デグルデックとグラルギンの比較試験

 デグルデックとグラルギンの比較、24ヶ月後、両群でA1C7.5%、
Cardiovascular outcome は同等、デグルデックで、空腹時血糖が低く、低血糖が少ない。

Marso SP et al. Efficacy and Safety of Degludec versus Glargine in Type 2 Diabetes N Engl J Med. 2017 Aug 24;377(8):723-732. 

持効型インスリン peglispro は開発中止

 2015年12月、リリー社は、肝障害のため持効型インスリン peglispro の開発中止を表明している。

まとめ (Diabetes Care 4月号 Editorialより)
peglispro は末梢組織より肝臓での作用が強い。
肝糖産生を抑制し、筋肉での糖取り込みが低いため、低血糖リスクを低下させ、体重も増加させず減少させることも期待されていた。
"Thus, peglispro might control glucose through the reduction of hepatic glucose release with less risk of hypoglycemia caused by variable peripheral uptake by muscle and might favor weight loss rather than gain (8). Surely, the investigators working on peglispro were intrigued by these possibilities.”

一方、末梢でインスリン作用が低下することが、脂肪肝の原因となった。
・末梢でインスリン作用が低下するためFFAが上昇する。
・FFAの上昇は、脂肪肝を促進しインスリン抵抗性と肝障害を生じる。
・FFA上昇は心血管イベントにリスクマーカーであり、不整脈との関連も指摘されている。

開発中止となったが、臓器特異的に作用するインスリンの可能性は示されており、たとえば脳特異的に作用するインスリンは体重を減少させる。insulin detemir の体重減少作用は脳に作用するためと考えられている。

Riddle MC. Lessons From Peglispro: IMAGINE How to Improve Drug Development and Affordability Diabetes Care April 2016 vol. 39 no. 4 499-501

Lilly Ends Basal Insulin Peglispro Development Program

経口糖尿病薬に、吸入インスリン上乗せ試験

経口糖尿病薬でコントロール不良な2型糖尿病に吸入インスリン(TI) あるいはプラセボ (TP) を上乗せ24週間後、

A1Cの低下       TI -0.8% TP -0.4%
HbA1c ≤7.0% 達成率   TI 38% TP 19%
体重増加       TI +0.5kg TP -1.1kg
両群とも軽度の咳がみとめられる。

Rosenstock J et al. Inhaled Technosphere Insulin Versus Inhaled Technosphere Placebo in Insulin-Naïve Subjects With Type 2 Diabetes Inadequately Controlled on Oral Antidiabetes Agents Diabetes Care. 2015 Aug 7. pii: dc150629. [Epub ahead of print]



インスリングラルギンリリー、ランタスXR、デュラグルチド

インスリングラルギンリリー
グラルギンのバイオシミラー (インスリンなど高分子化合物で、ジェネリックに対応する用語)

ランタスXR

サノフィ社からはグラルギンの1ml 300単位製剤、ランタスXRが発売予定。
グラルギンはpH7.4で沈殿し(等電点沈殿)、徐々に六量体、二量体、単量体と解離していく。

通常のインスリン製剤より、三倍に濃縮したことで、ランタスXR沈殿物の表面積はランタスよりも50%小さくなり、解離速度が低下し、作用時間が長くなっている。

以下の引用では、ランタスXRは Gla-300となっています。
"The PD mirror effect was a smoother and longer glucodynamic effect with Gla-300. This is possibly explained by the fact that the three times more concentrated insulin Gla-300 results in a two-thirds lower s.c. spheric depot with a surface area reduced by 50% as compared with Gla-100, with consequent slower and more prolonged insulin absorption of Gla-300.”1)

グラルギンに比べランタスXRは、10-17%インスリン量が増え、体重増加は少ない。 インスリン量が増えることに関しては、ランタスXRが、完全に吸収されずに局所で分解してしまう可能性もある。体重増加が少ない理由として、低血糖が少ないため補食が減るこという説明はあたらない。なぜならランタスXRが低血糖のリスクを減少させる報告もあるが、減少させないという報告もあるからである。

"These results are achieved on Gla-300 with a 10–17% greater insulin dose and less increase in body weight, a difference modest in absolute terms (∼0.26 kg in T2D, ∼0.56 kg in T1D) but consistently present in all EDITION studies and statistically significant. It might be that some of the Gla-300 is degraded locally rather than fully absorbed. The slight reduction in weight gain is awaiting a mechanistic explanation. It is unlikely that it is the result of less compensatory food intake needed to counter hypoglycemia, as it was seen both when Gla-300 reduced the risk for hypoglycemia (14) and when it did not (13).”1)

ランタスXRは1ml 300単位、ペン型の製剤1本は、1.5ml 450単位。

デュラグルチド (商品名トルリシティTRULICITY、デバイス名アテオスATEOS)

デュラグルチドは、週1回注射のGLP-1受容体作動薬
すでに発売されている週1回製剤ビデュリオンは、インスリンとの併用不可に対して、デュラグルチドは2型糖尿病でインスリンとの併用可能、1型糖尿病は保険適応なし
1回注射量0.5mlを注入できるペン型注射器がデバイス名アテオス

1. Bolli GB, DeVries JH. New Long-Acting Insulin Analogs: From Clamp Studies to Clinical Practice Diabetes Care. 2015 Apr;38(4):541-3.

2. Becker RH et al. .New insulin glargine 300 Units · mL-1 provides a more even activity profile and prolonged glycemic control at steady state compared with insulin glargine 100 Units · mL-1. Diabetes Care. 2015 Apr;38(4):637-43.




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インスリンデテミルは体重増加をきたしにくい。

脳内のインスリン濃度上昇は食物摂取を抑制する。
インスリンデテミルは、ラットの腹腔内された場合、NPHに比べ髄液 (CSF) 濃度低下が遅い。
インスリンデテミルは脳内の消失濃度が遅いため、食物摂取が抑制され体重増加が少なく済む。
 
Insulin detemir is transported from blood to cerebrospinal fluid and has prolonged central anorectic action relative to NPH insulin
http://diabetes.diabetesjournals.org/content/early/2015/02/03/db14-1364.abstract
 
 

吸入インスリンAfrezzaの承認

アメリカで、吸入インスリンAfrezza がFDAにより承認されました。
超速攻型インスリンの皮下注射よりもA1C低下効果は低いが、吸入という簡便な投与経路が再び可能となったことは進歩であると思います。気管支ぜんそく、閉塞性肺疾患などがある場合は禁忌となっている。
 
FDAのホームページより
Afrezzaは、食事のはじめか、食事開始20分以内に吸入、
喫煙者には使用しない。
 
1型糖尿病1026人、食前はアスパルトあるいはAfrezzaを使い、持効型インスリンを併用、
24週後、Afrezza はアスパルトに比べ、A1Cの低下率は少ないが、事前に設定した非劣性のポイントは満たした。
2型糖尿病 1191人、経口糖尿病薬服用で、Afrezzaかプラゼボの服用で比較、24週、プラセボに比べ大きくA1Cを低下させた。
 
警告(Boxed-Warning) として
気管支ぜんそく、COPD患者では、気管支のスパズムが認められた。
気管支ぜんそく、COPDなど、慢性肺疾患のある場合は使用するべきでない。
 
治験での副作用は、低血糖、咳、喉の痛み、違和感
 
FDAは以下の市販後調査を要求している。
小児での、薬物動態、安全性、効果の検証
肺がん発症リスク、心血管イベントリスク、長期使用における肺機能への影響の検証
 
FDA approves Afrezza to treat diabetes
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm403122.htm
 


混合製剤でも、NPHよりデグルデックで夜間低血糖が少ない。

混合製剤でも、NPHよりデグルデックを使った方が、空腹時血糖を下げ、夜間低血糖が少なく、インスリン少なくてすむという結果です。デグルデックとアスパルトの合剤と30ミックスとの比較試験。
 
まとめ
インスリンデグルデックとアスパルとの合剤(IDegAsp) と、30ミックス(biphasic insulin aspart 30, BAsp 30) の比較、1日1回あるいは2回注射
 
26週後、mean A1C は7.1%で両者同じ
IDegAspは、BAsp 30 に比べ、空腹時血糖の低下が大きく、最終的なインスリン量が少なくてすむ (estimated ratio 0.89)。 夜間低血糖、重症低血糖は、IDegAspの方が少ない。
 
Comparison of Insulin Degludec/Insulin Aspart and Biphasic Insulin Aspart 30 in Uncontrolled, Insulin-Treated Type 2 Diabetes: A Phase 3a, Randomized, Treat-to-Target Trial
Published online before print May 8, 2014, doi: 10.2337/dc13-2908 Diabetes Care May 8, 2014
http://care.diabetesjournals.org/content/early/2014/05/09/dc13-2908

インスリン LY2605541は肝臓での作用が強い

まとめ
インスリンは門脈に分泌されるため、肝臓は他組織に比べ、3倍から4倍の濃度のインスリンにさらされ、肝臓を通るインスリンの50から60%を取り込む。
末梢のインスリン投与では、このインスリンの勾配 (distribution) と生理的な metabolic imbalance が失われる。

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デグルデック週3回注射はグラルギン1日1回注射に比べ、血糖コントロールも及ばず、低血糖頻度も高い。

インスリン未使用の2型糖尿病で、デグルデック週3回注射(月、水、金曜日)は、A1C低下率でグラルギン1日1回に及ばず、低血糖の頻度も増加する。週3回うちでは、2日目、3日目の空腹時血糖値が徐々に増加する。
1日1回注射であれば、デグルデックはグラルギンに比べ夜間低血糖が少ないことが報告されている。
グラルギンに1日1回にくらべ、血糖コントロールが劣り、低血糖頻度も高いため、デグルデック週3回注射は推奨されない。(Lancet Diabetes and Endocrinology on line first)

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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