GLP-1作動薬の腎保護作用 AWARD7

糖尿病腎症ステージ3から4の患者で、デュラグルチドDulaglutide (1.5 mg/week、0.75 mg /week) とインスリングラルギン52週の比較試験の結果、デュラグルチド群では、インスリングラルギンに比べeGFRの低下が抑制される。

デュラグルチドは、顕性アルブミン尿(尿アルブミンクレアチニン比 >300 mg/g )の患者でインスリングラルギンに比べ、eGFRの低下を抑制する。
顕性アルブミン尿がない患者では、eGFRの低下は少なく、デュラグルチドとインスリングラルギンで eGFRは有意差なし。

デュラグルチドは 顕性アルブミン尿を改善し、その効果はデュラグルチド0.75mg に比べデュラグルチド1.5 mgでさらに強い。

SGLT2阻害薬の腎保護作用は糸球体過剰濾過の減少と尿細管糸球体フィードバックの回復による。
GLP-1受容体作動薬による腎保護のメカニズムは明らかでない点が多い。
糸球体、尿細管、腎血管内皮細胞にGLP-1受容体が発現している
抗炎症作用、酸化ストレスの改善、血管内皮保護によりGLP-1受容体作動薬による腎保護を示すと考えられている。

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は共に近位尿細管のNa+/H+ exchanger isoform 3の活性化を低下させ、NaHCO3の輸送を抑制する。

Dulaglutide versus insulin glargine in patients with type 2 diabetes and moderate-to-severe chronic kidney disease (AWARD-7): a multicentre, open-label, randomised trial

Farah LX, Valentini V, Pessoa TD, Malnic G, McDonough AA, Girardi ACC. The physiological role of glucagon-like peptide-1 in the regulation of renal function. Am J Physiol Renal Physiol 2016; 310: F123–27.
近位尿細管のNa+/H+ exchanger isotope 3 (NHE3)はNaHCO3の輸送を担う。PKAは、NHE3 serine 552をリン酸化し、NaHCO3の輸送を抑制する。ラットでGLP-1受容体拮抗薬 exendin-9 の投与は、尿中cAMPの減少、腎皮質のPKA活性が低下し、糸球体濾過率やナトリウム排泄が減少する
GLP-1は、PKAを介してNHE3を抑制しナトリウム利尿を促進する。

Pessoa TD, Campos LC, Carraro-Lacroix L, Girardi AC, Malnic G. Functional role of glucose metabolism, osmotic stress, and sodium- glucose cotransporter isoform-mediated transport on Na+/H+ exchanger isoform 3 activity in the renal proximal tubule. Am Soc Nephrol. 2014 Sep;25(9):2028-39.

semaglutideとdulaglutide の比較試験 SUSTAIN 7

semaglutide 0.5mg 1.0mg、dulaglutide 0.75mg 1.5 mg 投与40週後、

低用量および高容量の比較で、semaglutideの方が、A1C、体重の減少量が大きい。

Dulaglutide は分子量が大きいため Blood-brain barrier を透過するとは考えられていない。一方、semaglutide による脳内GLP-1受容体の活性化がマウスで報告されている。
胃腸症状による Adverse event は2剤で同等。

心拍数の増加は、high-dose semaglutide で、high-dose dulaglutide に比べて認められる。sinoatrial node に発現するGLP-1受容体に作用するため、GLP-1作動薬で心拍数の増加が認められる。

SUSTAIN 7 trial: semaglutide versus dulaglutide once weekly in patients with type 2 diabetes

Semaglutide 週1回注射 はグラルギンに比べ、A1Cと体重が低下する。(SUSTAIN4)

Semaglutide 0.5 mg、1 mg 週1回注射、グラルギン1日1回注射、30週での比較
グラルギンは空腹時血糖値72-99 mg/dl となるように調整する。

ベースライン HbA1c 8.17% からの30週での変化
Semaglutide 0.5 mg  -1.21%、Semaglutide 1 mg  -1.64%、グラルギン  -0.84%

Semaglutideでは体重が減少し、グラルギンでは増加する。
胃腸症状のため、Semaglutideで中止率が高い。
自己血統測定による30週での空腹時血糖値はグラルギン群128mg/dl  (インスリン量29.2 IU /day) で、titration target に達していない。

Efficacy and safety of once-weekly semaglutide versus once-daily insulin glargine as add-on to metformin (with or without sulfonylureas) in insulin-naive patients with type 2 diabetes (SUSTAIN 4): a randomised, open-label, parallel-group, multicentre, multinational, phase 3a trial

Semaglutide は心血管アウトカムを改善させる SUSTAIN-6

 GLP-1作動薬(週1回注射)Semaglutide とプラセボの比較、104週のフォローアップの結果、Semaglutide群で、ブライマリーアウトカム(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)が 26%減少した。
Semaglutide治療群で、非致死性脳卒中が有意に減少(36%)、有意差はつかないが非致死性心筋梗塞が26%減少した。心血管死は同程度であった。

マクロアルブミン尿の出現率の結果から、Semaglutide は腎症の新規発症と悪化を抑制する。
網膜症のイベントが少ないが、Semaglutideで、網膜症合併症(硝子体出血、失明、硝子体注射あるいは光凝固術)が予想外に増加した。1型糖尿病で、急速な血糖値改善と網膜症悪化の報告がある。Semaglutide の網膜への直接作用は除外できていない。

2年にわたり、Semaglutide では、プラセボに比べ、A1C低下、体重減少、収縮期血圧減少が認められ、これらは心血管リスク低下に寄与していると考えられる。

ベースラインのA1C8.7%、104週で、Semaglutide 0.5mg 7.6%、Semaglutide 1mg 7.3%、プラセボは、ベースラインから0.4%低下 、プラセボとのA1Cの差は、Semaglutide 0.5 mgで-1.1%、Semaglutide 1mg で-1.4%

急性膵炎 Semaglutide 9 プラセボ 12
リパーゼ、アミラーゼはSemaglutideで高い。

Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes — NEJM

リラグルチドがプラセボに比べ心血管死亡を抑制 LEADER試験

リラグルチドとプラセボの比較、対象は心血管病高リスクのある9340人、3.8年のフォローアップ、リラグルチドで心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中が少ない。プライマリーアウトカムのハザード比 0.87  
リラグルチドで、A1C が0.4%低い。

リラグルチドで、macroalbumiuria の発症が少ない。 
網膜症のイベントは有意差がつかないがリラグルチドで多い。

対象者の心血管病の罹患率は72.4%で、EXAMIN、SAVOR-TIMI 53、TECOSに比べ低い。

Mario SP et al. Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):311-22.

Ingelfinger JR, Rosen CJ. Cardiac and Renovascular Complications in Type 2 Diabetes — Is There Hope?
N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):380-2. 


1型糖尿病とGLP-1受容体作動薬

肥満があり、コントロール不良な1型糖尿病患者にリラグルチドを投与した。 (開始時A1C 8.7% BMI 30)
24週間後、プラセボに比べ、A1C変化は同等
低血糖は少なく、bolus insulinは少なく済み (-5.8単位)、体重は減少 (-6.8kg)する。
心拍数は増加、グルカゴン、GLP-1値は変わらず。

Dejgaard TF et al. Efficacy and safety of liraglutide for overweight adult patients with type 1 diabetes and insufficient glycaemic control (Lira-1): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Mar;4(3):221-32.

GLP-1受容体作動薬は、交感神経刺激の他に洞房結節に直接作用し心拍数を増加させる。

リラグルチドあるいはリキセナチドの注射前後で、60人の2型糖尿病患者にホルター心電図を施行した。
心拍数増加はリラグルチド注射後、終日続き、リキセナチドで5時間のみ認められる。

交換神経活性化時は、LF/HF ratioが上昇する。
リラグルチドでは24ポイント中16ポイントでLF/HF ratioの変化が認められたが、リキセナチドではどのポイントでも変化が認められなかった。

GLP−1受容体作動薬による心拍数増加は、交感神経刺激だけでなく、洞房結節に対する直接刺激により生じる。

Nakatani Yet al. Effects of GLP-1 Receptor Agonists on Heart Rate and the Autonomic Nervous System Using Holter Electrocardiography and Power Spectrum Analysis of Heart Rate Variability Diabetes Care. 2015 Dec 17. pii: dc151437. [Epub ahead of print]

リラグルチドの長期投与では、糖負荷試験のグルカゴン値が増加する。

リラグルチドかプラセボの投与後、48週間のフォローアップ、糖負荷試験後のグルカゴン値はリラグルチド群でプラセボより高値となる。

・空腹時のグルカゴン値はブラセボと同等か低値
・糖負荷後のグルカゴン値はプラセボより増強される。
・グルカゴンのピークはプラセボより遅れる

ヒトのグルカゴン受容体不活化変異は、α細胞のhyperplasia と高グルカゴン血症をもたらす。
リラグルチドによる長期のグルカゴン低下効果が、α細胞のcompensation と糖負荷試験のグルカゴン過剰反応を起こしているかもしれない。

空腹時のグルカゴン抑制は維持されるが、糖負荷後のグルカゴン抑制はリラグルチド投与12週より失われている。
空腹時と糖負荷後のグルカゴン分泌の決定要素は異なるようだ。食事負荷 (mixed meal) での評価か必要。
長期のGLP-1受容体作動薬に対するα細胞と膵島の反応をさらに明らかにする必要がある。

“Chronic liraglutide therapy is associated with a paradoxical enhancement of post challenge hyperglucagonemia.”1)

1. Kramer CK et al. The Impact of Chronic Liraglutide Therapy on Glucagon Secretion in Type 2 Diabetes: Insight from the LIBRA Trial J Clin Endocrinol Metab. 2015 Jul 31:jc20152725. [Epub ahead of print]



Dulaglutide は、週1回注射のGLP−1受容体作動薬

Dulaglutide は、週1回注射のGLP−1受容体作動薬、GLP-1(7-27) にヒト IgG4 Fc fragment をリンクさせている。t1/2 は90時間。
 
超速攻型インスリンリスプロと組み合わせた26週、52週の治療で、Duraglutide1.5mg および0.75mg 週1回注射は寝前グラルギン注射よりもA1Cを低下させた。 症例の罹病期間は12年以上となっている
 
グラルギン群では、空腹時血糖が有意に低下するが、夜間低血糖がDulaglutideより多い。
リスプロを含めた総インスリン量は132単位/日を超えている。
 
Dulaglutide群では、食後2時間値がグラルギンより低下するが、リスプロの使用量(90単位/日)はグラルギンよりも30%多い。

1. Blonde L et al. Once-weekly dulaglutide versus bedtime insulin glargine, both in combination with prandial insulin lispro, in patients with type 2 diabetes (AWARD-4): a randomised, open-label, phase 3, non-inferiority study. Lancet. 2015 May 23;385(9982):2057-66.

2. Østoft SH Christensen M. An alternative combination therapy for type 2 diabetes? Lancet. 2015 May 23;385(9982):2020-2. doi: 10.1016/S0140-6736(15)60615-8.

3. Jimenez-Solem E, Rasmussen MH, Christensen M, Knop FK. Dulaglutide, a long-acting GLP-1 analog fused with an Fc antibody fragment for the potential treatment of type 2 diabetes. Curr Opin Mol Ther. 2010 Dec;12(6):790-7.

 

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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