FC2ブログ

Icosapent ethyl と心血管イベント抑制

Icosapent ethylは高度に純化された安定型のeicosapentaenoic acid (EPA)で、1日4g(1回2g、1日2回)服用により心血管イベントリスク低下を認めた。NEJM誌に同時に掲載されたn-3脂肪酸と心血管イベントの一次予防のスタディでは、プラセボと有意差を認めなかった。
まとめ
スタチン服用中、LDLコレステロールはコントロールされ中性脂肪はやや高く(LDLコレステロール中央値75 mg/dl、中性脂肪中央値216 mg/dl)、心血管疾患や糖尿病のあるハイリスクな集団で、Icosapent ethyl 1日4g(1回2g、1日2回)、あるいはプラセボ(ミネラルオイル)との比較、フォローアップ4.7年で、プライマリーエンドポイント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、冠動脈再灌流、不安定狭心症)の25%のリスク低下を認めた。
Non-HDLコレステロールの低下は14 mg/dLで、この値から予想されるリスク低下は6-8%であるが、実際には25%のリスク低下を認めている。中性脂肪が正常でも心血管保護作用示しており、中性脂肪低下作用以外の代謝効果があることを説明する。
抗血栓作用が選択的血行再建術を減少させたとは考えにくく、膜安定化 (Membrane stabilizing effect)、冠動脈プラークの安定化と消退 (Stabilization and regression of coronary plaque) がイベントリスク低下に関与しているかもしれない。
JELISはオープンラベル試験で、pure EPA 1.8 g dailyとスタチンの併用とスタチンの比較、19%のリスク低下を示した。
Bhatt DL et al. Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia. N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):11-22.


JE Manson et al. Supplementation with n-3 fatty acids did not result in a lower incidence of major cardiovascular events or cancer than placebo. N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):23-32.
Yokoyama M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

炭水化物摂取比率60%以上の食事では死亡率が上昇する。

ARICスタディはアメリカのコミュニティでの結果、PUREスタディはアジアを含む18ヶ国の結果で、アジアでは炭水化物比率が高いため、52%の国で炭水化物比率60%以上となっていた。AIRCスタディの方がフォローアップ期は長い。(ARIC25年、PURE 7.4年)
ARICスタディで、死亡率は炭水化物エネルギー比率に対してU字カープを描く。炭水化物でエネルギーの50-55%を摂取する場合が死亡率が低い。1)
PUREスタディでは、炭水化物約60%以上の食事は総死亡率が高く、脂肪比率が高いほど総死亡率が低い。2)

炭水化物比率増加では、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症、apolipoprotein B (ApoB)-to- apolipoprotein A1 (ApoA1) の上昇、small dense LDL上昇が認められる。2)

AIRCスタディで炭水化物比率の低い場合でも死亡率の上昇が認められる。
低炭水化物食では、野菜、フルーツ、grains が不足する傾向があり、タンパク質を動物性由来の食品から摂取する傾向がある。
低炭水化物食とバランスの良い食事では、bioactive dietary components (分枝鎖アミノ酸、脂肪酸、食物線維、phytochemicals、haem iron、ビタミン、ミネラルなどの比率が異なる。
長期の低炭水化物食では、植物由来タンパク質が低く動物由来タンパク質、脂肪摂取量が増えるため、炎症経路、生物学的加齢、酸化ストレスを刺激すると想定されている。1)

日本では、総エネルギーに対して炭水化物60%、タンパク質15%、脂肪20%で摂取している。
NIPPON DATA80では、moderate diet で炭水化物が低くタンパク質と脂肪が多い食事は、女性で心血管死亡率、全死亡率と逆相関する。3)

1 Seidelmann SB et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis
Lancet Public Health. 2018 Sep;3(9):e419-e428. doi: 10.1016/S2468-2667(18)30135-X. Epub 2018 Aug 17.
四つのアメリカ合衆国のコミュニティ、45-64歳、15428人、男性で、<600 kcal/day、>4200kcal/day、女性 <600 kcal/day、>3500kcal/dayは除外、25年のフォローアップの結果、炭水化物でエネルギーの50-55%を摂取する場合が死亡率が低い。炭水化物40%未満、70%を超える場合、moderate intake に比べ死亡率が増加する。

2 Dehghan M et al. Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study. Lancet. 2017 Nov 4;390(10107):2050-2062
18カ国、135335人、7.4年のフォローアップ、アジアの国も含まれる。
半分以上の国が総エネルギーに対する炭水化物比率60%以上、1/4の国で70%以上を炭水化物から摂取していた。
炭水化物摂取比率が高い五分の1分画で、一番低い分画より総死亡率が高い。心血管疾患リスク、心血管疾患による死亡には関連しない。
エネルギー摂取に対する脂肪比率が高いほど死亡率が低い。
総脂肪、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸比率は、一番低い5分の1分画に比べ一番高い分画で死亡率が低い。
総脂肪比率、脂肪の種類は、心血管疾患、心筋梗塞、心血管死には関連しない。
飽和脂肪酸摂取量が多いほど脳卒中リスクと逆相関する。

3 Nakamura Y et al. Low-carbohydrate diets and cardiovascular and total mortality in Japanese: a 29-year follow-up of NIPPON DATA80. Br J Nutr. 2014 Sep 28;112(6):916-24
9200人、1980年をベースラインとして29年のフォローアップをおこなった日本のスタディ。

ナトリウム摂取量と高血圧、心血管イベント

ナトリウム5g (塩分12.6g) 以上を摂取するコミュニティでは、1日のナトリウム摂取量と収縮期血圧および心血管イベントが関連する。

まとめ
95767人、8.1年のフォローアップしたスタディ、早朝尿サンプルからKawasaki formula により24時間のナトリウムとカリウムの摂取量を推定する。
参加国のうち中国で1日ナトリウム摂取量が5g(塩分12.6g)を超え、それ以外の国で1日ナトリウム摂取量が3-5g(塩分7.6-12.6g)であった。

ナトリウム摂取量が多い三分の一群で、収縮期血圧は、ナトリウム1gあたり2.86 mmHg増加する。
主要心血管イベントと1日ナトリウム摂取量は、ナトリウム摂取が一番多い群(>5.08 g /日) では正の相関となるが有意ではない。ナトリウム摂取が少ない三分の一群(<4.43g/日)で有意な逆相関となり、ナトリウム摂取中間群(4.43-5.08 g/日)で相関がない.

ナトリウム摂取量5g/日を超える中国では、他の国に比べ、ナトリウム摂取量と心血管イベントのより強い相関を認めた。
脳卒中とナトリウム摂取量は、中国では関連するが他の国では関連しない。
心筋梗塞とナトリウム摂取量は、中国で関連しないが他の国では関連する。

カリウム摂取量が多いほど心血管アウトカムは減少する。
カリウム摂取が多いことは、野菜や果物が摂取されて健康的な食事摂取を反映しているかもしれない。

Mente A et al. Urinary sodium excretion, blood pressure, cardiovascular disease, and mortality: a community-level prospective epidemiological cohort study. Lancet. 2018 Aug 11;392(10146):496-506.

Messerli FH, Hofstetter L, Bangalore S. Salt and heart disease: a second round of “bad science"? Lancet. 2018 Aug 11;392(10146):456-458.

タンパク質制限は糸球体内圧を低下させる。

長期にわたる1.5g/kg 以上のタンパク摂取は、糸球体過剰濾過とproinflammatory gene expression を増加させる。
動物のスタディで、低タンパク食が、糸球体輸入細動脈を収縮させ、糸球体内圧を低下させる。高タンパク食は輸入細動脈を拡張させ糸球体内圧を上昇させる。

タンパク制限は、尿素の産生を低下させる。高尿素血症 (azotemia) ではタンパク質のcarbamylation が増強され、reactive oxygen species が増加するため酸化ストレスが生じ、炎症、血管内皮障害となる。

Moderate-to-advance kidney disease (eGFR <45)、尿タンパク 0.3g/日 では、0.6-0.8g/kg のタンパク制限が推奨される。

ナトリウム制限がCKDの悪化を遅らせるかどうかは分かっていない。ナトリウム摂取と腎臓病の悪化が無関係というデータもあり関係するというデータもある。
2.3g/日のナトリウム制限は、心血管病患者にはベネフィットがあるが、腎臓病患者にベネフィットがあるというエビデンスがない。したがって腎臓病全般にナトリウム4g/日、浮腫やタンパク尿がある場合ナトリウム3g/日を推奨する

Kalantar-Zadeh K, Fouque D. Nutritional Management of Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2017 Nov 2;377(18):1765-1776.

リノール酸のバイオマーカーは2型糖尿病リスクと逆相関する

10か国、20プロスペクテイブコホートスタディの結果で、総脂肪酸に対するリノール酸バイオマーカーの比率が高い群では2型糖尿病リスクが低い。
リノール酸はアラキドン酸に代謝される。アラキドン酸のバイオマーカーと糖尿病リスクは関連しない。

PUFAs は炭水化物や飽和脂肪酸に比べ血糖値を改善、インスリン分泌、インスリン抵抗性を改善する。
リノール酸がリン脂質への取り込まれることにより膜の流動性 fluidity が変化し、インスリン受容体を変化 させるかもしれない。
リノール酸はナッツ、ヒマワリ油やコーンオイルに含まれる

Wu JHY et al. Omega-6 fatty acid biomarkers and incident type 2 diabetes: pooled analysis of individual-level data for 39 740 adults from 20 prospective cohort studies Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Dec;5(12):965-974

Kroger J, Jacobs S, Jansen EH, Fritsche A, Boeing H, Schulze MB. Erythrocyte membrane fatty acid fluidity and risk of type 2 diabetes in the EPIC-Potsdam study. Diabetologia 2015; 58: 282–89


リノール酸 linoleic acid 18:2(n-6)
α-リノレン酸 α-linoleic acid 18:3(n-3)


ナトリウム制限は、RASS阻害薬の効果増強を介して尿アルブミンを減少させる。

RASS阻害薬服用中にナトリウム制限を行なった結果、尿アルブミン値が改善した。
ナトリウムはACE活性増強作用がある、ナトリウム制限はRASS阻害薬効果を増強する。

まとめ
2型糖尿病、ロサルタン100mg服用
尿アルブミン300mg/day以上
血圧140/90未満、
血中クレアチニン2mg/dl未満の患者にナトリウム2.4g/dayあるいは4.8g/day のナトリウム制限を行う。
ナトリウム2.4g/dayは塩分6g/dayに相当

ナトリウム2.4g/dayの食事で、3ヶ月後に尿アルブミン値は724mg/dayから481mg/dayへ減少した。
ナトリウム4.8g/dayの食事では尿アルブミンの変化は認めなかった。
塩分制限がRASS阻害薬の効果を増強する。1, 2)

ナトリウム負荷は腎臓内のACE 活性を増強するため、Angiotensin IからAngiotensin IIへの転換を促進する。
Angiotensin II は、glomerular barrier permeability を増加させる。
ラットやヒトで、高ナトリウム摂取が、RASS阻害薬の効果を減弱させることが報告されている。

ビタミンDは尿アルブミン減少効果が示されていたため、paricalcitol とプラセボの比較試験も同時に行われた。
paricalcitol は、塩分12 g/dayでアルブミン尿を減少させるが、塩分6g/dayではアルブミン尿に対する効果なし
paricalcitolは、Sodium-induced albuminuria を減少させる。

Parvanova A et al. Moderate salt restriction with or without paricalcitol in type 2 diabetes and losartan-resistant macroalbuminuria (PROCEED): a randomised, double-blind, placebo-controlled, crossover trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov 2. 

Kwakernaak AJ et al. Effects of sodium restriction and hydrochlorothiazide on RAAS blockade efficacy in diabetic nephropathy: a randomised clinical trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2014 May;2(5):385-95

ビタミンD受容体活性化は、アルブミン尿を減少させる。 (VITAL study)


低カロリー食と通常食のサイクルが膵島細胞をリブログラミンクし、β細胞を増殖させる。

糖尿病モデルマウスで、低カロリー食4日間と通常食を繰り返した結果、インスリン分泌が回復し約60日後に血糖値が正常値に近づいた。PCNA陽性のβ細胞が認められ、β細胞数は増加した。

糖尿病のないマウスで、低カロリー食の期間にβ細胞数が減少するが、PCNA陽性β細胞は増加し、通常食で通常レベルにもどる。α細胞数は変化しない。低カロリー食、通常食の期間中、PDX-1とグルカゴンが共染色される non-α/β cell が増加する。

低カロリー食と通常食のサイクルにより、PDX-1、Ngn3、MafA、Foxo1など膵島分化に重要な遺伝子の発現が促進される。発現が誘導された Ngn3遺伝子陽性細胞からインスリン陽性細胞へ分化することが lineage tracing により確かめられた。
低カロリー食と通常食のサイクルが膵島細胞のリブログラミングを誘導する。

低カロリー食では、血中IGF-1値が低下する。
腸管や血球系細胞のself-renewalでは、低カロリー食による IGF-1 の低下、その結果として adenyl cyclase を介した PKAおよびmTORの抑制が重要であると報告されている。

1型糖尿病患者5人で、低カロリー食5日後に血中IGF-1値はベースラインに比べ抑制された。
健常者および1型糖尿病患者の膵島を低カロリー食を模した培養液で36時間培養した結果、通常培養液に比べ、インスリン、Ngn3発現は増加、PKA、mTOR活性は抑制される。

低カロリー食と通常食のサイクルによる膵島細胞のリブログラミンクとβ細胞増加は、IGF-1抑制とPKA、mTOR活性の低下を介している可能性がある。

Cheng CW et al. Fasting-Mimicking Diet Promotes Ngn3-Driven β-Cell Regeneration to Reverse Diabetes.Cell.  2017 Feb 23;168(5):775-788.e12. doi: 10.1016/j.cell.2017.01.040.

Cheng CW et al. Prolonged fasting reduces IGF-1/PKA to promote hematopoietic-stem-cell-based regeneration and reverse immunosuppression. Cell Stem Cell. 2014 Jun 5;14(6):810-23. doi: 10.1016/j.stem.2014.04.014.

Yilmaz ÖH ER al. mTORC1 in the Paneth cell niche couples intestinal stem-cell function to calorie intake. Nature. 2012 Jun 28;486(7404):490-5. doi: 10.1038/nature11163.

朝食をとることが、2型糖尿病の食後血糖管理には望ましい。

2型糖尿病、22人のクロスオーバースタディ、朝食摂取に比べ、朝食の未摂取では、昼食後、夕食後の血糖値が高く、インスリン、intact GLP-1が低い。グルカゴン、遊離脂肪酸は高くなる。
朝食をきちんとることが2型糖尿病の食後血糖低下の良い方法となる。

“Breakfast consumption could be a successful strategy for reduction of PPHG in type 2 diabetes."

Daniela Jakubowicz at al. Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial Published online before print July 28, 2015, doi: 10.2337/dc15-0761

コーヒーの摂取は糖尿病発症を低下させる。

250ml以上のコーヒーを10年間摂取すると、糖尿病発症リスクは54%低下する。
コーヒーの抗炎症効果のある成分によると考えられる。


アボガドはLDLコレステロール、LDL particle 数、small dense LDL コレステロールを減少させる。

アボガド1日1個を含んだ moderate-fat diet は同脂肪量のオレイン酸を含んだ食事に比べ、LDLコレステロール、LDL particle 数、small dense LDL コレステロールを減少させた。
 
アボガドに含まれる不飽和脂肪酸、植物ステロール(phytosterol)、線維(fiber) の効果と考えられる。
 
飽和脂肪酸の低い食事で大豆タンパク、アーモンドが、マイルドにLDLコレステロールを上昇させるが、small dense LDLを低下させるという報告もある。
 

 

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
126位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
13位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム