希少糖 D-alulloseは、GLP-1分泌を促進し迷走神経を介して食欲を抑制する。

日本では希少糖として知られる D-allulose が、マウスでGLP-1分泌を促進し、迷走神経を介して食欲を抑制するという報告です。糖負荷試験前のD-alluloseの経口摂取は血糖値を低下させる。インスリン負荷テスト前のD-allulose 投与では、迷走神経を介して肝糖産生抑制も認められる。他の甘味料では、Sucraloseがヒトの糖負荷試験前の摂取で血糖値が低下させGLP-1分泌を増加させると報告されている。

D-allulose はGLP-1分泌を促進する
D-allulose はマウスの摂餌量をコントロールに比べ減少させる。
D-allulose 1g/kg 経口服用後、門脈内活性型GLP-1濃度は30分後に上昇し、1から2時間でプラトーに達する。
糖負荷試験60分前に D-allulose 1g/kg 経口で投与した結果、0分の血糖値および負荷後血糖値が低下する。
高脂肪食マウスで、インスリン1.5 IU/kg 負荷では、 D-allulose 1g/kg 60分前投与により、インスリン負荷30分後の血糖値がコントロールに比べ低下する。D-allulose 経口投与後のピルビン酸負荷試験で血糖値が低下するのため、D-allulose 経口投与により肝糖産生が抑制されている。
D-allulose は、blood-brain barrier を通過しない。

sucralose は、健常者で炭水化物の存在時にGLP-1 分泌を促進する。
健常者で、sucralose 15分前に服用した後におこなった糖負荷試験では、グルコースの the total area under the curve (AUC) が生理食塩水よりも低下し、GLP-1 AUCが増加する。
aspartameではグルコースのAUCの変化はない。
2型糖尿病では、糖負荷試験前のsucralose によるグルコースの AUC低下は認めない。

1. Iwasaki Y et al. GLP-1 release and vagal afferent activation mediate the beneficial metabolic and chronotherapeutic effects of D-allulose Nat Commun. 2018 Jan 9;9(1):113. doi: 10.1038/s41467-017-02488-y.

2. Temizkan S et al. Sucralose enhances GLP-1 release and lowers blood glucose in the presence of carbohydrate in healthy subjects but not in patients with type 2 diabetes Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):162-6. 

3. Wu T et al. Effects of different sweet preloads on incretin hormone secretion, gastric emptying, and postprandial glycemia in healthy humans. Am J Clin Nutr. 2012 Jan;95(1):78-83. 

4. Ingestion of Diet Soda Before a Glucose Load Augments Glucagon-Like Peptide-1 Secretion Diabetes Care 2009 32 (12) 2184-2186
ダイエットコーラには人工甘味料sucralose、acesulfame-Kが含まれていて、糖負荷試験10分前にダイエットコーラ240mlを飲ませたところ、血糖値に差はないが、GLP-1のarea under the curve (AUC) は増加した

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進

脂質は、腸管内腔側 (apical site) のFFA1 (GPR40) やGPR119 を介してGLP-1、GIPを分泌することが知られている。
長鎖脂肪酸はFFA1を、モノアシルグリセロール、特に2-オレオイルグリセロールは、GPR119 を 活性化する。

カイロミクロンは、マウス十二指腸培養細胞やプログルカゴン遺伝子由来産物を産生する培養細胞 (GLUTag)で、GLP-1およびGIP分泌を刺激する。

カイロミクロは腸管細胞で合成される。カイロミクロンの中性脂肪は、血管内皮に存在する lipoprotein lypase (LPL) により長鎖脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解される。

GLUTag で、LPLの抑制やFFA1の阻害によりカイロミクロンのインクレチン分泌促進作用は低下する。
またカイロミクロンよりGLUTag 細胞内カルシウム濃度が上昇する。

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進には、毛細血管側(basolateral site) のFFA1あるいは他の脂質受容体が関与している可能性がある。

カイロミクロンはCCK上昇を介してGLP-1分泌を促進することも報告されている。

Psichas A et al. Chylomicrons stimulate incretin secretion in mouse and human cells Diabetologia. 2017 Dec;60(12):2475-2485

Ekberg JH et al. GPR119, a major enteroendocrine sensor of dietary triglyceride metabolites coacting in synergy with FFA1 (GPR40). Endocrinology 157:4561–4569

ヒト腸管L細胞のGLP-1分泌

ヒト十二指腸、空腸のL細胞はグルコースに反応しGLP-1を分泌する。大腸のL細胞はグルコースに反応しない。

SGLT2阻害薬、GLUT2 阻害薬ともにグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する。

Voltage-gated Na+ channel blocker、L-type calcium channel blocker はグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する・

Tolbutamide は、GLP-1分泌を刺激しない。KATPチャネルはグルコース刺激GLP-1分泌を駆動しない。

SucroseもGLP-1分泌を刺激するため、sweet taste receptor (STR) もGLP-1分泌に関与している。
STR阻害剤の存在下でグルコース刺激GLP-1分泌は保たれるため、グルコース刺激GLP-1分泌は、STR経路とは独立している。

Sun EW et al. Mechanisms Controlling Glucose-Induced GLP-1 Secretion in Human Small Intestine. Diabetes. 2017 Aug;66(8):2144-2149. 

腸内細菌の変化がGLP-1によるNO産生を抑制する

高脂肪食による腸内細菌の変化が、GLP-1によるNO産生を抑制しgut-brain axisを変化させる。
高脂肪食マウスの腸管ニューロンで、GLP-1受容体および、neuronal nitric oxide synthase (nNOS) のmRNA発現が低下する。

まとめ
高脂肪高炭水化物食で肥満となるが、高脂肪食単独のマウスの体重は、通常食マウスと同等であった。
高脂肪食のマウスでは、通常食に比べ、糖負荷試験で門脈中のGLP-1が増加するがインスリン分泌は低く、GLP-1抵抗性がみとめられた。
通常食では、GLP-1刺激によりthe nucleus of the tracts やthe dorsal vagal nucleus のcFos の発現が認められる。
高脂肪食ではGLP-1刺激によるcFos の増加が認められられなくなるなど、腸管神経系 (enteric nervous system) が変化している。

高脂肪食マウスの腸管ニューロンで、GLP-1受容体および、neuronal nitric synthase (nNOS) のmRNA発現が低下する。

高脂肪食後の腸内細菌の遺伝子解析では、核酸とアミノ酸代謝に関与する遺伝子が増加、Nitrate reduction (nitrate → ammonia) に関与する遺伝子が豊富となる。
高脂肪食による腸管細菌変化が、腸管ニューロンで GLP-1によるNO産生を抑制、求心性迷走神経活性を低下させる。

Grasset E, Puel A, Charpentier J, Collet X, Christensen JE, Tercé F, Burcelin R. A Specific Gut Microbiota Dysbiosis of Type 2 Diabetic Mice Induces GLP-1 Resistance through an Enteric NO-Dependent and Gut-Brain Axis Mechanism. Cell Metab. 2017 Jul 5;26(1):278.

Claus SP. Will Gut Microbiota Help Design the Next Generation of GLP-1-Based Therapies for Type 2 Diabetes? Cell Metab. 2017 Jul 5;26(1):6-7.

パラクラインで作用するGLP-1の重要性

全身にプレプログルカゴンが発現しないマウスを作成し、腸管あるいは膵島でプレプログルカゴンの発現を回復させ、GLP-1受容体拮抗薬 exendin-[9-39](Ex9)の作用を検討した。

膵島にプレプログルカゴンの発現を回復したマウスで、Ex9の静注、腹腔内投与が糖負荷試験の血糖を悪化させる。
腸管にプレプログルカゴンの発現を回復したマウスでは、Ex9はは血糖値に影響しない。

膵島で プレプログルカゴン遺伝子から生じるGLP-1が、パラクラインによりβ細胞に作用し血糖値制御に重要な役割をはたしている。

Chambers AP et al. The Role of Pancreatic Preproglucagon in Glucose Homeostasis in Mice. Cell Metab. 2017 Apr 4;25(4):927-934.

視床下部のGLP-1受容体をノックダウンしたマウスでもGLP-1受容体作動薬は食欲を抑制し体重を減少させる。

視床下部のGLP-1受容体をノックダウンしたマウスで、コントロールと同様に、Exendin-4、リラグルチドの末梢投与による食欲抑制効果およびリラグルチド14日投与による体重減少作用を認めた。

高脂肪食では、リラグルチドによる体重減少効果は抑制される。
今回のCreシステムで検証したニューロンとは別の視床下部ニューロンを介して、GLP-1授与作動薬が食欲を抑制している可能性もある。

Burmeister MA et al. The Hypothalamic Glucagon-Like Peptide-1 (GLP-1) Receptor (GLP-1R) is Sufficient but Not Necessary for the Regulation of Energy Balance and Glucose Homeostasis in Mice. Diabetes. 2017 Feb;66(2):372-384

GLP-1は腺房細胞を増殖させる

GLP-1受容体は腺房細胞 (Acinar cell )に発現している。
GLP-1の4-7日間処置で、腺房細胞が増殖し、アミラーゼ、リパーゼの分泌量が増加する。‪1時‬間程度の暴露では影響しない。 ‬
GLP-1はc-Src を介してEFGRを活性化し腺房細胞を増殖させる。
GLP-1作動薬で報告されているアミラーゼ、リパーゼの上昇は膵炎 (subclinical pancreatitis) ではなく、腺房細胞の増殖の結果と考えられる。

1. Wewer Albrechtsen NJ et al. Glucagon-like Peptide 1 Receptor Signaling in Acinar Cells Causes Growth-Dependent Release of Pancreatic Enzymes Cell Rep. 2016 Dec 13;17(11):2845-2856
GLP-1、c-Src、EGFRのわかりやすい図があります。

2. Buteau J, Foisy S, Joly E, Prentki M. Glucagon-like peptide 1 induces pancreatic beta-cell proliferation via transactivation of the epidermal growth factor receptor. Diabetes. 2003 Jan;52(1):124-32.
GLP-1はc-Src /EFGRを介してβ細胞を増殖させる。

GLP-1(9-36)の生物学的特徴

 GLP-1(9-36) は、GLP-1の主要な代謝産物で、intact bioactive GLP-1よりも血中濃度が高く、現在知られているGLP-1受容体 (canonical GLP-1 receptor) とは親和性が低い。

GLP-1(9-36) は、グルコースによるインスリン分泌増強を起こさないが、インスリン非依存性グルコースクリアランスに関与する。食後血糖をインスリン分泌や gastric emptying と関係なく低下させる。血糖低下作用は、intact GLP-1(7-36)に比べ小さい。

GLP-1 (9 –36) の心保護作用はGLP-1受容体欠損マウスでも認められる。

GLP-1 (9 –36)、GLP-1 (28 –36) はミトコンドリアに存在し、肝糖産生を低下させる。

GLP-1(7-37)、 GLP-1(9-37) 、GLP-1(28-37) は動脈硬化モデルマウスで、プラークへのマクロファージの浸潤を抑制し、プラークを安定化させる。

GLP-1 (9 –36) は心筋梗塞後にマクロファージの浸潤を抑制し、拡張期機能不全を改善させる。

GLP-1(7-36) は、心筋虚血時に心拍出量を増加させるが、GLP-1 (9 –36) は増加させない。

Ussher JR, Drucker DJ. Cardiovascular Biology of the Incretin System. Endocr Rev. 2012 Apr;33(2):187-215.

Drucker DJ. The Cardiovascular Biology of Glucagon-like Peptide-1 Cell Metab. 2016 Jun 22. pii: S1550-4131(16)30295-9.

Deacon CF, Plamboeck A, Møller S, Holst JJ. GLP- 1-(9 –36) amide reduces blood glucose in anesthetized pigs by a mechanism that does not involve insulin secretion. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2002 Apr;282(4):E873-9.

Meier JJ, Gethmann A, Nauck MA, Götze O, Schmitz F, Deacon CF, Gallwitz B, Schmidt WE, Holst JJ. The glucagon-like peptide 1 metabolite GLP-1 (9 –36)amide reduces postprandial glycemia independently of gastric emptying and insulin secretion in humans. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2006 Jun;290(6):E1118-23.

Ban K, Kim KH, Cho CK, Sauvé M, Diamandis EP, Backx PH, Drucker DJ, Husain M. Glucagon-like peptide (GLP)-1(9-36)amide-mediated cytoprotection is blocked by exendin(9-39) yet does not require the known GLP-1 receptor. Endocrinology. 2010 Apr;151(4):1520-31.

Burgmaier, M et al. Glucagon-like peptide-1 (GLP-1) and its split products GLP-1(9-37) and GLP-1(28-37) stabilize atherosclerotic lesions in apoe (-/-) mice. Atherosclerosis 2013 231, 427–435.

Robinson E et al. Metabolically-inactive glucagon-like peptide-1(9-36)amide confers selective protective actions against post-myocardial infarction remodeling. Cardiovasc Diabetol. 2016 Apr 14;15:65. doi: 10.1186/s12933-016-0386-5.

Goodwill AG, Tune JD, Noblet JN, Conteh AM, Sassoon D, Casalini ED, Mather KJ. Glucagon-like peptide-1 (7-36) but not (9-36) augments cardiac output during myocardial ischemia via a Frank-Starling mechanism. Basic Res Cardiol. 2014;109(5):426.

GLP-1とリンパ球、腸管上皮生育

GLP-1とサイトカイン
IL-6、グラム陰性菌の細胞壁であるLipopolysaccharide によりGLP-分泌が促進される。1, 2, 3)

エクゼナチドの脳内への注入は、視床下部のIL-6、IL-1β、後脳 (hindbrain) のIL-6を増加させる。
IL-6、IL-1β受容体発現のないマウスでは、エクゼナチドによる食欲抑制が認められない。 GLP-1による中枢性食欲抑制の一部は、IL-6 、IL-1βを介している。4)

GLP-1は腸管リンパ球を制御している。
GLP-1受容体は腸管上皮リンパ球に発現している。
エクゼナチドは、腸管上皮リンパ球の cAMP濃度を容量依存性に増加させ、炎症性サイトカイン (IL-2、IL-17a、 interferon γ、tumor necrosis factor-α) の発現を抑制する。脾臓では炎症性サイトカインを抑制しない。forskolin はGLP-1受容体のないマウスでも炎症性サイトカインを抑制する。
GLP-1受容体欠損マウスで薬剤誘発腸炎による腸管粘膜修復が低下する。
GLP-1受容体欠損マウスで、腸管上皮修復に関わる遺伝子発現が低下している。

GLP-1受容体の活性化はFGF7依存性に腸管生育に作用する。
GLP-1、GLP-2は、絨毛の長さを伸ばすのではなく、crypt number を増加させ、腸管生育を促進する。
FgF7-/-マウスではエクゼナチドによる腸管生育が見られないが、GLP-2、EGFによる腸管生育は認められる。
ApcMin/+ マウスで、exendin-4 は、ポリープの数と大きさを増加させる。GLP-1受容体シグナルのない ApcMin/+ マウスでは、ポリープ数が減少する。
GLP-1受容体作動薬は、crypt の細胞増殖を促進するのではなく、crypt fission を増加させ、腸管上皮を増量する。
肥満手術 (bariatric surgery)ではGLP−1分泌が増加する。肥満手術 を受けた患者で大腸がん発症が増加するかフォローしていく必要がある。7)

1. Nguyen AT, Mandard S, Dray C, et al. Lipopolysaccharides-mediated increase in glucose-stimulated insulin secretion: involvement of the GLP-1 pathway. Diabetes 2014;63:471–482

2. Kahles F, Meyer C, Möllmann J, et al. GLP-1 secretion is increased by inflammatory stimuli in an IL-6-dependent manner, leading to hyperinsulinemia and blood glucose lowering. Diabetes 2014;63:3221–3229

3. Ellingsgaard H, Hauselmann I, Schuler B, et al. Interleukin-6 enhances insulin secretion by increasing glucagon-like peptide-1 secretion from L cells and alpha cells. Nat Med 2011;17:1481–1489

4. Shirazi R, Palsdottir V, Collander J, et al Glucagon-like peptide 1 receptor induced suppression of food intake, and body weight is mediated by central IL-1 and IL-6. Proc Natl Acad Sci U S A 2013;110:16199–16204pmid:24048027

5. Yunta B et al. GLP-1R Agonists Modulate Enteric Immune Responses Through the Intestinal Intraepithelial Lymphocyte GLP-1R. Diabetes. 2015 Jul;64(7):2537-49.

6. Rosario W, D'Alessio D. An Innate Disposition for a Healthier Gut: GLP-1R Signaling in Intestinal Epithelial Lymphocytes. Diabetes. 2015 Jul;64(7):2329-31.

7. Koehler JA, et al. GLP-1R agonists promote normal and neoplastic intestinal growth through mechanisms requiring Fgf7. Cell Metab. 2015 Mar 3;21(3):379-91.

胆汁酸は、G-protein coupled bile acid receptor (GPBAR1,TGR5) を介して、GLP-1分泌を促進する。

胆汁酸は、G-protein coupled bile acid receptor (GPBAR1,TGR5) を介して、GLP-1分泌を促進する。
chamber method による検討の結果から、管腔側 (luminal) ではなく基底外側部 (basolateral) の受容体が主要な役割を果たしている。

Brighton CA, Rievaj J, Kuhre RE, Glass LL, Schoonjans K, Holst JJ, Gribble FM, Reimann F. Bile acids trigger GLP-1 release predominantly by accessing basolaterally-located G-protein coupled bile acid receptors. Endocrinology. 2015 Aug 17:en20151321. [Epub ahead of print]
プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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