血糖コントロールの腎保護効果 ADVANCE-ON

強化療法群によるESKD イベント抑制はトライアル後も続く。 

まとめ
ADVANCE trial 5.4年のフォローアップ、end-stage kidney disease (ESKD) イベントは、透析、腎移植が必要となった場合、腎臓病による死亡と定義した。
試験期間中に示された ESKD の減少は9.9年続く。
early-stage CKD とベースラインの収縮期血圧が低い群に、より大きな効果を認める。

In-trial             Intensive Tx            Conventional Tx
ESKD               7      vs.    20                        HR 0.35

After a total of 9.9 years of follow-up
ESKD               29     vs.        53                        HR 0.54

ACCORD study では強化療法で、ESKD イベント数が少ないものの有意差はつかず、ADVANCEの結果が待たれていた。
強化療法は、全死亡、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発症に影響しない。
CKDのある患者に強化療法を行っても上記アウトカムが増加することはない。

Long-term Benefits of Intensive Glucose Control for Preventing End-Stage Kidney Disease: ADVANCE-ON

VADT 10年後のフォローアップ、強化療法群で心血管イベントが17%減少するが、従来療法群と死亡率は変わらず。

VADT5.6年の期間で、強化療法と従来療法のA1Cの差は、1.5% (6.9% vs. 8.4%)
スタディ終了3年後には、0.2-0.3%まで縮小した。

約10年のフォローアップ後、強化療法群で、心血管イベントが17%減少した。
総死亡率は有意差なし。

VADTでLegacy effect が示されたとするのは正しくない。
・スタディ終了後の強化療法と従来療法群のA1Cの差はゼロではない
・Statistic power が充分でない。

フォローアップスタディで強化療法群の心血管イベント減少が示されたのは、ACCORD とUKPDSと同様の結果となっている。A1Cの差が1.5%と大きくついたことがその理由と考えられる。

これまでの報告で、A1C 1%低下させるごとに非致死性心筋梗塞発症が15%減少するとされている。

Hayward RA et al. Follow-up of glycemic control and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2015 Jun 4;372(23):2197-206.

ADVANCE試験のフォローアップで、血糖コントリールにlegacy effect は認められず。血圧コントロール群では死亡率の低下が持続

ADVANCE試験のフォローアップの結果です。
ADVANCE 試験後、6年のフォローアップで、血糖強化療法群と標準治療の間で、死亡率、大血管イベントに差はない。
Second endpoint の腎症については、発症例(イベント数)が少ないが、end-stage renal disease (ESRD) 発症率が強化療法群で有意に低下している。ESRDが少ないという結果は死亡率に反映されていない。
 
平行して行われた血圧治療群(perindoril+indapamide ) とプラセボの比較では、全死亡、心血管死亡のリスク低下が示された。
 
ACCORD 試験のフォローアップで血糖コントロールのlegacy effect は認められないのはなぜか。
・参加者の背景
若い1型糖尿病 (DCCT、EDIC)、診断されたばかりの2型糖尿病 (UKPDS)では、血統コントロールの有用性が示されている。ACCORD 試験の参加者は年齢が高く罹病歴が長い。(登録時データで平均年齢66才、罹病歴約8年)
 
・血糖コントロールの差が少ない
ADVANCE 試験では、強化療法群と従来療法群のA1Cの差は5年間で 0.67% 
DCCTでは6.5年間で2%、UKPDSでは10年間で0.9%の差がついている。
 
・ベースラインのA1Cが低い
ADVANCED 試験のベースラインA1Cは7.5%、DCCT、UKPDSではより高い。
 
血圧治療群のbenefitは持続する。
血圧治療群(perindoril+indapamide )では、フォローアップ期間でも、全死亡、心血管死亡のリスク低下が示された。両群間の血圧の差は、5.6/2.2 mmHg、終了後6ヶ月の時点で、その差は消失していた。
 
試験期間で全死亡、心血管死亡率がプラセボより低下し、フォローアップ期間でその差は減弱したが有意に低下を示している。(ハザード比はそれぞれ0.91、0.88)
 
1. Zoungas S, Chalmers J, Neal B, Billot L, Li Q, Hirakawa Y, Arima H, Monaghan H, Joshi R, Colagiuri S, Cooper ME, Glasziou P, Grobbee D, Hamet P, Harrap S, Heller S, Lisheng L, Mancia G, Marre M, Matthews DR, Mogensen CE, Perkovic V, Poulter N, Rodgers A, Williams B, MacMahon S, Patel A, Woodward M; the ADVANCE-ON Collaborative Group. N Engl J Med. 2014 Sep 19. [Epub ahead of print] Follow-up of Blood-Pressure Lowering and Glucose Control in Type 2 Diabetes. 

2. The ADVANCE Collaborative Group Intensive Blood Glucose Control and Vascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes N Engl J Med 2008; 358:2560-2572June 12, 2008DOI: 10.1056/NEJMoa0802987

 

ACCORD試験では強化療法群で心筋梗塞の発症リスクが低下している。

ACCORD 試験で、期間中(3.7年)および全期間(フォローアップ期間1.2年を含む)ともに、心筋梗塞は、血糖強化療法群に少ない。 (ハザード比 試験期間中0.8、全期間 0.84)
 
強化療法群における5年間の発症率の低下
虚血性心疾患 13%
心筋梗塞   16% 
非致死性心筋梗塞 19%
厳格な血糖コントロールが心筋梗塞を減らしている可能性もある。 
 
コメントの記事より
ACCORD 試験で、心血管死、全死亡の増加は、A1C 7%未満を達成できなかった参加者に多く認められる。
強化療法群、従来療法群で、自律神経障害の罹病率は同じ。
強化療法群の死亡で、9.5%から10.5%が低血糖によるものであり、重症低血糖は強化療法群の死亡率上昇を説明し得ない。
ACCORD 試験の強化療法群で認められた死亡率の上昇が、偶然 “chance” であるという意見もある。3) 4)
 
血糖値が悪い症例にインスリン注射量が増えた場合、高インスリン血症と高血糖が同時におこり、その結果、異所性心外膜脂肪蓄積が増え、心筋症や冠動脈疾患の原因となる。5)
 
1. Gerstein HC, Miller ME, Ismail-Beigi F, Largay J, McDonald C, Lochnan HA, Booth GL; for the ACCORD Study Group. Effects of intensive glycaemic control on ischaemic heart disease: analysis of data from the randomised, controlled ACCORD trial. Lancet. 2014 Jul 31. pii: S0140-6736(14)60611-5.  

2.Chiasson JL, Lorier JL. Glycaemic control, cardiovascular disease, and mortality in type 2 diabetes. Lancet. 2014 Jul 31. pii: S0140-6736(14)60884-9. doi: 10.1016/S0140-6736(14)60884-9. [Epub ahead of print] 

3. Lachin JM Point: Intensive glycemic control and mortality in ACCORD—a chance finding? Diabetes Care 2010; 33: 2719–21.

4. Riddle MC Diabetes Care. 2010 Dec;33(12):2722-4. Counterpoint: Intensive glucose control and mortality in ACCORD--still looking for clues.

5. Winhofer Y, Krssak M, Jankovic D, et al. Short-term hyperinsulinemia and hyperglycemia increase myocardial lipid content in normal subjects. Diabetes 2012; 61: 1210–16.

 

認知機能低下は重症低血糖のリスクとなる。ACCORD-MIND trial

ACCRD study では登録時に認知機能テストを行っており、HbA1Cが高いと認知機能スコアは低下していた。
ACCRD studyの期間中、ベースラインの認知機能スコアが低いと重症低血糖をおこすリスクが高い。
血糖コントロールの目標を決める際には認知機能も考慮するべきという結果です。

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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