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週1回インスリン製剤 icodecの第2相試験

週1回インスリン製剤 icodecの第2相試験、1日1回グラルギン注射との比較、26週間後グラルギンと同様の血糖効果作用と安全性を示した。

これまでインスリン治療をおこなったことがなく、メトフォルミン単独あるいはメトフォルミンとDPP4阻害薬でコントロール不良な2型糖尿病患者が対象、スルフォニルウレア服用者は除外

primary endo point
ベースラインに対するA1Cの変化量
secondary endo points
ベースラインと26週間後の空腹時血糖値、体重、9ポイント血糖値
最終2週間のインスリ投与量、フリースタイルリブレプロで測定した血糖値70−180mg/dl に入る時間

icodecは、最大血中濃度16時間、半減期 half-life 1週間の持効型インスリンで、週1回70単位で開始、グラルギンは10単位/日で開始、終了時は icodec 33単位/日、グラルギン41単位/日、体重増加は同等であった。

レベル1低血糖アラート(血糖値54 以上 70 mg/dl未満)は、icodec群 53.6%、グラルギン群37.7%
レベル2( 血糖値54mg/dl 未満)、レベル3(手助けが必要な重症低血糖)の低血糖頻度は両群で同等

Once-weekly treatment with insulin icodec had glucose-lowering efficacy and a safety profile similar to those of once-daily insulin glargine U100 in patients with type 2 diabetes.

季節性コロナウイルスに対する抗体の効果は6から12ヶ月つづく

1985年からHIV感染、AIDS患者のコホートスタディの保存血清で季節性コロナウイルス4種類(HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-HKU1) の感染歴を検討した。

血清は、1989年以前は3ヶ月に一回、それ以降は6ヶ月に1回血清が保存されており、nucleocapsid protein の carboxyl-terminal region に対する抗体価を測定した。合計101イベント、1人あたり3から17回感染している。いくつかの症例で6ヶ月あるいは9ヶ月で認めたが多くは12ヶ月間隔であった。
6月から9月は季節性コロナウイルス感染が少ない。

Edridge AWD et al. Seasonal coronavirus protective immunity is short-lasting. Nat Med. 2020 Sep 14. doi: 10.1038/s41591-020-1083-1. Online ahead of print.

Grifoni A et al. Targets of T Cell Responses to SARS-CoV-2 Coronavirus in Humans with COVID-19 Disease and Unexposed Individuals. Cell. 2020 Jun 25;181(7):1489-1501.e15. doi: 10.1016/j.cell.2020.05.015. Epub 2020 May 20.
新型コロナウイルスに感染していない人の40〜60% にSARS-CoV-2-reactive CD4+ T cells が認められる。季節性コロナウイルスとSARS-CoV2 に対するcross reactive T cellが存在することを意味する。

SARS-CoV2抗体は120日間にわたり産生される。

アイスランドからの報告、2種類のpan-immunoglobulin (Ig)抗体でSARS-CoV2に対する抗体産生を確認した。そのうちひとつはスパイクプロテインS1サブユニットに存在するreceptor binding domain に対する抗体である。qPCR陽性者の90%以上に抗体が産生され診断から120日以上持続した。

抗体産生にはfirst waveとsecond wave がある。first waveは生存期間の短い形質細胞により、second wave は数が少ないが長く生存する形質細菌の抗体産生によるもので、約4カ月持続する。

このスタディによりアイスランドでは、人口の約0.3%がSARS-Cov2に感染し、そのうち56%がqPCRで診断されたと推測された。30%は隔離やqPCRを受けておらず、14%は隔離を行ったがqPCR を受けていない。

Gudbjartsson DF et al. Humoral Immune Response to SARS-CoV-2 in Iceland. N Engl J Med
. 2020 Sep 1. doi: 10.1056/NEJMoa2026116. Online ahead of print

Galit Alter, Robert Seder. The Power of Antibody-Based Surveillance. N Engl J Med
. 2020 Sep 1. doi: 10.1056/NEJMe2028079. Online ahead of print.

体重減少が最も重要(肥満手術と食事療法の比較)

食事では長期の体重減少は困難なためbariatric surgeryの方が肥満のある2型糖尿病には効果的である。同じように体重が減らせた場合、Low-calorie diet とbariatric surgeryで同様にインスリン感受性性が改善しβ細胞機能が改善する。代謝機能の大きな改善には体重減少が重要である。bariatric surgeryで腸内細菌がより変化し分枝鎖アミノ酸が低下するがこれは体重減少とは独立した効果であり代謝機能の大きな改善とは関連しない。 

まとめ 
2型糖尿病22人、Low-calorie diet とbariatric surgery (Roux-en-Y)の比較、それぞれ11人完遂、体重は1.2%/weekで減少、全期間で17-18%減少 (体重122kg から99-100kgへ減少)、 GLP-1作動薬は2週間前、糖尿病薬は3日前、インスリンは1日前に中止しmetabolic studyをおこなった。肝臓、脂肪組織、筋肉のインスリン感受性は改善し有意差なし。

bariatric surgeryでは 
Low-calorie dietに比べ分枝鎖アミノ酸とC3とC5 acylcarnitine が低下、胆汁酸が増加した。腸内細菌は両群とも変化するが bariatric surgery での変化が大きい。 

Low-calorie diet とbariatric surgery で同等にインスリン抵抗抵抗性が改善したことから、体重減少、脂肪細胞の低下がインスリン抵抗性の改善には最も重要である。
bariatric surgery による腸内細菌や血中代謝産物の変化は体重減少とは独立しており、その変化はメタボリック機能の大きな改善とは関連しない。

ランダマイズドトライアルではなく両群のconfounding difference を除外できないなどの制限がある。食事では長期の体重減少は困難なためbariatric surgeryの方が肥満のある2型糖尿病には効果的である。

empagliflozin による心血管、腎機能アウトカム EMPEROR-Reduced trial

empagliflozin は、心不全とEF40%未満で、糖尿病の有無にかかわらず、プライマーアウトカム(心血管死亡あるいは心不全による入院)を低下させた。さらにeGFRの低下をプラセボに比べ緩徐にする。

心不全 (functional class II, III, or IV)で駆出率 EF40%未満の3730人、半数に糖尿病がある。
プラセボかempagliflozin 10mg/day へ振り分け

16カ月のフオローアップ
プライマリーエンドポイント 心血管死亡あるいは心不全による入院 HR 0.75
心不全による入院 HR 0.7
心血管死 HR 0.92

eGFR の低下
empagliflozin        –0.55 ml per minute per 1.73 m2 per year
プラセボ     –2.28 ml per minute per 1.73 m2 per year

empagliflozin で Uncomplicated genital tract infection が多い

Packer M et al. Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure. August 29, 2020 DOI: 10.1056/NEJMoa2022190

小児でclosed-loopとSAPの比較試験

6歳から13歳の1型糖尿病で、Control-IQ Technology を搭載したt:slim X2 insulin pump による Closed-loop system of insulin delivery (closed-loop) と sensor-augmented insulin pump (SAP)の比較、16週間のトライアル、ターゲットレンジ(70-180mg/dl)に入る時間で比較した。

Control-IQ Technology はヴァージニア大学で開発されたソフトウェアアルゴリズムで、持続血糖モニターDexcom G6から転送されるデーターを使いインスリン量を決定する。

SAP群では使っていたインスポンプ、あるいは注射からの切り替えの場合、予測低グルコース濃度でインスリン注入中止機能をもつ t:slim X2 pump を使用する。両群とも、持続血糖値モニターDexcom G6を使いテストストリップによる血糖測定器、ケトン体測定器も貸与される。

ランダマイズされる前の14日のデータをベースラインとし16週後、ターゲットレンジに入る時間の割合は、Closed-loop で53%から67%、SAP で51%から55% へ変化し、Closed-loop で有意に大きい。群間差11%で1日あたり2.6時間に相当する。
70mg/dl 以下の時間は、Closed-loop 1.6%、SAP 1.8%

Breton MD et al. A Randomized Trial of Closed-Loop Control in Children with Type 1 Diabetes. N Engl J Med. 2020 Aug 27;383(9):836-845.

糖尿病患者でCOVID-19関連死亡のリスクファクター

イングランドで、2020年最初の19週間で死亡登録/週は、2017年から2019年死亡登録/週に比べ、1型糖尿病672人 (50.9%)、2型糖尿病16071人(64.3%) 増加していた。

2020年2月16日から5月11日までのイングランドNHSデータ
COVID-19関連死亡/総死亡  1型糖尿病289/474、2型糖尿病 5833/10525

1型糖尿病と2型糖尿病の死亡は、男性、高齢者、腎機能低下、非白人、社会経済的剥奪 (socioeconomic deprivation)、脳卒中と心不全の既往が死亡と関連していた。

A1C 6·5–7·0%に比べた死亡のハザード比 HR
A1C 10%以上 1型糖尿病 2.23、2型糖尿病1.61

2型糖尿病で
A1C 7·6%-8.9%. HR 1.22
A1C 9.0-9.9%. HR 1.36

1型糖尿病でBMIと死亡率は”U-shaped”となる。

Risk factors for COVID-19-related mortality in people with type 1 and type 2 diabetes in England: a population-based cohort study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Aug 13;S2213-8587(20)30271-0.

Sattar N, McInnes IB, McMurray JJV. Obesity is a risk factor for severe COVID-19 infection: multiple potential mechanisms. Circulation 2020; 142: 4–6.
肥満、ectopic fat がCOVID-19 重症化のリスクとなる原因を解説する図があります。
心呼吸器の代謝的予備能低下
・FEV1、FVC低下、横隔膜収縮能低下
・心腎ストレス、血圧上昇、易血栓性 thrombogenic potential、糖尿病発症

糖尿病とCOVID-19関連した入院での死亡

イングランドNHSデーター解析結果で1)、COVID-19に関連した入院での死亡ハザード比HRは糖尿病がない場合と比べ、
1型糖尿病 3.51、2型糖尿病 2.03
冠動脈疾患、脳血管疾患、心不全での入院歴で補正した場合
1型糖尿病 HR 2.86、2型糖尿病 1.8

COVID-19 流行前のデータ解析でも、1型糖尿病、2型糖尿病は感染症リスクが高いことが示されている。高血糖下では、顆粒球の機能が低下など免疫反応が傷害される。2)

1. Emma Barron et al. Associations of type 1 and type 2 diabetes with COVID-19-related mortality in England: a whole-population study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Aug 13;S2213-8587(20)30272-2. doi: 10.1016/S2213-8587(20)30272-2. Online ahead of print.

2. 
Carey IM, Critchley JA, DeWilde S, Harris T, Hosking FJ, Cook DG. Risk of infection in type 1 and type 2 diabetes compared with the general population: a matched cohort study. Diabetes Care 2018
“IRRs (estimate incidence rate ratios) for infection-related hospitalizations were 3.71 (95% CI 3.27–4.21) for T1DM and 1.88 (95% CI 1.83–1.92) for T2DM.”

2型糖尿病で肥満がCOVID-19による入院後7日以内の死亡・気管内挿管と関連 CORONADO study

フランスの53カ所、3月10日から31日に糖尿病がありCOVID-19 で入院した1317人、2型糖尿病88.5%、1型糖尿病3%を占める。プラプライマリーアウトカム、入院後7日では死亡あるいは呼吸器装着29%、死亡10.6%

2型糖尿病でCOVID-19により入院した患者では、肥満が気管内総管および7日以内の死亡と関連した。長期の血糖コントロールは関連しなかった。1型糖尿病では死者なし。

Cariou B et al. Phenotypic characteristics and prognosis of inpatients with COVID-19 and diabetes: the CORONADO study. Diabetologia 2020; published online May 29.

入院時の血糖値がCOVID-19の重症度に関連する

糖尿病歴はないが入院時血糖値140mg/dl以上群でCOVID-19による入院死亡率がたかい。入院時の血糖値が重症度に関連する。

イタリア、SARS-Cov2による入院患者271人
(NG)入院時の血糖値<140mg/dl 平均血糖値 108mg/dl (NG) N=149 55%
(DM) 2型糖尿病 平均血糖値 165mg/dl (DM) N=56 20.7%
(HG)糖尿病歴がなく血糖値 140mg/dl以上 平均血糖値 154mg/dl  N=66
 
Primary endpoint  病院内死亡、人工呼吸器装着、ICU入室 (Secondary endpoint  ARDS)
平均観察期間 16.8 +12.6 days (means SD)、67人(24.7%)が死亡
 
NG に対するUnadjusted HR
HG 2.2
DM 1.73
補正した結果、HGのみが死亡率に関連した独立した予測因子(independent predictor of mortality)となる。
 
糖尿病であったが診断されていなかったのか、新規発症糖尿病なのかは不明であるが、HGのHbA1CはDM群より低いので最近の高血糖である。
高血糖は、counterregulatory hormoneの上昇や、サイトカインストームの結果かもしれない。それらはインスリン抵抗性を惹起し免疫反応に負の影響を与える。
 
高血糖は尿中ACE活性やタンパク量を増加させる。ACE2はAnti-inflammatory な作用がある。高血糖によるACE2排泄増加がウイルスの毒性viral virulence を増加させているかもしれない。
膵β細胞、脂肪細胞、骨格筋などにACE2が発現している。SARS-CoV2 がグルコースホメオスタシスに関連する臓器に直接作用し高血糖や糖尿病の悪化の原因となる可能性がある。
 
Coppelli A et al. Hyperglycemia at Hospital Admission Is Associated With Severity of the Prognosis in Patients Hospitalized for COVID-19: The Pisa COVID-19 Study. Diabetes Care. 2020 Aug 11;dc201380. doi: 10.2337/dc20-1380. Online ahead of print.

メトフォルミンによる貧血

UKPDS など二つのrandomized controlled trial (RCT) と一つのreal-world study の解析で、貧血 (hemoglobin measure of <11 g/dL ) のハザード比 HR

ADOPT スルフオニルウレアと比較 メトフォルミン 1.93  チアゾリジン 4.18

UKPDS 食事療法と比較 メトフォルミン 3.4 スルフオニルウレア 0.96 インスリン 1.08

ADOPT メトフォルミンによる貧血は投与後6カ月までに認められ3年後まで悪化しない。
UKPDS 3年までに低下、6年、9年では全てのグループでヘモグロビンが低下しグループ間の差はない。
GoDARTS メトフォルミン 1g/day 服用は貧血リスクが2%/year 上昇する。

メトフォルミン服用初期の貧血の原因ははっきりしない。時間経過からビタミンB12欠乏のみでは説明できない。

Louise A. Donnelly et al. Risk of Anemia With Metformin Use in Type 2 Diabetes: A MASTERMIND Study. Diabetes Care 2020 Aug; dc201104

新型コロナウイルスとβ細胞

新型コロナウイルスによるβ細胞ダメージの可能が指摘されている。

「4月中旬ドイツの18歳学生が新型コロナウィルスに感染、数日後倦怠感と口渇がはじまり5月はじめ1型糖尿病と診断された。主治医は1型糖尿病の急性発症とウイルス感染の関連を指摘した。」1, 2)

COVID‐19が確定して、高血糖で新規発症糖尿病の診断をうけ、糖尿病の既往なく過去のヘモグロビンA1cは正常の患者登録プロジェクトが開始されている。(CoviDIAB Project)3)

中国では「COVID‐19が確定して入院した658人のうち発熱、下痢がない47人にケトーシスがあり。15/47 33%に糖尿病、糖尿病とケトーシスのある15人のうち3人がケトアシドーシスで死亡」と報告されている。4)

1型糖尿病の原因となるウイルスは、Coxsackievirus Bなどのエンテロウイルス、rotavirus、mumps virusなどが知られている。5)

ヒト多能性幹細胞 Human Pluripotent Stem Cell 由来の膵α細胞、β細胞、肝細胞と胆管細胞の小器官(オルガノイド)にACE2が発現し、SARS-CoV2が感染する。これらの細胞・器官はヒトCOVID-19 pulmonary autopsy samplesmと同様にCCL2、CXCL5、CXCL6などのケモカインを産生する。5)

1. Nature ダイジェストtwitter

2. Smriti Mallapaty. Mounting clues suggest the coronavirus might trigger diabetes. Nature. 2020 Jul.

3. New-Onset Diabetes in Covid-19

4. Juyi Li et al. COVID ‐19 infection may cause ketosis and ketoacidosis. Diabetes Obes Metab. 2020 Apr 20;10.1111/dom.14057. doi: 10.1111/dom.14057. Online ahead of print.

5 .Liuliu Yang et al. A Human Pluripotent Stem Cell-based Platform to Study SARS-CoV-2 Tropism and Model Virus Infection in Human Cells and Organoids. Cell Stem Cell. 2020 Jul 2;27(1):125-136.e7.

dulaglutide と認知機能

RIWIND はプラセボとdulaglutide の比較試験、ベースラインの認知機能試験に比べ 1·5 SD 以上の低下を ‘exploratory primary cognitive outcome’とした。

フォローアップ5.4年、dulaglutide では、HR 0.86 で認知機能低下 cognitive impairment が抑制された。

Cukierman-Yaffe T et al. Effect of dulaglutide on cognitive impairment in type 2 diabetes: an exploratory analysis of the REWIND trial. Lancet Neurol. 2020 Jul;19(7):582-590.

グルカゴンはグルカゴン受容体、GLP-1受容体を介してインスリン分泌を促進する。

グルカゴン受容体はGLPー1受容体の膜貫通領域と細胞外ドメインに相同性を持つ。
グルカゴンはGLPー1受容体を活性化するが、その効力 potency はGLP-1の10分の1である。1)

GLP-1はグルカゴン受容体をin vivoで活性しない。
Activity assay で、グルカゴン受容体に対するhalf-maximal effective concentration (EC50) の値は GLP-1で 2500 nmol/L、グルカゴンで 0.3 nmol/Lである。
GLP-1薬物療法 (~4-12 nmol/L)、肥満手術 bariatric surgery (100 pmol/L) は、in vivoでグルカゴン受容体を活性化するのには十分でない。1)

グルカゴンは、β細胞のグルカゴン受容体、GLP-1受容体の両方を介してインスリン分泌を促進する。グルカゴン受容体拮抗薬、GLP-1受容体拮抗薬、β細胞にそれぞれの受容体を発現しないマウスの結果から、グルカゴンによるインスリン分泌にはβ細胞のGLP-1受容体がより重要な役割をはたしている。2)
プログルカゴン由来産物を発現しない膵島では、グルコース、アミノ酸によるインスリン分泌が低下する。灌流実験でグルカゴン (~0.3-1 nmol/L) を補充した場合、グルコース応答性インスリン分泌が回復する。この濃度は、血中グルカゴン濃度より約30倍高い。1)

1.Finan B et al. Repositioning Glucagon Action in the Physiology and Pharmacology of Diabetes. Diabetes. 2020 Apr;69(4):532-541.

2. Capozzi ME et al. β Cell tone is defined by proglucagon peptides through cAMP signaling. JCI Insight. 2019;4(5):126

グルカゴンはグルコースよりアミノ酸の変化に強く反応する

グルカゴン作用を遺伝子的にブロックしたマウスでは、血糖値が低下するが必ずしも低血糖になりやすいわけではない。

グルコース10mmol/Lに比べグルコース2.7mmol/Lのグルカゴン濃度はマウス膵島で2.1倍、糖尿病ではない
ヒト膵島で3.6倍となる。

生理的濃度のアルギニンやグルタミン(0.5-1.0 mmol/L)では、グルコース10mmol/Lに比べグルカゴン濃度が10倍程度まで上昇する。

グルカゴンはグルコースよりアミノ酸の変化に反応しやすい。

Finan B et al. Repositioning Glucagon Action in the Physiology and Pharmacology of Diabetes. Diabetes. 2020 Apr;69(4):532-541.

妊娠糖尿病の血糖サンプルを扱う場合の注意

妊娠糖尿病の診断基準となる血糖値は2型糖尿病と比べて低い。室温に放置した採血サンプルは血糖値が低下するため、妊娠糖尿病と診断されない場合がある。

グルコースは全血のサンプルから室温で1時間に5-7%失われる。
“Glucose is lost from the whole blood sample at a rate of 5–7% per hour at room temperature.”1)

解糖を抑制するフッ化ナトリウムNaFを添加されていたとしても採血から2時間以上経過していれば不適切なサンプルとなる。
“Although sodium fluoride is intended to inhibit glycolysis, it is inadequate for the first 2 or more hours after collection.”1)

オーストラリア首都特別地域のスタディ、2015年1月から2017年5月まで妊娠糖尿病診断のための糖負荷試験でNaF入り採血管で採血し室温放置、負荷試験終了後遠心分離をおこなった。2017年6月から2018年10月、NaF入り採血管は採血後10分以内に遠心分離するプロトコールに変更した。
終了まで遠心しないサンプルの血糖値は、採血から10分以内に遠心したサンプルに比べ、空腹時、1時間値、2時間値とも有意に低い。

妊娠糖尿病診断の糖負荷試験のサンプルの遠心分離を負荷試験終了後から採血後10分以内に変えた結果、妊娠糖尿病の有病率が11.6%から20.6%へ増加した。2)

1. Sarah A L Price, Robert G Moses. Gestational Diabetes Mellitus and Glucose Sample Handling. Diabetes Care. 2020 Jul;43(7):1371-1372.

2. Julia M Potter et al. Strict Preanalytical Oral Glucose Tolerance Test Blood Sample Handling Is Essential for Diagnosing Gestational Diabetes Mellitus. Diabetes Care. 2020 Jul;43(7):1438-1441.

成熟していない膵内分泌前駆細胞を糖尿病マウスに移植する際に、インスリンで血糖値を低下させない方が移植細胞からインスリンが分泌される。

成熟していない膵内分泌前駆細胞を糖尿病マウスに移植する際に、インスリンで血糖値を低下させない方が移植細胞からインスリンが分泌される。

まとめ
京都大学iPS 細胞研究所 (CiRA)から入手したヒトiPS細胞を16から17日かけ、5つのステップで内分泌前駆細胞へ分化させる。Stage4では膵内胚葉マーカーであるPDX-1とNKX6.1が陽性、stage5では、内分泌/内分泌前駆細胞 (EPC)マーカーchromogranin Aが陽性になる。
iPS細胞から誘導したEPCをストレプトゾトシン(STZ)で糖尿病を誘導したNOD/SCIDマウスの腎皮膜下に移植した。糖尿病マウスの血糖値は12週に低下、18週に正常化し、ヒトCペプチドの分泌が認められた。インスリン依存性の糖尿病を発症するAkita マウスへの移植でも血糖値を改善させヒトCペプチドが認められる。

インスリンでSTZによる糖尿病マウスの血糖値を低下させた場合、ヒトCペプチドの分泌は、STZ投与しない正常血糖マウスと変わらない。
SGLT2阻害薬の投与で血糖値を低下させた場合、ヒトCペプチドはSGLT2阻害薬がない場合と同様に分泌され、STZ投与しない正常血糖マウスより有意に多く分泌される。

Mochida T et al. Insulin-Deficient Diabetic Condition Upregulates the Insulin-Secreting Capacity of Human Induced Pluripotent Stem Cell–Derived Pancreatic Endocrine Progenitor Cells After Implantation in Mice. Diabetes. 2020 Apr;69(4):634-646.

リキセナチドは膵切除後の糖尿病患者の食後血糖を抑制する。

リキセナチドは膵切除後の二次性糖尿病患者の食後血糖値を抑制する。胃排出の減速と食後のgut-derived glucagon の減少が関与している。

膵全摘後患者12人、コントロール12人、クロスオーバースタディ、膵全摘患者では、前日まで通常通りインスリンをうち、当日はインスリンを打たない。30分前リキセナチド20μg あるいはプラセボの1回注射の後、200 mlの液状の食事を摂取する。

リキセナチド投与後、膵全摘後患者では、プラセボに比べ、ピークの血糖値が低く、Gastric emptying 、グルカゴン反応が減少している。Cペプチドはほぼ測定感度以下、2例で低い反応を認めた。

腸管のL細胞では、prohormone convertase (PC) 1/3によりプログルカゴン からGLP-1が生成される。膵島のα細胞ではPC2によりプログルカゴンからグルカゴンが産生される。PC2の発現はα細胞に限定的とされてきた。

膵全摘後の糖尿病患者から分泌されるグルカゴンは腸管のL細胞由来であると考えられる。L細胞にもPC2が発現するか、PC1/3がプログルカゴンを特有の部位と異なる部位で分割し (unspecific procession) グルカゴンを産生しているという二つの可能性があり、後者の方がより説明しやすいかもしれない。膵蔵を摘出するWhipple’s procedure では、胃と空腸が吻合されている。小腸のL細胞では食後に強力な刺激を受け、PC1/3によりグルカゴンが産生されると考えられる。

膵全摘患者で、リキセナチドによる膵外のグルカゴン分泌に対する直接作用は除外されていない。

Juel CTB et al. The GLP-1 receptor agonist lixisenatide reduces postprandial glucose in patients with diabetes secondary to total pancreatectomy: a randomised, placebo-controlled, double-blinded crossover trialDiabetologia. 2020 May 11. doi: 10.1007/s00125-020-05158-9. Online ahead of print.

Jorsal T et al. Enteroendocrine K and L Cells in Healthy and Type 2 Diabetic Individuals. Diabetologia. 2018 Feb;61(2):284-294.
PC2をコードするPCSK2 mRNAとPC2陽性細胞の発現が腸管全体に認められる。

SARS-CoV-2 PCR陽性で無症状の場合、大部分は無症状のまま経過する。

ダイヤモンドプリンセス号で、無症状なSARS-CoV-2 PCR 検査陽性者96人のうち、11人で最初のPCR検査から平均4日以内で症状が発現した。発症までの期間からこの11人は、無症状asymptomatic というより発症前presymptomatic であった。

同室者32人は船内でPCR陰性、そのうち8人は入院後72時間以内にPCR陽性となったが症状は依然として認められなかった。

大部分の無症状でPCR検査陽性者は、感染の全期間、無症状のまま経過する。

Sakurai A et al. Natural History of Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection June 12, 2020 DOI: 10.1056/NEJMc2013020

検査後確率と検査キットの感度

検査後確率は、Bay’s theoremにより検査前確率、検査の感度、特異度から算出される。

感度 Sensitivity 95% のキットでは、感染者の95%を陽性と判定できる。
RT-PCRキットの感度の算出に、症状のある患者から取られた陽性と分かっているサンプルや、ウイルスのRNAや不活化されたウイルスを臨床検体に混ぜたサンプルが使われる。
実際には、感染したぬぐい液サンプルをうまくとれない可能性もある。陽性サンプルを使って示されたキットの感度は過大評価されている。

検査前確率 pretest probabilityは地域の罹患率、ウイルスに対する暴露履歴、症状などで決定される。
ホットスポットに行き、症状がある場合、検査前確率を50%として妥当である。Social distance は検査前確率を低下させる。

検査後確率 Post-Test probability が5%であれば、感染していないと判断でき、例えば高齢の祖母に会いにいくことも可能である。

Sensitivity 70% specificity 95%のキットでは、検査前確率0から15%の時、検査陰性で検査後確率が5%未満となる。
Sensitivity 90% specificity 95%のキットでは、検査前確率0から33%の時、検査陰性で検査後確率は5%まで低下する。

sensitivity70%s pecificity 95%のキットで検査前確率50%では、陰性でも検査後確率は23%で高く感染していないとは言えない。
sensitivity90% specificity 95%のキットで、検査前確率が33%より高い場合 、陰性でも検査後確率が5%まで低下しない。その結果は false negative の可能性が高く、臨床医は陰性の結果を信じてはいけない、

Steven Woloshin, Neeraj Patel, Aaron S Kesselheim False Negative Tests for SARS-CoV-2 Infection - Challenges and Implications. N Engl J Med 2020 Jun 5. doi: 10.1056/NEJMp2015897. Online ahead of print.

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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