パルミトイル化GADとは

GADはパルミトイル化 (palmitoylation) と脱パルミトイル化を繰り返す。
ER ストレスにより、抗原性の強いパルミトイル化GADがゴルジ小体内に蓄積することが自己免疫反応の引き金となるかもしれない

γ-aminobutylyric acid (GABA)を合成するGlutamic Acid Decarboxylase (GAD)には、GAD65とGAD67があり、それぞれ別の遺伝子にコードされる。 GAD65抗体は、1型糖尿病の70-80%に認められる。

GADは、疎水性分子として細胞質で合成され、まずN末端がパルミトイルされる。
GADのパルミトイル化は、endoplasmic reticulum (ER)、ゴルジ小体への anchoring に必要である。
GADは、ゴルジ小体の acyltransferase によりcysteine 30と45にdouble palmitoylation を受けた後、ゴルジ小体膜にとりこまれる。さらにTrans-Golgi network (TGN) へソーティングされ、peripheral vesiclesへ移動する。
脱パルミトイル化を受けたGADは、ゴルジ小体へ逆行性に移動する。

ERストレス下で、ゴルジ小体内のパルミトイル化 GADが増加する。
パルミトイル化GADは、抗原提示細胞に取り込まれやすい。
GAD抗体陽性者と1型糖尿病患者では、正常コントロールに比べ、ゴルジ小体にパルミトイル化GADの集積が認められる。

Phelps EA et al. Aberrant Accumulation of the Diabetes Autoantigen GAD65 in Golgi Membranes in Conditions of ER Stress and Autoimmunity.Diabetes. 2016 Sep;65(9):2686-99.


SIRT1遺伝子変異は1型糖尿病を発症させる。

単一遺伝子が、自己免疫性1型糖尿病を発症させることを示した初めての報告、これまで単一遺伝子変異がインスリン治療を必要とする糖尿病を発症する報告はあるが (Wolfram syndromeなど)、自己免疫との関連で1型糖尿病を起こすものは報告されていなかった。

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GAD抗体陽性糖尿病(LADA、SPIDDM)のインスリン分泌低下

講演会を聞いてまとめです。GAD抗体陽性の糖尿病では、GAD抗体価が高く(> 10 IU/m)、抗体陽性数が多いとインスリン依存状態へ移行しやすい。一方、GAD抗体値1.5-10 IU/mlでは長期にわたりインスリン治療が不要な症例も多い。疾患抵抗性ハプロタイプを有しているとインスリン依存状態となりにくい。

まとめ
コマーシャルベースで測定できる自己抗体は4つ(GAD、IA2、IAA、ICA)
抗体陽性数が多いほどインスリン分泌が低下しやすい。
1型糖尿病抵抗性のHLAハプロタイプをもっていると、インスリン分泌低下がおこりにくい傾向がある。1)
 
欧米で使われるLADAと日本のSPIDDMはentityが異なる。LADAは発症様式に、SPIDDMはインスリン分泌低下に重きを置いている。(by Y. Dr)
 
発症時にインスリン非依存状態で抗GAD抗体の抗体価が10 IU/ml 以上であれば、インスリン治療がSU剤治療に比べインスリン依存状態への移行を抑制する。2)
 
GAD抗体値1.5-10 IU/mlでは長期にわたりインスリン治療が不要な症例が多い。
抗体価が1.5-10 IU/mlの症例の治療について2012年糖尿病学会のディベートでもとりあげられた。
UKPDSでは、年齢45歳未満では早期にインスリン治療が必要となることが報告されている。2)3)
 
1型糖尿病疾患感受性 HLAハプロタイプ4)
DQB1*0405-DQB1*0401
DQB1*0802-DQB1*0302
DQB1*0901-DQB1*0303
 
疾患抵抗性HLAハプロタイプ
DQB1*1501-DQB1*0602
DQB1*1502-DQB1*0601
 
1. Clinical, Autoimmune, and Genetic Characteristics of Adult-Onset Diabetic Patients With GAD Autoantibodies in Japan (Ehime Study) Diabetes Care June 2002 vol. 25 no. 6 995-1001 
疾患抵抗性ハプロタイプをもっているとインスリン依存状態になりにくい。
 
2. Insulin intervention in slowlyLADA progressive insulin-dependent (type 1) diabetes mellitus.
Maruyama T, Tanaka S, Shimada A, Funae O, Kasuga A, Kanatsuka A, Takei I, Yamada S, Harii N, Shimura H, Kobayashi T.J Clin Endocrinol Metab. 2008 Jun;93(6):2115-21. doi: 10.1210/jc.2007-2267. 

3. 2型糖尿病として発症したGAD抗体価低価の患者をどう扱うのか 糖尿病 55 Supplement 1: S-67
 
4. 1型糖尿病の疾患感受性遺伝子  糖尿病 42(10):817~819,1999

2013/06/02 糖尿病学会で聞いてきて追記しました。
劇症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病、急性発症1型糖尿病と関連するHLA (日本人のデータ)
 
急性発症1型糖尿病
DRB1*0405-DQB1*0401, 
DRB1*0802-DQB1*0302 
DRB1*0901-DQB1*0303 
 
DRB1*0405-DQB1*0401/DRB1*0802-DQB1*0302 genotype はオッズ比42.7となる。
DRB1*1501-DQB1*0602 DRB1*1502-DQB1*0601 は疾患抵抗性 (protective) のgenotype
 
同様の傾向が、 緩徐進行1型糖尿病に認められる
 
劇症1型糖尿病と急性発症で共通するgenotype はDRB1*0405-DQB1*0401 のみ。
DRB1*0405-DQB1*0401/DRB1*0405-DQB1*0401 genotype はオッズ比 11.2. 
 
DRB1*0901-DQB1*0303 はコントロール14.8%、急性発症1型糖尿病30.9%、劇症1型糖尿病23.8%、緩徐進行1型糖尿病24%で、オッズ比は急性発症1型糖尿病 2.3、劇症1型糖尿病1.8 (コントロールに比べ有意差なし)、緩徐進行1型糖尿病1.9 (有意差あり)
 
DRB1*0802-DQB1*0302、DRB1*0405-DQB1*0401/DRB1*0802-DQB1*0302、DRB1*1501-DQB1*0602 は劇症1型糖尿病と関連しない。
 
Kawabata Y. et al. Differential association of HLA with three subtypes of type 1 diabetes: fulminant, slowly progressive and acute-onset. Diabetologia. 2009 Dec;52(12):2513-21. doi: 10.1007/s00125-009-1539-9. Epub 2009 Oct 8. 




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カゼイン加水分解ミルクと膵島自己抗体

HLA genotype から1型糖尿病にかかりやすいとされる(susceptible) 新生児に、カゼイン加水分解ミルクを与えることで、膵島自己抗体の発現は抑制されたが、1型糖尿病の発症率は変わらず。
NEJM 2010年11月11日号にはフィンランドで行われたパイロットスタディの結果を掲載、より大規模のthe Trial to Reduce IDDM in the Genetically at Risk (TIGER) study が進行中でその結果を待つことになります。

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自己免疫性糖尿病とインスリン抗体 (IAA)、ZnT8抗体

10月に長崎大学川崎先生講演会で紹介された論文。この時ZnT8抗体についても詳しく紹介された。日本人で、インスリン抗体(IAA)IA2抗体、ZnT8抗体とGAD抗体とのオーバラップの割合についての論文です。

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ZnT8(SLC30A8) と糖尿病1

先日、長崎大学 川崎英二先生の講演を聞きました。1型糖尿病で、新しく自己抗原、ZnT8(SLC30A8) が注目されている事を知りました。
ZnT8(SLC30A8)は、インスリンの入ったvesicle の膜に発現した、亜鉛のトランスポーターで、SLC30A8のSNPsは、2型糖尿病のリスクアリルでもありました。まだ商業ベースにのっていないけれど、GAD抗体陰性でも、ZnT8抗体があるということでした。

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GAD抗体と糖尿病発症率―フィンランドのプロスペクティブスタディ

フィンランドで、1型糖尿病、2型糖尿病の患者家族4208人と、糖尿病家族歴のないコントロール768人でGAD抗体陽性者からの糖尿病の発症率をレトロスペクティブに検討した。

 

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1A型糖尿病と遺伝学の総説

Mechanisms of Disease: Genetics of Type 1A Diabetes
N Engl J Med 2009;360:1646-54. NEJM 4月16日号

簡約
1型糖尿病は、一般的には遺伝因子と環境因子の相互作用によって起こる。明らかな遺伝様式をもつ疾患として分けられるわけではない。

リンケージアナリシスから、6p21 (HLA region) が疾患関連のgenomic region としてあきらかになった。この部位は、Antigen-presenting molecular をエンコードする。
HLA ハプロタイプのもっとも高いリスクがあるのは、DR3-DQ2、DR4-DQ8で、20人に1人は15歳までに1型糖尿病を発症する。白人では、ハプロタイプの組み合わせは2.3%。

HLA region以外は
INS
CTLA4 (T-cell の成熟と抗原認識に関連)
PTPN22 ( lymphoid protein tyrosine phoshatase (LYP) をエンコードする)
IL2RA
との関連が指摘されている。

T cell receptor component であるCD3のモノクローナル抗体は、新規に1型糖尿病と診断された患者のインスリン分泌低下を遅らせる働きがある。

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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