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リナグリプチンの心血管イベントリスクはグリメピリドと同等 (CAROLINA)

心血管血管リスクが高くない2型糖尿病患者で、インスリン治療、DPP4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン誘導体の治療歴がない人を登録し、リナグリプチン 5mg とグリメピリド1mgあるいは4mgを比較した。
プライマリーアウトカムは心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中 (3-point major cardiovascular event (3P-MACE))
治療介入時は必要に応じてメトフォルミン、αグルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン誘導体、インスリンを使用した。

6.3 年のフォローアップ、プライマリーアウトカムに有意差なし。
1回以上の低血糖は、リナグリプチンで10.6%、グリメピリド で37.7%に認められた。

Rosenstock J et al. Effect of Linagliptin vs Glimepiride on Major Adverse Cardiovascular Outcomes in Patients With Type 2 Diabetes: The CAROLINA Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019 Sep 19. doi: 10.1001/jama.2019.13772. [Epub ahead of print]

選択性が低いDPP4阻害薬は、尋常性天疱瘡 Bullous Pemphigoid の発症リスクが上昇する。

 日本のデータベース解析で、Vildagliptin、teneligliptin、linagliptin は、他のDPP4阻害薬に比べ尋常性天疱瘡のハザード比が高かった。この3剤はDPP4を基質とする選択性がやや低い。

DPP-8、DPP-9の阻害は皮膚で免疫反応を生じる可能性がある。
選択性が低いDPP4阻害薬は、尋常性天疱瘡 Bullous Pemphigoid の発症リスクか高くなる。

Arai M et al. Bullous Pemphigoid and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors: A Disproportionality Analysis Based on the Japanese Adverse Drug Event Report Database Diabetes Care. 2018 Jul 12. pii: dc180210. doi: 10.2337/dc18-0210. [Epub ahead of print]

DPP4阻害薬は腸管の自然免疫 (innate immunity)と腸内細菌を調整する。

DPP4阻害薬は腸管でインクレチンを回復させるだけでなく、自然免疫の調節 (innate immunity)や腸内細菌の変化を起こしている。

可溶性 DPP-4 が、Toll-like receptors (TLRs)の発現を増加させ、 NFκB シグナリングを活性化する。
ビルダグリプチンは、マクロファージで、可溶性DPP-4やLipopolysaccharide によるサイトカイン産生、TLR-2とTRL-4の発現増加を減少させる。

ビルダグリプチンをwestern diet のマウスへ投与した結果、腸管、門脈、便中のDPP-4活性が低下した。便の重量は増加、便中のTLR-2とTRL-4のリガンドが低下した。回腸のcrypt depth と antimicrobial peptides (AMPs) が増加した。
腸内細菌では、Oscillibacter spp. が減少 Lactobacillus spp. が増加、便中のプロピオン酸 propionate が増加した。
肝臓では、proinflammatory cytokine の遺伝子発現を低下した。

DPP-4阻害によりGLP-2の分解が抑制される。Olivaresらは、crypt cell の増殖やAMPの回復にGLP-2が関与する可能性を指摘している。

Olivares M et al. The DPP-4 inhibitor vildagliptin impacts the gut microbiota and prevents disruption of intestinal homeostasis induced by a Western diet in mice. Diabetologia. 2018 May 25. doi: 10.1007/s00125-018-4647-6. [Epub ahead of print]

DPP4阻害薬と創傷治癒 (wound healing)

DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition を誘導し創傷治癒を促進する。

NRF2と創傷治癒
NRF2 (nuclear factor-E2-related factor 2)は、抗酸化作用を促進し、reactive oxygen species の産生を抑制する。keap1はactin-binding cytoplasmic proteinで、通常状態では、NRF2と結合してNRF2を細胞質にとどめている。高血糖下では、NRF2の核内移行が抑制されている。
糖尿病潰瘍の病変周辺部では、酸化ストレスが増加している。
keap1の抑制による酸化ストレス改善は線維芽細胞の再生能 regenerative capacity を増加させる。1)
薬理学的にNRF2を活性化する sulforaphane、cinnamaldehyde が糖尿病マウスで創傷治癒 wound closure を促進した。2)

DPP4阻害薬はNRF2とは別の経路で創傷治癒を促進する。
DPP4阻害薬はNRF2を活性化するためNRF2を介して糖尿病マウスの創傷治癒と促すと考えられていた。予想に反し、NRF2を発現しないマウスでDPP4阻害薬が創傷治癒を促進することから、NRF2以外の経路も重要であることが明らかになった。
DPP4阻害薬を添加したケラチノサイトで、E-cadherin (上皮細胞マーカー)が減少、vimentin、snail が増加する。DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition (EMT) を直接促進する。
さらにDPP4阻害薬は、線維芽細胞のSDF-1α産生を促進する。SDF-1αはケラチノサイトのEMTを誘導する。
糖尿病マウスの皮膚病変においても、DPP4阻害薬によりSDF-1αが増加し、EMTがみとめられる。3)

DPP4阻害薬と腫瘍転移のリスク
ROSの減少は、遊走能を促進し、腫瘍の転移能を増加させる。
Wang らは、α-linoleic acid (ALA)による抗酸化作用、あるいはシタグリプチンやサクサグリプチンによるNRF2 の活性化が、xenograft mouse model で腫瘍転移のリスク増加を示した。4, 5)

1. Soares MA et al. Restoration of Nrf2 Signaling Normalizes the Regenerative Niche. Diabetes. 2016 Mar;65(3):633-46.

2. Long M et al. An Essential Role of NRF2 in Diabetic Wound Healing. Diabetes. 2016 Mar;65(3):780-93.

3. Long M et al. DPP-4 Inhibitors Improve Diabetic Wound Healing via Direct and Indirect Promotion of Epithelial-Mesenchymal Transition and Reduction of Scarring Diabetes. 2017 Dec 18. pii: db170934.

4. Tschöp MH et al. Opposing Effects of Antidiabetic Interventions on Malignant Growth and Metastasis. Cell Metab. 2016 Jun 14;23(6):959-960

5. Wang H et al. NRF2 activation by antioxidant antidiabetic agents accelerates tumor metastasis. Sci Transl Med. 2016 Apr 13;8(334):334ra51.


FDAはDPP4阻害薬に重症関節痛の警告を追加

FDAはDPP4阻害薬に重症関節痛の警告を追加しています。
2006年10月から2013年12月の間に、33例の重症関節炎の報告が報告されているため。
33例中23例では、DPP4阻害薬中止1ヶ月以内に関節痛が軽快した(resolved)。

FDA Drug Safety Communication: FDA warns that DPP-4 inhibitors for type 2 diabetes may cause severe joint pain

シタグリプチン服用で、心血管イベントはプラセボと非劣性、心不全入院は増加しない。(TECOS Study)

TECOS Study
A1C 6.5-8% 年齢50歳以上、メトフォルミン、ピオグリタゾン、スルフォニルウレアの2剤まで、あるいはインスリン (メトフォルミン併用可)で、血糖コントロール安定している14671人にシタグリプチンあるいはプラセボの服用を開始。

プライマリーアウトカムは心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院。

フオローアップ3年、least square methodによるA1Cの差は0.23%

プライマリーアウトカムでシタグリプチンはプラセボに対して非劣性、心不全による入院、重症低血糖は二つのグループで差はない。
急性膵炎はまれな疾患 (uncommon) で、シタグリプチンで発症が多いが有意差なし。

Green JB et al. Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2015 Jul 16;373(3):232-42.

DPP4阻害薬のrandomized trial

Saxagliptin の randomized trial (SAVOR-TIMI 53)、2.1年のフォローアップで、プライマリーエンドポイントは両群で同等。
フォローアップ期間が短いこと、血糖コントロールの差が少ないこと、併用薬(スタチン、抗血小板薬、降圧薬)のために心血管死などに差がつかなかったという考察でした。Saxagliptin で、慢性膵炎、急性膵炎のリスク上昇なし。
 
同時に掲載された、Alogliptin の EXAMIN trial も、medial-follow-up periodが18ヶ月と短く、プライマリーエンドポイントに差がつかない。
 
DPP4阻害薬の心血管イベント抑制効果への期待は高かったですが、2年程度では、心血管病リスクはプラゼボと同じという結果でした。
心血管リスクを下げるには血糖値、血圧、脂質ともにントロールする集学的治療で、長期継続することが必要ということを感じました。

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DPP4阻害薬は骨折リスクを減少させる。

講演会で聞いた論文、メタアナリシスでDPP4阻害薬は骨折リスクを減少させる (オッズ比 0.6)。マウスの結果からGIPの作用と、GLP−1、GIPがAGEs の作用を抑制することが関係しているようです。

まとめ
DPP4阻害薬のメタアナリシス、2型糖尿病、24週以上の使用、28トライアルの解析、DPP4阻害薬 11880人vs. comparators 9175人
DPP4阻害薬の服用は、骨折リスクを減少させる。(Haenszel odds ratio 0.60)
"GLP-1、gastric intestinal peptide (GIP) ともに骨代謝を制御する。"と簡単に書いてあるので、最近のレビュー2)で調べてみました。

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腸管局所のDPP4活性の低下は血糖値を改善させる。

リナグリプチンの講演会で提示された論文、DPP4阻害薬はそれほどGLP-1濃度を上昇させないが、血糖コントロールを改善させる理由が示されていた。
マウスに非常に低濃度のシタグリプチンを投与すると、血中活性型GLP-1濃度、DPP4活性を変えずに糖負荷試験の血糖値を改善させる。低容量のシタグリプチンが、腸管局所でDPP4活性を低下させることにより、GLP-1受容体が刺激され、迷走神経を活性化するというメカニズムが考えられている。またDPP4により生じるペプチドが血糖値を悪化させているため、DPP4活性が低下しペプチド産生が減ることも血糖値改善に関係している。1)


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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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