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妊娠糖尿病の血糖サンプルを扱う場合の注意

妊娠糖尿病の診断基準となる血糖値は2型糖尿病と比べて低い。室温に放置した採血サンプルは血糖値が低下するため、妊娠糖尿病と診断されない場合がある。

グルコースは全血のサンプルから室温で1時間に5-7%失われる。
“Glucose is lost from the whole blood sample at a rate of 5–7% per hour at room temperature.”1)

解糖を抑制するフッ化ナトリウムNaFを添加されていたとしても採血から2時間以上経過していれば不適切なサンプルとなる。
“Although sodium fluoride is intended to inhibit glycolysis, it is inadequate for the first 2 or more hours after collection.”1)

オーストラリア首都特別地域のスタディ、2015年1月から2017年5月まで妊娠糖尿病診断のための糖負荷試験でNaF入り採血管で採血し室温放置、負荷試験終了後遠心分離をおこなった。2017年6月から2018年10月、NaF入り採血管は採血後10分以内に遠心分離するプロトコールに変更した。
終了まで遠心しないサンプルの血糖値は、採血から10分以内に遠心したサンプルに比べ、空腹時、1時間値、2時間値とも有意に低い。

妊娠糖尿病診断の糖負荷試験のサンプルの遠心分離を負荷試験終了後から採血後10分以内に変えた結果、妊娠糖尿病の有病率が11.6%から20.6%へ増加した。2)

1. Sarah A L Price, Robert G Moses. Gestational Diabetes Mellitus and Glucose Sample Handling. Diabetes Care. 2020 Jul;43(7):1371-1372.

2. Julia M Potter et al. Strict Preanalytical Oral Glucose Tolerance Test Blood Sample Handling Is Essential for Diagnosing Gestational Diabetes Mellitus. Diabetes Care. 2020 Jul;43(7):1438-1441.

妊娠糖尿病のフォローアップステディ

HAPO study 10-14年後 (平均11.4年)フォローアップ、妊娠糖尿病(GDM)では糖尿病、prediabetes への移行リスクが高く、子供の過体重、肥満のオッズ比1.21
母の HAPO study 糖負荷試験血糖値は子供の糖負荷試験血糖値と相関する。

母の耐糖能と子供の脂肪蓄積1)
妊娠糖尿病(GDM) ではGDMがない場合に比べ糖尿病あるいはprediabetes のハザード比3.44 (53.2% vs. 20.1%)、子供の脂肪蓄積(>85th percentile)リスクも増加する。

母のBMI(糖負荷試験時)で補正
GDMの母からから生まれた場合
子供の過体重あるいは肥満 オッズ比 1.21
肥満 オッズ比1.58
子供の体脂肪率、ウエスト径、sum of skin fold (>85th percentile) それぞれ1.35、1.34、1.57

母のBMIが子供時代の脂肪蓄積と関連する原因
Genetics
Familiar life style and environment
子宮内環境

母の血糖値(HAPO studyの糖負荷試験)と子供の耐糖能2)
HAPO study の母の糖負荷試験血糖値とフォローアップ10-14年後、子供の負荷試験(1.75 g/kg body wt (maximum 75 g))の血糖値は関連する。

1. Lowe WL Jr et al. Association of Gestational Diabetes With Maternal Disorders of Glucose Metabolism and Childhood Adiposity JAMA. 2018 Sep 11;320(10):1005-1016.

2. Scholtens DM et al. Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcome Follow-up Study (HAPO FUS): Maternal Glycemia and Childhood Glucose Metabolism. Diabetes Care. 2019 Mar;42(3):381-392.
 

妊娠糖尿病は夏に診断されやすい。

妊娠中の糖負荷試験で、負荷1時間後、2時間後の血糖値が夏期に高い傾向が認められる。
気温に伴い深部体温が高くなるため静脈血の動脈血化がすすみ、静脈血サンプルの血糖値が高くなるためとされている。
妊娠中、皮下脂肪が増加しており、’hyperdynamic circulation’ であることも妊婦が温度変化の影響をうけ易い原因かもしれない。

Moses RG et al. Seasonal Changes in the Prevalence of Gestational Diabetes Mellitus. Diabetes Care. 2016 Jul;39(7):1218-21

Retnakaran R et al. Impact of daily incremental change in environmental temperature on beta cell function and the risk of gestational diabetes in pregnant women. Diabetologia. 2018 Aug 15. doi: 10.1007/s00125-018-4710-3. [Epub ahead of print]
トロントでのスタディ、2月から7月の期間、糖負荷試験から3〜4週間前の気温の変化が妊娠糖尿病リスクと関連する。

妊娠糖尿病における自己血糖測定

妊娠糖尿病の診断基準
75gOGTTで空腹時92mg/dl、‪1時‬間値180mg/dl、‪2時‬間値153 mg/dlのいずれか1点以上を満たした場合、妊娠糖尿病と診断する。

妊娠診断基準の2点以上を満たす場合および
1点以上かつBMI25以上ある場合は、2016年自己血糖測定の適応となっている。

血糖自己測定(SMBG)適応拡大について | 一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会

母体から胎児へのグルコースの移行は濃度勾配による

母体から胎児へのグルコースの移行は、胎盤を挟んだ濃度勾配に依存している。母親側の高血糖あるいは胎児側の低めの血糖は、濃度勾配が急になり、胎児へのグルコース流入が増強される。
胎児側では、グルコースからトリアシルグリセロール生成が刺激され、脂肪蓄積が起こる

胎生11週から胎児のインスリン分泌が始まる。
胎児の高インスリン血症を防ぐために、妊娠初期の母体の血糖コントロールが必要となる。
胎児の高インスリン血症により胎児が母体のグルコースを奪うため (fetal glucose steel) 、母親の糖負荷試験の血糖値が低めに出ることがある。

Desoye G, Nolan CJ. The fetal glucose steal: an underappreciated phenomenon in diabetic pregnancy. Diabetologia. 2016 Jun;59(6):1089-94.

Pedersen J, Osler M. Hyperglycemia as the cause of characteristic features of the fetus and newborn of diabetic mothers. Dan Med Bull. 1961 Jun;8:78-83.

レベミルは、妊娠中の使用に関してカテゴリーBとなる。

310人のレベミルと他のインスリン製剤との比較試験の結果、FDAは、Levemir を pregnancy category B とした。妊娠中に使用しても胎児には害のない薬剤という格付けです。

FDA OKs Levemir for pregnant women



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糖尿病合併妊娠と妊娠糖尿病の違い

3月4日金曜日に大森安恵先生のという御講演を聞いてきました。
「糖尿病合併妊娠と妊娠糖尿病の違い」とうタイトルです。
 新しい妊娠糖尿病の診断基準でhigh risk GDM という概念があり、これは日本独自のものだそうです。

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妊娠糖尿病の診断基準(佐中先生の御講演)

先日、女子医大佐中眞由美先生の「妊娠と糖尿病」の講演を聞いてきました。
妊娠糖尿病の新しい診断基準の値がどのように決まったかは、Diabetes Care 3月号に出ている事を知りました。
HAPOstudy の結果で、生下時体重、臍帯血Cペプチド、体脂肪の90パーセンタイルを越えるオッズ比が、1.75となる血糖値を閾値として、診断基準に取り込んだということでした。

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HAPO study 続報

HAPO study は、2008年、NEJM、2009年Diabetes に掲載された。
Diabetes に掲載された続報では、母の血糖値と児の脂肪蓄積を評価していて、Pedersenの仮説が、正常血糖値の範囲でも当てはまることが示されている。
 
HAPO study
23316人の妊婦で、
妊娠24から32週に(可能な限り28週)75OGTTを行い、児の身体計測と臍帯血Cペプチドを測定。新生児の身長、体重、脇腹の皮膚ひだ(flank skin fold)から体脂肪を計算した。
糖負荷試験の中央値(Mean) は、空腹時 81mg/dl (4.5 mmol/l)、1時間値 135mg/dl (7.5 mmol/l)、2時間値112mg/dl (6.2 mmol/l)であった。
 
新生児の脂肪量(adiposity)は、母親の血糖値、臍帯血Cペプチド値が高くなると、90パーセンタイルを超える割合が増加してくる。
母親の血糖の軽度な上昇でも、児のインスリン、脂肪蓄積(adiposity)に影響する。たとえば、母親のOGTT空腹時血糖値が、75.6-79.2 mg/dl (4.2-4.4 mmol/l)の場合は、新生児の皮膚ひだの90パーセンタイルを越える割合が75.6 mg/dl (4.3 mmol/l)未満に比べ、40%増加する。
母親のシングルポイントの血糖値がBirth outcome を予測する。
 
Pedersen は、1952年に母親の高血糖が、児のインスリン分泌を刺激して、児の脂肪蓄積を促進することを示した。50年以上経過して、Pedersenの仮説は、明らかな糖尿病だけでなく、母親の血糖値のすべてのレンジで当てはまる事示された。
 
Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcome (HAPO) Study: associations with neonatal anthropometrics. Diabetes 2009 Feb;58(2):453-9. Epub 2008 Nov 14.

 
Many HAPO returns: maternal glycemia and neonatal adiposity: new insights from the Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcomes (HAPO) study. Diabetes 2009 Feb;58(2):302-3.

 
Diabetes and pregnancy; blood sugar of newborn infants during fasting and glucose administration. PEDERSEN J. Ugeskr Laeger. 1952 May 22;114(21):685.


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妊娠糖尿病の診断基準

新しい妊娠糖尿病の診断基準を岡山の糖尿病学会で聞きました。

糖尿病診断基準発表の際にふれられていました。

糖尿病妊娠学会のホームページによると 産科産婦人科学会では、すでに了承されていて、糖尿病学会の了承待ちということです。

 

妊娠糖尿病の診断基準

75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。

 

空腹時血糖値 ≧ 92mg/dl (5.1mmol/l)

1時間値  ≧ 180mg/dl (10.0mmol/l)

2時間値 ≧ 153mg/dl 8.5mmol/l

あきらかな糖尿病 overt diabetesは、妊娠糖尿病に含まれない。

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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