1型糖尿病のneoepitope とautoreactive T cell

学術講演会の1型糖尿病のシンポジウムでは、Roep先生が、neoepitope の講演をされていた。neoepitopeはタンパク質翻訳後、スプライシングの異常やタンパク質の修飾により生じる

まとめ
1型糖尿病の自己抗原 1)
<膵島に存在する分子 naive autoantigen>
・insulin (NOD マウスでは B:9-23)
・proinsulin
・islet-specific glucose-6-phosphatase catalytic subunit–related protein (IGRP)
・Zinc transporter 8 (ZnT8)
・islet-amyloid polypeptide (IAPP)
・GAD65
・tyrosine phosphatase–like insulinoma- associated antigen 2 (IA-2)

<Neoepitope (アミノ酸への翻訳以後の修飾 post translational modification) 1)
・insulin A chain epitope
・defective ribosomal insulin gene product (DRiP) 
インスリンの翻訳開始部位の変異により生じる。thapsigarginは、ER内部のカルシウムを低下させERストレスを誘発する。DRiPは、thapsigargin による実験的なER ストレスで増加する。古典的なER stress では、misfolded proteins が増加する。
2)
・Tissue transglutaminase (tTG) substrate 
グルテンを脱アミド化した生成物が1型糖尿病感受性 HLA-DQ8cis/trans molecule と結合してautoantigen となる。
4)
・InsB30-C13
脱アミド化されたInsB30-C13はHLA-DQ2cis、HLA-DQ2trans、HLA-DQ8trans、HLADQ8cis全てと結合能を示す。
4)

1型糖尿病患者では制御性T細胞(Treg) の機能異常やエフェクターT細胞(Teff)の抵抗性があり、末梢での寛容(peripheral tolerance)に障害が認められる。1)

1型糖尿病患者のautoreactive T cells はproinflammatory cytokine profilesを示し、健常者では regulatory profilesを示す
InsB30-C13 対するautoreactive T cell は、1型糖尿病患者、健常者ともに存在する。
autoreactive T cellの反応は、1型糖尿病ではIFN-γを、健常者ではIL10を分泌する。4)

1型糖尿病のリスク遺伝子は免疫制御に関連する。
PTPN22 (encoding protein tyrosine phosphatase, non-receptor type 22) TCR signaling コントロール
CTLA4 (encoding cytotoxic T lymphocyte–associated protein 4) T 細胞の反応抑制
IL2RA (encoding the IL-2 receptor α-chain, IL-2Rα) Treg の反応と機能のコントロール

1. Pugliese A. Autoreactive T cells in type 1 diabetes. J Clin Invest. 2017 Aug 1;127(8):2881-2891.

2. Kracht MJ et al. Autoimmunity against a defective ribosomal insulin gene product in type 1 diabetes. Nat Med. 2017 Apr;23(4):501-507.

3. Wei J, Yewdell JW. Autoimmune T cell recognition of alternative-reading-frame-encoded peptides Nat Med. 2017 Apr 7;23(4):409-410.

4. van Lummel M, Duinkerken G, van Veelen PA, de Ru A, Cordfunke R, Zaldumbide A, Gomez-Touriño I, Arif S, Peakman M, Drijfhout JW, Roep BO. Posttranslational modification of HLA-DQ binding islet autoantigens in type 1 diabetes. Diabetes. 2014;63(1):237–247.

5. James EA, Pietropaolo M, Mamula MJ. Immune Recognition of β-Cells: Neoepitopes as Key Players in the Loss of Tolerance. Diabetes. 2018 Jun;67(6):1035-1042.
Neoepitopeの総説(Diabetes)

6. Strollo R, Vinci C, Napoli N, Pozzilli P, Ludvigsson J, Nissim A. Antibodies to post- translationally modified insulin as a novel biomarker for prediction of type 1 diabetes in children. Diabetologia 2017;60:1467–1474
Posttranslational modification により酸化インスリンに対する抗体が1型糖尿病発症前から認められる。


運動時のdual-hormone closed loop

dual-hormone closed loop は、single-hormone closed loopに比べ45分間の運動で低血糖が少ない。
血糖値70–180 mg/Lに入る時間はsingle-hormone closed loop、dual-hormone closed loop で有意差なし。
Closed-loop では心拍センサーと加速度センサーが搭載され運動時に適したアルゴリズムが使われている。

まとめ
大人の1型糖尿病20人、
・dual-hormone closed loop
・single-hormone closed loop
・predictive low glucose suspend (Medtronic 640G)
・continuation of current care
の4つのアームで運動時の血糖コントロールを比較した

午後2時から60% VO2max のトレッドミル45分間運動を4日間続ける。
Wearable Sensorsを使用する。CGMデータは参加者にはblind で、安全のためremote monitor される。
Current care では、運動前にインスリン量の自己調節が許可されている。

dual-hormone closed loop、single-hormone closed loop では、ZephyrLife BioPatch の心拍モニターと加速度センサーを取り入れ、運動に適したアルゴリズムを使用する。運動が開始されたのち、インスリンは30分中止、その後60分は通常インスリン注入の50%がおこなわれる。

dual-hormone closed loop は、single-hormone closed loopに比べ45分間の運動での低血糖と4日間の低血糖頻度が少ない。

血糖値70–180 mg/Lに入る時間は single-hormone closed loopで一番長いが、dual-hormone closed loop と有意差なし。predictive low glucose suspend、continuation of current care が続く。

current care は、dual-hormone closed loop と同等に低血糖が少ない。
運動前のインスリン自己調整が、Current care のみ許可されていたためで、患者教育の重要性を示している。

single-hormone closed loop も血糖値70–180 mg/Lに入る時間が長く良い結果を示している。
グルカゴンは毎日溶解して作成する必要があり、吐き気の副作用についても考慮しなければならない。

Castle JR et al. Randomized Outpatient Trial of Single- and Dual-Hormone Closed-Loop Systems That Adapt to Exercise Using Wearable Sensors. Diabetes Care. 2018 May 11. pii: dc180228. doi: 10.2337/dc18-0228. [Epub ahead of print]
 

1型糖尿病妊婦のCGMは新生児のhealth care outcomeを改善する。

1型糖尿病妊婦のCGM 群とコントロール (masked sensor) の比較、母親の血糖値はより長く正常域に入り、新生児低血糖、NICU入室、児の入院期間が少ない。

まとめ
1型糖尿病妊婦のCGM 群とコントロール(masked sensor) の比較、primary endpointはランダム化から妊娠34週のA1Cの変化、secondary endpointは
両群とも食事前後、就寝前血糖測定を行う。

母親で
妊娠34週時、血糖値63-140 mg/dl に入る時間が長い。
ランダム化から妊娠34週のA1Cの変化は、home glucose monitoring 比べわずかに低下

新生児で
Large for gestational date の減少
NICUへ24時間以上の入室率の低下
低血糖の減少
入院期間1日短縮
が認められた。

Continuous glucose monitoring in pregnant women with type 1 diabetes (CONCEPTT): a multicentre international randomised controlled trial
 

運動中及び運動後のClosed-loopの実績

運動時のClosed-loopの使用成績、運動後の血糖値はopen-loop に比べ、血糖値70-180 mg/dl に入る時間が長い。

まとめ
病院内で、運動強度 55% of V O2max あるいは55% VO2 max と80%VO2maxの組み合わせで約40分間の運動を行う。

運動中は15分ごと、運動後2時間は30分ごとの採血、運動後4時間はbasal insulin を20%減量する。
運動を行う日の15時から翌日13時までClosed-loopでインスリンを投与し、運動は16:30 から 19:30 の間に開始する。
ソフトウエアは、laptop/tablet computer (ThinkPad) に搭載されている。

プライマリーエンドポイントである血糖値60 mg/dl 未満の時間は有意差なし。
Closed-loop では、血糖値70-180 mg/dl に入る時間が長い。
運動のプロトコールにかかわらず夜間血糖値は、93%の時間で血糖値70-180 mg/dl にはいっていた。

Closed-loop glucose control in young people with type 1 diabetes during and after unannounced physical activity: a randomised controlled crossover trial

1型糖尿病の膵臓でプロインスリンはタンパパクレベルで検出される。

1型糖尿病患者の膵臓で、インスリンとCペプチドはほとんど検出できないが、プロインスリンはタンパクベルで検出できる。 インスリンmRNAも認められる。

インスリン遺伝子の転写の際にみとめられる INS-IGF2のmRNAや、heterogenous nuclear RNAは検出されないため、インスリンプロモーターは silent な状態である。

インスリンは、プロインスリンからPCSK1、PCSK2、CPEにより生成される。
グルカゴンは、α細胞でPCSK2、CPEにより生成される。PCSK1は、α細胞には存在しない
1型糖尿病患者の膵臓で、PCSK1は低下、PCSK2とCPEは有意差なし。
PCSK1の低下はプロインスリンの存在を支持する結果である。

Persistence of Pancreatic Insulin mRNA Expression and Proinsulin Protein in Type 1 Diabetes Pancreata

1型糖尿病で、異なるopen reading frame で読み込まれたインスリン遺伝子由来のペプチドが抗原性をしめす。

インスリン遺伝子がリボゾームで異なるopen reading frameで読み込まれ生じたタンパク(defective ribosomal products, DRiP) は、プロテアソームで分解されペプチドとなりendoplasmic reticulum に移動する。

DRiP は、MHC class II molecule HLA- DQ8cis、HLA-DQ8trans および MHC class I molecule HLA-A2と結合能を示す
DRiPはCD8+ T cell のターゲットとなる。

Kracht MJ et al. Autoimmunity against a defective ribosomal insulin gene product in type 1 diabetes. Nat Med. 2017 Apr;23(4):501-507. 

Wei J, Yewdell JW. Autoimmune T cell recognition of alternative-reading-frame-encoded peptides Nat Med. 2017 Apr 7;23(4):409-410. 

#1型糖尿病の成因 # Etiology of T1DM #DRiP
2018/06/03 改定


β細胞は特有の分子の遺伝子発現を低下させ免疫的攻撃から逃れている

β細胞は、β細胞特有の遺伝子発現を低下させ、免疫的攻撃から逃れている。
NODマウスのβ細胞を経時的にFACSで解析しB6マウスと比較した。

Rui J et al. β Cells that Resist Immunological Attack Develop during Progression of Autoimmune Diabetes in NOD Mice. Cell Metab. 2017 Mar 7;25(3):727-738. 

MiniMed640GはSAPに比べ低血糖を減少させる。

予測低血糖マネージメント predictive low-glucose management (PLGM) 機能を搭載したMiniMed640Gは、sensor-augmented insulin pump (SAP)に比べ、夜間及び日中の低血糖イベントを減少させる。小児で、14日間のスタディ。

Tadej Battelino et al. Prevention of Hypoglycemia With Predictive Low Glucose Insulin Suspension in Children With Type 1 Diabetes: A Randomized Controlled Trial Diabetes Care 2017 Mar; dc162584. 

リブレ Libre は、血糖値70mg/dlの時間を減少させる。

リブレ(Libre) は、皮膚に挿入したセンサーにかざすだけで血糖値をモニターできる。(flash sensor-based monitoring)
1型糖尿病、
A1C 7.5% 未満、リブレ 120人、SMBG 121人、6ヶ月の使用の比較、プライマリーアウトカムは血糖値70mg/dl 未満の時間とした。全例がリブレをマスクモードで14日間使用しベースラインデータとする。

ランダマイズ後、リブレ群は血糖値データーを見ることができる。希望があればデバイスソフトウエアを使って自宅で血糖値レビューを行う。コントロール群はマスクモードのままSMBGを行う。

血糖値 70mg/dl 未満の時間
Libre 3.38 h/day → 2.03 h/ day (38% 減少)
SMBG 3.44 h/day → 3.27 h/day

リブレ群では1日あたり、血糖値を15.1回見ており、SMBG群では5.6回測定している。
終了時のインスリン使用量、basal/bolus insulin ratio、HbA1Cは両群で差はない。
血糖コントロールの良い1型糖尿病でリブレは血糖値70mg/dlの時間を減少させた。

Bolinder J et al. Novel glucose-sensing technology and hypoglycaemia in type 1 diabetes: a multicentre, non-masked, randomised controlled trial. Lancet. 2016 Nov 5;388(10057):2254-2263. 

血糖コントロールの良い1型糖尿病でも、Closed-loop system は血糖値がターゲットレンジに入る時間を長くする。

 ケンブリッジ大のグループ、コントロールの良い1型糖尿病患でも、Closed-loop system は従来型のポンプに比べ、血糖値がターゲットレンジに入る時間が長くなる。

まとめ
1型糖尿病29人、A1C 7.5%未満、Closed-loop system と従来型のポンプの4週間のクロスオーバースタディ、腎症、神経障害、増殖性網膜症、総インスリン量が2U/kgを超える人は除外する。

Closed-loopでは、従来型ポンプに比べ、target range に入る時間が10.5% 長くなり、低血糖の時間が少ない。
特に夜間で血糖値63 mg/dl (3.5 mmol/l) 未満となる血糖面積を89%減少させた。

Day-and-night glycaemic control with closed-loop insulin delivery versus conventional insulin pump therapy in free-living adults with well controlled type 1 diabetes: an open-label, randomised, crossover study

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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