SGLT2阻害薬のβ細胞保護作用

ルセオグリフロジンを4週間投与したdb/dbマウスでは、10週令(6週例から4週間投与)、14週令、18週、28週令でβ cell mass がコントロールに比べ増加している。

BrdUで評価したβ細胞の増殖は、10週令マウス(6週例から4週間投与)のみルセオグリフロジン群でコントロールに比べ増加している。BrdUとインスリンの共陽性細胞数は週令と共に減少する。TUNEL 法で検討した apoptosis は、10週令マウスでルセオグリフロジン群でコントロールより少なく、28週令で有意差はない。

MafA とインスリン共陽性細胞も週令と共に減少するが、ルセオグリフロジンではコントロールに比べ週令にかかわらず増加している。MafAの発現がβ細胞の機能と量に関係しているかもしれない。

Takahashi K et al. Effect of the sodium–glucose cotransporter 2 inhibitor luseogliflozin on pancreatic beta cell mass in db/db mice of different ages Sci Rep. 2018 May 1;8(1):6864.
https://www.nature.com/articles/s41598-018-25126-z

1型糖尿病に対する dapagliflozin DIRECT-1

1型糖尿病に対するdapagliflozin 24週間投与で、A1Cは約0.4%低下、体重と総インスリン量が減少する。

まとめ
1型糖尿病に対するdapagliflozin 24週間投与、833人の登録、n=778
dapagliflozin 10 mg、5 mg、プラセボへ1:1:1で割り付け

dapagliflozin 10 mg では
ベースラインA1C 8.53%から0.45%低下
体重82.4kgから3.1kg 低下
総インスリン量59.4 IUから5.5 IU減量
Dapagliflozin 10 mgは、5 mgよりインスリンの減量率、体重減少率が大きい。

糖尿病性ケトアシドーシスの発症は、dapagliflozin 5 mg 4人(1%)、dapagliflozin 10 mg 5人(2%)、プラセボ 3人(1%) 
参加者は家庭用ケトン測定器を配布され、血糖値1日4回測定で血糖が持続高値の時はケトン体測定を指示されていた。
2週間に1回来院してケトアシドーシスをチェックした。総インスリン量の減量は20%までとするよう推奨されていた。
これらがケトアシドーシスの発症を抑制したと考えられる。2)

1. Dandona Pet al. Efficacy and safety of dapagliflozin in patients with inadequately controlled type 1 diabetes (DEPICT-1): 24 week results from a multicentre, double-blind, phase 3, randomised controlled trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov;5(11):864-876

2. Petrie JR. SGLT2 inhibitors in type 1 diabetes: knocked down, but up again? Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov;5(11):841-843.

SGLT2阻害薬は心筋細胞のNa+/H+ exchanger (NHE)を抑制し、細胞質内Na+、Ca2+濃度を低下させる。

SGLT2阻害薬は、マウス心筋細胞のNa+/H+ exchanger (NHE) を抑制し、細胞質内Na+、Ca2+濃度を低下させる。

まとめ
エンパグリフロジン EMPA、タパクリフロジンDAPA、カナグリフロジンCANA の心筋Na+/H+ exchanger (NHE)に対する効果を検討した。心筋細胞のpH recovery の遅延をNHE 活性抑制の指標とする。

マウス心筋細胞にこれらのSGLT2阻害薬を添加した結果、細胞質内Na+、Ca2+濃度は低下し、細胞内のpH recovery は遅延する。In silicon analysis で、三製剤ともNHEのNa+ binding site に結合する部位を持つ。

ラット心臓の還流モデルで、EMPAとCANA は、血管拡張による還流圧低下が認められた。
三製剤とも、phosphocreatine/ATP、酸素消費量は変化しない。

Uthman L et al. Class effects of SGLT2 inhibitors in mouse cardiomyocytes and hearts: inhibition of Na+/H+ exchanger, lowering of cytosolic Na+ and vasodilation Diabetologia 2017 Dec 2. doi: 10.1007/s00125-017-4509-7. [Epub ahead of print]

血漿量減少が、EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡リスク減少に強く関与する。

EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡のハザード比に関して、Cox 回帰モデルの解析ではヘマトクリットとヘモグロビンの寄与が大きい。尿酸値、空腹時血糖値、A1C は Smaller mediation effects で寄与する。

多変量回帰分析 (multivariable models) では、ヘマトクリット、空腹時血糖値、尿アルブミン・クレアチニン比が心血管死亡減少に関連している。

血漿量(plasma volume) 変化のマーカーが、EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡リスク減少に関与している。

Inzucchi SE et al. How Does Empagliflozin Reduce Cardiovascular Mortality? Insights From a Mediation Analysis of the EMPA-REG OUTCOME Trial. Diabetes Care. 2017 Dec 4. pii: dc171096. doi: 10.2337/dc17-1096. [Epub ahead of print]

1型糖尿病とSGLT2LT阻害薬

1型糖尿病で、sotagliflozin とプラセボを比較、
プライマリーエンドポイントは24週時のA1C7.0%未満の達成率
登録者の71%がBMI 25以上であった。

sotagliflozin 群では、プラセボの約2倍の患者でA1C 7.0%未満を達成した。
(28.6% vs. 15.2%)
体重と血圧が低下し、総インスリン量が減量される。
尿アルブミンクレアチン比は有意差なし

ケトアシドーシスの発症率は、sotagliflozin 3.0%、プラセボ 0.6%
sotagliflozin では、下痢、Genital mycotic infection がプラセボより増加する。

Nathan DM. Adjunctive Treatments for Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2017 Sep 13. 

Garg SK et al.  Effects of Sotagliflozin Added to Insulin in Patients with Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2017 Sep 13. 

SGLT2阻害薬の尿糖排泄域値とSGLT1による代償

 糖尿病では、maximal renal glucose transport (TmG)が上昇する。SGLT2阻害薬は、糖尿病及び非糖尿病者の
TmG を低下させる。

Empagliflozinは、尿糖排泄域値を血糖値40mg/dlまで低下させる。生理的に正常な血糖値以下でも尿糖が排泄される。
ベースラインのTmGは、SGLT1とSGLT2のTmG を反映し、Empagliflozin服用14日後のTmGは、SGLT1のTmGを反映する。

         TmGベースライン    Empagliflozin服用14日後の減少率
2型糖尿病患者   459 ± 53 mg/min   65 ± 5 %
非糖尿病                337 ± 25 mg/min         75 ± 3%

Empagliflozinによる尿糖排泄効果の約30%は、SGLT1により代償されている。

Al-Jobori Het al. Empagliflozin and Kinetics of Renal Glucose Transport in Healthy Individuals and Individuals With Type 2 Diabetes.  Diabetes. 2017 Jul;66(7):1999-2006. doi: 10.2337/db17-0100. Epub 2017 Apr 20.

SGLT2阻害薬の腎保護作用2

SGLT2阻害薬は、尿アルブミンのステージにかかわらず尿アルブミン量を低下させる。

糸球体内圧の低下により尿アルブミンが減少する。
近位尿細管でナトリウム利尿が起こり、遠位尿細管にナトリウムが供給され、macula densa を NaCl が通過する。その結果、ATPが分解され、AMPとアデノシンに変換され、エネルギー消費が増加する。アデノシンはadenosine type-1 receptor に作用し、輸入細動脈を収縮させる。輸入細動脈の収縮により、糸球体内圧が低下し、 アルブミンのglomerular filtration barrier 透過が減少する。

Effects of empagliflozin on the urinary albumin-to-creatinine ratio in patients with type 2 diabetes and established cardiovascular disease: an exploratory analysis from the EMPA-REG OUTCOME randomised, placebo-controlled trial

SGLT2阻害薬とケトアシドーシス

SGLT2阻害薬服用開始180日以内にケトアシドーシスを発症するハザード比は、DPP4阻害薬の約2倍となっている。
4.9 events per 1000 person-years vs. 2.3 events per 1000 person-years
保険請求データーベースを用いて解析した。

Fralick M, Schneeweiss S, Patorno E. Risk of Diabetic Ketoacidosis after Initiation of an SGLT2 Inhibitor. N Engl J Med. 2017 Jun 8;376(23):2300-2302. doi: 10.1056/NEJMc1701990.

糖尿病では、肝、腎の糖放出、腎臓の糖再吸収共に増加している

糖尿病では、耐糖能正常者に比べ、肝臓、腎臓での糖放出および腎臓の糖再吸収が増加している。1)

Maximal renal glucose reabsorption capacity (
Tmax) をこえるグルコース負荷で、尿糖が排泄される。
Tmax となる血糖値を域値と呼ぶ。コントロール不良の糖尿病では、尿糖排泄域値は上昇している。
耐糖能正常者では、Tmax ~124mg/min、域値~180mg/dl、コントロール不良の糖尿病では、
Tmax~350mg/dl、域値 ~280mg/dlとなる。2)

SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の尿糖排泄域値を低下させ、尿糖排泄量を増加させる。2, 3)

Meyer C et al. Abnormal renal and hepatic glucose metabolism in type 2 diabetes mellitus. J Clin Invest. 1998 Aug 1;102(3):619-24.

Abdul-Ghani MA, DeFronzo RA, Norton L. Novel hypothesis to explain why SGLT2 inhibitors inhibit only 30-50% of filtered glucose load in humans. Diabetes. 2013 Oct;62(10) :3324-8.

Sha S, Devineni D, Ghosh A, Polidori D, Chien S, Wexler D, Shalayda K, Demarest K, Rothenberg P. Canagliflozin, a novel inhibitor of sodium glucose co-transporter 2, dose dependently reduces calculated renal threshold for glucose excretion and increases urinary glucose excretion in healthy subjects. Diabetes Obes Metab. 2011 Jul;13(7):669-72. 

エンバグリフロジンは高血糖下の心筋細胞内ナトリウム濃度を低下させる。

心筋にSGLT2 は発現しないが、SGLT1が発現している。
高血糖や心不全で心筋細胞質ナトリウム濃度 [Na+]c、カルシウム濃度[Ca2+]cが上昇し、ミトコンドリアカルシウム濃度[Ca2+]mが低下する。
[Na+]cの上昇は、Na+/Ca2+ exchanger (NCX)を介して[Ca2+]cを上昇させ、[Ca2+]mを低下させる。

エンバグリフロジンは、心筋培養細胞で、高血糖下の [Na+]c、[Ca2+]c を低下させ、[Ca2+]mを上昇させる。
心筋にSGLT2が発現しないこと、Na+/H+ exchanger (NHC) 阻害薬 cariporide をエンパグリフロジンの前後で添加した場合、[Na+]c 低下作用がほとんど認められないことから、エンパグリフロジンがNHCに作用していると考えられる。

ミトコンドリアのカルシウム上昇はATP合成を促進する。
エンパグリフロジンは、ミトコンドリア生合成増加により心筋のATP産生を増加させ、心保護作用を示す可能性がある。

Vettor R et al. The cardiovascular benefits of empagliflozin: SGLT2-dependent and -independent effects. Diabetologia. 2017 Jan 11. doi: 10.1007/s00125-016-4194-y. [Epub ahead of print]

Baartscheer A et al. Empagliflozin decreases myocardial cytoplasmic Na+ through inhibition of the cardiac Na+/H+ exchanger in rats and rabbits Diabetologia. 2016 Oct 17. [Epub ahead of print]

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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