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罹病歴の長い1型糖尿病患者におけるインスリン陽性細胞

罹病歴の長い1型糖尿病患者の膵臓には、β細胞が残存している。ジョスリンメダリストでは、剖検された68例全てにインスリン陽性のβ細胞が認められている。β細胞細胞の残存のメカニズムが考えられている。1)

残存するβ細胞のソースは以下の3つのメカニズムが考えられる。2)
・自己免疫システムの視点から
1型糖尿病ではエフェクターT細胞の増強 (expanded effector T cells)と制御性T細胞(Treg)の機能異常が認められる。エフェクターT細胞と制御性T細胞のバランスが変化している。

・β細胞の生存
β細胞のあるサブセットは、”sleeping” あるいは”dedifferentiated” なβ細胞となり自己免疫の攻撃をのがれている。3)

・β細胞の生成
-β細胞のreplication
-膵管/腺房細胞、他の膵内分泌細胞からのtransdifferentiation
-前駆細胞からのneogenesis

1型糖尿病患者で、Cペプチドが感度以下であってもproinsulinが分泌されている。残存したβ細胞ではホルモン産生は開始されるが成熟したインスリン、Cペプチドを分泌できないのかもしれない。4)

β細胞は不均一heterogeneous である。5)

1.Yu MG et al. Residual β cell function and monogenic variants in long-duration type 1 diabetes patients J Clin Invest. 2019 Jul 2;130.

2.Oram RA, et al. Beta cells in type 1 diabetes: mass and function; sleeping or dead? Diabetologia. 2019.

3.Rui J et al. β Cells that Resist Immunological Attack Develop during Progression of Autoimmune Diabetes in NOD Mice. Cell Metab. 2017 Mar 7;25(3):727-738.

4.Sims EK et al. Proinsulin Secretion Is a Persistent Feature of Type 1 Diabetes. Diabetes Care. 2019 Feb;42(2):258-264.

5.Dorrell C et al. Human islets contain four distinct subtypes of β cells. Nat Commun. 2016 Jul 11;7:11756.
β細胞は表面抗原CD9とST8SIA1によりβ1から4の4種類に分類され、β1(CD9-ST8SIA1-)で最もグルコース応答性インスリン分泌が良好であった。

β細胞は特有の分子の遺伝子発現を低下させ免疫的攻撃から逃れている

チェックポイント阻害薬によるインスリン依存性糖尿病

チェックポイント阻害薬によるインスリン依存性糖尿病は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体投与で生じ、患者の76%にHLA-DR4が認められた。

T細胞のPD-1は腫瘍細胞のPD-L1と結合し、T細胞のCTLA-4は dendritic cell のB7.1 (CD80)、B 7.2 (CD86) と結合する。

自己免疫性糖尿病を発症し始めたNODマウスのβ細胞で、PD-L1の発現増加が認められるが、CD80、CD86の発現は増加していない。CD80、CD86は、抗CTLA-4抗体のライガンドであるため、抗CTLA-4抗体ではインスリン依存性糖尿病発症が起こりにくいのかもしれない。

Stamatouli AM et al. Collateral Damage: Insulin-Dependent Diabetes Induced With Checkpoint Inhibitors. Diabetes. 2018 Aug;67(8):1471-1480

1型糖尿病のinsulin low 細胞

1型糖尿病のあるドナー(55人)とコントロール(10人)の比較、1型糖尿病の膵島には、インスリン含量の低いβ細胞 (insulin low 細胞)が存在する。
インスリンは、免疫染色で20倍長時間露光、コントラストなしで検知できるレベルである。

insulin low 細胞には、β細胞のマーカー(Pdx1、Nkx6.1、GLUT1、PC1/3)だけでなく、α細胞のマーカー(グルカゴン、ARX、GLP-1)も発現している。Pancreatic polypeptide、ソマトスタチン、グレリンを発現する細胞も認められる。insulin low 細胞が他のタイプの糖尿病にも認められるか更に検索が必要である。

NODマウスで報告されたbottom cell (Btm細胞)は、insulin low 細胞とは異なっている。
Btm細胞は、β細胞特有の遺伝子発現を低下させ免疫的攻撃から逃れている。Btm細胞では、インスリンとグルカゴン、インスリンとソマトスタチンの二重陽性細胞は認められていない。

insulin low 細胞と血中Cペプチドとは相関がない。今回のスタディで、血中Cペプチドは0.05 mg/mlからしか測定できないためかもしれない。
insulin low 細胞は、1型糖尿病の内因性インスリン分泌を増加させる薬物治療のターゲットとなりうる。

Lam CJ, et al. Low-Level Insulin Content Within Abundant Non-b Islet Endocrine Cells in Long-standing Type 1 Diabetes. Diabetes. 2019 Mar;68(3):598-608.

Rui J et al. β Cells that Resist Immunological Attack Develop during Progression of Autoimmune Diabetes in NOD Mice. Cell Metab. 2017 Mar 7;25(3):727-738.

1型糖尿病の膵臓でプロインスリンはタンパパクレベルで検出される。

1型糖尿病患者の膵臓で、インスリンとCペプチドはほとんど検出できないが、プロインスリンはタンパクベルで検出できる。 インスリンmRNAも認められる。

インスリン遺伝子の転写の際にみとめられる INS-IGF2のmRNAや、heterogenous nuclear RNAは検出されないため、インスリンプロモーターは silent な状態である。

インスリンは、プロインスリンからPCSK1、PCSK2、CPEにより生成される。
グルカゴンは、α細胞でPCSK2、CPEにより生成される。PCSK1は、α細胞には存在しない
1型糖尿病患者の膵臓で、PCSK1は低下、PCSK2とCPEは有意差なし。
PCSK1の低下はプロインスリンの存在を支持する結果である。

Persistence of Pancreatic Insulin mRNA Expression and Proinsulin Protein in Type 1 Diabetes Pancreata

β細胞は特有の分子の遺伝子発現を低下させ免疫的攻撃から逃れている

β細胞は、β細胞特有の遺伝子発現を低下させ、免疫的攻撃から逃れている。
NODマウスのβ細胞を経時的にFACSで解析しB6マウスと比較した。

Rui J et al. β Cells that Resist Immunological Attack Develop during Progression of Autoimmune Diabetes in NOD Mice. Cell Metab. 2017 Mar 7;25(3):727-738. 

2型糖尿病としてフォロー中に1型糖尿病を発症した症例(講演会のメモ)

セミナーで、地方会の症例を Discussion し、2型糖尿病の治療中に1型糖尿病を発症した2症例(劇症1型糖尿病と自己免疫性1型糖尿病)が提示された。
 
自己免疫1型糖尿病の症例は、過去にGAD抗体、IA-2抗体ともカットオフ以下で2型糖尿病の診断となっていたが血糖コントロール悪化、GAD抗体 500 IU/ml 以上で自己免疫性1型糖尿病の診断となった。
 
この症例では膵島自己抗体がカットオフ値以下であっても測定感度を超えて存在しているので、緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM) とも考えられるというコメントが、地方会であったとのこと。
 
劇症1型糖尿病診断基準は2012年に改訂され、診断以前に耐糖能異常が認められている症例も、劇症1型糖尿病と診断できるような註釈が付いた。
「劇症 1 型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は、必ずしもこの数字(発症時 HbA1c 8.7 % (NGSP 値) 未満)は該当しない」
 
まとめ
インスリン分泌が低下していく症例では、膵島関連自己抗体は継時的にチェックしてみることが必要。
2型糖尿病の診断でフォローしていても、劇症1型糖尿病を含めた1型糖尿病が発症することがある。
 
参考文献
1 型糖尿病調査研究委員会報告 ―劇症 1 型糖尿病の新しい診断基準(2012) 糖尿病55(10):815~820,2012

 

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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