リラグルチドはアルブミン尿を抑制する。

LEADER試験のsecondary renal outcomeの解析結果で、リラグルチド群では、macroalbuminuria の出現率が少ないため、3.84年のフォローアップでプラセボに比べ composite renal outcome 22%減少が認められた。
New onset of persistent macroalbuminuria のハザード比 0.74

Persistent doubling of serum creatinine
Renal-replacement therapy
Death due to renal disease は有意差なし。
尿アルブミンクレアチニン比は、36カ月でプラセボに比べ83%  (estimated trial group ratio 0.83)

GFR 低下量は有意差なく、GFR 60 ml/min/1.73m2 以上あるいはGFR 30 ml/min/1.73m2 未満で検討しても結果は変わらない。
GLP-1作動薬による GFR decline 抑制のエビデンスは限られている。

ベースラインのHbA1C、血圧、体重で補正しても、renal outcome 減少は認められる。
Semaglutideを使ったSUSTAIN試験では、プラセボに比べ、composite renal outcome 36% 減少が報告された。
腎保護作用の要因として、Inflammation や oxidative  stress の改善が想定されている。

Mann JFE et al. Liraglutide and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2017 Aug 31;377(9):839-848.

de Boer IH. A New Chapter for Diabetic Kidney Disease. N Engl J Med. 2017 Aug 31;377(9):885-887. 

GLP-1の神経保護作用(neuroprotective and neurorestorative effect)

2013年 open-label study で、エクゼナチド12ヶ月投与が、コントローに比べ、パーキンソン病のスコアMDS-UPDRS part 3 off-medication scoreを改善させたと報告された。1)

今回、randomised, double-blind, placebo-controlled trial で、エクゼナチド2mg 週1回、48週間投与後、12週間 wash out し、プラセボと
パーキンソン病のスコアを比較した。
エクゼナチド群で、60週後、MDS-UPDRS part 3  off-medication score が1.0ポイント改善、プラセボ群で、2.1ポイント悪化

他のスコアおよび MDS-UPDRSの1−4のパート(on-medication state) では有意差なし。

エクゼナチドは、blood-brain  barrier を通過する。(エクゼナチド群のピーク血中濃度 543·3 pg/ml、48週時の髄液濃度中央値11·7 pg/mL)

1) Aviles-Olmos I, Dickson J, Kefalopoulou Z, et al. Exenatide and the treatment of patients with Parkinson’s disease. J Clin Invest 2013; 123: 2730–36.

2) Athauda D et al. Exenatide once weekly versus placebo in Parkinson's disease: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2017 Aug 3. pii: S0140-6736(17)31585-4. 


リナグリプチンは、糖尿病性腎症モデルマウスでSDF-1を増加させる。

リナグリプチンが、SDF-1増加を介して糖尿病性腎症に対し腎保護作用を示すという報告です。

まとめ
糖尿病性腎症モデルマウスで、腎臓のcell-derived factor-1 (SDF-1)発現は増加している。 
リナグリプチン投与で、糖尿病性腎症モデルマウスのpodocyte、遠位ネフロンで、SDF-1発現がさらに増加する。 
Glp1r(+ / +)糖尿病傾向マウスにおいて、リナグリプチンにより、アルブミン尿症や糸球体硬化症が改善する。さらにナトリウム排泄が亢進し、糸球体過剰濾過の増加速度を減弱させた。 
SDF-1受容体阻害薬は、Glp1r(+ / +)糖尿病傾向マウスにおける尿中ナトリウム排泄および糸球体高血圧を低下させた。

SDF-1は、臓器障害の際に、間質細胞、内皮細胞から分泌され、幹細胞/前駆細胞を集結させる。 

Takashima S, et al. Stromal cell-derived factor-1 is upregulated by dipeptidyl peptidase-4 inhibition and has protective roles in progressive diabetic nephropathy. Kidney Int. 2016.

Anderluh M et al. Cross-talk between the dipeptidyl peptidase-4 and stromal cell-derived factor-1 in stem cell homing and myocardial repair: Potential impact of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors. Pharmacol Ther. 2016

エクゼナチドは、PKA活性化、eNOS刺激を介して血小板凝集を抑制する。

 cyclic adenosine monophosphate/protein kinase A (cAMP/PKA) シグナリングカスケードは血小板凝集を抑制する。
プロスタサイクリンI2 (PGI2) は、血小板のGs-coupled prostacyclin receptor に結合し、cAMP/PKAシグナリングカスケード刺激する。その結果、Ras、Rho ファミリーが不活化され、カルシウム放出が低下、actin cytoskeleton modulationにより、血小板凝集が抑制される。

ヒト巨核球 cell line MEG-01 に、GLP-1受容体が発現している。GLP-1受容体作動薬エクゼナチドは、MEG-01の細胞内 cAMP 濃度を上昇させ、トロンビン、ADP、コラーゲンによる血小板凝集を抑制する。
血管内皮に eNOS が欠損したマウスの血栓形成モデルで、エクゼナチドの血小板凝集抑制作用は認められず。
マウス尾静脈で、エクゼナチドは出血時間に影響を与えない。

エクゼナチドは、血小板および血管内皮細胞で adenylyl cyclase を活性化、cAMP上昇、PKAを介してeNOSを活性化する。
血小板内のNO上昇は、soluble guanylyl cyclase を活性化し、cyclic guanosine monophosphate、protein kinase G を刺激し、血小板凝集を抑制する。

ヒトの血小板及び血管内皮細胞に、GLP-1受容体 (canonical GLP-1 receptor) が発現しているかはまだ確定していない。

Cameron-Venzdrig, A et al. Glucagon- like peptide-1 receptor activation attenuates platelet aggregation and thrombosis. Diabetes 2016 65, 1714–1723.

Jia G, Aroor AR, Sowers JR. Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Activation and Platelet Function: Beyond Glycemic Control. Diabetes. 2016 Jun;65(6):1487-9.
分かりやすい図があります。

Beck F et al. Time-resolved characterization of cAMP/PKA-dependent signaling reveals that platelet inhibition is a concerted process involving multiple signaling pathways. Blood. 2014 Jan 30;123(5):e1-e10.

Drucker DJ. The Cardiovascular Biology of Glucagon-like Peptide-1 Cell Metab. 2016 Jun 22. pii: S1550-4131(16)30295-9.

GLP-1受容体作動薬と腎

ラットの結果、GLP-1作動薬が尿アルブミンを減少させる。糸球体過剰ろ過も改善。1)

糖尿病モデルマウス (Akita mice) で、リラグルチドが、尿アルブミンを減少させ、glomerular expansion を抑制した。糸球体のスーパーオキサイドと腎のNAD(P)H oxidase を低下させた。
GLP-1は、慢性的高血糖下で、酸化ストレスを改善することにより腎保護効果を示す。2)

ヒトで短期間の結果、リラグルチド投与で、近位尿細管ナトリウム再吸収とAngiotensin II は低下する。GFRは変化なし。血圧、心拍数は上昇。3)

1. Kodera R, Shikata K et al. Glucagon-like peptide-1 receptor agonist ameliorates renal injury through its anti-inflammatory action without lowering blood glucose level in a rat model of type 1 diabetes. Diabetologia. 2011 Apr;54(4):965-78. doi: 10.1007/s00125-010-2028-x. Epub 2011 Jan 21.

2. Fujita H et al. The protective roles of GLP-1R signaling in diabetic nephropathy: possible mechanism and therapeutic potential. Kidney Int. 2014 Mar;85(3):579-89. doi: 10.1038/ki.2013.427. Epub 2013 Oct 23.

3. Skov J et al. Short-term effects of liraglutide on kidney function and vasoactive hormones in type 2 diabetes: a randomized clinical trial. Diabetes Obes Metab. 2016 Feb 22. doi: 10.1111/dom.12651. [Epub ahead of print]

Exenatide は、血管内皮機能を改善させる

① 2型糖尿病36人で、Exenatide 皮下注射11日間をプラセボと比較、
② 耐糖能異常あるいは食事療法でコントロール良好な2型糖尿病32人で、Exenatide静注前後で比較した結果、Exenatide は、血管内皮機能を改善させる

ヒト脂肪細胞細動脈 arteriole では、Exenatide がAMPK活性化を介して、eNOS活性化する。
その結果、NOが産生され血管弛緩を生じると考えられる。この作用は、血糖値、中性脂肪値とは独立している。

AMPKαをノックダウンしたHuman umbilical vein endothelial cell (HUVEC) では、Exenatide によるNO産生は減弱する。

Pyke らは、GLP-1受容体が血管内皮細胞には存在せず、smooth muscle には存在することを報告している。2)
したがって、Exenatide による血管内皮機能改善のメカニズムはさらに解明が必要である。

1. Koska J et al. Exenatide Protects Against Glucose- and Lipid-Induced Endothelial Dysfunction: Evidence for Direct Vasodilation Effect of GLP-1 Receptor Agonists in Humans. Diabetes. 2015 Jul;64(7):2624-35. doi: 10.2337/db14-0976. Epub 2015 Feb 26.

2. Lovshin J, Cherney D. GLP-1R Agonists and Endothelial Dysfunction: More Than Just Glucose Lowering? Diabetes. 2015 Jul;64(7):2319-21. doi: 10.2337/db15-0366.



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DPP4阻害薬の腎保護作用(2)

リナグリプチンが、
①血管内皮からメサンギウム細胞への転換 (endothelial-to-mesenchymal transition) を抑制、
② microRNA29を回復させる作用により
1型糖尿病マウスの腎線維化を抑制する。リナグリプチン投与下でも高血糖は持続しており、この腎線維化抑制は、血糖値改善とは独立している。
 
streptozotocin で誘導した1型糖尿病モデルマウスでは、糖尿病誘導24週で、DPP4の発現量が増加している。
 
糖尿病誘導20週後からリナグリプチンを4週投与、糖尿病マウスDPP4の発現量は低下、尿アルブミンは改善する。
 
血管内皮マーカー(CD31) と、メサンギウム組織マーカー(αSMA FSP1)が共染する細胞数が、リナグリプチンにより減少した。リナグリプチンが血管内皮からメサンギウム細胞への転換を抑制している。
 
TGF-βは、microRNA29を抑制し線維化を誘導する。
糖尿病誘導マウスの腎臓ではmicroRNA29が低下、リナグリプチン投与では、microRNA29 の発現が回復した。リナグリプチンがmicroRNA29 の回復を介して腎線維化を抑制している。
 
1. Kanasaki K. et al. Diabetes. 2014 Jun;63(6):2120-31. Linagliptin-mediated DPP-4 inhibition ameliorates kidney fibrosis in streptozotocin-induced diabetic mice by inhibiting endothelial-to-mesenchymal transition in a therapeutic regimen.

2. Panchapakesan U, Pollock CA Diabetes. 2014 Jun;63(6):1829-30. DPP-4 inhibitors-renoprotection in diabetic nephropathy?

3. He Y , Huang C, Lin X, Li J. Biochimie. 2013 Jul;95(7):1355-9. doi: 10.1016/j.biochi.2013.03.010. Epub 2013 Mar 28. MicroRNA-29 family, a crucial therapeutic target for fibrosis diseases.

 

DPP-4阻害薬の多面的血糖降下作用

DPP-4阻害薬には、GLP-1の増加によるインスリン分泌刺激以外に、多面的な血糖効果作用がある
 
・腸管局所で、DPP4活性の抑制が、intact GLP-1を増やし、自律神経を活性化する。1)
 
・膵島にDPP-4が発現し、DPP-4阻害薬が、膵島α細胞から分泌されるGLP-1の分泌を増強している。1, 2)
 
・DPP-4阻害薬は、血糖コントロールに影響する、GIP、SDF-1、PACP の不活化も抑制している。1)
 
GIP
低血糖誘発実験で、GIPを注入していると、グルカゴンが増加し、グルコース注入量が減る。
DPP-4阻害薬はGIPを増加させるので、低血糖時を予防する作用があるかもしれない。3)
 
SDF-1
膵島に発現し、cellular injury で発現が増加する。
SDF-1は、α細胞で、PC1/3の発現を増加させる。
酸化ストレス、glucolipotoxicity の存在下で、SDF-1が、α細胞のGLP-1産生を増加させる可能性がある。
 
PACAP 
intraislet nerve で分泌され、insulinotropic effect がある。
 
1. Omar B, Ahrén B.Diabetes. 2014 Jul;63(7):2196-202. Pleiotropic mechanisms for the glucose-lowering action of DPP-4 inhibitors.

2. Omar BA, Liehua L, Yamada Y, Seino Y, Marchetti P, Ahrén B. Diabetologia. 2014 Sep;57(9):1876-83. 
Dipeptidyl peptidase 4 (DPP-4) is expressed in mouse and human islets and its activity is decreased in human islets from individuals with type 2 diabetes.

ヒトの膵島では、α細胞にDPP4が発現し、β細胞にはほとんど発現しない。
ビルダグリプチンは、ヒトの膵島で、intact GLP-1分泌を増加させる。グルコース濃度2.8mMと16.7mM でGLP-1の分泌量はほぼ同じ。
ヒトではインスリンとDPP4活性は正の相関、ヒトの2型糖尿病では膵島のDPP4活性が低下している。インスリンがDPP4活性を制御している可能性もある。
 
マウスの膵島(C57BL6) ではβ細胞にDPP4が発現し、α細胞での発現は弱く、somatostatin とは共染しない。マウスでは、高脂肪食負荷でDPP4活性は増加する。
 
3. Christensen M, Calanna S, Sparre-Ulrich AH, Kristensen PL, Rosenkilde MM, Faber J, Purrello F, van Hall G, Holst JJ, Vilsbøll T, Knop FK. Diabetes. 2014 Jul 22. Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide Augments Glucagon Responses to Hypoglycemia in Type 1 Diabetes.

 

インクレチン関連薬の多面的作用

2013年最後の講演会では、インクレチン関連薬の、神経保護作用、糖尿病合併症抑制の報告を聞いてきました。清野裕先生の講演をAbstract にあたってまとめてみました。大変、勉強になる講演でした。

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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