メトフォルミン不耐性とOCT1、SERT

 メフォルミンの消化器症状は、腸管でのメトフォルミンの濃度上昇、メフォルミンによるセロトニンの取り込み抑制などが原因とされている。

メトフォルミン不耐性164人とメトフォルミン服用可能な1356人の比較で、Organic transporter 1(OCT1) 機能低下型アリルを2つ持つ場合、メトフォルミン不耐性のオッズ比 2.7となる

メトフォルミンは、Serotonin reuptake transporter (SERT) を介してセロトニンの取り込みを抑制する。
SERT遺伝子はLong (L) allele、Short (S) alleleがあり、S allele ではSERT 発現が低下する。
single nucleotide polymorphism (SNP) rs 25531 A>G は、SERT発現を調節している。LGはLAに比べSERT発現が低下する。
S alleleでは、メトフォルミン不耐性のオッズ比1.3
L*L*(LALA) で、OCT-1機能低下型アリルを2つ持つ場合、メトフォルミン不耐性オッズ比は9.25となる。
L*S* (LALG, LAS)では影響が少なく、 S*S* (SS, SLG, LGLG) では影響しない。
OCT-1機能低下型アリルを2つ持つ場合、S alleleは逆にメトフォルミン不耐性に対して保護的効果を示す。
S alleleでは、セロトニン濃度が上昇するため、受容体の感度低下(desensitization) が起こるためと考えられる。

腸管のメトフォルミンの取り込みでOCT-1が主要な役割を果たしているため、OCT-1の機能低下がメトフォルミン不耐性のリクス上昇が大きいと推測される。

Dujic T et al. Effect of Serotonin Transporter 5-HTTLPR Polymorphism on Gastrointestinal Intolerance to Metformin: A GoDARTS Study. Diabetes Care. 2016 Nov;39(11):1896-1901. Epub 2016 Aug 4.

メトフォルミンと下痢

メトフォルミンのレビューです。こちらのレビューでは、メトフォルミンで下痢が起こる理由として
・乳酸の上昇
・胆汁酸の吸収低下 malabsorption によるGLP-1分泌促進
・セロトニン 増加
をあげています。

まとめ
メトフフォルミンは主に小腸で吸収される。空腸の薬剤濃度ピークは、500 μg/g で、血中の30-300倍になる。
メトフォルミンが基質となるトランスポーター
Organic cation transporter (OCT)1-3、Plasma monoamine transporter (PMAT)、Serotonin transporter (SERT)、Multidrug and toxin extrusion protein (MATE) 1-2、High-affinity choline transporter (CHT)

・メトフォルミンは、腸管のグルコース取り込みを上昇させ、乳酸を増加させる。
ラットの肝細胞で、メトフォルミンは、ミトコンドリアのglyceroaldehyde dehydrogenase を阻害し、乳酸からピルビン酸への変換を抑制する。(Madiraju AK, Nature 2014)
PET-CTで腸管の18F-fluorodeoxyglucose の取り込みがびまん性 (diffuse) に亢進している。

・メトフォルミンはin vivo でDPP4活性を低下させる。In vitro study でDPP4活性低下のメカニズムは明らかになっていない。

・Bile acid pool を増やすことが GLP-1分泌、コレスレロール値、腸内細菌に影響しているかもしれない。
メトフォルミンが、farnesoid X receptor (FXR) を介してAMPK-mediated mechanism により胆汁酸再吸収を阻害する。
胆汁酸プールの増加は、L細胞のTGR5 bile acid receptor を介してGLP-1分泌を刺激する。

・メトフォルミンがセロトニン分泌を促進、吐き気、下痢の原因となる。
メトフォルミンは5HT3受容体作動薬と一部の構造が類似している。
セロトニン上昇は、直接作用ではなく、メトフォルミンが、OCT-1やセロトニントランスポーターで取り込まれ、セロトニン輸送を阻害するためと考えられている。

・Gut-brain axis metformin
ラットの結果、メトフォルミンが、腸管のGLP-1受容体を活性化、AMPKの活性化を介して、腸管の迷走神経求心路を経由し、延髄弧束核 (the nucleus of the solitary tracts, NTS) の N-methyl-D-aspartate receptor (NMDA) を活性化、hepatic glucose production を抑制する。

・メトフォルミンは、2型糖尿病で、butyrate-producing taxa を増やす。

McCreight LJ, Bailey CJ, Pearson ER. Metformin and the gastrointestinal tract Diabetologia First online: 16 January 2016

Madiraju AK et al. Metformin suppresses gluconeogenesis by inhibiting mitochondrial glycerophosphate dehydrogenase. Nature. 2014 Jun 26;510(7506):542-6.

Thomas C, Gioiello A, Noriega L et al. TGR5-mediated bile acid sensing controls glucose homeostasis. Cell Metab 10:167–177, 2009 

Duca FA et al. Metformin activates a duodenal Ampk-dependent pathway to lower hepatic glucose production in rats.Nat Med. 2015 May;21(5):506-11. doi: 10.1038/nm.3787. Epub 2015 Apr 6.

Qin, J. et al. A metagenome-wide association study of gut microbiota in type 2 diabetes. Nature 490, 55–60 (2012).

 

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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