タンパク質制限は糸球体内圧を低下させる。

長期にわたる1.5g/kg 以上のタンパク摂取は、糸球体過剰濾過とproinflammatory gene expression を増加させる。
動物のスタディで、低タンパク食が、糸球体輸入細動脈を収縮させ、糸球体内圧を低下させる。高タンパク食は輸入細動脈を拡張させ糸球体内圧を上昇させる。

タンパク制限は、尿素の産生を低下させる。高尿素血症 (azotemia) ではタンパク質のcarbamylation が増強され、reactive oxygen species が増加するため酸化ストレスが生じ、炎症、血管内皮障害となる。

Moderate-to-advance kidney disease (eGFR <45)、尿タンパク 0.3g/日 では、0.6-0.8g/kg のタンパク制限が推奨される。

ナトリウム制限がCKDの悪化を遅らせるかどうかは分かっていない。ナトリウム摂取と腎臓病の悪化が無関係というデータもあり関係するというデータもある。
2.3g/日のナトリウム制限は、心血管病患者にはベネフィットがあるが、腎臓病患者にベネフィットがあるというエビデンスがない。したがって腎臓病全般にナトリウム4g/日、浮腫やタンパク尿がある場合ナトリウム3g/日を推奨する

Kalantar-Zadeh K, Fouque D. Nutritional Management of Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2017 Nov 2;377(18):1765-1776.

リノール酸のバイオマーカーは2型糖尿病リスクと逆相関する

10か国、20プロスペクテイブコホートスタディの結果で、総脂肪酸に対するリノール酸バイオマーカーの比率が高い群では2型糖尿病リスクが低い。
リノール酸はアラキドン酸に代謝される。アラキドン酸のバイオマーカーと糖尿病リスクは関連しない。

PUFAs は炭水化物や飽和脂肪酸に比べ血糖値を改善、インスリン分泌、インスリン抵抗性を改善する。
リノール酸がリン脂質への取り込まれることにより膜の流動性 fluidity が変化し、インスリン受容体を変化 させるかもしれない。
リノール酸はナッツ、ヒマワリ油やコーンオイルに含まれる

Wu JHY et al. Omega-6 fatty acid biomarkers and incident type 2 diabetes: pooled analysis of individual-level data for 39 740 adults from 20 prospective cohort studies Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Dec;5(12):965-974

Kroger J, Jacobs S, Jansen EH, Fritsche A, Boeing H, Schulze MB. Erythrocyte membrane fatty acid fluidity and risk of type 2 diabetes in the EPIC-Potsdam study. Diabetologia 2015; 58: 282–89


リノール酸 linoleic acid 18:2(n-6)
α-リノレン酸 α-linoleic acid 18:3(n-3)


ナトリウム制限は、RASS阻害薬の効果増強を介して尿アルブミンを減少させる。

RASS阻害薬服用中にナトリウム制限を行なった結果、尿アルブミン値が改善した。
ナトリウムはACE活性増強作用がある、ナトリウム制限はRASS阻害薬効果を増強する。

まとめ
2型糖尿病、ロサルタン100mg服用
尿アルブミン300mg/day以上
血圧140/90未満、
血中クレアチニン2mg/dl未満の患者にナトリウム2.4g/dayあるいは4.8g/day のナトリウム制限を行う。
ナトリウム2.4g/dayは塩分6g/dayに相当

ナトリウム2.4g/dayの食事で、3ヶ月後に尿アルブミン値は724mg/dayから481mg/dayへ減少した。
ナトリウム4.8g/dayの食事では尿アルブミンの変化は認めなかった。
塩分制限がRASS阻害薬の効果を増強する。1, 2)

ナトリウム負荷は腎臓内のACE 活性を増強するため、Angiotensin IからAngiotensin IIへの転換を促進する。
Angiotensin II は、glomerular barrier permeability を増加させる。
ラットやヒトで、高ナトリウム摂取が、RASS阻害薬の効果を減弱させることが報告されている。

ビタミンDは尿アルブミン減少効果が示されていたため、paricalcitol とプラセボの比較試験も同時に行われた。
paricalcitol は、塩分12 g/dayでアルブミン尿を減少させるが、塩分6g/dayではアルブミン尿に対する効果なし
paricalcitolは、Sodium-induced albuminuria を減少させる。

Parvanova A et al. Moderate salt restriction with or without paricalcitol in type 2 diabetes and losartan-resistant macroalbuminuria (PROCEED): a randomised, double-blind, placebo-controlled, crossover trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov 2. 

Kwakernaak AJ et al. Effects of sodium restriction and hydrochlorothiazide on RAAS blockade efficacy in diabetic nephropathy: a randomised clinical trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 May;2(5):385-95

ビタミンD受容体活性化は、アルブミン尿を減少させる。 (VITAL study)


低カロリー食と通常食のサイクルが膵島細胞をリブログラミンクし、β細胞を増殖させる。

糖尿病モデルマウスで、低カロリー食4日間と通常食を繰り返した結果、インスリン分泌が回復し約60日後に血糖値が正常値に近づいた。PCNA陽性のβ細胞が認められ、β細胞数は増加した。

糖尿病のないマウスで、低カロリー食の期間にβ細胞数が減少するが、PCNA陽性β細胞は増加し、通常食で通常レベルにもどる。α細胞数は変化しない。低カロリー食、通常食の期間中、PDX-1とグルカゴンが共染色される non-α/β cell が増加する。

低カロリー食と通常食のサイクルにより、PDX-1、Ngn3、MafA、Foxo1など膵島分化に重要な遺伝子の発現が促進される。発現が誘導された Ngn3遺伝子陽性細胞からインスリン陽性細胞へ分化することが lineage tracing により確かめられた。
低カロリー食と通常食のサイクルが膵島細胞のリブログラミングを誘導する。

低カロリー食では、血中IGF-1値が低下する。
腸管や血球系細胞のself-renewalでは、低カロリー食による IGF-1 の低下、その結果として adenyl cyclase を介した PKAおよびmTORの抑制が重要であると報告されている。

1型糖尿病患者5人で、低カロリー食5日後に血中IGF-1値はベースラインに比べ抑制された。
健常者および1型糖尿病患者の膵島を低カロリー食を模した培養液で36時間培養した結果、通常培養液に比べ、インスリン、Ngn3発現は増加、PKA、mTOR活性は抑制される。

低カロリー食と通常食のサイクルによる膵島細胞のリブログラミンクとβ細胞増加は、IGF-1抑制とPKA、mTOR活性の低下を介している可能性がある。

Cheng CW et al. Fasting-Mimicking Diet Promotes Ngn3-Driven β-Cell Regeneration to Reverse Diabetes.Cell.  2017 Feb 23;168(5):775-788.e12. doi: 10.1016/j.cell.2017.01.040.

Cheng CW et al. Prolonged fasting reduces IGF-1/PKA to promote hematopoietic-stem-cell-based regeneration and reverse immunosuppression. Cell Stem Cell. 2014 Jun 5;14(6):810-23. doi: 10.1016/j.stem.2014.04.014.

Yilmaz ÖH ER al. mTORC1 in the Paneth cell niche couples intestinal stem-cell function to calorie intake. Nature. 2012 Jun 28;486(7404):490-5. doi: 10.1038/nature11163.

朝食をとることが、2型糖尿病の食後血糖管理には望ましい。

2型糖尿病、22人のクロスオーバースタディ、朝食摂取に比べ、朝食の未摂取では、昼食後、夕食後の血糖値が高く、インスリン、intact GLP-1が低い。グルカゴン、遊離脂肪酸は高くなる。
朝食をきちんとることが2型糖尿病の食後血糖低下の良い方法となる。

“Breakfast consumption could be a successful strategy for reduction of PPHG in type 2 diabetes."

Daniela Jakubowicz at al. Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial Published online before print July 28, 2015, doi: 10.2337/dc15-0761

コーヒーの摂取は糖尿病発症を低下させる。

250ml以上のコーヒーを10年間摂取すると、糖尿病発症リスクは54%低下する。
コーヒーの抗炎症効果のある成分によると考えられる。


アボガドはLDLコレステロール、LDL particle 数、small dense LDL コレステロールを減少させる。

アボガド1日1個を含んだ moderate-fat diet は同脂肪量のオレイン酸を含んだ食事に比べ、LDLコレステロール、LDL particle 数、small dense LDL コレステロールを減少させた。
 
アボガドに含まれる不飽和脂肪酸、植物ステロール(phytosterol)、線維(fiber) の効果と考えられる。
 
飽和脂肪酸の低い食事で大豆タンパク、アーモンドが、マイルドにLDLコレステロールを上昇させるが、small dense LDLを低下させるという報告もある。
 

 

動脈硬化モデルマクスで、低炭水化物高脂肪食は、動脈硬化を進行させる。

極端な低炭水化物食が推奨されない根拠となる動物実験のデータです。
 
動脈硬化モデル、アポE欠損マウスで、6週間の低炭水化物高脂肪食 (LCHF) は、通常食に比べ、動脈硬化を進行させる。
 
LCHF では、循環血液中の 血管内皮前駆細胞 (Sca1+ Flk1+) の数が減少している。
LCHF は、血管内皮前駆細胞 で、Aktのリン酸化を抑制する。
 
Akt リン酸化は血管内皮前駆細胞の mobilization、 proliferation、survival に重要であることが知られている。
 


ナトリウム、カリウム排泄量と高血圧、死亡率、心血管イベント

ナトリウム、カリウム排泄量と高血圧 1)

18カ国、102216人の解析 (PURE study)
ナトリウム排泄量と血圧は相関し、ナトリウム排泄量が1g 増えるごとに収縮期血圧 2.11 mmHg、拡張期血圧0.78 mmHg 増加する。

ナトリウム排泄量と年齢が高くなると、ナトリウム排泄量あたりの血圧上昇が大きくなる。
ナトリウム排泄量 5 g<、3-5 g、<3 gで、それぞれ収縮期血圧 2.58 mmHg/g、1.74 mmHg/g、
0.74 mmHg/g 増加する。

年齢 >55 歳、45-55歳、45歳>でそれぞれ収縮期血圧2.97 mmHg/g、2.43 mmHg/g、1.96 mmHg/g 増加する。
高血圧がある場合は2.49 mmHg/g、ない場合は1.30 mmHg/g

カリウム排泄量は、血圧と逆相関する。
高ナトリウム排泄量と低カリウム排泄量を伴っている場合は、それぞれ単独よりも血圧が高い

ナトリウム排泄量と死亡率、心血管イベント 2)
この試験で、3.7年の間に、3317人(3.3%) にcardiovascular-disease outcome  が発生。
ナトリウム排泄量が、7 g 以上および3g 未満で、4-5.99 gに比べ、cardiovascular-disease outcome  が上昇する。
カリウム排泄量が1.5 g 未満に比べ、カリウム排泄量が多ければ cardiovascular-disease outcome  のリスクが低下する。

ナトリウム排泄量3g未満でリスク上昇を示した点についての考察

この試験の大部分の参加者は心血管疾患の病歴がない。
低ナトリウム排泄量群に、糖尿病や心血管疾患の病歴のある参加者が多いが(more common)、INTERHEART Modifiable Risk Score はそろえてある。
心血管疾患の既往、がん、糖尿病、current smoking、最初2年のイベントを起こした参加者をのぞいても、解析結果に影響を与えていない。
しかし、逆の因果関係も完全に否定できず、低ナトリウム排泄量群に、糖尿病、心疾患の病歴のある参加者が多いことが、リスク上昇を説明しうるかもしれない。

コメントでは、カリウム排泄量が低いほど、ナトリウム排泄量あたりの血圧上昇がおおきくなるので、健康的な食事として、ナトリウム制限だけでなくカリウム摂取をすすめていた。4)

1. Mente A et al. N Engl J Med. 2014 Aug 14;371(7):601-11. Association of urinary sodium and potassium excretion with blood pressure.

2. O'Donnell M et al. N Engl J Med. 2014 Aug 14;371(7):612-23. Urinary sodium and potassium excretion, mortality, and cardiovascular events.

3. Mozaffarian D et al. N Engl J Med. 2014 Aug 14;371(7):624-34. Global sodium consumption and death from cardiovascular causes.


 



50歳から65歳までの高タンパク食は寿命が短い。65歳以上は高タンパク食がよい。

高タンパク質食が寿命を短くするという2報、高タンパク質食が
高タンパク食は寿命を短くするという2報、高タンパク食が、
① GHを介してIGF−1シグナルを活性化すること、
② 肝臓でのmTORを活性化するために寿命が短くなる。
 
食事と寿命
ヒトの食事解析1)
50歳以上のアメリカ人6381人、1日の食事を記録し、その後の寿命をみたもの。
平均的には、1823kcal、炭水化物51%、脂肪31%、タンパク質16%(アミノ酸11%)
 
高タンパク食 20%~、中等度タンパク食 10~19%、低タンパク食 10%未満で比較
50歳から65歳の高タンパク摂取では、死亡率が75%増加する。以後の18年でがんの死亡率が4倍高い。
50-65歳で、血中IGF-1値は、タンパク質摂取量と相関した。
IGF-1は、タンパク質摂取と寿命との関係にmodulatorとしてはたらいている。
 
動物性タンパク質摂取が、タンパク質摂取と全死亡率、がん死亡率と関連している。最近、赤身の肉の消費量と全死亡率、ガン関連死亡率との関連が報告されており、その結果を支持するものである。
 
65歳を超えると、逆に高タンパク食は、全死亡率、がん死亡率を減少させる。
IGF-1は高齢者にとっては重要なもの。
糖尿病では全年齢を通じて死亡率が5倍高い。
 
マウスの結果2)
マウス858匹で摂餌の組成、エネルギー量と寿命の関係を解析した。
タンパク質と炭水化物が低下すると、代償的に食事摂取が増える。
脂肪摂取が減少した際には代償的な食事増加の傾向は少ない。
タンパク質を炭水化物に置き換えて、代償的な食事摂取を制限したときに、寿命は適正化される。
 
分枝鎖アミノ酸 (BCCA) とインスリンは、mTOR活性化する。
血中BCCA/ 血糖値 比が低いとmTOR活性が低く、血中BCCA/血糖値 比が高いとmTOR活性が高い
 
寿命を延ばすのはカロリー制限でなはなく、タンパク摂取制限によるの
高タンパク食で、カロリー制限することは寿命には全く効果がない。
 
感想
サイエンス誌の解説では、「すべてのヒトに低タンパク食を推奨しているわけでない、例えば低糖質、高タンパク食で、代謝の指標が改善した報告もある」としている。3)
エネルギーの20%を超える極端な高タンパク食を長期に続けるのはよくないというデビデンスで
2. The Ratio of Macronutrients, Not Caloric Intake, Dictates Cardiometabolic Health, Aging, and Longevity in Ad Libitum-Fed Mice
 

 


続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
119位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
16位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム