。その後の食事負荷で、胃排出能が低下する。
Tocilizumabは、IL-6の胃排出能低下作用を抑制する。

血糖コントロールの良い2型糖尿病で、IL-6は、食事負荷後血糖値を変化させないが、胃排出能を低下させるためインスリンAUCが低下する。

Lang Lehrskov L et al. Interleukin-6 Delays Gastric Emptying in Humans with Direct Effects on Glycemic Control. Cell Metab. 2018 Apr 28. pii: S1550-4131(18)30251-1.

1型糖尿病に対する dapagliflozin DIRECT-1

1型糖尿病に対するdapagliflozin 24週間投与で、A1Cは約0.4%低下、体重と総インスリン量が減少する。

まとめ
1型糖尿病に対するdapagliflozin 24週間投与、833人の登録、n=778
dapagliflozin 10 mg、5 mg、プラセボへ1:1:1で割り付け

dapagliflozin 10 mg では
ベースラインA1C 8.53%から0.45%低下
体重82.4kgから3.1kg 低下
総インスリン量59.4 IUから5.5 IU減量
Dapagliflozin 10 mgは、5 mgよりインスリンの減量率、体重減少率が大きい。

糖尿病性ケトアシドーシスの発症は、dapagliflozin 5 mg 4人(1%)、dapagliflozin 10 mg 5人(2%)、プラセボ 3人(1%) 
参加者は家庭用ケトン測定器を配布され、血糖値1日4回測定で血糖が持続高値の時はケトン体測定を指示されていた。
2週間に1回来院してケトアシドーシスをチェックした。総インスリン量の減量は20%までとするよう推奨されていた。
これらがケトアシドーシスの発症を抑制したと考えられる。2)

1. Dandona Pet al. Efficacy and safety of dapagliflozin in patients with inadequately controlled type 1 diabetes (DEPICT-1): 24 week results from a multicentre, double-blind, phase 3, randomised controlled trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov;5(11):864-876

2. Petrie JR. SGLT2 inhibitors in type 1 diabetes: knocked down, but up again? Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov;5(11):841-843.

肥満手術後、α細胞でのGLP-1発現上昇には、β細胞のGLP-1受容体を必要とする。

肥満手術 (Vertical Sleeve Gastrectomy) をおこなったマウスでは、α細胞のGLP-1とPC1/3の発現が増加する。
空腹時グルカン値は上昇、膵島でα細胞面積が増加、膵島の中心部にα細胞がみとめられるようになる。
β細胞にGLP-1受容体のないマウスではこの現象が認められない。
α細胞でのGLP-1の増加は、β細胞のグルコース刺激下のインスリン分泌に対してpositive feedback をかける。

Garibay Det al. β Cell GLP-1R Signaling Alters α Cell Proglucagon Processing after Vertical Sleeve Gastrectomy in Mice. Cell Rep. 2018 Apr 24;23(4):967-973.

中枢性プログルカゴンの活性化は食餌量、肝糖放出を低下させる。

中枢ではプログルカゴンを発現する細胞がGLP-1を産生している。プレプログルカゴンを発現するニューロンの刺激により摂餌量が減少、肝糖放出が低下するが、インスリン分泌は促進しない。視床下部ー下垂体ー副腎軸も変化しなかった。1)

まとめ
プレグルカゴン遺伝子から、prohormone convertase 1/3 により、GLP-1、GLP-2、oxyntomodulin、 intervening peptide 1、glicentinが産生される。GLP-1の免疫組織染色で検出されるプレグルカゴンニューロンは、孤束核 nucleus of the solitary tract、延髄腹外側核 ventrolateral medulla (VLM) に強く発現が認められる。
GLP-1受容体の発現は、視床室傍核 paraventricular hypothalamic nucleus、弓状核 arcuate nucleus、最後野 area postrema, 孤束核 nucleus of the solitary tract、迷走神経背側運動核 dorsal motor nucleus of the vagus など食事を制御する視床 hypothalamus 、脳幹 brainstem に認められる。

DREADD technology を用いて、プレプログルカゴンを発現するニューロンを刺激した結果、摂餌量が減少、肝糖放出が低下する。インスリン分泌は促進しない。

GLP-1は中枢でストレスに対する二つの軸、視床下部ー下垂体ー副腎軸 (hypothalamic-pituitary-adrenal (HPA) axis)および交感神経を刺激する。したがって GLP-1により血中コルチコステロン、エピネフェリンが上昇する。
GLP-1は、paraventricular nucleus に作用し、ストレスで活性化されるホルモン、ACTHの分泌を促進し、コルチコステロン値が上昇する。ストレスによる食欲低下には、GLP-1シグナリングが関与している。

プログルカンニューロンの活性化は、コルチコステロン値、anxiety-related behavior に影響せず、HPA axis を変化させない。

薬剤性の nausea を評価する検査である conditioned taste aversion (saccharin preference で評価)は変化せず、プログルカンニューロンの活性化は、nausea を生じていないと考えられる。

1 Gaykema RP et al. Activation of murine pre-proglucagon-producing neurons reduces food intake and body weight. J Clin Invest. 2017 Mar 1;127(3):1031-1045.

2 Campbell JE, D'Alessio DA. DREADDing proglucagon neurons: a fresh look at metabolic regulation by the brain. J Clin Invest. 2017 Mar 1;127(3):793-795.

3 Gil-Lozano M et al. GLP-1(7-36)-amide and Exendin-4 stimulate the HPA axis in rodents and humans. Endocrinology. 2010 Jun;151(6):2629-40.
GLP-1(7-36)-amide とExendin-4は血中ACTH、コルチゾール値を上昇させる。

4 Kinzig KP, et al. CNS glucagon-like peptide-1 receptors mediate endocrine and anxiety responses to interoceptive and psychogenic stressors. J Neurosci. 2003;23(15):6163–6170

5 Cork SC et al. Distribution and characterisation of Glucagon-like peptide-1 receptor expressing cells in the mouse brain. Mol Metab. 2015 Aug 5;4(10):718-31.

6 Heppner KM et al. Expression and distribution of glucagon-like peptide-1 receptor mRNA, protein and binding in the male nonhuman primate (Macaca mulatta) brain. Endocrinology. 2015 Jan;156(1):255-67.


グルタミンはL細胞でGLP-1分泌を誘発する

グルコース刺激による膵β細胞のインスリン分泌と腸管L細胞のGLP-1分泌では、共にグルコース刺激下で、細胞内ミトコンドリアの代謝産物が増加している。

アミノ酸によるインスリン分泌は、生理学的にはロイシンのみで認められる。
β細胞株INS-1でグルタミンは、glutamine dehydrogenase (GDH) activator であるロイシンの存在下でインスリン分泌を誘発する。GDH活性が低いことが正常なβ細胞機能には必須である。

L細胞株GLUTagで、グルタミンはロイシンがなくともGLP-1分泌を誘発する。
L細胞株GLUTagでは、INS-1に比べ細胞内ロイシン濃度が高く、GDHが活性化されている。
Sodium glucose transporter を介さない膜透過性グルタミンアナログdimethylglutamateもGLP-1分泌を誘発する。

Andersson LE et al. Glutamine-Elicited Secretion of Glucagon-Like Peptide 1 Is Governed by an Activated Glutamate Dehydrogenase. Diabetes. 2018 Mar;67(3):372-384.

Haigis MC, Mostoslavsky R, Haigis KM, et al. SIRT4 inhibits glutamate de- hydrogenase and opposes the effects of calorie restriction in pancreatic beta cells. Cell 2006;126:941–954
SIRT4はGDHを抑制する。

無自覚低血糖では血糖値60 mg/dlでの脳の活動性変化が認められない

正常コントロールで、低血糖 (血糖値60 mg/dl) 時のfunctional MRIにより、皮質-線条体 cortico-striatal あるいは 前頭-側頭経路front-parietal neurocircuit の活動性低下が認められる。尾状核は、前頭皮質との生理的、機能的結合を担う。

1型糖尿病で低血糖症状が強く出る患者(T1DM-Aware) では、低血糖 (血糖値60 mg/dl) で、線条体(尾状核) 、島皮質 insula の活動低下がなく、代償性にInferior parietal lobe/angular gyrus の活性化がみとめられた。
1型糖尿病で無自覚低血糖がある患者 (Type1-Unaware)では、低血糖 (血糖値60 mg/dl) で脳の活動性変化が認められなかった。

Type1-Unawareでは、コントロールおよびT1DM-Aware に比べ、血糖値60 mg/dl でのエピネフリン上昇が少ない (modest response)。ノルエピネフリンは3群とも変化しない。

Counterregulatory hormone の上昇の前に視床の血流が変化する。2)
1型糖尿病、特に無自覚低血糖がある患者のエピネフェリンの反応低下と脳の活動性の変化は関連しない。

Hwang JJ et al. Hypoglycemia unawareness in type 1 diabetes suppresses brain responses to hypoglycemia. J Clin Invest. 2018 Apr 2;128(4):1485-1495.

Page KA et al. Small decrements in systemic glucose provoke increases in hypothalamic blood flow prior to the release of counterregulatory hormones. Diabetes. 2009;58(2):448–452.
Counterregulatory hormon の上昇の前に視床の血流が変化する。

中枢性のグルカゴン分泌制御

AMPK
視床下部視床下部腹内側核 (ventromedial hypothalamus, VMH) のAMP-activated protein kinase (AMPK) 活性化は、急性低血糖時のエピネフェリン、グルカゴンの反応を増強する。コルチゾール corticostrone の反応に影響しない。
VMHに発現するAMPKは、低血糖を検知し、counterregulatory response に重要な役割をはたしている。

Fgf15
2-deoxyglucose (2-DG) は自律神経を介してインスリン分泌を促進し、神経性低血糖 neuroglycopenia となりグルカゴン分泌を誘発する。2-DG を用いた視床のスクリーニングにより、Fgf15が見出された。
Fgf15 は、視床下部背内側部 (dorsomedial hypothalamus)、視床下部脳弓周囲野(perifornical area)に発現する。
Fgf15の脳室内投与はneuroglycopenia による迷走神経の活性化とグルカゴン分泌を抑制し、Fgf15のsilencing は血中グルカゴン分泌を促進する

McCrimmon RJ et al. Key role for AMP-activated protein kinase in the ventromedial hypothalamus in regulating counterregulatory hormone responses to acute hypoglycemia. Diabetes. 2008 Feb;57(2):444-50. Epub 2007 Oct 31.

Picard A et al. A Genetic Screen Identifies Hypothalamic Fgf15 as a Regulator of Glucagon Secretion Cell Rep. 2016 Nov 8;17(7):1795-1806.
 

若年者の膵島はマウスの腎皮膜下でexendin-4 により増殖する。

マウスの腎皮膜下に、若年者(0.5-9歳)、成人(20歳以上)の膵島移植した後、exendin-4 (Ex-4)を6週間注射した。
若年者の膵島で、Ex-4によるβ細胞の増殖が確かめられた。α細胞、δ細胞は増殖しない。ヒトα細胞はGLP-1受容体mRNAを発現していなかった。
移植若年者膵島のRNA-sequencingで、PBSに比べEx-4では、calcineurin/NFAT signalingに関連する遺伝子発現が増加していた。
ヒト新生児β細胞の成熟 development は、calcineurin/NFATが制御することが知られている。
FK506は、Ex-4によるcalcineurin/NFAT signalingに関連する遺伝子増加を抑制する。

Dai C et al. Age-dependent human β cell proliferation induced by glucagon-like peptide 1 and calcineurin signaling. J Clin Invest. 2017 Oct 2;127(10):‪3835-3844.

Goodyer WR eat al. Neonatal β cell development in mice and humans is regulated by calcineurin/NFAT. Dev Cell. 2012 Jul 17;23(1):21-34.

Heit JJ et al. Calcineurin/NFAT signalling regulates pancreatic beta-cell growth and function. Nature. 2006 Sep 21;443(7109):345-9.
 

グルカゴンは乳酸よりもグルタミンからの糖新生を増強する。

 グルカゴンは乳酸よりもグルタミンからの糖新生を増強する。

グルタミンは、グルタミン酸をへて、α-ケト酸に代謝され糖新生の材料となる。
グルカゴンは肝臓で乳酸経由よりもグルタミン分解経由の糖新生を増強する。

グルカゴンは、protein kinase Aの活性化およびそれに伴うendoplasmic reticulum からのカルシウム放出により
ミトコンドリアのα- ketoglutarate dehydrogenaseを活性化する。

グルタミン代謝の第1弾段階の酵素であるGlutaminase 2 (GLS2)のノックアウトマウスでは、空腹時のグルカゴンとグルタミンのレベルが高く、インスリン抵抗性の条件でも、空腹時血糖値が低い。

GWASの結果、GLS2のLeu581がproline に置換された polymorphismでは、空腹時血糖が高く血中グルタミン値が低い。このpolymorphismは、gain-of-function mutation である。

Miller RA et al. Targeting hepatic glutaminase activity to ameliorate hyperglycemia. Nat Med. 2018 Mar 26.

心臓のGLP-1受容体の発現

RT-PCRで、GLP-1受容体(GLP-1R) mRNAが、心房と心室に発現している。in situ hybridization で、GLP-1Rは心房の sinoatrial nodeに発現しているが、心室に発現は確認できない。

まとめ
GLP-1RmRNAのopen reading frame 全長の転写transcript は、全ての心房、心室に膵臓と同等の検知レベルで認められた。心筋線維芽細胞、冠動脈血管内皮細胞、冠動脈血管平滑筋に、GLP-1RmRNA は認められなかった。

グルカゴンとGLP-2は、同じpreproglucagon 遺伝子から転写される。心房および心室で、GLP-2受容体mRNA発現はかなり低く、グルカゴン受容体mRNAは左室には認められなかった。

In situation hybridization で、十二指腸Brunner’s gland、膵島、心房組織のsinoatrial node にGLP-1Rの発現が確認できるが、心室組織では確認できない。
信頼できる抗体によるウエスタンブロッティングでは、感度が不十分で心室だけでなく膵島のGLP-1Rの発現が検出できない。

Baggio LL et al. GLP-1 Receptor Expression Within the Human Heart. Endocrinology. 2018 Apr 1;159(4):1570-1584.

パルス状のインスリン分泌

インスリンは、約5分間隔でパルス状に分泌されている。
β細胞の膜電位は、1分未満間隔のfast oscillation 、4-6分間隔のSlow oscillation および compound oscillationがある。Slow oscillation とcompound oscillation は、血中インスリンの oscillation と一致する。1)

β細胞の膜電位、細胞内カルシウム濃度、解糖系酵素活性、cAMP、ミトコンドリア膜電位、β細胞や膵島の酸素消費量、NAD(P)H、ATP/ADP、KATP-current は、 slow oscillation を示す。1, 2, 3)

インスリンのバルス状分泌を制御するのは、Ca2+依存性ATP産生やCa2+ pump によるATP消費の結果が metabolic oscillation である、あるいは解糖系の oscillation がATP産生のoscillation を生じさせ、KATP channel を調節することにより、electrical bursting と Ca2+ oscillation を制御するという説である。
現在は、解糖系に対するCa2+のフィードバックを取り入れたIntegrated oscillation model が妥当であるとされている。1)
そのほか cAMP oscillation、膵島のパラクラインファクター、インスリンそのものも β-cell oscillation に関与する。1)

<Ca2+ と代謝シグナルの相互作用>
Ca2+ oscillation とmetabolic oscillation は相互に影響している。1)
Ca2+濃度上昇時、Ca2+ ATPase pumpの加水分解によりATP濃度は緩やかに減少し、KATP channel は再活性化される。Ca2+濃度低下時、ATPは緩やかに上昇、KATP channel が抑制され、あらたなactive phase が開始される。

Phosphofructokinase (PFK) は、fructose-6-phosphate をfructose-1,6- bisphosphate (FBP)に変換する。PFKはATP によりアロステリックな阻害を受ける。グルコース10mMの存在下の膵島で、FBP濃度はノコギリの歯状に変動する。ダイアゾキサイドにより変動は消失するが、KCl による膜の脱分極でカルシウムを安定させた結果、ノコギリの歯状の変動が回復する。このことは Metabolic oscillationが Ca2+ oscillationを必要とすることを意味している。

ピルビン酸デヒドロゲナーゼはピルビン酸をacetyl-CoAに変換する酵素で Ca2+により強力に活性化される。acetyl-CoAがミトコンドリアで代謝され ATPが上昇、PFKが抑制され解糖系の速度が低下する。

α-ketoisocaproic acid (KIC)はロイシンの代謝産物で解糖系を経由せずクエン酸回路に入る。グルコースのない条件下で、KICはCa2+ oscillation を惹起する。

パルス状のインスリン分泌の利点 3)
下流のシグナリングの複雑さに対応する。
細胞間のネットワークをコーディネートする。
間欠性のサイクルが細胞のストレスを軽減する。

イヌ、ラットでパルス状のインスリン分泌がインスリン受容体シグナルを増強 potentate し、肝糖産生抑制に有効である。3)

1. Bertram R, Satin LS, Sherman AS. Closing in on the Mechanisms of Pulsatile Insulin Secretion. Diabetes. 2018 Mar;67(3):351-359.

2. Nunemaker CS, Satin LS. Episodic hormone secretion: a comparison of the basis of pulsatile secretion of insulin and GnRH. Endocrine. 2014 Sep;47(1):49-63.

3. Tian G, Sandler S, Gylfe E, Tengholm A. Glucose- and hormone-induced cAMP oscillations in α- and β-cells within intact pancreaticislets. Diabetes. 2011 May;60(5):1535-43.

4. Bertram R, Sherman A, Satin LS. Metabolic and electrical oscillations: partners in controlling pulsatile insulin secretion. Am J Physiol Endocrinol Metab 2007;293: E890–E900

5. Matveyenko AV et al. Pulsatile portal vein insulin delivery enhances hepatic insulin action and signaling. Diabetes. 2012 Sep;61(9):2269-79.

cAMP oscillationのまとめ(1)

インスリンはパルス状に門脈に分泌され、肝臓のインスリンシグナルに関係する遺伝子発現を制御している。


1型糖尿病のグルカゴン分泌不全

1型糖尿病で、低血糖時のグルカゴン反応が不十分で、食事に反応したグルカゴン反応が不適当 Inappropriate である。その原因として以下が挙げられている。

神経系でグルコース濃度検知不全 (Defects in neural glucose sensing)
膵島の交感神経の減少 (Impaired islet innervation)
膵島内インスリン欠乏 (Intra-islet insulin deficiency)
α細胞の機能不全 ( Intrinsic α cell defects)

Brissova M et al. α Cell Function and Gene Expression Are Compromised in Type 1 Diabetes. Cell Rep. 2018 Mar 6;22(10):2667-2676
1型糖尿病のα細胞で MAFB、ARX、RFX6やカルシウムチャネルの転写が低下している。膵島のグルカゴン陽性細胞はコントロールに比べ増加している。グルカゴン含量で補正したグルカゴン分泌は、グルコース300mg/dl 30分後、グルコース100 mg/dl で、コントロールに比べ反応が少ない。

Mundinger TO et al. Human Type 1 Diabetes Is Characterized by an Early, Marked, Sustained, and Islet-Selective Loss of Sympathetic Nerves. Diabetes. 2016 Aug;65(8):2322-30.
1型糖尿病の膵島で、交感神経の喪失が認められるが、2型糖尿病では認められない。
膵島での交感神経の喪失が1型糖尿病でインスリンによる低血糖の原因の一つである。

1型糖尿病のα細胞機能と遺伝子発現

ヒト1型糖尿病α細胞では、α細胞に特異的な転写因子、L型およびP/Q型カルシウムチャネルの発現が低下していた。グルカゴン陽性細胞が多いが、グルカゴン含量あたりのグルカゴン分泌反応は正常と異なる。α細胞の機能低下が1型糖尿病のグルカゴン分泌異常の原因であるかもしれない。

まとめ
ヒト1型糖尿病の膵島ではグルカゴン陽性細胞がコントロールに比べ~2倍増加している。
グルコース300mg/dl 30分後、グルコース100 mg/dl で、グルカゴン含量で補正した膵島のグルカゴン分泌はコントロールに比べ反応が少ない。

α細胞では、α細胞に特異的的なMAFB、ARX遺伝子発現は低下、通常β細胞に発現するNKX6.1遺伝子発現が増加していた。転写因子RFX6やカルシウムチャネルの転写も低下している。
RFX6はβ細胞でL型およびP/Q型カルシウムチャネル(CACNA1A、CACNA1C、CACNA1D)、KATP channel のサブユニットである sulfonylurea receptor 1 (ABCC8) の発現を制御している。 転写因子の発現低下によりグルカゴン分泌に関わる分子が抑制され、グルカゴン分泌が生じている可能性がある、

ヒト1型糖尿病の膵島で残存したβ細胞の機能は保たれている。
β細胞でPDX-1、NKX6.1、NKX2.1の発現はコントロールと同等、MAFAは低下している。
インスリン含量で補正したグルコースに対するインスリン分泌能は正常者と同等であった。

α細胞にNkx6.1 が発現していたことから、α-to-β conversion 検討するため、1型糖尿病患者の膵島を免疫不全マウスに移植した。移植後1カ月後、GLP-1アナログを注射しβ細胞の成熟と増殖を促したがヒトインスリンは検出できず。
ARX陽性細胞は増加、Nkx6.1陽性細胞は減少、Non-autoimmune environment では、α細胞のアイデンティティが回復された。ヒトの膵島で、α-to-β conversion は very rare event である。

1型糖尿病で、低血糖時のグルカゴン反応が不十分で、食事に反応したグルカゴン反応が不適当 Inappropriate である。α細胞機能障害 (intrinsic α cell defect)も原因の一つかもしれない。

Brissova M et al. α Cell Function and Gene Expression Are Compromised in Type 1 Diabetes. Cell Rep. 2018 Mar 6;22(10):‪2667-2676‬

Chandra V et al. RFX6 regulates insulin secretion by modulating Ca2+ homeostasis in human β cells. Cell Rep. 2014 Dec 24;9(6):2206-18
RFX6 は、ヒトのβ細胞でインスリン遺伝子発現とインスリン含量および分泌を制御している。
RFX6 knockdown したヒトβ細胞ではでは、P/Q calcium channel (CACNA1A)、L-type calcium channel (CACNA1C、CACNA1D) の発現が低下し、カルシウムホメオスタシスや電気的活性化が障害される。さらにグルコキナーゼ、SUR1 (ABCC1)遺伝子の発現も低下していた。

 

PDX-1遺伝子のArea IV は離乳後のPDX-1の発現を制御する。

PDX-1遺伝子の5’-flanking areaに、膵β細胞特異的な転写因子の発現を制御する部位が4カ所知られている。このうち、Area IV は離乳後のPDX-1の発現、β細胞の機能と発育に関与する。

Area IV 欠失したオスのマウスで、膵島の形成は、ほとんど影響されていないが、離乳後に PDX-1mRNA とタンパク質レベルが低下し、糖尿病を発症する。PDX-1 target genes の発現も低下する。Area IV は、離乳後のPDX-1発現を制御している。Chip assay で、PDX-1がArea IVに結合するため、Area IVがPDX-1により自己調節されている可能性がある。 

Cox AR. Kushner JA. Area IV Knockout Reveals How Pdx1 Is Regulated in Postnatal β-Cell Development. Diabetes. 2017 Nov;66(11):‪2738-2740.

Spaeth JM et al. Defining a Novel Role for the Pdx1 Transcription Factor in Islet β-Cell Maturation and Proliferation During Weaning. Diabetes. 2017 Nov;66(11):‪2830-2839

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
134位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
16位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム