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グルカゴン分泌抑制におけるソマトスタチンの役割

α細胞のグルカゴン分泌は、グルコース1mmol/LでソマトスタチンやKATP channel に依存せず抑制される。
KATP channel blocker スルフォニルウレアは、α細胞でグルカゴン分泌を促進し、δ細胞でソマトスタチン分泌を促進する。

まとめ
単離膵島あるいは膵灌流実験で、グルコースはグルカゴン分泌を抑制する。
・グルコース1mmol/L に比べグルコース濃度7 mmol/Lでは、コントロールマウス、Sst-/-、pertussis toxin treatment、Kir6.2-/-マウスでグルカゴン分泌は抑制される。低グルコース濃度(0-7 mmol/L)で、グルコースはソマトスタチン、KATP channel 非依存性にグルカゴン分泌を抑制している。
・高グルコース濃度で、グルコースはソマトスタチン分泌を促進する。ソマトスタチンはα細胞のソマトスタチン受容体(SSTR2、SSTR3)に結合し、グルカゴン分泌を抑制する。

KATP channel blocker スルフォニルウレア は二つのメカニズムでグルカゴン分泌をコントロールしている。
低グルコース濃度での単離膵島あるいは灌流膵臓実験で
・パラクラインの影響がない場合(pertussis toxin treatment、Sst-/-マウス)、スルフォニルウレアはα細胞のKATP channel を抑制しグルカゴン分泌を促進する。
・スルフォニルウレアはδ細胞のKATP channel を抑制しソマトスタチン分泌を促進する。その結果グルカゴン分泌は抑制される。
グルカゴン分泌量は直接的は分泌促進作用と間接的な抑制作用のバランスで決定される。
スルフォニルウレアによるグルカゴン分泌抑制にはソマトスタチンが必須である。

Lai BK et al. Somatostatin Is Only Partly Required for the Glucagonostatic Effect of Glucose but Is Necessary for the Glucagonostatic Effect of KATP Channel Blockers. Diabetes. 2018 Nov;67(11):2239-2253.

1型糖尿病でフラッシュモニタリングによりベースラインのA1Cが高いほどA1C が減少する

1型糖尿病900人、前向き観察研究、1日6回はフラッシュモニタリングをおこない、フラッシュモニタリングの教育セッションに参加するなどの条件を満たす人、フォローアップ248日、フラッシュモニタリングの使用では、ベースラインのA1Cが高いほどA1Cの減少が大きい。

Tyndall V et al. Marked improvement in HbA1c following commencement of flash glucose monitoring in people with type 1 diabetes. Diabetologia. 2019 Aug;62(8):1349-1356.

罹病歴の長い1型糖尿病患者におけるインスリン陽性細胞

罹病歴の長い1型糖尿病患者の膵臓には、β細胞が残存している。ジョスリンメダリストでは、剖検された68例全てにインスリン陽性のβ細胞が認められている。β細胞細胞の残存のメカニズムが考えられている。1)

残存するβ細胞のソースは以下の3つのメカニズムが考えられる。2)
・自己免疫システムの視点から
1型糖尿病ではエフェクターT細胞の増強 (expanded effector T cells)と制御性T細胞(Treg)の機能異常が認められる。エフェクターT細胞と制御性T細胞のバランスが変化している。

・β細胞の生存
β細胞のあるサブセットは、”sleeping” あるいは”dedifferentiated” なβ細胞となり自己免疫の攻撃をのがれている。3)

・β細胞の生成
-β細胞のreplication
-膵管/腺房細胞、他の膵内分泌細胞からのtransdifferentiation
-前駆細胞からのneogenesis

1型糖尿病患者で、Cペプチドが感度以下であってもproinsulinが分泌されている。残存したβ細胞ではホルモン産生は開始されるが成熟したインスリン、Cペプチドを分泌できないのかもしれない。4)

β細胞は不均一heterogeneous である。5)

1.Yu MG et al. Residual β cell function and monogenic variants in long-duration type 1 diabetes patients J Clin Invest. 2019 Jul 2;130.

2.Oram RA, et al. Beta cells in type 1 diabetes: mass and function; sleeping or dead? Diabetologia. 2019.

3.Rui J et al. β Cells that Resist Immunological Attack Develop during Progression of Autoimmune Diabetes in NOD Mice. Cell Metab. 2017 Mar 7;25(3):727-738.

4.Sims EK et al. Proinsulin Secretion Is a Persistent Feature of Type 1 Diabetes. Diabetes Care. 2019 Feb;42(2):258-264.

5.Dorrell C et al. Human islets contain four distinct subtypes of β cells. Nat Commun. 2016 Jul 11;7:11756.
β細胞は表面抗原CD9とST8SIA1によりβ1から4の4種類に分類され、β1(CD9-ST8SIA1-)で最もグルコース応答性インスリン分泌が良好であった。

β細胞は特有の分子の遺伝子発現を低下させ免疫的攻撃から逃れている

ジョスリンメダリストのインスリン分泌、遺伝子検索

50年以上インスリン注射をおこなった1型糖尿病のJoslin medalist 1019人の解析結果、膵島関連自己抗体の陽性率は、抗GAD抗体28.1%、抗IA2 抗体22%、抗GAD抗体あるいは抗IA2 抗体43.6%、検出可能なCペプチドレベル(0.05 ng/ml以上)を認めたののは32.4%で、その平均値0.21 ng/mlであった。

食事負荷テストでは、5.8% (30/516)で、Cペプチドがベースラインの2倍以上となり反応を認めた。レスポンダーはノンレスポンダー比べ、年齢および診断年齢が高く、ベースラインCペプチド値が高い。また膵島関連自己抗体陽性率と中性脂肪値が低い。

アルギニンArginine は膜の脱分極 membrane depolarization でインスリンを分泌する。血糖値を300mg/dlにクランプし、45分以内にアルギニン5g注入をおこなった。食事負荷でインスリンは分泌されないが、アルギニン刺激で分泌されるメダリストも認められる。HLAリスクアリルおよび膵島関連自己抗体を持つ場合(HLA+/AAb+)、アルギニン刺激によるインスリン分泌を認めない割合が高い。

Monogenic diabetes variant が 280人 (27.5%)に認められる。病因となるvariantを持つのは 80 人(7.9%) であった。(MODY 1, 3, 4, 8, 10, 11, 14, GLUT2 defect, Wolfram syndromeなど)

死亡後に膵臓の解剖をおこなった68人のメダリスト全員にインスリン陽性細胞を認めた。

Yu MG et al. Residual β cell function and monogenic variants in long-duration type 1 diabetes patients J Clin Invest. 2019 Jul 2;130.

DECLARE-TIMI 58 腎アウトカム

DECLARE-TIMI 58は、ダパグリフロジン10 mgとプラセボの比較、心血管疾患の既往あるいは複数のリスクファクターを持ちクレアチニンクリアランス60ml/min以上の2型糖尿病患者17160人、4.2年のフォローアップ

心腎複合アウトカムは、eGFR60 ml/min/1.73m2未満でeGFR40%低下、end-stage renal disease (90日以上の透析、腎移植、eGFR <15 ml/min/1.73 m2)、心血管あるいは腎疾患による死亡、腎アウトカムは、心腎複合アウトカムから心血管疾患による死亡を除く。

腎アウトカムのハザード比は0.53、
eGFR60 ml/min/1.73m2未満でeGFR40%低下 0.54
end-stage renal diseaseと腎疾患による死亡 0.41

最初の6ヶ月、ダパグリフロジンでeGFR低下が大きいが、2年までにプラセボと同等になり3年から4年はダパグリフロジンの方がeGFRの低下が少ない。eGFRのサブグループにかかわらず同様の傾向を認めた。

参加者の平均eGFR は、85.2 ml/min/1.73m2で、eGFR 60ml/min/1.73 m2未満のサブグループは、1265人(7.4%) で平均eGFR 51.4 ml/min/1.73m2であった。

eGFR60 ml/min/1.73m2未満で40%のeGFRの低下のアウトカムでは、eGFR60 ml/min/1.73m2のサブグループでプラセボとダパグリフロジンの有意差はつかないが、small group であるためかもしれない。

SGLT2阻害薬は輸入細動脈を収縮させ、ACE阻害薬、ARBは輸出細動脈を拡張させるので、SGLT2阻害薬とACE阻害薬、ARBの併用は腎の血行動態に有用である。

Mosenzon O et al. Effects of dapagliflozin on development and progression of kidney disease in patients with type 2 diabetes: an analysis from the DECLARE-TIMI 58 randomised trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2019.

ロタウイルスワクチンの完全摂取は1型糖尿病の発症率を低下させる。

2001から2007年、登録時1歳未満、1,474,535人、ロタウイルスワクチン接種と1型糖尿病の関連を検討した。

2006年に導入されたpentavalent RotaTeqは、2、4、6ヶ月時の3回接種
2008年に導入されたmonovalent Rotarix は、2、4ヶ月の2回接種

ワクチン接種を完全におこなった場合、未接種に比べ1型糖尿病の発症リスクは31%低下する。
pentavalent RotaTeq の完全接種では、発症リスクは37%低下する。
ワクチン接種が完全でない場合partial vaccination は1型糖尿病発症に影響しない。

アメリカでは2006年から2017年の期間、0から4歳の1型糖尿病の1年あたりの発症率は3.4%減少した。これは2006年から導入されたロタウイルスワクチンの影響と考えられる。


Rogers MAM et al. Lower Incidence Rate of Type 1 Diabetes after Receipt of the Rotavirus Vaccine in the United States, 2001-2017. Sci Rep. 2019 Jun 13;9(1):7727. doi: 10.1038/s41598-019-44193-4

抗CD3モノクローナル抗体 teplizumab は1型糖尿病の発症を遅延させる。

二つ以上の膵島自己抗体陽性で耐糖能異常のある1型糖尿病患者の血縁者に対して抗CD3モノクローナル抗体teplizumab の14日間の投与と行なった。teplizumab は、1型糖尿病の発症を遅延させた。teplizumab は、T細胞のサブセットを変化させT細胞の反応を抑制する。

対象
8歳以上、1型糖尿病の血縁者、
・二つ以上の膵島関連自己抗体を有している。
・空腹時血糖値110から125 mg/dl 糖負荷試験2時間血糖値144から200 mg/dl 未満あるいは30、60、90分で200 mg/dl以上

18歳以下、糖負荷試験1ポイント以上の異常を対象にした場合、糖負荷試験結果の有無では、1型糖尿病発症に差がなかったため、2014年にプロトコールが変更された。
teplizumabあるいはプラセボを14日間外来で投与後、6ヶ月ごとに糖負荷試験をおこなう。

42人が1型糖尿病を発症、teplizumab 19/44 43%、プラセボ23/32 72% 、1型糖尿病発症まで、teplizumabは48.8ヶ月、プラセボは24.4ヶ月であった。

ZnT8抗体陰性、HLA-DR3をもたずHLA-DR4を有している人、糖負荷試験のCPRが平均より低い人に1型糖尿病発症遅延効果を示した。

teplizumab 投与後、T-cell unresponsiveness に関与する CD+8 T cell subset (TIGIT+KLRG1+EOMES+ CD8+ T cells) が増加する。

teplizumabによるリンパ球減少は第45日目までに改善する。

抗CD3モノクローナル抗体 は、Epstein–Barr virus (EBV) の再活性化をおこすことが知られている。EBV抗体陽性は30人(teplizumab 16人、プラセボ14人)、EBV DNAは、teplizumab群の8例で陽性となった。そのうち1例はDay38に咽頭炎と鼻汁があり、Day43から134の間にEBV DNAは測定感度以下になった。
サイトメガロウイルス抗体は、エントリ時に、teplizumab10人、プラセボ7人で陽性、teplizumab 投与後、1例でサイトメガロウイルス DNAがDay22で測定可能になりDay42で感度以下となった。

Herold KC et al. An Anti-CD3 Antibody, Teplizumab, in Relatives at Risk for Type 1 Diabetes. N Engl J Med. 2019 Jun 9. doi: 10.1056/NEJMoa1902226. [Epub ahead of print]

Steno-2 Study 21年後 脳卒中のリスクは低下している

Steno-2 Studyはミクロアルブミン尿のある2型糖尿病患者を強化療法80人、従来療法80人に分け治療を開始した。
1992から1993年にランダマイズド開始、治療期間7.8年、13.4年のフォローアップ、治療開始から合計21年後
プライマリーエンドポイントは 脳卒中の発症で、強化療法群のハザード比 0.31
ミクロアルブミン尿のある2型糖尿病患者に対する強化療法は脳卒中のリスクを低下させる。

Gæde P et al. Beneficial impact of intensified multifactorial intervention on risk of stroke: outcome of 21 years of follow-up in the randomised Steno-2 Study. Diabetologia. 2019 Jun 1. doi: 10.1007/s00125-019-4920-3. [Epub ahead of print]

Gaede P et al. Multifactorial intervention and cardiovascular disease in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med. 2003 Jan 30;348(5):383-93.

経口セマグルチド週1回と心血管イベントリスク PIONEER 6

PIONEER 6試験は経口セマグルチド週1回服用とプラセボの比較試験、経口セマグルチド週1回がプラセボに比べ心血管リスクを増加させることがないかを検証するためにデザインされた。

2型糖尿病、50歳以上で心血管疾患あるいは慢性腎臓病患者、60歳以上で心血管疾患のリスクファクターのみを持つ3183人、プライマリーアウトカムは主要心血管イベント(心血管死、非致死性心血管梗塞、非致死性脳卒中)、期間の中央値15.9ヶ月

HR
主要心血管イベント 0.79
心血管死 0.49
非致死性心筋梗塞. 1.19
非致死性脳卒中 0.74

全死亡 0.51

ベースラインからの変化
プラセボvs. 経口セマグルチド
A1C -1.0 vs. -3.0 %
体重. -0.8 vs. -4.2 kg

プラセボに比べ経口セマグルチドでは消化器症状による薬の中止が多かった。
消化器症状による中止
経口セマグルチド 6.8%
プラセボ 1.6%

Husain M et al.Oral Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2019 Jun 11. doi: 10.1056/NEJMoa1901118. [Epub ahead of print]

dulaglutideは尿アルブミンを低下させる REWIND

REWIND は、dulaglutide (1·5 mg) とプラセボの比較、フォローアップ5.4年、主要心血管アウトカムはdulaglutide HR 0.88 p=0.026 有意に低下した。セカンダリーアウトカムは微小血管症で、そのうち腎症の複合アウトカムは、マクロアルブミン尿の出現(UACR >300 mg/gCre)、ベースラインからeGFR 30% 以上低下、腎代替療法とされた。dulaglutide は、腎複合アウトカムを有意に低下させた。HR 0·85, p=0·0004

マクロアルブミン尿の出現 HR 0.77 p<0.0001
ベースラインからeGFR 30%以上低下 HR 0.89 p=0.67
腎代替療法 chronic renal replacement therapy 0.75 p=0.39

dulaglutideは、eGFR 30%以上低下の有意な抑制を示せなかった。eGFR 40%以上低下 HR 0.70 p=0.0004、eGFR 50%以上低下 HR 0.56 p=0.0002という結果があり、dulaglutide が腎機能の維持に働いている可能性はある。

腎保護作用は血糖値改善、血圧低下だけではなく、炎症の改善、酸化ストレスの軽減、血管内皮機能の維持による。アルブミン尿の減少は、腎臓の血管内皮細胞への直接作用を反映しているかもしれない。

Gerstein HC et al. Dulaglutide and renal outcomes in type 2 diabetes: an exploratory analysis of the REWIND randomised, placebo-controlled trial. Lancet. 2019 Jun 7.

Verma S, Mazer CD, Perkovic V. Is it time to REWIND the cardiorenal clock in diabetes? Lancet. 2019 Jun 7.


dulaglutide と心血管アウトカム REWIND

dulaglutide (1·5 mg) とプラセボの比較、フォローアップ5.4年、主要心血管アウトカムはdulaglutide HR 0.88 p=0.026 有意に低下、全死亡 は、HR 0.9 有意差なし。

ベースラインのA1C7.2%、罹病歴9.5年、
期間中のA1C、体重、収縮期血圧、心拍数の差 (overall least-square means difference)
A1C -0.61%
体重 -1.46kg
収縮期血圧 -1.70 mmHg
心拍数  +1.87

他のトライアルに比べ心血管疾患の既往のある参加者は31%で少なく、プラセボの心血管事象も2.7/100 person-years と低い。(他のトライアルでプラセボの同様のアウトカムは3.9%かそれ以上)

心血管事象 (100 person-years)
                                          dulagltide       プラセボ     HR
心血管疾患既往あり             3.7                  4.2                  0.87
心血管疾患既往なし         1.7                  2.0                0.87

心血管疾患の既往がない場合でも、dulaglutide はアウトカムに対して有効性を示している。
”The study enrolled the largest primary prevention cohort as far as we are aware thus far, and showed no heterogeneity in efficacy relative to those with established atherosclerotic vascular disease.”2)

REWINDでは、他のトライアルに比べフォローアップ期間が5.4年と長く、女性の比率が46%と高くベースラインのmedian A1Cが7.2%と低い。

GLP-1受容体作動薬では、血管内皮機能や虚血時の血管内皮反応の改善、動脈硬化の進展抑制、血管の炎症や血管収縮の改善が示されている。1)

1 Gerstein HC et al. Dulaglutide and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes (REWIND): a double-blind, randomised placebo-controlled trial Lancet. 2019 Jun 7.

2 Verma S, Mazer CD, Perkovic V. Is it time to REWIND the cardiorenal clock in diabetes? Lancet. 2019 Jun 7.

VADT 15年後のフォローアップ glycemic legacy effect は認められない

VADT 15年後のフォローアップ、強化療法を5.6年間おこなわれた群で、心血管イベント (Primary composite cardiovascular outcomes)、心血管死、全死亡に有意差は認められず。

VADTの期間、強化療法群のA1C6.9% で群間差1.5%、終了後3年でA1C 0.2-0.3%の差があり、フォローアップ10年で強化療法群で、約17%の心血管イベントリスク認められた。この結果は血糖低下による長期の心血管保護で説明される。
血糖コントロールによる酸化ストレスの軽減、Advanced Glycation Endproduct の減少は長期にわたり血管の保護作用がある。

15年のフォロアップでA1Cは両群とも8%となり、心血管イベントリスク、心血管死、全死亡に有意差なし。

Legacy effect が認められたUKPDS、DCCTはVADTに比べ年齢層が低く罹病歴が短い。(VADTは罹病歴12年、UKPDSは新規発症2型糖尿病、DCCTは発症後間もない1型糖尿病が対象) VADTの参加者は、すでに動脈硬化とvascular injuryが存在しており血糖低下によりそれらを改善するのは困難であったのかもしれない。

UKPDS、DCCTは30年前のスタディでACE阻害薬やスタチンは標準治療ではなかった。現在は心血管保護作用のある薬剤により血糖値以外のリスクファクターがよくコントロールされた患者に対し、厳格な血糖コントロールによる心血管保護作用は示しにくくなっているかもしれない。

Lipska KJ, Laiteerapong N. Lack of Glycemic Legacy Effects in the Veterans Affairs Diabetes Trial.N Engl J Med. 2019 Jun 6;380(23):2266-2267.

Reaven PD eat al. Intensive Glucose Control in Patients with Type 2 Diabetes - 15-Year Follow-up. N Engl J Med. 2019 Jun 6;380(23):2215-2224.

エンパグリフロジンはRASプロファイルを改善する。

エンパグリフロジンはAng I > Ang II で増加させ、Ang II の下流代謝産物に影響しない。

まとめ
1型糖尿病37人をエンパクリフロジンで8週間治療し、liquid chromatography– tandem mass spectrometry (LC-MS/MS)を用いて、レニンアンギオテンシン系 (RAS) プロファイルを解析した。

エンパクリフロジンでangiotensin (Ang) I は2倍、Ang II は1.5倍上昇する。
レニン活性をAng I + Ang II、ACE 活性をAng II/Ang I で示すと、エンパグリフロジンでレニン活性は上昇、ACE活性は低下する。

Ang IIの下流代謝産物、Ang III、Ang IVはエンパグリフロジンの影響を受けず、LC-MS/MS測定感度以下であった。Alternative RAS effector であるAng (1–7) 、Ang (1–5)は、測定感度に近いか感度以下で37例中、10例でAng (1–5)が上昇し、Ang (1–7) からAng (1–5)への変換が考えられた。

ACE阻害薬とSGLT2阻害薬の併用は相乗的にRAS プロファイルを改善する。

Kopecky C, et al. Molecular regulation of the renin–angiotensin system by sodium–glucose cotransporter 2 inhibition in type 1 diabetes mellitus. Diabetologia. 2019.

カナグリフロジンは炎症、線維化マーカーを減少させる。

2型糖尿病とカナグリフロジンとグリメピリド、2年間服用したスタディ(CANTATU-SU)の血液サンプルの解析で、カナグリフロジンではグリメピリドに比べ、血中TNF receptor 1 (TNFR1) 、IL-6、matrix metalloproteinase 7 (MMP7)、fibronectin 1 (FN1)が減少していた。

カナグリフロジン300mg、104週後では、尿アルブミンクレアチニン比が35.7%減少した。

TNF-αに関連した炎症と糖尿病性腎症の進行の関連が明らかになっている。PodocyteのTNFR1にTNFが結合し、サイトカインが産生される。
IL6は、高血糖が引き金となり、podocyte、mesangial cell、尿細管細胞から放出される。その結果、持続的な局所および全身のサブクリニカルな炎症がおこる。
MMPはコラーゲンの代謝と線維化に関与する。

Heerspink HJL et al. Canagliflozin reduces inflammation and fibrosis biomarkers: a potential mechanism of action for beneficial effects of SGLT2 inhibitors in diabetic kidney disease. Diabetologia. 2019 Apr 17. doi: 10.1007/s00125-019-4859-4. [Epub ahead of print]
 

GIPはGLP-1より食後血糖変動とインスリン分泌に関連している。

健常者で、GIP受容体阻害薬(GIP(3-30)NH2) は、GLP-1受容体阻害薬 (exenatide(9-39)NH2)に比べ糖負荷試験の血糖変動を上昇させる。GIPの方がGLP-1より食後血糖変動とインスリン分泌に関連している。

受容体阻害薬の結果から、糖負荷試験のインスリン分泌(AUC insulin secretion rate/ plasma glucose) の67%はGLP-1およびGIPが担い、(インクレチン効果)、33%はグルコース濃度上昇による。インクレチン効果の2/3はGIPの効果である。(GIP 44%、GLP-1 22%)

GLP-1には胃排出能遅延効果があるが、GIPにはこの効果はない。そのためGLP-1は、インスリン分泌を促進するよりもむしろ減弱させる。
インスリン分泌促進剤としてのGLP-1の役割は当初考えられていたより傑出したものではない。

Kopecky C, et al. Separate and Combined Glucometabolic Effects of Endogenous Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide and Glucagon-like Peptide 1 in Healthy Individuals. Diabetologia. 2019.

Nauck MA, Meier JJ. GIP and GLP-1: Stepsiblings Rather Than Monozygotic Twins Within the Incretin Family Diabetes. 2019 May;68(5):897-900.

Canagliflozin はEnd-stage kidney disease を30%抑制 CREDENCE

2型糖尿病、eGFR 30から90 ml/min/1.73 m2未満の患者で、カナグリフロジン canagliflozin は end-stage kidney disease (透析、腎移植、eGFR < 15)の発症を30%抑制した。CREDENCE

2型糖尿病 4401人、eGFR 30から90 ml/min/1.73 m2未満、カナグリフロジンとプラセボの比較、すべての患者がランダム化の前にACEiあるいはARBを少なくとも4週間以上服用している。
フォローアップ median follow-up 2.62 年、カナグリフロジンでプライマリアウトカム End-stage kidney disease (透析、腎移植、eGFR < 15) 発症が30%抑制され、ステディは早期中止となった。

心不全による入院 ハザード比 (HR) 0.61, p<0.001
心血管死 HR 0.78, p=0.05
収縮期血圧 -3.30 mm Hg
拡張期血圧 -0.95 mm Hg
体重 -0.80 kg
Urinary albumin-to-creatinine ratio -31%
HbA1C 低下の差 -0.31%
estimated GFR slope はプラセボより低い。

腎保護のメカニズムは、糸球体内圧低下であると思われる。

Perkovic V et al. Canagliflozin and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes and Nephropathy. N Engl J Med. 2019 Apr 14. doi: 10.1056/NEJMoa1811744. [Epub ahead of print]

SGLT2 阻害薬のα細胞に対する直接作用は認められない。

2015年Bonner らは、α細胞にSGLT2が発現し、SGLT2阻害薬がα細胞に直接作用しグルカゴン分泌を促進すると報告していた。今回、Holst らはラット膵灌流実験でSGLT2阻害薬のα細胞に対する直接作用を否定している。

まとめ
ラット膵灌流実験で、
グルコース10 mmol/lでのグルカゴン分泌は、グルコース 3.5 mmol/lに比べ 1/3から1/5に減少する。
Dapagliflozin、phloridzin、SGLT1/2の特異的基質である α-methylglucopyranoside は、グルコース3.5 mmol/l、10 mmol/lともグルカゴン分泌に影響せず、インスリン、ソマトスタチン分泌にも影響しなかった。

ヒト膵島では、GLUT1 >GLUT2>SGLT1の順で発現している。
ヒト2型糖尿病のα細胞ではコントロールに比べSGLT1の発現が増加している。

マウス、ラット、ヒトの膵島で、SGLT2の発現は、RT-PCR、ウエスタンブロッティング、免疫染色で検出感度以下である。

なぜ今回の報告は、Bonnerの報告と対立する結果となったのか。
Bonnerは、SGLT2阻害薬の効果を膵島のstatic incubaionで評価し、今回の膵灌流実験の方が生理的条件に近い。
膵島には、SGLT2 のputatively transcripts variant が7つありタンパク全長コードするのは一つのみである。
RT-PCRでは、プライマーの設定により non-protein-coding transcriptが増幅されている場合がある。
Bonner らの報告ではプライマーが公開されていない。SGLT2阻害薬服用者で認められる血中グルカゴン値の上昇は、薬剤の血糖降下作用によるのかもしれない。

Kuhre RE et al. No direct effect of SGLT2 activity on glucagon secretion Diabetologia. 2019 Mar 22. doi: 10.1007/s00125-019-4849-6. [Epub ahead of print]

Bonner C et al. Inhibition of the glucose transporter SGLT2 with dapagliflozin in pancreatic alpha cells triggers glucagon secretion. Nat Med 21(5):512–517.

ヒト膵島α細胞から誘導したインスリン産生細胞が糖尿病マウスの血糖値を正常化する。

FACSでソーティングしたヒト膵島α細胞に、PDX-1、MAFAを発現させインスリン産生細胞を誘導した。
α細胞の凝集によりβ細胞特有の遺伝子発現が増加し、タンパクレベルでも遺伝子産物の増加を認める。

形成されたpseudoislet を腎皮膜下に移植した糖尿病マウスでは、血糖値の正常化が6ヶ月間確認されている。
移植した pseudoislet は、In vivo の環境で成熟し、ほぼインスリンが単独産生となる。α細胞特有の転写因子である ARXは発現している。

pancreatic polypeptide を発現するγ細胞でも、PDX-1とMAFAの強発現によりインスリン分泌が認められた。

Furuyama K et al. Diabetes relief in mice by glucose-sensing insulin-secreting human α-cells. Nature. 2019 Mar;567(7746):43-48.

Nature ハイライト:ヒト膵α、γ細胞の可塑性の1型糖尿病治療法としての可能性 | Nature | Nature Research

Thorel F, Népote V, Avril I, Kohno K, Desgraz R, Chera S, Herrera PL. Conversion of adult pancreatic alpha-cells to beta-cells after extreme beta-cell loss Nature. 2010 Apr 22;464(7292):1149-54.


経口GLP-1受容体作動薬セマグルチドはシタグリプチンに比べA1Cを低下させる。PIONEER 3

経口セマグルチド  (oral semaglutide) とシタグリプチン (sitagliptin) 100mgとの比較試験(PIONEER 3)、メトフォルミン服用 (with or without sulfonylurea) に上のせで、経口セマグルチド7 mg/day、14 mg/day はシタグリプチン100mg/dayに比べ52週後のA1Cを低下させる。経口セマグルチド3 mg/day はシタグリプチンに比べベネフィットはなかった。

52週間後、シタグリプチンに比較したA1C 変化率 7mg/day -0.3%、14 mg/day -0.5%
体重変化 7 mg/day -1.6 kg、14 mg/day -2.5 kg
中止率 経口セマグルチド 3 mg/day 16.7%、7 mg/day 15%、14 mg/day 19.1%、シタグリプチン 13.1%


Effect of Add-on Oral Semaglutide vs Sitagliptin on HbA1c in Type 2 Diabetes Uncontrolled With Metformin. JAMA. Published online March 23, 2019

The Future of the GLP-1 Receptor Agonists
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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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