エンバグリフロジンは高血糖下の心筋細胞内ナトリウム濃度を低下させる。

心筋にSGLT2 は発現しないが、SGLT1が発現している。
高血糖や心不全で心筋細胞質ナトリウム濃度 [Na+]c、カルシウム濃度[Ca2+]cが上昇し、ミトコンドリアカルシウム濃度[Ca2+]mが低下する。
[Na+]cの上昇は、Na+/Ca2+ exchanger (NCX)を介して[Ca2+]cを上昇させ、[Ca2+]mを低下させる。

エンバグリフロジンは、心筋培養細胞で、高血糖下の [Na+]c、[Ca2+]c を低下させ、[Ca2+]mを上昇させる。
心筋にSGLT2が発現しないこと、Na+/H+ exchanger (NHC) 阻害薬 cariporide をエンパグリフロジンの前後で添加した場合、[Na+]c 低下作用がほとんど認められないことから、エンパグリフロジンがNHCに作用していると考えられる。

ミトコンドリアのカルシウム上昇はATP合成を促進する。
エンパグリフロジンは、ミトコンドリア生合成増加により心筋のATP産生を増加させ、心保護作用を示す可能性がある。

Vettor R et al. The cardiovascular benefits of empagliflozin: SGLT2-dependent and -independent effects. Diabetologia. 2017 Jan 11. doi: 10.1007/s00125-016-4194-y. [Epub ahead of print]

Baartscheer A et al. Empagliflozin decreases myocardial cytoplasmic Na+ through inhibition of the cardiac Na+/H+ exchanger in rats and rabbits Diabetologia. 2016 Oct 17. [Epub ahead of print]

リブレ Libre は、血糖値70mg/dlの時間を減少させる。

リブレ(Libre) は、皮膚に挿入したセンサーにかざすだけで血糖値をモニターできる。(flash sensor-based monitoring)
1型糖尿病、
A1C 7.5% 未満、リブレ 120人、SMBG 121人、6ヶ月の使用の比較、プライマリーアウトカムは血糖値70mg/dl 未満の時間とした。全例がリブレをマスクモードで14日間使用しベースラインデータとする。

ランダマイズ後、リブレ群は血糖値データーを見ることができる。希望があればデバイスソフトウエアを使って自宅で血糖値レビューを行う。コントロール群はマスクモードのままSMBGを行う。

血糖値 70mg/dl 未満の時間
Libre 3.38 h/day → 2.03 h/ day (38% 減少)
SMBG 3.44 h/day → 3.27 h/day

リブレ群では1日あたり、血糖値を15.1回見ており、SMBG群では5.6回測定している。
終了時のインスリン使用量、basal/bolus insulin ratio、HbA1Cは両群で差はない。
血糖コントロールの良い1型糖尿病でリブレは血糖値70mg/dlの時間を減少させた。

Bolinder J et al. Novel glucose-sensing technology and hypoglycaemia in type 1 diabetes: a multicentre, non-masked, randomised controlled trial. Lancet. 2016 Nov 5;388(10057):2254-2263. 

血中グルカゴン値は糖負荷試験の状態、インスリン抵抗性と相関する。

 糖尿病では糖負荷試験で 0分から30分のグルカゴン抑制が認められない。
一方30分から120分では正常耐糖能に比べ強くグルカゴン抑制がかかる。
境界型では正常耐糖能に比べ、0分、30分のグルカゴン値が12-22% 高値となる。

インスリン感受性指数と空腹時グルカゴン値は非線形相関となる。
インスリン感受性指数の悪化とともに空腹時グルカゴン値は指数関数的に増加する。

グルカゴン分泌は複雑で、autocrine 、paracrine、ホルモン、自律神経により制御されている。
糖負荷試験30分から120分でGLP-1が上昇する。GLP-1の上昇は30分から120分のグルカゴン抑制に寄与する。
0分から30分のグルカゴン抑制は多くの要因が絡んでおり十分に解明されていない。

Færch K et al. Insulin Resistance Is Accompanied by Increased Fasting Glucagon and Delayed Glucagon Suppression in Individuals With Normal and Impaired Glucose Regulation. Diabetes. 2016 Nov;65(11):3473-3481. Epub 2016 Aug 8.

血糖コントロールの良い1型糖尿病でも、Closed-loop system は血糖値がターゲットレンジに入る時間を長くする。

 ケンブリッジ大のグループ、コントロールの良い1型糖尿病患でも、Closed-loop system は従来型のポンプに比べ、血糖値がターゲットレンジに入る時間が長くなる。

まとめ
1型糖尿病29人、A1C 7.5%未満、Closed-loop system と従来型のポンプの4週間のクロスオーバースタディ、腎症、神経障害、増殖性網膜症、総インスリン量が2U/kgを超える人は除外する。

Closed-loopでは、従来型ポンプに比べ、target range に入る時間が10.5% 長くなり、低血糖の時間が少ない。
特に夜間で血糖値63 mg/dl (3.5 mmol/l) 未満となる血糖面積を89%減少させた。

Day-and-night glycaemic control with closed-loop insulin delivery versus conventional insulin pump therapy in free-living adults with well controlled type 1 diabetes: an open-label, randomised, crossover study

メトフォルミン不耐性とOCT1、SERT

 メフォルミンの消化器症状は、腸管でのメトフォルミンの濃度上昇、メフォルミンによるセロトニンの取り込み抑制などが原因とされている。

メトフォルミン不耐性164人とメトフォルミン服用可能な1356人の比較で、Organic transporter 1(OCT1) 機能低下型アリルを2つ持つ場合、メトフォルミン不耐性のオッズ比 2.7となる

メトフォルミンは、Serotonin reuptake transporter (SERT) を介してセロトニンの取り込みを抑制する。
SERT遺伝子はLong (L) allele、Short (S) alleleがあり、S allele ではSERT 発現が低下する。
single nucleotide polymorphism (SNP) rs 25531 A>G は、SERT発現を調節している。LGはLAに比べSERT発現が低下する。
S alleleでは、メトフォルミン不耐性のオッズ比1.3
L*L*(LALA) で、OCT-1機能低下型アリルを2つ持つ場合、メトフォルミン不耐性オッズ比は9.25となる。
L*S* (LALG, LAS)では影響が少なく、 S*S* (SS, SLG, LGLG) では影響しない。
OCT-1機能低下型アリルを2つ持つ場合、S alleleは逆にメトフォルミン不耐性に対して保護的効果を示す。
S alleleでは、セロトニン濃度が上昇するため、受容体の感度低下(desensitization) が起こるためと考えられる。

腸管のメトフォルミンの取り込みでOCT-1が主要な役割を果たしているため、OCT-1の機能低下がメトフォルミン不耐性のリクス上昇が大きいと推測される。

Dujic T et al. Effect of Serotonin Transporter 5-HTTLPR Polymorphism on Gastrointestinal Intolerance to Metformin: A GoDARTS Study. Diabetes Care. 2016 Nov;39(11):1896-1901. Epub 2016 Aug 4.

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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