グルカゴンは中枢性に食欲を抑制し、肝糖放出を減少させる。

動物でグルカゴンの脳室内投与により食欲が抑制される。

内側基底視床下部 (mediobasal hypothalamus (MBH)) 、迷走神経背側核 (dorsal vagal complex (DVC)) へのグルカゴン注入は、肝糖放出を抑制する。グルカゴン受容体、PKA シグナリング、KATP channel を介している。

高タンパク食では低タンパク食に比べ、血中グルカゴン値が上昇するにもかかわらず、食後血糖値が増加しにくい。
DVCでグルカゴンシグナルをブロックすると、高タンパク食での食後血糖抑制が消失する。
インスリン、GLP-1、レプチンも、DVCを介して、血糖値と食行動を制御している。

Abraham MA, Lam TK. Glucagon action in the brain. Diabetologia. 2016 Jul;59(7):1367-71.

LaPierre MP, Abraham MA, Yue JT, Filippi BM, Lam TK. Glucagon signalling in the dorsal vagal complex is sufficient and necessary for high-protein feeding to regulate glucose homeostasis in vivo. EMBO Rep. 2015Oct;16(10):1299-307.


GLP-1、GIP、グルカゴンのtriple agonist の血糖値改善と体重減少効果

グルカゴンの生理作用 (2)

 ・インスリン、GABA、レプチン (leptin) は、グルカゴン分泌を抑制 する。insulin のParacrine 濃度は、2000-4000 μU/ml
・中枢神経系からも制御される。

グルカゴンはグルカゴン受容体を介して細胞内 cAMP濃度を上昇させ、Protein kinase A (PKA) を活性化する。
PKAは、糖新生に重要な glucose-6-phosphate、PEPCK の発現を増加させ、糖新生へ誘導する。
さらに、PKA は、cAMP-Responsive Element Binding Protein (CREBP)、peroxisome proliferator–activated receptor γ coactivator (PGC)1aを活性化する。
Salt-inducible kinase (SIK) 2 はPKAにより活性化される。SIK2 は、CREBP-regulated transcription coactivator 2 (CRTC2) をリン酸化し活性化する。

Pearson MJ, Roger H. Unger RH, Holland WL. Clinical Trials, Triumphs, and Tribulations of Glucagon Receptor Antagonists Diabetes Care 2016 Jul; 39(7): 1075-1077

Maruyama H, Hisatomi A, Orci L, Grodsky GM, Unger RH. Insulin within islets is a physiologic glucagon release inhibitor. J Clin Invest. 1984 Dec;74(6):2296-9.

グルカゴンの生理学的作用

夜間絶食後に肝臓は、10 g/hr グルコースを産生し、6 g が脳で、4 gが他の臓器で消費される。
basal hepatic glucose production の75%をグルカゴンが制御している1)。

"In the fasting state after overnight fast the liver must replace approximately 10 g of glucose per hour - 6 g used by the brain and the 4 g used by other tissues - about half of extracellular glucose pool. Since 75 per cent of this basal hepatic glucose production is glucagon mediated, glucagon may well be essential of life.”

グルカゴンは、脂肪組織の脂肪酸を肝臓でケトン体に代謝し、additional fuel として供給する。 
ストレス、飢餓ではケトン体の利用が重要となる。 

肝臓 
グリコーゲン分解 Glycogenolysis 
糖新生 Gluconeogenesis 
ケトン合成 Ketogenesis 

脂肪組織 
脂肪分解 Lipolysis 

筋肉 
グリコーゲン分解 Glycogenolysis 

カテコラミンはストレスや運動の際にグルカゴン分泌を促進し、インスリンレベルを下げる。 
カテコラミンによりインスリンレベルは下がるが筋肉の糖取り込みは低下しない。 

1) Unger RH, Orci L. Glucagon and the A cell: physiology and pathophysiology (first two parts). N Engl J Med. 1981 Jun 18;304(25):1518-24.


2) Joslin’s diabetes mellitus, Lippincott Williams & Wilkins 

2017/8/5

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グルカゴンの視床下部を介した糖新生抑制作用

肝臓で、グルカゴンは、cAMP 上昇を介してグリコーゲン分解を促進、グリコーゲン合成を抑制、糖新生を促進する。3)
一方、視床下部にもグルカゴン受容体が発現しており、神経を介して肝臓の糖産生 (Hepatic glucose production) を抑制しているというはじめての報告です。
 
Mediobasal hypothalamus (MBH) には、グルカゴン受容体、cAMP、PKA が発現している。
MBHにグルカゴンを注入すると、肝糖産生(hepatic glucose production, HGP) は抑制される。
末梢、中枢へのグルカコン注入は摂食量を落とす。
 
グルカゴンは末梢でインスリンの代謝作用に拮抗する。
しかし中枢では、摂食量や肝糖産生を抑制することにより、インスリンとグルカゴンは、グルコースとエネルギーホメオスターシス維持にはたらいている。
 
1. Hypothalamic glucagon signaling inhibits hepatic glucose production. Mighiu PI, Yue JT, Filippi BM, Abraham MA, Chari M, Lam CK, Yang CS, Christian NR, Charron MJ, Lam TK. Nat Med. 2013 Jun;19(6):766-72.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23685839
 
2. グルカゴンは肝臓のグルコース産生に「陰と陽」の作用を及ぼす
http://www.nature.com/nm/journal/v19/n6/standfirst/nm.3202_ja.html?lang=ja 

3. Joslin's Diabetes Mellitus, Lippincott Williams & Wilkins; 14版

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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