心不全治療薬 sacubitril/ valsartan は、enalapril に比べ、A1cを改善する。

PARADIGM-HFのpost-hock analysis で、心不全治療薬sacubitril/ valsartan は、enalapril に比べ、A1cを改善していた。 インスリンに新規導入率は、sacubitril/ valsartan 群で低い。

sacubitrilは、neprilysin を阻害する。
neprilysinはneural endopeptidase で、natriuretic peptide、bradykinin、angiotensin I 及び II、glucagon-like peptide 1(GLP-1) を分解する。

natriuretic peptide では、脂肪酸化促進、アディポネクチン放出促進、筋肉のoxidative capacity 増強作用が認められている。
BNPの注入により血糖値が低下する。
bradykinin は、脂肪融解抑制し、インスリン感受性を改善する。
高脂肪食のneprilysin を発現しないマウスでは、血中GLP-1値が上昇し、糖負荷試験の血糖値が低下する。

Seferovic JP et al. Effect of sacubitril/valsartan versus enalapril on glycaemic control in patients with heart failure and diabetes: a post-hoc analysis from the PARADIGM-HF trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 May;5(5):333-340

McMurray JJ et al. Angiotensin-neprilysin inhibition versus enalapril in heart failure. N Engl J Med. 2014 Sep 11;371(11):993-1004.


Gerstein HC et al. The hemoglobin A1c level as a progressive risk factor for cardiovascular death, hospitalization for heart failure, or death in patients with chronic heart failure: an analysis of the Candesartan in Heart failure: Assessment of Reduction in Mortality and Morbidity (CHARM) program. Arch Intern Med. 2008 Aug 11;168(15):1699-704. 
HbA1Cと心不全による入院は関連する

Willard JR ET AL. Improved glycaemia in high-fat-fed neprilysin-deficient mice is associated with reduced DPP-4 activity and increased active GLP-1 levels. Diabetologia. 2017 Apr;60(4):701-708
 

生下時低体重のリスクアリルを持つ低体重は、2型等発症リスクが増加する

生下時体重に関連する7つのSNPsが知られている。このうちADCY5、CDKAL1は2型糖尿病との関連が指摘されている。

他の5つのSNPsより算出したgenetic risk score (GRS) および個々のSNPs と2型糖尿病の関連を検討した。
さらにMendelian randomization analysisで、2型糖尿病に対する生下時低体重の potential causal effect size を解析した。

GRSが1ポイント上昇するごとに2型糖尿病リスクは6%増加する。

CCNL1 rs900400、5q11.2 rs4432842 は、2型糖尿病と、dose–response association を認めた。

Mendelian randomization analysis で、genetically determined birth weight の1SD 低下に対する2型糖尿病のオッズ比は、2.94となった。

低体重だけでは2型糖尿病のリスクとならないかもしれないが、子宮内発育に影響する状況にさらされることが2型糖尿病の発症原因となるのかもしれない。

“Notably, birthweight itself may not be an exposure relevant to type 2 diabetes; instead, the exposures influencing intrauterine growth are more likely to play a causal role in the development of the disease."

Wang T et al. Low birthweight and risk of type 2 diabetes: a Mendelian randomization study Diabetologia 2016 Sep;59(9):1920-7

DPP開始15年後、ライフスタイル 介入群は糖尿病発症 27%減

 DPP (1996年-2000年) 15年後のフォローアップ

糖尿病発症予防 (プラセボとの比較)
ライフスタイル 介入 27%減
メトフォルミン18%減

ライフスタイル介入は、DPP開始から10年後で、34%の糖尿病発症リスク減だったので、ライフスタイル介入の優勢性は時間とともに減少し、メトフォルミンの値に近づいている。
メトフォルミンは糖尿病予防のlow-cost drug

Long-term effects of lifestyle intervention or metformin on diabetes development and microvascular complications over 15-year follow-up: the Diabetes Prevention Program Outcomes Study Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Nov;3(11):866-75

糖尿病と死亡率

 2型糖尿病では、低年齢、血糖コントロール悪化、腎合併症の重症度に比例して死亡率が上昇する。

2型糖尿病と死亡率
スウェーデンの研究、 糖尿病4.6年、コントロール4.8年のフォローアップ
43万人の登録者のうち、77000人に糖尿病がある。

HbA1c 6.9%未満のハザード比
         全死亡     心血管死
55歳未満      1.92      2.18
75歳以上      0.95      0.92

A1c 6.9%未満、正常アルブミン尿では 
55歳未満.       1.60
55~75歳      0.87
75歳以上      0.76

血糖値コントロールが良く正常アルブミン尿であっても、55歳未満では死亡リスクが高い。
若年者こそ、血圧、資質管理が重要で微量アルブミン尿をさける。
55歳未満、A1c 6.9%未満の2型糖尿病の死亡率リスク上昇は約2倍で、1型糖尿病と同等 2)

正常アルブミン尿であれば、死亡率はコントロールに比べ、65から75歳未満、75歳以上で低い
75歳以上の高齢者で、A1c7.8%未満まで死亡率がコントロールに比べ低い。

フォローアップ期間の最後7年では最初7年と比べ、全死亡、心血管死ともに低下している。(time interaction)

平均A1Cが高いと死亡率も増加
年齢によらず腎保護は重要
55歳未満で、stage 5 CKDがあれば死亡率は15倍となる。

55歳未満の死亡率を減らすためには、
・厳格な血圧コントロール
・スタチンの処方
・よい血糖値にもちこむこと(targetting of good glycemic control)
だけでは不十分で、

・禁煙、
・physical activity をあげる
・新たに心保護作用のある薬剤を開発する(スタチンを服用できない場合の代替薬など)
ということが必要となってくる。

1. Tancredi M1, Rosengren A, Svensson AM, Kosiborod M, Pivodic A, Gudbjörnsdottir S, Wedel H, Clements M, Dahlqvist S, Lind M. Excess Mortality among Persons with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015 Oct 29;373(18):1720-32. doi: 10.1056/NEJMoa1504347.

2. M Lind, AM Svensson, M Kosiborod. Glycemic control and excess mortality in type 1 diabetes. N Engl J Med2014;371:1972-1982

スウェーデンの研究、1型糖尿病 平均年齢35.8歳、フォローアップ8年
A1C 6.9%かそれ以下では一般人口に比べ死亡率、心血管死亡率は matched control に比べ2倍、血糖コントロール不良例ではさらに高い。

1型糖尿病と死亡率

スウェーデンの研究、1型糖尿病で、A1C6.9%かそれ以下では一般人口に比べ死亡率、心血管死亡率は matched control に比べ2倍、血糖コントロール不良例ではさらに高い。

       年齢(歳)フォローアップ(年)
1型糖尿病   35.8     8.0
コントロール   35.7                8.3

       ハザード比     
           全死亡  心血管病死亡
A1c 6.9%未満       2.36          2.92
A1c 7.0~7.8%       2.38          3.39
A1c 7.9~8.7%       3.11          4.44
A1c 8.8 ~ 9.6%     3.65          5.35
A1c 9.7%~            8.51         10.46

この研究では、血糖コントロールのよい1型糖尿病で、心血管死、全死亡がコントロールに比べ増加する理由は未解明としている。

M Lind, AM Svensson, M Kosiborod, Glycemic control and excess mortality in type 1 diabetes. N Engl J Med2014;371:1972-1982

Diabetes won't change my life

イギリスの内務大臣、Theresa Mayは、去年の年末に1型糖尿病を発症した。BBCのインタビューで、1型糖尿病発症後も普通に生活していると話しています。
 
"自分は、幸運にも人生の後半に発症した。子供にとってはとても困難なことに違いない。"
 
"普通の生活を送ることができます。突然、生活を大きく変えたり、ほかの人たちができることを、あなたがやめたりする必要はない。"
 
”学校や職場の人々は、(1型糖尿病のある患者が)普通に働き、病気をうまくやり過ごし、とても普通の生活を送ることができることを理解していく必要がある。”

Mrs May added: "I'm fortunate I developed this condition later on in life. It must be really difficult for young children.
"You are able to live a normal life. This is not something that suddenly your life is going to have to change dramatically or stop you doing things other people can do.
"Schools and workplaces need to recognise this is something people can work with and manage and live a very normal life."
 
Theresa May: Diabetes won't change my life
http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-24539919
 

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

ニコチンとインスリン抵抗性

ニコチンがIRS-1 Ser636リン酸化を介してインスリン抵抗性をもたらすという報告です。(Diabetes 12月号)Comment では、ニコチンの食欲抑制作用、エネルギー消費亢進作用にもふれられています。

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

糖尿病が直るとは

大幅に体重を減らすなどで血糖値が正常化した場合、糖尿病が治ったと言えるのか?という点に対するADA consensus group の見解です。肥満手術の論文に引いてありました。

まとめ
糖尿病のような慢性疾患を治癒 (cure)とするのは不正確
“For a chronic illness such as diabetes, it may be more accurate to use the term remission than cure. “

生涯続く寛解(remission) を治癒とする。

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

肥満手術のまとめ

11月12日にNHKの「クーズアップ現代」で、肥満手術の放送があり、胃を袖状に切除するSleeve gastrectomy について初めて知りました。番組で取り上げられた施設では2年で約80症例、8割以上で血糖値が正常化するとのこと。副作用としては逆流症状の強い人などを取り上げていました。
NEJM誌4月26日号のsleeve gastrectomy の報告で、逆流症状についてはあまりふれられていないので、日本人をふくめた結果の蓄積が必要なのかと思いました。

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

糖尿病治療の200年(Dr. Polanski のレビュー)

NEJM 誌の「糖尿病治療の200年」というレビューです。
臨床概念 (Clinical entity)として"Diabetes" が用いられたのが、1812年のNew England Journal of Medicineで、それから今年は200年目となります。
まとめ
19世紀中頃、Claude Bernard は、血糖が、食事の炭水化物だけでなく肝臓にも制御され、肝臓は、non glucose precursor から、グルコースを作り出すことを示した。
 
1921年、Frederick Banting とCharles Best は、犬の膵臓の抽出物で糖尿病を誘導した犬の治療に成功 
 
James Collip と、John Macleod は、牛の膵臓からインスリンを純化して、糖尿病患者の治療に成功した。
 
1922年 インスリンが、1型糖尿病の少女に投与された。
 
1923年 Frederick Banting、 John Macleodは、ノーベル賞を受賞
 
1958年、Frederick Sangerは、インスリンのアミノ酸配列を決定した。
 
ビタミンB12の構造解析でノーベル化学賞を受賞していたDorothy Hodgkinは、インスリンの三次元結晶構造を決定した。インスリンは、3次元結晶構造が決定された最初のホルモンである。
 
1959年、Rosalyn Yalow 、 Solomon Bersonにより、インスリンの radioimmunoassay の開発が行われ、膵β細胞機能の定量評価が可能となった。
 
1967年、Donald Steiner は、single-chain のproinsulin が切断されて、二つのpolypeptide からなるインスリンが生成されることを見出した。
 
治療につかわれるインスリンは、ホルモンの中ではじめて、recombinant DNA technology により合成された。
そのほか、DCCT、UKPDS、Steno-2、ACCORDなど臨床研究の成果、治療のあゆみについて書かれています。
 
1. The Past 200 Years in Diabetes Kenneth S. Polonsky, M.D. N Engl J Med 2012; 367:1332-1340

2. Claude Bernard Pioneer of Regulatory Biology Eugene D. Robin, MD JAMA. 1979;242(12):1283-1284. doi:10.1001/jama.1979.03300120037021. 

11月は、World diabetes month 、11月14日は、インスリンを発見したDr. Banting の誕生日で、世界糖尿病デーとなっています。今年やインスリンがヒトに投与されて90年目です。
 
医師ブログ20100203

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
110位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
14位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム