リラグルチドの食欲抑制作用には glutamatergic neuronのGLP-1受容体を必要とする。

リラグルチドは glutamatergic neuron、GABAergic neuron の両方を活性化する。
リラグルチドの食欲抑制、体重減少作用に、glutamatergic neuron のGLP-1受容体が必須である。
area postrema AP、lateral parabrachial nucleus IPBNのGLP-1受容体はリラグルチドで直接活性化されている。

まとめ
皮下注射したリラグルチドは glutamatergic neuron、GABAergic neuron の両方を活性化する。
リラグルチドliraglutide が活性化する5つの部位
・central amygdala CeA
・lateral parabrachial nucleus IPBN
・bed nucleus of the stria terminalis BNST
・caudal nucleus of the solitary tract cNTS
・area postrema AP
IPBNでは glutamatergic neuronが、CeA、BNST ではGABAergic neuronが占めている。cNTSとAPでは両者が混在している。

リラグルチドは、lateral septum、paraventricular thalamus、paraventricular hypothalamus、arcuate hypothalamus、ventromedial hypothalamus、lateral dorsal tegmental nucleus、rostral NTS でニューロンの活性化に影響しない。

GLP-1 受容体が glutamatergic neuron に発現しないマウスで、リラグルチドの体重減少、食欲抑制作用が認められない。GABAergic neuron に発現しないマウスでは、リラグルチドの効果は保たれる。
リラグルチドの作用にはglutamatergic neuronの発現するGLP-1受容体が必須である。

GLP-1受容体とGFPを発現するマウスの検討で、リラグルチドによるFos+ニューロンの割合はIPBN、APで高くCeA、BNST、cNTSで低い。
IPBN、APのGLP-1受容体発現ニューロンはリラグルチドで直接活性化されている。

Liraglutide Modulates Appetite and Body Weight Via GLP-1R-Expressing Glutamatergic Neurons
http://diabetes.diabetesjournals.org/content/early/2018/05/04/db17-1385

IL-6は胃排出能を抑制する。

IL-6は胃排出能を抑制する。胃排出能抑制により食後血糖が低下しインスリンの Area under the curve (AUC) が低下する。

まとめ
健常者で、食事負荷前のIL-6 の注入は、胃排出能抑制が認められ食後血糖値が低下する。
IL-6の注入によりインスリン分泌のAUCは低下、グルカゴンは生理食塩水注入と同様のピークをとる。
心拍数の増加が認められるため、IL-6が交感神経を刺激しているかもしれない。
十二指腸に直接食事を注入した場合、IL-6による食後血糖値抑制効果は認められない。

GLP-1受容体阻害薬 exendin 9-39 (ex-9-39) とIL-6の併用は、ex-9-36単独より胃排出能を低下させる。IL-6はGLP-1分泌を促進するが、GLP-1の作用とは独立して胃排出能を抑制している。

食事負荷前のトレッドミル60分の運動は血中IL-6を5倍に増加させる。その後の食事負荷で、胃排出能が低下する。
Tocilizumabは、IL-6の胃排出能低下作用を抑制する。

血糖コントロールの良い2型糖尿病で、IL-6は、食事負荷後血糖値を変化させないが、胃排出能を低下させるためインスリンAUCが低下する。

Lang Lehrskov L et al. Interleukin-6 Delays Gastric Emptying in Humans with Direct Effects on Glycemic Control. Cell Metab. 2018 Apr 28. pii: S1550-4131(18)30251-1.

肥満手術後、α細胞でのGLP-1発現上昇には、β細胞のGLP-1受容体を必要とする。

肥満手術 (Vertical Sleeve Gastrectomy) をおこなったマウスでは、α細胞のGLP-1とPC1/3の発現が増加する。
空腹時グルカン値は上昇、膵島でα細胞面積が増加、膵島の中心部にα細胞がみとめられるようになる。
β細胞にGLP-1受容体のないマウスではこの現象が認められない。
α細胞でのGLP-1の増加は、β細胞のグルコース刺激下のインスリン分泌に対してpositive feedback をかける。

Garibay Det al. β Cell GLP-1R Signaling Alters α Cell Proglucagon Processing after Vertical Sleeve Gastrectomy in Mice. Cell Rep. 2018 Apr 24;23(4):967-973.

グルタミンはL細胞でGLP-1分泌を誘発する

グルコース刺激による膵β細胞のインスリン分泌と腸管L細胞のGLP-1分泌では、共にグルコース刺激下で、細胞内ミトコンドリアの代謝産物が増加している。

アミノ酸によるインスリン分泌は、生理学的にはロイシンのみで認められる。
β細胞株INS-1でグルタミンは、glutamine dehydrogenase (GDH) activator であるロイシンの存在下でインスリン分泌を誘発する。GDH活性が低いことが正常なβ細胞機能には必須である。

L細胞株GLUTagで、グルタミンはロイシンがなくともGLP-1分泌を誘発する。
L細胞株GLUTagでは、INS-1に比べ細胞内ロイシン濃度が高く、GDHが活性化されている。
Sodium glucose transporter を介さない膜透過性グルタミンアナログdimethylglutamateもGLP-1分泌を誘発する。

Andersson LE et al. Glutamine-Elicited Secretion of Glucagon-Like Peptide 1 Is Governed by an Activated Glutamate Dehydrogenase. Diabetes. 2018 Mar;67(3):372-384.

Haigis MC, Mostoslavsky R, Haigis KM, et al. SIRT4 inhibits glutamate de- hydrogenase and opposes the effects of calorie restriction in pancreatic beta cells. Cell 2006;126:941–954
SIRT4はGDHを抑制する。

若年者の膵島はマウスの腎皮膜下でexendin-4 により増殖する。

マウスの腎皮膜下に、若年者(0.5-9歳)、成人(20歳以上)の膵島移植した後、exendin-4 (Ex-4)を6週間注射した。
若年者の膵島で、Ex-4によるβ細胞の増殖が確かめられた。α細胞、δ細胞は増殖しない。ヒトα細胞はGLP-1受容体mRNAを発現していなかった。
移植若年者膵島のRNA-sequencingで、PBSに比べEx-4では、calcineurin/NFAT signalingに関連する遺伝子発現が増加していた。
ヒト新生児β細胞の成熟 development は、calcineurin/NFATが制御することが知られている。
FK506は、Ex-4によるcalcineurin/NFAT signalingに関連する遺伝子増加を抑制する。

Dai C et al. Age-dependent human β cell proliferation induced by glucagon-like peptide 1 and calcineurin signaling. J Clin Invest. 2017 Oct 2;127(10):‪3835-3844.

Goodyer WR eat al. Neonatal β cell development in mice and humans is regulated by calcineurin/NFAT. Dev Cell. 2012 Jul 17;23(1):21-34.

Heit JJ et al. Calcineurin/NFAT signalling regulates pancreatic beta-cell growth and function. Nature. 2006 Sep 21;443(7109):345-9.
 

心臓のGLP-1受容体の発現

RT-PCRで、GLP-1受容体(GLP-1R) mRNAが、心房と心室に発現している。in situ hybridization で、GLP-1Rは心房の sinoatrial nodeに発現しているが、心室に発現は確認できない。

まとめ
GLP-1RmRNAのopen reading frame 全長の転写transcript は、全ての心房、心室に膵臓と同等の検知レベルで認められた。心筋線維芽細胞、冠動脈血管内皮細胞、冠動脈血管平滑筋に、GLP-1RmRNA は認められなかった。

グルカゴンとGLP-2は、同じpreproglucagon 遺伝子から転写される。心房および心室で、GLP-2受容体mRNA発現はかなり低く、グルカゴン受容体mRNAは左室には認められなかった。

In situation hybridization で、十二指腸Brunner’s gland、膵島、心房組織のsinoatrial node にGLP-1Rの発現が確認できるが、心室組織では確認できない。
信頼できる抗体によるウエスタンブロッティングでは、感度が不十分で心室だけでなく膵島のGLP-1Rの発現が検出できない。

Baggio LL et al. GLP-1 Receptor Expression Within the Human Heart. Endocrinology. 2018 Apr 1;159(4):1570-1584.

選択的GLP-1受容体抗体の作成

GLP-1 受容体の競合抗体 (competitive antagonist) Glp1R0017 は、naive phage display library から選択された。 この抗体は、生物学的半減期が12時間以上あり、GLP-1による細胞内cAMP上昇とインスリン分泌を容量依存性に抑制する。GIP、GLP2、glucagon 受容体には拮抗しない。

Exendin (Ex) 9-39 は選択的 GLP-1 受容体 アンタゴニストとして使われているが、GLP-1 (9-36)に対する拮抗作用、GIPによるcAMP上昇とインスリン分泌を抑制するなどの off-target effect がある。

1. Biggs EK et al. Development and characterisation of a novel glucagon like peptide-1 receptor antibody. Diabetologia. 2018 Mar;61(3):711-721.

2. Ban K, Kim KH, Cho CK et al (2010) Glucagon-like peptide (GLP)-1(9-36)amide-mediated cytoprotection is blocked by exendin(9-39) yet does not require the known GLP-1 receptor. Endocrinology 151:1520-1531
GLP-1(9-36) の心保護効果は、Ex(9-39)によりブロックされるが、GLP-1受容体のないマウスで保たれる。 したがって GLP-1(9-36) の心保護効果は、GLP-1受容体を介さず、Ex(9-39)には GLP-1(9-36) に対する拮抗作用があることが示された。

DPP4阻害薬、TGR5作動薬、SSTR5阻害薬、GPR40作動薬による内因性GLP-1血中濃度の増加

GLP-1作動薬や metabolic surgery でマウスのGLP-1血中濃度は~50pmol/Lに上昇する。

exenatide 投与1時間後の血中濃度の結果から、GLP-1 10-100 pmol/Lの濃度上昇により糖負荷試験では強力な血糖効果作用が認められる。

DPP4阻害薬、胆汁酸受容体 (TGR5) 作動薬、GPR40作動薬、ソマトスタチン受容体 (SSTR) 5阻害薬は、それぞれ糖負荷試験のGLP-1血中濃度を~5-30 pmol/L に上昇する。
薬剤の併用により血中GLP-1濃度は、~300から400 pmol/Lに上昇する。

糖負荷試験のactive GLP-1濃度の最大値
Sitagliptin、SSTR5 antagonist、TGR5 agonist 350 pmol/L
Sitagliptin、SSTR5 antagonist、TGR5 agonist 、GPR40 agonist 406 pmol/L
GLP-1濃度が supratherapeutic level を超えて上昇するためにはSSTR5阻害薬が必須となる。

Briere DA et al. Mechanisms to Elevate Endogenous GLP-1 Beyond Injectable GLP-1 Analogs and Metabolic Surgery. Diabetes. 2018 Feb;67(2):309-320.

希少糖 D-alulloseは、GLP-1分泌を促進し迷走神経を介して食欲を抑制する。

日本では希少糖として知られる D-allulose が、マウスでGLP-1分泌を促進し、迷走神経を介して食欲を抑制するという報告です。糖負荷試験前のD-alluloseの経口摂取は血糖値を低下させる。インスリン負荷テスト前のD-allulose 投与では、迷走神経を介して肝糖産生抑制も認められる。他の甘味料では、Sucraloseがヒトの糖負荷試験前の摂取で血糖値が低下させGLP-1分泌を増加させると報告されている。

D-allulose はGLP-1分泌を促進する
D-allulose はマウスの摂餌量をコントロールに比べ減少させる。
D-allulose 1g/kg 経口服用後、門脈内活性型GLP-1濃度は30分後に上昇し、1から2時間でプラトーに達する。
糖負荷試験60分前に D-allulose 1g/kg 経口で投与した結果、0分の血糖値および負荷後血糖値が低下する。
高脂肪食マウスで、インスリン1.5 IU/kg 負荷では、 D-allulose 1g/kg 60分前投与により、インスリン負荷30分後の血糖値がコントロールに比べ低下する。D-allulose 経口投与後のピルビン酸負荷試験で血糖値が低下するのため、D-allulose 経口投与により肝糖産生が抑制されている。
D-allulose は、blood-brain barrier を通過しない。

sucralose は、健常者で炭水化物の存在時にGLP-1 分泌を促進する。
健常者で、sucralose 15分前に服用した後におこなった糖負荷試験では、グルコースの the total area under the curve (AUC) が生理食塩水よりも低下し、GLP-1 AUCが増加する。
aspartameではグルコースのAUCの変化はない。
2型糖尿病では、糖負荷試験前のsucralose によるグルコースの AUC低下は認めない。

1. Iwasaki Y et al. GLP-1 release and vagal afferent activation mediate the beneficial metabolic and chronotherapeutic effects of D-allulose Nat Commun. 2018 Jan 9;9(1):113. doi: 10.1038/s41467-017-02488-y.

2. Temizkan S et al. Sucralose enhances GLP-1 release and lowers blood glucose in the presence of carbohydrate in healthy subjects but not in patients with type 2 diabetes Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):162-6. 

3. Wu T et al. Effects of different sweet preloads on incretin hormone secretion, gastric emptying, and postprandial glycemia in healthy humans. Am J Clin Nutr. 2012 Jan;95(1):78-83. 

4. Ingestion of Diet Soda Before a Glucose Load Augments Glucagon-Like Peptide-1 Secretion Diabetes Care 2009 32 (12) 2184-2186
ダイエットコーラには人工甘味料sucralose、acesulfame-Kが含まれていて、糖負荷試験10分前にダイエットコーラ240mlを飲ませたところ、血糖値に差はないが、GLP-1のarea under the curve (AUC) は増加した

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進

脂質は、腸管内腔側 (apical site) のFFA1 (GPR40) やGPR119 を介してGLP-1、GIPを分泌することが知られている。
長鎖脂肪酸はFFA1を、モノアシルグリセロール、特に2-オレオイルグリセロールは、GPR119 を 活性化する。

カイロミクロンは、マウス十二指腸培養細胞やプログルカゴン遺伝子由来産物を産生する培養細胞 (GLUTag)で、GLP-1およびGIP分泌を刺激する。

カイロミクロは腸管細胞で合成される。カイロミクロンの中性脂肪は、血管内皮に存在する lipoprotein lypase (LPL) により長鎖脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解される。

GLUTag で、LPLの抑制やFFA1の阻害によりカイロミクロンのインクレチン分泌促進作用は低下する。
またカイロミクロンよりGLUTag 細胞内カルシウム濃度が上昇する。

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進には、毛細血管側(basolateral site) のFFA1あるいは他の脂質受容体が関与している可能性がある。

カイロミクロンはCCK上昇を介してGLP-1分泌を促進することも報告されている。

Psichas A et al. Chylomicrons stimulate incretin secretion in mouse and human cells Diabetologia. 2017 Dec;60(12):2475-2485

Ekberg JH et al. GPR119, a major enteroendocrine sensor of dietary triglyceride metabolites coacting in synergy with FFA1 (GPR40). Endocrinology 157:4561–4569
プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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