β細胞の代謝シグナル(4)

 モノアシルグリセロール (MAG)を加水分解するABHD6 の発現を抑制したマウスでは、高脂肪食で肥満が起こらない。摂餌量が低下、エネルギー消費量が増加する。
MAGの上昇は、PPARα、PPARγを活性化し、褐色脂肪細胞を増加させる。
摂餌量が低下した原因は明らかでない。

Zhao S. et al. α/β-Hydrolase Domain 6 Deletion Induces Adipose Browning and Prevents Obesity and Type 2 Diabetes. Cell Rep. 2016 Mar 29;14(12):2872-88.

β細胞の代謝シグナル(3)

 β細胞でグルコース、FFA、アミノ酸が代謝される。

グルコースの代謝産物 Glycerol-3-phosphate は、Glycerol/FFA cycle へも合流する。
(グルコース→glucose-6-phosphate → dihydroxyacetone phosphate → Glycerol-3-phosphate →Glycerol/FFA cycle)
Glycerol/FFA cycleから生じるモノアシルグリセロール (MAG) は、グルコース刺激インスリン分泌を増強する。MAGは、Munc-18に結合し、インスリンの exocytosisを促進する。

グルタミンは、グルタミナーゼによりグルタミン酸となる。
グルタミン酸は、ミトコンドリアマトリックスで、glutamate dehydrogenase (GDH) により代謝され、α-ケトグルタル酸となりTCA cycle に入る。GDH の gain-of-function mutation は、hyperinsulinemic hypoglycemic syndrome の原因となる。この疾患ではタンパク質の多い食事で低血糖が誘発される。
ロイシンは、GDHを活性化する 。

Prentki M, Matschinsky FM, Madiraju SR. Metabolic signaling in fuel-induced insulin secretion. Cell Metab. 2013 Aug 6;18(2):162-85. doi: 10.1016/j.cmet.2013.05.018. Epub 2013 Jun 20.

Zhao S. et al. α/β-Hydrolase domain-6-accessible monoacylglycerol controls glucose-stimulated insulin secretion. Cell Metab. 2014 Jun 3;19(6):993-1007. doi: 10.1016/j.cmet.2014.04.003. Epub 2014 May 8.

インスリン分泌に関連する代謝シグナル(2)β細胞で、Hexokinase-I, LDH、Monocarboxylate transporter (MCT)-1 の発現は低い。

<β細胞で、hexokinase-I, LDH、Monocarboxylate transporter (MCT)-1 の発現は低い。>
 
Lactate dehydrogenase (LDH) はピルビン酸と乳酸の反応を触媒する。
MCT-1は生体膜に存在する、ピルビン酸、乳酸など、Monocarbohydrate のトランスポーター
 
運動で筋肉から生じた乳酸、ピルビン酸がインスリン分泌を刺激して低血糖を生じないように、LDH 、MCT が抑制されている。
 
また、グルコースに対するKm値の低い hekisokinase-1 発現が低い。Km値の高い glucokinase (hexokinase IV) がグルコース応答性インスリン分泌に重要となっている。1)

<β細胞では、グリセロールリン酸シャトルのkey enzyme である mGPD の発現が増加している。>
グリセロールリン酸シャトルは、解糖系で産生されたNADHを酸化する。
Mitochondrial Glycerol Phosphate Dehydrogenase (mGPD)はグリセロールリン酸シャトルのkey enzyme で、β細胞ではmGPD が非常に多い(abundant)。



1. Prentki M, Matschinsky FM, Madiraju SR. Metabolic Signaling in Fuel-Induced Insulin Secretion.Cell Metab. 2013 Aug 6;18(2):162-85.

2. MacDonald MJ, Efendić S, Ostenson CG. Diabetes. 1996 Jul;45(7):886-90. Normalization by Insulin Treatment of Low Mitochondrial Glycerol Phosphate Dehydrogenase and Pyruvate Carboxylase in Pancreatic Islets of the GK Rat
GKラットでは、mGPD 活性が低下している。インスリン治療により血糖値を正常化するとmGPD活性も正常化する。
 
3.  MacDonald MJ. J Biol Chem 256:8287-8290, 1981 High content of mitochondria! glycerol 3-phosphate dehydrogenase in pancreatic islets and its inhibition by diazoxide. 

 
(2014_0821 改訂)

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インスリン分泌に関連する代謝シグナル

「インスリン分泌の総説で、グルコース刺激による細胞内カルシウム上昇はそれほど多くなく、インスリン顆粒がbrake state から細胞膜へ放出されるには少ない。」1)という記述を読んで、代謝シグナルに興味を持ちました。

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アルギニンに対するインスリン分泌と、α細胞のアルギニン負荷

糖尿病学会に行って、まとめておきたいこと、調べてみたいことがたくさんできました。
2型糖尿病でのインスリン分泌は、グルコース刺激では低下しているものの、アルギニン刺激によるインスリン分泌は保たれている理由と、グルカゴン分泌検査でアルギニンを使う理由をJoslin's Diabetes Mellitusで調べてみました。

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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