肝臓のグリコーゲンの蓄積は、低血糖に対するエピネフェリン、グルカゴンの反応を増強する。

犬での実験、門脈にフルクトースとインスリン、ブドウ糖を持続注入し肝臓のグリコーゲン含量を増加させた後、低血糖を誘導する。
肝臓のグリコーゲンが増加する処置の後で、低血糖誘発時のエピネフェリン、グルカゴン反応が増強され肝糖放出は増加する。
肝臓の神経切除後では、低血糖時のエピネフェリン、グルカゴンの反応増加は認められない。

肝細胞のグリコーゲン蓄積は、Liver-brain counterregulatory axis を制御しているが、そのメカニズムは明らかになっていない。
視床下部のAMP-activated protein kinase (AMPK) 活性化が、急性低血糖時のエピネフェリン、グルカゴンの反応を増強する。
肝グリコーゲン蓄積がAMPK The172 のリン酸化を活性化することが報告されている。肝AMPKが低血糖時のグルカゴン、エピネフリン分泌に関与しているかもしれない。

Winnick JJ et al. Hepatic glycogen can regulate hypoglycemic counterregulation via a liver-brain axis J Clin Invest. 2016 ‪Jun 1‬; 126(6): ‪2236–2248‬.‬

McCrimmon RJ et al. Key role for AMP-activated protein kinase in the ventromedial hypothalamus in regulating counterregulatory hormone responses to acute hypoglycemia Diabetes. 2008 Feb;57(2):444-50. Epub 2007 ‪Oct 31.‬ ‬
視床下部のAMP-activated protein kinase (AMPK) 活性化が、急性低血糖時のエピネフェリン、グルカゴンの反応を増強する。視床下部のAMPK 活性化はコルチゾール corticosterone の反応に影響しない。


 

低血糖と不整脈(2)

低血糖時の心筋細胞
低血糖時の低カリウム血症やカテコラミン分泌による細胞内カルシウム上昇が不整脈の原因となる。
 
細胞内カルシウム濃度上昇
カテコラミンにより、細胞内カルシウム濃度が上昇し、心室性頻脈、心室細動の原因となる。1)
 
低カリウム血症
インスリン負荷試験による低血糖では血中カリウム値が低下する。インスリンおよびカテコラミンが、(Na+-K+)-ATPase を活性化し、細胞内にカリウムが取り込まれ、低カリウム血症となる。2)
低カリウム血症は、QT時間延長および心筋細胞内のCa overload の原因となる。
 
 K+ current 抑制
心筋細胞の再分極 repolarizationでは、K+ currentが認められる。
低血糖時は、K+ currentが抑制され、活動電位が延び (prolonged action potential)、QT時間延長と心室性頻拍症の原因となる。2)
 
1. Nordin C. The case for hypoglycaemia as a proarrhythmic event: basic and clinical evidence
Diabetologia, 2010, 53:1552–1561

2. Petersen KG, Schlüter KJ, Kerp L.Regulation of Serum Potassium During Insulin-induced HypoglycemiaDiabetes. 1982 Jul;31(7):615-7.


低血糖と低カリウム血症

低血糖で血中カリウム値は低下する。
糖尿病家族歴のない男性8人、プロプラノロールかプラセボを服用し、2時間後に、Insulin Torrance Test を行った。
 
プロプラノロール、プラセボ服用群ともに、25分後までカリウムは低下、プロプラノロール服用群ではカリウム値は上昇するが、プラセボでは45分までカリウム値は低下する。
 
インスリン投与25分から30分後に血糖値30mg/dl をきり、エピフネフェリンが分泌される。
 
インスリン負荷後30分から45分までのカリウム値の低下はエピネフェリン上昇による β-adrenal receptor stimulation のためである。
 
インスリンは筋肉細胞で、ナトリウムの透過性をあげpHを上昇させる。その結果、(Na+-K+)-ATPase が活性化され、細胞内にカリウムが流入し低カリウム血症となる。
カテコラミンも、ラットの soleus muscle で、glucose-free bicarbonate溶液中では、(Na+-K+)-ATPaseを活性化する。
 
1. Petersen KG, Schlüter KJ, Kerp L. Regulation of Serum Potassium During Insulin-induced Hypoglycemia Diabetes. 1982 Jul;31(7):615-7.

 

低血糖と不整脈(1) 迷走神経の過度の代償による徐脈がおこる

インスリン治療中の2型糖尿病25人、日中と夜間で、正常血糖と低血糖を比較した。
 
除脈、上室性および心室性異所性収縮 (atrial and ventricular ectopic count ) は夜間低血糖で正常血糖に比べ起こりやすい。
 
除脈の頻度は、日中は低血糖と正常血糖で差はないが、夜間低血糖で正常血糖にくらべ8倍のリスクとなる。
低血糖ではQTc が延長し、T波は低血糖から正常血糖値に戻るにつれ平坦化する
 
低血糖ではまず交感神経反応 (sympathetic nerve response) が起こったのち、過度の迷走神経による代償 (vagal nerve compensation) となり、徐脈や不整脈の原因となる。 
 
夜間はグルコースに対するcounter regulationが低下し低血糖が遷延しやすい。
 
夜間、低血糖で正常血糖に比べ除脈リスクが高いのは、迷走神経による過度の代償作用が想定されている。
 
1. Chow E, Bernjak A, Williams S, Fawdry RA, Hibbert S, Freeman J, Sheridan PJ, Heller SR. Risk of Cardiac Arrhythmias During Hypoglycemia in Patients With Type 2 Diabetes and Cardiovascular Risk Diabetes. 2014 May;63(5):1738-47.

2. Clark AL, Best CJ, Fisher SJ. Even Silent Hypoglycemia Induces Cardiac Arrhythmias. Diabetes. 2014 May;63(5):1457-9.

 
 

低血糖と心血管病

救急外来を受診する重症低血糖症では、重症高血圧、低カリウム血症、QT延長、低体温症などが認められ、2型糖尿病では1.8%(6例)が死亡の転帰となった。(Diabetes Care on line first)

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

低血糖に由来する自律神経障害(2)(Hypoglycemic-associated autonomic failure)

HAAFのレビューです。先行する低血糖は、交感神経の活動性を低下させる。グルカゴン分泌不全は神経支配とは独立した、膵島内インスリンシグナルの欠乏が原因と考えられている。一般的に使用可能なのはアミノ酸、カフェインくらいですが、拮抗ホルモン分泌低下を防ぐ薬剤も報告されている。

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

低血糖と糖尿病(ADA workshop のレポート)

低 血糖についてADA workshop のリポートです。低血糖の認知機能低下について良く書いてありました。DCCTの登録者のように合併症のない1型糖尿病で、重症低血糖が18年後の認知機 能低下と関連していない。ACCORD-MIND でも低血糖の頻度が3倍高い強化療法群は従来療法群に比べ認知機能に差がなかった。可逆性の重症低血糖が、将来の認知機能に結びつくという evidence はないようです。


続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

低血糖と心血管イベント

今日のアログリプチンの講演会で示された論文、低血糖と心血管イベントについて明確に書かれているかと思ったが、そう明確ではなかった。低血糖が明らかに死亡率を上昇させているのかは大規模スタディで示されていない。低血糖が血管内皮障害を起こし心血管イベントリスクをあげる可能性について述べられています。

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

低血糖に由来する自立神経障害

大部分の1型糖尿病と、多くの2型糖尿病では、低血糖時に、counter regulation がおこりにくく、交感神経活性低下などから低血糖を自覚しにくい。低血糖を繰り返している場合におこりやすい。低血糖に関連しておこる自律神経障害 (Hypoglycemia-Associated Autonomic Failure)としてレビューされています。

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

脳内のブドウ糖濃度は、血中の 20-30%、低血糖時に非糖尿病者と 1型糖尿病で違いはない

Diabetes 8月号の論文、非糖尿病者と 1型糖尿病で、低血糖時に脳内ブドウ糖濃度に差はないという結果です。
これまでの報告も、非糖尿病者と 1型糖尿病で、低血糖時のブドウ糖濃度に差が見られないというものが多い。

無自覚低血糖の原因の一つとして、低血糖の後に脳内のグルコース濃度が上がっているか変わらないために、低血糖を自覚しにいとい仮説があり、コメントでは、今後、無自覚低血糖のある場合についても検討をしてほしいということでした。

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
110位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
14位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム