SGLT2阻害薬の尿糖排泄域値とSGLT1による代償

 糖尿病では、maximal renal glucose transport (TmG)が上昇する。SGLT2阻害薬は、糖尿病及び非糖尿病者の
TmG を低下させる。

Empagliflozinは、尿糖排泄域値を血糖値40mg/dlまで低下させる。生理的に正常な血糖値以下でも尿糖が排泄される。
ベースラインのTmGは、SGLT1とSGLT2のTmG を反映し、Empagliflozin服用14日後のTmGは、SGLT1のTmGを反映する。

         TmGベースライン    Empagliflozin服用14日後の減少率
2型糖尿病患者   459 ± 53 mg/min   65 ± 5 %
非糖尿病                337 ± 25 mg/min         75 ± 3%

Empagliflozinによる尿糖排泄効果の約30%は、SGLT1により代償されている。

Al-Jobori Het al. Empagliflozin and Kinetics of Renal Glucose Transport in Healthy Individuals and Individuals With Type 2 Diabetes.  Diabetes. 2017 Jul;66(7):1999-2006. doi: 10.2337/db17-0100. Epub 2017 Apr 20.

SGLT2阻害薬の腎保護作用2

SGLT2阻害薬は、尿アルブミンのステージにかかわらず尿アルブミン量を低下させる。

糸球体内圧の低下により尿アルブミンが減少する。
近位尿細管でナトリウム利尿が起こり、遠位尿細管にナトリウムが供給され、macula densa を NaCl が通過する。その結果、ATPが分解され、AMPとアデノシンに変換され、エネルギー消費が増加する。アデノシンはadenosine type-1 receptor に作用し、輸入細動脈を収縮させる。輸入細動脈の収縮により、糸球体内圧が低下し、 アルブミンのglomerular filtration barrier 透過が減少する。

Effects of empagliflozin on the urinary albumin-to-creatinine ratio in patients with type 2 diabetes and established cardiovascular disease: an exploratory analysis from the EMPA-REG OUTCOME randomised, placebo-controlled trial

SGLT2阻害薬とケトアシドーシス

SGLT2阻害薬服用開始180日以内にケトアシドーシスを発症するハザード比は、DPP4阻害薬の約2倍となっている。
4.9 events per 1000 person-years vs. 2.3 events per 1000 person-years
保険請求データーベースを用いて解析した。

Fralick M, Schneeweiss S, Patorno E. Risk of Diabetic Ketoacidosis after Initiation of an SGLT2 Inhibitor. N Engl J Med. 2017 Jun 8;376(23):2300-2302. doi: 10.1056/NEJMc1701990.

糖尿病では、肝、腎の糖放出、腎臓の糖再吸収共に増加している

糖尿病では、耐糖能正常者に比べ、肝臓、腎臓での糖放出および腎臓の糖再吸収が増加している。1)

Maximal renal glucose reabsorption capacity (
Tmax) をこえるグルコース負荷で、尿糖が排泄される。
Tmax となる血糖値を域値と呼ぶ。コントロール不良の糖尿病では、尿糖排泄域値は上昇している。
耐糖能正常者では、Tmax ~124mg/min、域値~180mg/dl、コントロール不良の糖尿病では、
Tmax~350mg/dl、域値 ~280mg/dlとなる。2)

SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の尿糖排泄域値を低下させ、尿糖排泄量を増加させる。2, 3)

Meyer C et al. Abnormal renal and hepatic glucose metabolism in type 2 diabetes mellitus. J Clin Invest. 1998 Aug 1;102(3):619-24.

Abdul-Ghani MA, DeFronzo RA, Norton L. Novel hypothesis to explain why SGLT2 inhibitors inhibit only 30-50% of filtered glucose load in humans. Diabetes. 2013 Oct;62(10) :3324-8.

Sha S, Devineni D, Ghosh A, Polidori D, Chien S, Wexler D, Shalayda K, Demarest K, Rothenberg P. Canagliflozin, a novel inhibitor of sodium glucose co-transporter 2, dose dependently reduces calculated renal threshold for glucose excretion and increases urinary glucose excretion in healthy subjects. Diabetes Obes Metab. 2011 Jul;13(7):669-72. 

エンバグリフロジンは高血糖下の心筋細胞内ナトリウム濃度を低下させる。

心筋にSGLT2 は発現しないが、SGLT1が発現している。
高血糖や心不全で心筋細胞質ナトリウム濃度 [Na+]c、カルシウム濃度[Ca2+]cが上昇し、ミトコンドリアカルシウム濃度[Ca2+]mが低下する。
[Na+]cの上昇は、Na+/Ca2+ exchanger (NCX)を介して[Ca2+]cを上昇させ、[Ca2+]mを低下させる。

エンバグリフロジンは、心筋培養細胞で、高血糖下の [Na+]c、[Ca2+]c を低下させ、[Ca2+]mを上昇させる。
心筋にSGLT2が発現しないこと、Na+/H+ exchanger (NHC) 阻害薬 cariporide をエンパグリフロジンの前後で添加した場合、[Na+]c 低下作用がほとんど認められないことから、エンパグリフロジンがNHCに作用していると考えられる。

ミトコンドリアのカルシウム上昇はATP合成を促進する。
エンパグリフロジンは、ミトコンドリア生合成増加により心筋のATP産生を増加させ、心保護作用を示す可能性がある。

Vettor R et al. The cardiovascular benefits of empagliflozin: SGLT2-dependent and -independent effects. Diabetologia. 2017 Jan 11. doi: 10.1007/s00125-016-4194-y. [Epub ahead of print]

Baartscheer A et al. Empagliflozin decreases myocardial cytoplasmic Na+ through inhibition of the cardiac Na+/H+ exchanger in rats and rabbits Diabetologia. 2016 Oct 17. [Epub ahead of print]

SGLT2阻害薬は血中マグネシウム値を増加させる。

SGLT2阻害薬はクラスエフェクトとして血中マグネシウム値を増加させる。

まとめ
RCT のメタアナリシスで、SGLT2阻害薬はプラセボに比べ血中マグネシウム値が増加する。
dapagliflozinで、血中リン値が増加する。
血中ナトリウム値は薬剤により異なる。canagliflozin 300mg では低く、empagliflozin 25mgでプラセボに比べ血中ナトリウム値が高い

Tang H et al. Elevated serum magnesium associated with SGLT2 inhibitor use in type 2 diabetes patients: a meta-analysis of randomised controlled trials. Diabetologia. 2016 Dec;59(12):2546-2551

SGLT2阻害薬は、尿細管糸球体フィードバックを正常化する。

SGLT2阻害薬は、macula densa のナトリウム濃度を上昇させ、尿細管糸球体フィードバックを正常化する。

まとめ
SGLT2は、近位尿細管でグルコースとナトリウムを1:1 で再吸収する。

高血糖状態では、macula densa でナトリウム濃度が低下するため尿細管糸球体フィードバックが抑制される。その結果、輸入細動脈が弛緩し糸球体過剰濾過となる。

SGLT2阻害薬により、macula densaのナトリウム濃度が上昇し、尿細管糸球体フィードバックが正常化する。 輸入細動細動脈弛緩は元に戻る。レニン放出は抑制される。

RAS阻害薬は、輸出細動脈を輸入細動脈に比べ弛緩させるので、糸球体後負荷、濾過圧を低下させる。
RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は、糸球体濾過圧を低下させ、長期的な腎保護作用をもたらす。

Nephron Protection in Diabetic Kidney Disease N Engl J Med 2016; 375:2096-2098

SGLT2阻害薬の腎保護作用

SGLT2阻害薬は、ナトリウム利尿による糸球体内圧低下、酸素消費量抑制により腎保護作用を示す。

ナトリウム利尿による糸球体内圧低下
SGLT2阻害薬は近位尿細管でナトリウム再吸収を抑制するため、ナトリウム利尿が起こる。尿細管糸球体フィードバックにより、理論上、SGLT2阻害薬により、糸球体輸入動脈抵抗は増加し、糸球体内圧は低下する。

低酸素状態の改善
SGLT1、SGLT2は、基底側膜のNa+/K+-ATPase pumpにより駆動されている。したがって腎臓でのグルコースとナトリウムの再吸収はATPを消費し、SGLT2阻害薬は、腎臓のエネルギー消費量を低下させる。
2型糖尿病の近位尿細管では、グルコースとナトリウムの再吸収が亢進しエネルギー消費量が増加している。

尿細管間質の低酸素により、epithelial mesenchymal transdifferentiation (EMT)、間質の繊維化、細胞外マトリックスの蓄積が生じる。細胞外マトリックスの蓄積は正常構造を破壊する。
SGLT2阻害薬は、腎臓の酸素消費量を低下させ、低酸素状態を改善し、chronic kidney disease の進行を抑制する。

Muskiet MH et al. Renoprotection in LEADER and EMPA-REG OUTCOME Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Oct;4(10):812-4.

Gilbert RE. SGLT2 inhibitors: β blockers for the kidney?  Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Oct;4(10):814.

Fine LG, et al. Chronic hypoxia as a mechanism of progression of chronic kidney diseases: from hypothesis to novel therapeutics. Kidney Int 2008; 74: 867–72.

Empagliflozinは、LV mass を低下させ、拡張期心機能を改善せる。

 2型糖尿病患者10人、Empagliflozin 開始前と3ヶ月後で心エコー検査を施行
Empagliflozin 服用により、LV mass が低下し、the early lateral ferocity で評価した拡張期心機能が改善した。
血圧、体重は変化なし。A1C 7.3%から6.81%へ低下
ヒトの心臓にはSGLT2は発現していない。 Empagliflozin が心臓のなんらかのレセプター、基質に結合している可能性もあるかもしれない。
LV mass 低下の要因
・血管内容量の低下
・ナトリウム排泄促進
・arterial stiffness の改善

10例の少ないデーターながら、SGLT2阻害薬が、LV reverse remodeling を望ましい方向へ促進する可能性を示している。

Verma S et al. Effect of Empagliflozin on Left Ventricular Mass and Diastolic Function in Individuals With Diabetes: An Important Clue to the EMPA-REG OUTCOME Trial?Diabetes Care. 2016 Sep 27. pii: dc161312. [Epub ahead of print]


カナグリフロジン Canagliflozin は、AMP-activated protein kinase (AMPK) を活性化し、脂質合成を阻害する。

 カナグリフロジンは、ミトコンドリア呼吸鎖の complex I を阻害し、細胞内のAMP、ADPを増加させ、AMP-activated protein kinase (AMPK) を活性化する。

AMPKは、ACC1 ACC2を抑制する。その結果、Malonyl-CoA からの脂肪合成 が抑制され、ミトコンドリアでのβ酸化が亢進する。 カナグリフロジンは、AMPK 活性化を介して、脂質合成を阻害する。

マウスに対するカナグリフロジンの経口投与では、肝臓でAMPKを活性化するが、筋肉、脂肪組織では活性化しない。

カナグリフロジンは、HEK293細胞(ヒト胎児腎細胞)でAMPKを活性化するが、Dapagliflozin 、Empagliflozin 、Phlorizin は、AMPKを活性化しない。

カナグリフロジンは、SGLT2を発現しないHEK293細胞で、グルコース取り込みを抑制する。

Hawley SA et al. The Na+/Glucose Cotransporter Inhibitor Canagliflozin Activates AMPK by Inhibiting Mitochondrial Function and Increasing Cellular AMP Levels. Diabetes. 2016 Sep;65(9):2784-94.

Fullerton MD, Galic S, Marcinko K, et al. Single phosphorylation sites in Acc1 and Acc2 regulate lipid homeostasis and the insulin-sensitizing effects of metformin. Nat Med 2013;19:1649–1654

メトフォルミンが脂肪蓄積を抑制することによりインスリン抵抗性を改善する。

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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