SGLT2阻害薬は心筋細胞のNa+/H+ exchanger (NHE)を抑制し、細胞質内Na+、Ca2+濃度を低下させる。

SGLT2阻害薬は、マウス心筋細胞のNa+/H+ exchanger (NHE) を抑制し、細胞質内Na+、Ca2+濃度を低下させる。

まとめ
エンパグリフロジン EMPA、タパクリフロジンDAPA、カナグリフロジンCANA の心筋Na+/H+ exchanger (NHE)に対する効果を検討した。心筋細胞のpH recovery の遅延をNHE 活性抑制の指標とする。

マウス心筋細胞にこれらのSGLT2阻害薬を添加した結果、細胞質内Na+、Ca2+濃度は低下し、細胞内のpH recovery は遅延する。In silicon analysis で、三製剤ともNHEのNa+ binding site に結合する部位を持つ。

ラット心臓の還流モデルで、EMPAとCANA は、血管拡張による還流圧低下が認められた。
三製剤とも、phosphocreatine/ATP、酸素消費量は変化しない。

Uthman L et al. Class effects of SGLT2 inhibitors in mouse cardiomyocytes and hearts: inhibition of Na+/H+ exchanger, lowering of cytosolic Na+ and vasodilation Diabetologia 2017 Dec 2. doi: 10.1007/s00125-017-4509-7. [Epub ahead of print]

血漿量減少が、EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡リスク減少に強く関与する。

EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡のハザード比に関して、Cox 回帰モデルの解析ではヘマトクリットとヘモグロビンの寄与が大きい。尿酸値、空腹時血糖値、A1C は Smaller mediation effects で寄与する。

多変量回帰分析 (multivariable models) では、ヘマトクリット、空腹時血糖値、尿アルブミン・クレアチニン比が心血管死亡減少に関連している。

血漿量(plasma volume) 変化のマーカーが、EMPA-REG OUTCOME試験の心血管死亡リスク減少に関与している。

Inzucchi SE et al. How Does Empagliflozin Reduce Cardiovascular Mortality? Insights From a Mediation Analysis of the EMPA-REG OUTCOME Trial. Diabetes Care. 2017 Dec 4. pii: dc171096. doi: 10.2337/dc17-1096. [Epub ahead of print]

1型糖尿病とSGLT2LT阻害薬

1型糖尿病で、sotagliflozin とプラセボを比較、
プライマリーエンドポイントは24週時のA1C7.0%未満の達成率
登録者の71%がBMI 25以上であった。

sotagliflozin 群では、プラセボの約2倍の患者でA1C 7.0%未満を達成した。
(28.6% vs. 15.2%)
体重と血圧が低下し、総インスリン量が減量される。
尿アルブミンクレアチン比は有意差なし

ケトアシドーシスの発症率は、sotagliflozin 3.0%、プラセボ 0.6%
sotagliflozin では、下痢、Genital mycotic infection がプラセボより増加する。

Nathan DM. Adjunctive Treatments for Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2017 Sep 13. 

Garg SK et al.  Effects of Sotagliflozin Added to Insulin in Patients with Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2017 Sep 13. 

SGLT2阻害薬の尿糖排泄域値とSGLT1による代償

 糖尿病では、maximal renal glucose transport (TmG)が上昇する。SGLT2阻害薬は、糖尿病及び非糖尿病者の
TmG を低下させる。

Empagliflozinは、尿糖排泄域値を血糖値40mg/dlまで低下させる。生理的に正常な血糖値以下でも尿糖が排泄される。
ベースラインのTmGは、SGLT1とSGLT2のTmG を反映し、Empagliflozin服用14日後のTmGは、SGLT1のTmGを反映する。

         TmGベースライン    Empagliflozin服用14日後の減少率
2型糖尿病患者   459 ± 53 mg/min   65 ± 5 %
非糖尿病                337 ± 25 mg/min         75 ± 3%

Empagliflozinによる尿糖排泄効果の約30%は、SGLT1により代償されている。

Al-Jobori Het al. Empagliflozin and Kinetics of Renal Glucose Transport in Healthy Individuals and Individuals With Type 2 Diabetes.  Diabetes. 2017 Jul;66(7):1999-2006. doi: 10.2337/db17-0100. Epub 2017 Apr 20.

SGLT2阻害薬の腎保護作用2

SGLT2阻害薬は、尿アルブミンのステージにかかわらず尿アルブミン量を低下させる。

糸球体内圧の低下により尿アルブミンが減少する。
近位尿細管でナトリウム利尿が起こり、遠位尿細管にナトリウムが供給され、macula densa を NaCl が通過する。その結果、ATPが分解され、AMPとアデノシンに変換され、エネルギー消費が増加する。アデノシンはadenosine type-1 receptor に作用し、輸入細動脈を収縮させる。輸入細動脈の収縮により、糸球体内圧が低下し、 アルブミンのglomerular filtration barrier 透過が減少する。

Effects of empagliflozin on the urinary albumin-to-creatinine ratio in patients with type 2 diabetes and established cardiovascular disease: an exploratory analysis from the EMPA-REG OUTCOME randomised, placebo-controlled trial

SGLT2阻害薬とケトアシドーシス

SGLT2阻害薬服用開始180日以内にケトアシドーシスを発症するハザード比は、DPP4阻害薬の約2倍となっている。
4.9 events per 1000 person-years vs. 2.3 events per 1000 person-years
保険請求データーベースを用いて解析した。

Fralick M, Schneeweiss S, Patorno E. Risk of Diabetic Ketoacidosis after Initiation of an SGLT2 Inhibitor. N Engl J Med. 2017 Jun 8;376(23):2300-2302. doi: 10.1056/NEJMc1701990.

糖尿病では、肝、腎の糖放出、腎臓の糖再吸収共に増加している

糖尿病では、耐糖能正常者に比べ、肝臓、腎臓での糖放出および腎臓の糖再吸収が増加している。1)

Maximal renal glucose reabsorption capacity (
Tmax) をこえるグルコース負荷で、尿糖が排泄される。
Tmax となる血糖値を域値と呼ぶ。コントロール不良の糖尿病では、尿糖排泄域値は上昇している。
耐糖能正常者では、Tmax ~124mg/min、域値~180mg/dl、コントロール不良の糖尿病では、
Tmax~350mg/dl、域値 ~280mg/dlとなる。2)

SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の尿糖排泄域値を低下させ、尿糖排泄量を増加させる。2, 3)

Meyer C et al. Abnormal renal and hepatic glucose metabolism in type 2 diabetes mellitus. J Clin Invest. 1998 Aug 1;102(3):619-24.

Abdul-Ghani MA, DeFronzo RA, Norton L. Novel hypothesis to explain why SGLT2 inhibitors inhibit only 30-50% of filtered glucose load in humans. Diabetes. 2013 Oct;62(10) :3324-8.

Sha S, Devineni D, Ghosh A, Polidori D, Chien S, Wexler D, Shalayda K, Demarest K, Rothenberg P. Canagliflozin, a novel inhibitor of sodium glucose co-transporter 2, dose dependently reduces calculated renal threshold for glucose excretion and increases urinary glucose excretion in healthy subjects. Diabetes Obes Metab. 2011 Jul;13(7):669-72. 

エンバグリフロジンは高血糖下の心筋細胞内ナトリウム濃度を低下させる。

心筋にSGLT2 は発現しないが、SGLT1が発現している。
高血糖や心不全で心筋細胞質ナトリウム濃度 [Na+]c、カルシウム濃度[Ca2+]cが上昇し、ミトコンドリアカルシウム濃度[Ca2+]mが低下する。
[Na+]cの上昇は、Na+/Ca2+ exchanger (NCX)を介して[Ca2+]cを上昇させ、[Ca2+]mを低下させる。

エンバグリフロジンは、心筋培養細胞で、高血糖下の [Na+]c、[Ca2+]c を低下させ、[Ca2+]mを上昇させる。
心筋にSGLT2が発現しないこと、Na+/H+ exchanger (NHC) 阻害薬 cariporide をエンパグリフロジンの前後で添加した場合、[Na+]c 低下作用がほとんど認められないことから、エンパグリフロジンがNHCに作用していると考えられる。

ミトコンドリアのカルシウム上昇はATP合成を促進する。
エンパグリフロジンは、ミトコンドリア生合成増加により心筋のATP産生を増加させ、心保護作用を示す可能性がある。

Vettor R et al. The cardiovascular benefits of empagliflozin: SGLT2-dependent and -independent effects. Diabetologia. 2017 Jan 11. doi: 10.1007/s00125-016-4194-y. [Epub ahead of print]

Baartscheer A et al. Empagliflozin decreases myocardial cytoplasmic Na+ through inhibition of the cardiac Na+/H+ exchanger in rats and rabbits Diabetologia. 2016 Oct 17. [Epub ahead of print]

SGLT2阻害薬は血中マグネシウム値を増加させる。

SGLT2阻害薬はクラスエフェクトとして血中マグネシウム値を増加させる。

まとめ
RCT のメタアナリシスで、SGLT2阻害薬はプラセボに比べ血中マグネシウム値が増加する。
dapagliflozinで、血中リン値が増加する。
血中ナトリウム値は薬剤により異なる。canagliflozin 300mg では低く、empagliflozin 25mgでプラセボに比べ血中ナトリウム値が高い

Tang H et al. Elevated serum magnesium associated with SGLT2 inhibitor use in type 2 diabetes patients: a meta-analysis of randomised controlled trials. Diabetologia. 2016 Dec;59(12):2546-2551

SGLT2阻害薬は、尿細管糸球体フィードバックを正常化する。

SGLT2阻害薬は、macula densa のナトリウム濃度を上昇させ、尿細管糸球体フィードバックを正常化する。

まとめ
SGLT2は、近位尿細管でグルコースとナトリウムを1:1 で再吸収する。

高血糖状態では、macula densa でナトリウム濃度が低下するため尿細管糸球体フィードバックが抑制される。その結果、輸入細動脈が弛緩し糸球体過剰濾過となる。

SGLT2阻害薬により、macula densaのナトリウム濃度が上昇し、尿細管糸球体フィードバックが正常化する。 輸入細動細動脈弛緩は元に戻る。レニン放出は抑制される。

RAS阻害薬は、輸出細動脈を輸入細動脈に比べ弛緩させるので、糸球体後負荷、濾過圧を低下させる。
RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は、糸球体濾過圧を低下させ、長期的な腎保護作用をもたらす。

Nephron Protection in Diabetic Kidney Disease N Engl J Med 2016; 375:2096-2098

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
119位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
16位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム