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グルカゴンと胆汁酸核内受容体FXR

グルカゴンは胆汁酸代謝を調節している。グルカゴン受容体作動薬では、胆汁酸血中濃度が上昇する。

グルカゴン受容体作動薬は、食事負荷肥満マウスで、体重を減少させエネルギー消費を増加させる。胆汁酸の核内受容体である farnesoid X receptor (FXR)を肝臓に発現しない食事負荷肥満マウスではグルカゴン受容体作動薬による体重減少効果が認められない。グルカゴン受容体作動薬による体重減少とエネルギー消費増加には肝臓のFXRが必須である。

グルカゴン受容体作動薬は、肥満マウスで、胆汁酸のうちコール酸(cholic acid) を増加させ、タウロデオキシコール酸(taurodeoxycholic acid) を減少させる。コール酸はFXRを活性化することが知られている。FXRとエネルギー消費増加の関連は充分に解明されていない。胆汁酸受容体GPBAR1/TGR5は、肥満者、肥満モデルげっ歯類でエネルギー増加に関与するとされる。

Kim T et al. Glucagon Receptor Signaling Regulates Energy Metabolism via Hepatic Farnesoid X Receptor and Fibroblast Growth Factor 21 Diabetes 2018 Sep; 67(9): 1773-1782.

グルカゴンとFGF21

グルカゴンとFGF21
グルカゴンは、脂肪融解、ケトン体産生、満腹感、熱産生、エネルギー消費増加、胆汁酸代謝などに関与する。FGF21はグルカゴン作動薬投与により肝臓から分泌される。
グルカゴン受容体作動薬でマウスの血糖値は上昇、体重、体脂肪とコレステロールは低下する。db/db マウスでは、体重が減少し、深部体温は上昇、インスリン負荷テストでインスリン感受性が改善する。肝臓ではFGF21の発現が増加し血中FGF濃度が上昇する。FGF21-/-マウスの結果から、グルカゴン受容体作動薬よる体重減少とエネルギー消費量の増加にはFGF21が必要である。糖代謝、脂質代謝への作用については、FGF21はその一部にかかわる。

FGF21の生理作用
FGF21の投与は甘いものとアルコールの摂取を減らす。
FGF21は、脳内のFGF受容体のco-receptorであるβ-Klotho を介してnucleus accumbens のドーパミン濃度を低下させる。

FGF21は、アルコール摂取、ケトジェニックダイエットでの水分摂取を刺激する。FGF21は脱水を起こすような栄養ストレスに反応した水バランスを制御する神経ホルモン(neurotropic hormone)である。

Fibroblast growth factor 21 mediates specific glucagon actions. Diabetes. 2013 May;62(5):1453-63. 

von Holstein-Rathlou S R.T. al. FGF21 Mediates Endocrine Control of Simple Sugar Intake and Sweet Taste Preference by the Liver. Cell Metab. 2016 Feb 9;23(2):335-43.

Song P et al. The Hormone FGF21 Stimulates Water Drinking in Response to Ketogenic Diet and Alcohol. Cell Metab. 2018 Jun 5;27(6):1338-1347.

 

グルカゴンは乳酸よりもグルタミンからの糖新生を増強する。

グルカゴンはグルタミンからの糖新生を増強する。
グルタミンは、グルタミン酸をへて、α-ケト酸に代謝され糖新生の材料となる。
グルカゴンは肝臓で乳酸経由よりもグルタミン分解経由の糖新生を増強する。

グルカゴンは、protein kinase Aの活性化およびそれに伴うendoplasmic reticulum からのカルシウム放出により、ミトコンドリアのα- ketoglutarate dehydrogenaseを活性化する。

グルタミン代謝の第1弾段階の酵素であるGlutaminase 2 (GLS2)のノックアウトマウスでは、空腹時のグルカゴンとグルタミンのレベルが高く、インスリン抵抗性の条件でも、空腹時血糖値が低い。

GWASの結果、GLS2のLeu581がproline に置換された polymorphismでは、空腹時血糖が高く血中グルタミン値が低い。このpolymorphismは、gain-of-function mutation である。

Miller RA et al. Targeting hepatic glutaminase activity to ameliorate hyperglycemia. Nat Med. 2018 Mar 26.

グルカゴンは中枢性に食欲を抑制し、肝糖放出を減少させる。

動物でグルカゴンの脳室内投与により食欲が抑制される。

内側基底視床下部 (mediobasal hypothalamus (MBH)) 、迷走神経背側核 (dorsal vagal complex (DVC)) へのグルカゴン注入は、肝糖放出を抑制する。グルカゴン受容体、PKA シグナリング、KATP channel を介している。

高タンパク食では低タンパク食に比べ、血中グルカゴン値が上昇するにもかかわらず、食後血糖値が増加しにくい。
DVCでグルカゴンシグナルをブロックすると、高タンパク食での食後血糖抑制が消失する。
インスリン、GLP-1、レプチンも、DVCを介して、血糖値と食行動を制御している。

Abraham MA, Lam TK. Glucagon action in the brain. Diabetologia. 2016 Jul;59(7):1367-71.

LaPierre MP, Abraham MA, Yue JT, Filippi BM, Lam TK. Glucagon signalling in the dorsal vagal complex is sufficient and necessary for high-protein feeding to regulate glucose homeostasis in vivo. EMBO Rep. 2015Oct;16(10):1299-307.


GLP-1、GIP、グルカゴンのtriple agonist の血糖値改善と体重減少効果

グルカゴンの生理作用 (2)

 ・インスリン、GABA、レプチン (leptin) は、グルカゴン分泌を抑制 する。insulin のParacrine 濃度は、2000-4000 μU/ml
・中枢神経系からも制御される。

グルカゴンはグルカゴン受容体を介して細胞内 cAMP濃度を上昇させ、Protein kinase A (PKA) を活性化する。
PKAは、糖新生に重要な glucose-6-phosphate、PEPCK の発現を増加させ、糖新生へ誘導する。
さらに、PKA は、cAMP-Responsive Element Binding Protein (CREBP)、peroxisome proliferator–activated receptor γ coactivator (PGC)1aを活性化する。
Salt-inducible kinase (SIK) 2 はPKAにより活性化される。SIK2 は、CREBP-regulated transcription coactivator 2 (CRTC2) をリン酸化し活性化する。

Pearson MJ, Roger H. Unger RH, Holland WL. Clinical Trials, Triumphs, and Tribulations of Glucagon Receptor Antagonists Diabetes Care 2016 Jul; 39(7): 1075-1077

Maruyama H, Hisatomi A, Orci L, Grodsky GM, Unger RH. Insulin within islets is a physiologic glucagon release inhibitor. J Clin Invest. 1984 Dec;74(6):2296-9.

グルカゴンの生理学的作用

夜間絶食後に肝臓は、10 g/hr グルコースを産生し、6 g が脳で、4 gが他の臓器で消費される。
basal hepatic glucose production の75%をグルカゴンが制御している1)。

"In the fasting state after overnight fast the liver must replace approximately 10 g of glucose per hour - 6 g used by the brain and the 4 g used by other tissues - about half of extracellular glucose pool. Since 75 per cent of this basal hepatic glucose production is glucagon mediated, glucagon may well be essential of life.”

グルカゴンは、脂肪組織の脂肪酸を肝臓でケトン体に代謝し、additional fuel として供給する。 
ストレス、飢餓ではケトン体の利用が重要となる。 

肝臓 
グリコーゲン分解 Glycogenolysis 
糖新生 Gluconeogenesis 
ケトン合成 Ketogenesis 

脂肪組織 
脂肪分解 Lipolysis 

筋肉 
グリコーゲン分解 Glycogenolysis 

カテコラミンはストレスや運動の際にグルカゴン分泌を促進し、インスリンレベルを下げる。 
カテコラミンによりインスリンレベルは下がるが筋肉の糖取り込みは低下しない。 

1) Unger RH, Orci L. Glucagon and the A cell: physiology and pathophysiology (first two parts). N Engl J Med. 1981 Jun 18;304(25):1518-24.


2) Joslin’s diabetes mellitus, Lippincott Williams & Wilkins 

2017/8/5

グルカゴンの視床下部を介した糖新生抑制作用

肝臓で、グルカゴンは、cAMP 上昇を介してグリコーゲン分解を促進、グリコーゲン合成を抑制、糖新生を促進する。1)
一方、視床下部にもグルカゴン受容体が発現しており、神経を介して肝臓の糖産生 (Hepatic glucose production) を抑制している。2)
 
Mediobasal hypothalamus (MBH) には、グルカゴン受容体、cAMP、PKA が発現している。
MBHにグルカゴンを注入すると、肝糖産生(hepatic glucose production, HGP) は抑制される。
末梢、中枢へのグルカコン注入は摂食量を落とす。
 
グルカゴンは末梢でインスリンの代謝作用に拮抗する。中枢では、摂食量や肝糖産生を抑制することにより、インスリンとグルカゴンは、グルコースとエネルギーホメオスターシス維持にはたらいている。

1. Joslin's Diabetes Mellitus, Lippincott Williams & Wilkins; 14版 

2. Hypothalamic glucagon signaling inhibits hepatic glucose production. Mighiu PI, Yue JT, Filippi BM, Abraham MA, Chari M, Lam CK, Yang CS, Christian NR, Charron MJ, Lam TK. Nat Med. 2013 Jun;19(6):766-72.

2018/12/12

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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