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メトフォルミンによる胆汁酸代謝の変化とFXR

メトフォルミンによる腸管細菌B.fragilis 減少を介した胆汁酸代謝の変化は、FXRシグナリングを抑制し耐糖能、インスリン感受性を改善する。

まとめ
新規に2型糖尿病と診断された患者にメトフォルミンを3日間服用後、便中の腸内細菌Bacteroides fragilisが減少する。

ヒトの一次次胆汁酸はコール酸 (cholic acid (CA))、ケノデオコシコール酸 chenodeoxycholic acid (CDCA) でそれぞれグルシン、タウリンに抱合され腸管に分泌される。腸管では腸内細菌のbile salt hydrase により脱抱合化 deconjugation が起こる。

メトフォルミン服用後、B. fragilisの低下により便中の胆汁酸 acid glycine-ursodeoxycholic acid (GUDCA)、tauroursodeoxycholic acid (TUDCA)、抱合二次胆汁酸が増加する。総ビリルビン値は変化しない。B. fragilis と血中、便中GUDCA、TUDCAは負の相関を示す。
メトフォルミンはマウスで糖負荷試験の血糖値低下、インスリン感受性亢進、空腹時血糖値低下作用があり、メトフォルミンとB.fragilisの便移植によりメトフォルミンによるこれらの作用は抑制される。

胆汁酸の核内受容体farnesoid X receptor (FXR)活性化により、ヒトでFGF19、マウスでFGF15の発現が増加し、胆汁酸生合成は抑制される、腸管FXRの抑制は、白色脂肪細胞を褐色脂肪化させ肥満関連代謝障害を改善する。メトフォルミン服用後、血中FGF19濃度は低下しており、FXR signaling は抑制されている。GUDCAとTUDCAは直接的にFXR拮抗剤としてはたらいている。

腸管にFXRを発現しないマウスでは、溶媒のみに比べメトフォルミン12週間投与後の耐糖能とインスリン感受性改善が認められない。

胃管によるメトフォルミン投与は腸管のAMP activated protein kinase (AMPK) を活性化する。腸管にAMPKαを発現しないマウスでもメトフォルミンはFXRシグナリングを抑制する。

メトフォルミンによる腸管細菌B.fragilis 減少を介した胆汁酸代謝の変化は、FXRシグナリングを抑制し耐糖能、インスリン感受性を改善する。

Sun L et al. Gut microbiota and intestinal FXR mediate the clinical benefits of metformin Nat Med. 2018 Dec;24(12):1919-1929

Guo GL, Xie W Metformin action through the microbiome and bile acids Nat Med. 2018 Dec;24(12):1789-1790.

Jiang, C. et al. Intestinal farnesoid X receptor signaling promotes nonalcoholic fatty liver disease. J. Clin. Invest. 125, 386–402 (2015).

胆汁酸分子種の多様性 構造・代謝と生理作用 石塚 敏

メトフォルミンと腸内細菌

メトフォルミン服用で、ムチンを分解する Akkermansia muciniphila、短鎖脂肪酸 (short-chain fatty acid, SCFA) を産生するButyrivibrio, Bifidobacterium bifidum, Megasphaera が増加している。1)

A. muciniphila は、腸管バリア機能を改善する。
A. muciniphila の外膜から分離された Amun_1100 は、高脂肪食で上昇した門脈の lipopolysaccharide 濃度を通常食レベルに低下させる。
Amun_1100、パスツール化されたA. mucinphila は、高脂肪食でインスリン抵抗性を改善する。2)

短鎖脂肪酸は、腸管の糖新生を生じ、肝糖産生を低下させる。
酢酸は、Blood Brain Barrier を透過し、視床下部に直接的作用し食欲を抑制する。

1. Metformin Is Associated With Higher Relative Abundance of Mucin-Degrading Akkermansia muciniphila and Several Short-Chain Fatty Acid–Producing Microbiota in the Gut. Diabetes Care 2016

2. A purified membrane protein from Akkermansia muciniphila or the pasteurized bacterium improves metabolism in obese and diabetic mice. Nature Medicine (2016)

3. Everard A, et al. Cross-talk between Akkermansia muciniphila and intestinal epithelium controls diet-induced obesity. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013.

4. Shin NR, Lee JC, Lee HY et al. An increase in the Akkermansia spp. population induced by metformin treatment improves glucose homeostasis in diet-induced obese mice. Gut 2014 63: 727–735

5. De Vadder F et al. Microbiota-generated metabolites promote metabolic benefits via gut-brain neural circuits. Cell. 2014 Jan 16;156(1-2):84-96. doi: 10.1016/j.cell.2013.12.016. Epub 2014 ‪Jan 9.‬ ‬

6. Frost G et al. The short-chain fatty acid acetate reduces appetite via a central homeostatic mechanism Nat Commun. 2014 Apr 29;5:3611.


7. 腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸は腸管の糖新生を生じ、肝糖産生を低下させる。

メトフォルミンと腸内細菌

2型糖尿病の腸内細菌は酪酸産生群が減少している。1, 2)

メトフォルミン投与後2型糖尿病患者の便では、酪酸、プロピオン酸の代謝産物が増加している。
これらの短鎖脂肪酸は、マウスで腸管内糖新生のトリガーとなることが報告されている。
腸管内糖新生の増加は、肝糖産生低下、食欲低下、体重低下作用があり、血糖値に好影響となる。3)

メトフォルミンは血糖低下効果のある短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌を増加させる。3) 

他の糖尿病薬では、腸内細菌の変化を示す結果は認められなかった。4)

メトフォルミンは2型糖尿病の腸内細菌異常 dysbiosis をシフトさせる。

1. Qin, J. et al. A metagenome-wide association study of gut microbiota in type 2 diabetes. Nature 490, 55–60 (2012).

2.Karlsson FH et al. Gut metagenome in European women with normal, impaired and diabetic glucose control. Nature. 2013 Jun 6;498(7452):99-103. doi: 10.1038/nature12198. Epub 2013 May 29.

3. Forslund K et al. Disentangling type 2 diabetes and metformin treatment signatures in the human gut microbiota. Nature. 2015 Dec 2. doi: 10.1038/nature15766. [Epub ahead of print]

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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