FGF1の脳室内注入は糖尿病マウスの血糖値を長期的に改善させる。

 FGF1の脳室内1回投与は、ob/ob マウスの血糖値を7週間後に200mg/dl未満に改善させ、17週間効果が続いた。
糖尿病寛解と判断し18週間後に試験終了。他の糖尿病モデル動物でもFGF1脳室内投与により糖尿病が寛解した。

FGF1を脳室内投与したマウスの血中乳酸値は増加しており、肝臓で解糖系は亢進している。肝臓のグリコーゲン含量は増加している。
血糖値の改善には、肝臓のほか、骨格筋の糖取り込み上昇によるグルコースクリアランス増加が関与している。

Tanycyte は、神経幹細胞と考えられ、mediobasal hypothalamus に隣接して存在する。
FGF1は、Tanycyte を介して糖尿病状態の神経回路を補充することにより、一回の脳室内投与で糖尿病を寛解させた。

Scarlett JM et al. Central injection of fibroblast growth factor 1 induces sustained remission of diabetic hyperglycemia in rodents. Nat Med. 2016 May 23. doi: 10.1038/nm.4101.

Seeley RJ, Sandoval DA. Targeting the brain as a cure for type 2 diabetes Nat Med. 2016 Jul 7;22(7):709-11. doi: 10.1038/nm.4137.


妊婦に対する人工膵臓の使用

人工膵臓は妊娠中に使用した場合でも、厳格な血糖コントロールが可能で、低血糖も少ない。周産期も同じプログラムで対応できる。

まとめ
1型糖尿病の妊婦16人、人工膵臓 (closed-loop system) とsensor augmented pump を夜間のみ使用の後、終日 4週間使用するクロスオーバースタディ、設定された血糖値に入る時間、平均血糖値、低血糖頻度で、人工膵臓の方が良い結果を示した。
人工膵臓、sensor augmented pump ともに、第三者の助けを必要とするような重症低血糖はない。

スタディ終了後、14人が出産まで終日 の 人工膵臓を使った。(14.6 additional weeks)
出産後のインスリン必要量の低下、胎児の肺の成熟のため母体へのステロイド投与に対しても、プログラムの変更や重症低血糖なく対応できている。良好な血糖コントロールであったが、新生児体重が 90th percentileを超える頻度、新生児低血糖の頻度は高かった。

Stewart ZA et al. Closed-Loop Insulin Delivery during Pregnancy in Women with Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2016 Aug 18;375(7):644-54.

SGLT2阻害薬とケトン体 2

 EMPA-REG で認めた死亡率低下の要因で、血中ケトン体が心保護作用を示すかについては、ケトン体酸化のデータを必要する。(Cell metabolism)

まとめ
酸素一原子あたりATP産生率で、β-hydroxybutyrate (βOHB) は脂肪酸より良いが、グルコースより低い。(グルコース > βOHB > 脂肪酸)
グルコース、βOHB、脂肪酸はすべて、TCAサイクルの Acetyl CoA と競合する。
βOHBの利用が増加した場合、グルコースの利用が低下し、cardiac efficacy は低下はずである。
SGLT2阻害薬を服用した2型糖尿病患者で、心筋でのケトン体利用がエネルギー効率を改善させるかどうかは、ケトン体酸化のデータを必要する。

βOHBが、ヒストン脱アセチル化酵素 (histone deacetylase (HDAC)) を阻害し、酸化ストレス低下させる。酸化ストレスの改善は、cardiac hypertrophy signaling を低下させる。

Lopaschuk GD, Verma S. Empagliflozin's Fuel Hypothesis: Not so Soon. Cell Metab. 2016 Aug 9;24(2):200-2. doi: 10.1016/j.cmet.2016.07.018.
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(16)30364-3

Shimizu T et al. Suppression of oxidative stress by β-hydroxybutyrate, an endogenous histone deacetylase inhibitor. Science. 2013 Jan 11;339(6116):211-4.
βOHBは、histone deacetylase を阻害し、oxidative stress resistant factor FOXO3A and MT2の転写活性を調節する。
βOHBを投与したマウスの腎臓で酸化ストレスが低下する。

ハブとなるβ細胞

グルコースに対する膵島の反応は、1-10%のβ細胞が、ハブとなりペースメーカーの役割を果たしている。
gap junction 阻害薬処置で、ハブ細胞の検出数は低下する。

ハブ細胞は、未分化と成熟の両面をもつ
他の細胞に比べ、インスリン含量、PDX-1、Nkx6.1の発現は低下している。Ngn3 の発現は認めず、グルカゴンとは共染色しない。
グルコキナーゼの発現は増加している。ミトコンドリアタンパク Tomm20は他の細胞と同等の発現。
グルコキナーゼ発現が増加しているため、周囲の細胞に比べ、グルコース上昇に対し敏感であるかもしれない。

糖尿病に類似した サイトカインによる proinflammatory な環境や、gluco(lipo)toxicity な環境でハブ細胞数は短期間に減少する。
gap junction マーカーconnexin-36の発現も低下する。

ハブ細胞の電気的興奮の伝播には、gap junctionに加え、膵島内の自律神経も関与している。

Johnston NR et al. Beta Cell Hubs Dictate Pancreatic Islet Responses to Glucose Cell Metab. 2016 Jul 21. pii: S1550-4131(16)30306-0. doi: 10.1016/j.cmet.2016.06.020. [Epub ahead of print]

p16はミトコンドリア生合成を増加させ、インスリン分泌を増強する

 p16はcyclin D、cyclin dependent kinase を抑制し、CDKN2A locus にコードされる。
CDKN2A のgenetic polymorphism は2型糖尿病との関連が指摘されている。

膵島におけるp16の発現は年齢とともに増加する。

β細胞にp16を発現させたマウスでは、膵島が大きく、グルコース刺激によるインスリン分泌とインスリン含有量が多い。

p16を強発現させたβ細胞で、ミトコンドリア数が増加、Peroxisome proliferative-activated receptor gamma coactivator 1 α (PGC1α) の発現量が増加している。PGC1α は、ミトコンドリアの生合成の master transcription factor として知られている。

p16によるインスリン分泌増加、ミトコンドリア活性化には、mechanistic target of rapamycin (mTOR)、Peroxisome proliferative-activated receptor(PPAR)-γが関与している。

Herman A et al. p16(Ink4a)-induced senescence of pancreatic beta cells enhances insulin secretion. Nat Med. 2016 Apr;22(4):412-20.
プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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