ViaCyte 社の治験 2017年

アメリカとカナダでは幹細胞から誘導したβ細胞をカプセルに入れ皮下に移植する治験が開始となっている。

ViaCyte 社の第一世代の移植システム(VC-01 あるいはPEC-Encap)による治験では、何らかの免疫細胞によりデバイス周囲の血管新生が不十分とり、デバイスの改良のため2014年より開始されていた治験は約24ヶ月で終了となった。1)

2017年8月1日、ViaCyte 社は第二世代の移植システム(VC-02あるいはPEC-Direct)を用いた治験第一例の移植を公表した。

PEC-Directでは、カプセルの中まで毛細血管が入り込める構造になっている。このため血管からインスリン産生細胞へ酸素や栄養素の供給が可能となる。

ViaCyte 社は、治療開始6ヶ月から12カ月後の安全性と有効性を報告する予定としており、2018年の前半に結果が明らかとなる。
有効性の評価 Efficacy measurement は、血中C-peptide値、インスリン必要量、低血糖の頻度による。

無自覚低血糖のある1型糖尿病患者では、生命をおびやかす低血糖のリスクにさらされている。
この治験は、無自覚低血糖や血糖値の不安定性、重症低血糖の既往のある患者が対象となる。

1) Biotech Startups’ Cell-Based Diabetes Attack (WSJの記事)

わかりやすい図があります。

2) ViaCyte treats first patients in PEC-Direct stem cell trial for type 1 diabetes

3) ViaCyte Announces First Patients Implanted with PEC-Direct Islet Cell Replacement Therapy in International Clinical Trial

4) Vacate Announces First Patients Implanted with PEC-Direct Islet Cell Replacement Therapy in International Clinical Trial (Viacyte社のホームページ)

移植時に線維化の起こりにくいmicrocapsule の開発

ヒトES細胞から誘導されたβ細胞を移植する際に用いられる、線維化が起こりにくい microcapsule が、ハーバード大とMITのグループにより開発された。

アルギン酸の誘導体でつくられたmicrocapsule は、異物に対する免疫反応からβ細胞を保護し、移植後、カプセルの線維化が起こりにくい。
1.5mm 径の microcapsuleに、human embryonic stem cell から作成した、グルコース応答性のあるβ細胞(SC-β) 250 クラスターをいれ、STZで誘導した1型糖尿病モデルマウスの腹腔内に移植した。250 クラスターは~106のβ細胞を含む。
移植されたβ細胞は、174日後に摘出するまで血糖値を正常化した。
移植150日後の糖負荷試験では、移植マウスで、healthy mouse と同様な血糖パターンが示された。

1. Vegas AJ et al. Long-term glycemic control using polymer-encapsulated human stem cell–derived beta cells in immune-competent mice Nat Med. 2016 Jan 25. doi: 10.1038/nm.4030. [Epub ahead of print]

2. Vegas AJ et al. Combinatorial hydrogel library enables identification of materials that mitigate the foreign body response in primates Nat Biotechnol. 2016 Jan 25. doi: 10.1038/nbt.3462. [Epub ahead of print]

No more insulin injections? | MIT News
Encapsulated pancreatic cells offer possible new diabetes treatment.

アメリカFDAは、ヒトES細胞由来膵前駆細胞による治験を許可した。

アメリカF DAは、ヒトES細胞由来膵前駆細胞による治験を許可した。

以下は1) の訳です。
ViaCyte 社のVC-01 は
①ヒトES細胞由来の、膵前駆細胞 pancrreatic progenitor cells” であるPEC-01と
②細胞を入れるカプセル Encaptra device 
からなる。
PEC-01 は成熟化し、インスリンを産生するβ細胞や、他の内分泌細胞へ分化し、endcrine pancreas を構成する膵島と同様に血糖値を制御する。
 
第1/2相試験は、安全性と認容性(tolerance) の評価をおこなう。
オープンラベル方式、 dose-escalating format でおこなわれ、多施設、約40人の1型糖尿病患者の登録を期待している。インスリンの産生は、血中Cペプチドの測定により評価される。
セカンドエンドポイントはインスリン投与量、低血糖頻度となっている。1)
 
感想
記事を読んで、ES細胞からβ細胞だけでなく、膵島を分化させることにより、治療を試みることがわかりました。治験は世界発のES細胞由来膵島による1型糖尿病治療です。
 
1. Market Watch の記事
ViaCyte, Inc. Announces FDA Acceptance of IND to Commence Clinical Trial of VC-01™ Candidate Cell Replacement Therapy for Type 1 Diabetes

2. JDRFの記事
JDRF Partner ViaCyte to Immediately Initiate Type 1 Diabetes Clinical Trial


カプセルに入れたES細胞由来インスリン産生細胞で1型糖尿病を治療する。

アメリカのViaCyte社は、ES細胞から分化させたインスリン産生細胞による1型糖尿病の治験 phase1/2を開始する。順調にすすめば、8月か9月には第1例目の治療が始まる。
 
ES細胞から分化誘導したインスリン産生細胞 (VC-01) をカプセルにいれ移植する。
移植細胞とカプセルは、 Encaptra Drug Delivery System と名付けられ、ISO 13485:2003 を取得している。2)
 
感想
1型糖尿病の細胞治療で、エポックメーキングとなりうる治験の開始です。
・インスリ注射量を減量あるいは中止できるほどのインスリン分泌がえられ、維持できるのか
・グルコース量に応じたインスリン分泌が可能なのか
・ES細胞由来の細胞の腫瘍化リスクはどうか
という点に注目しています。得られた結果の蓄積は、今後の細胞治療システムに生かされると思います。
 
1. Diabetes stem cell therapy readied | UTSanDiego.com
 
2. ViaCyte Achieves Significant Milestone with ISO 13485:2003 Certification for its Encaptra Drug Delivery System - MarketWatch

アメリカのViaCyte社は、ES細胞から分化させたインスリン産生細胞による1型糖尿病の治験 phase1/2を開始する。順調にすすめば、8月か9月には第1例目の治療が始まる

膵島のカプセル化2

Nature Medicine の記事より

Nature Medicine の記事よりここ20年にわたり、膵島をカプセルに入れた移植が試みられてきた。免疫抑制剤が不要の利点があるが、カプセルが線維組織に包まれ、瘢痕化が起こり、よい結果が得られていなかった。
ここ20年にわたり、膵島をカプセルに入れた移植実験が試みられてきた。免疫抑制剤が不要の利点があるが、カプセルが線維組織に包まれ、瘢痕化が起こり、よい結果が得られていなかった。

JDRFおよび非営利財団 Helmsley Charitable Trust はこの状況を改善するべく、MITのグループに、2007年から7年間の資金援助をおこなった。その結果、生体反応の少ない (biocompatible) カプセル材質の開発が進行した。
 
カプセル化の方法は 膵島をmacrodevice に入れるか、それぞれを保護作用のある hydrogel につつむかのいずれかである。
 
<Macrodevice>
ViaCyte 社が開発したEncaptraは、手のひら大のカプセルで、膵島を1000個/cm2 で保持する。
面積は24cm2で24000個の膵島が入る。しかしインスリン注射が必要なくなるには、40万個の膵島が必要。
 
Beta-O2 社が開発したデバイスは、膵島密度について解決策になるかもしれない。
アルギン酸とテフロンでできた、ホッケーパック大のデバイスの中に、膵島を二層で維持する。それぞれの層が、アルギン酸のmicrosphereでカプセル化されている。
 
Beta-O2 社のデバイスに膵島 (cadaveric islet) を入れ、63歳の1型糖尿病患者の腹部に移植した。
移植10か月後、デバイスから、ある程度インスリンを分泌していた。インスリン注射を止めるには充分な量ではない。免疫抑制剤は使われていなかったが、デバイス内の細胞に免疫的攻撃を認めなかった。8人のトライアルが、2014年に予定されている。
 
同じくBeta-O2 社が開発したデバイス、dubbed βAir は、注射針で酸素の供給が必要だが、酸素の供給量を増やすことにより、直径68mm、厚さ18mmのデバイスに、20万個の膵島を維持することができる。
 
<アルギン酸>
免疫系を刺激しない、生体に順応する (biocompatible) なマテリアルが必要とされている。藻に含まれるアルギン酸の派生物質derivative774種類から選ばれた E9 は、 マウス移植実験で、従来のアルギン酸より免疫系を刺激しない
MITのグループは、ラット膵島をE9のカプセルに入れ、糖尿病マウスに移植した。10ヶ月後、糖尿病を誘導するSTZの遅延作用による顔面腫瘍によりテストを中止となったが、カプセル内の膵島は、生きてインスリンを分泌していた。サルでの実験が、今年スタート予定となっている。
 
カプセル化した膵島を糖尿病治療に使うには、まだ長い道のりがある。現在はヒトや生きた動物への移植で、カプセルの材質が生体の反応を起こさないことを確かめている段階。
その後にカプセル内の膵島が機能し、糖尿病が治療できること、移植した膵島が拒絶されず一定期間機能することを確かめる必要がある。まだ最初のステップで苦労しているが、それはamazing なことでもある。
 
感想
脳死ドナーからの膵島移植では、膵島を門脈に点滴で入れ、肝臓に生着させる。レシピエントは免疫抑制剤の服用が必要である。
 
ES細胞からインスリン産生細胞では、腫瘍化のリスクがある。
膵島をカプセル化して腹部などに移植すれば、腫瘍化した場合も広がりを防ぐことができ、取り出しやすい。カプセル化した膵島移植では免疫抑制剤は不要である。
インスリン産生細胞作成技術の進歩に平行して、膵島カプセルの材質の進歩も進んでいくものと思われます。
 
1. Dolgin E. Nat Med. 2014 Jan 7;20(1):9-11. doi: 10.1038/nm0114-9.Encapsulate this.

2. Ludwig B, Reichel A, Steffen A, Zimerman B, Schally AV, Block NL, Colton CK, Ludwig S, Kersting S, Bonifacio E, Solimena M, Gendler Z, Rotem A, Barkai U, Bornstein SR.Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Nov 19;110(47):19054-8. Transplantation of human islets without immunosuppression.

 
3. JDRF to Provide Additional Support for Upcoming Clinical Trial of ViaCyte’s Encapsulated Cell Therapy for Type 1 Diabetes

 


テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

膵島のカプセル化

膵島移植時に自己免疫から守るため、移植膵島をカプセルに包む方法が開発中。
海藻に含まれるアルギン酸のゲルと膵島を混合して暖め、膵島の周りに皮膜を作る。

皮膜は膵島をT細胞から守るが、異物として免疫系に認識されることがある。その場合、カプセルの周りに瘢痕組織が形成され、酸素や栄養素が膵島に供給されなくなる。
免疫系から生体組織として認識されるカプセルの開発が必要とされている。JDRFは、生体膜の専門家であるDr. Langer に開発を依頼している。
 
また、MITの研究室では、カプセルを二重膜にして、第1層に膵島を含み、第2層からは、移植後7日間に抗炎症薬を徐放するようなシステムが開発されている。
1型糖尿病のモデルマウスでpositive な結果を得ている。次のステップでは、大動物でカプセルがより強固な免疫系に耐えられるか検討する。
 
元記事は
Encapsulating Islets: Big Hope in Small Packages

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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