FC2ブログ

経口インスリンI338 は開発中止

1日1回服用の経口インスリンoral insulin 338 (I338)の第2相試験、I338とインスリングラルギンの比較、8週間後、I338はインスリングラルギンと同等の血糖コントロールをしめした。注射薬に比べ経口では高容量の服用が必要であるため、薬剤費と腸管粘膜への安全性の証明が問題となり、残念ながらI338の今後の開発は中止となった。

I338の特徴
・消化管でタンパク分解を受けないようにアミノ酸が置換されている。
・18-carbon fatty diacid をリンカーとして付け、アルブミンとリバーシブルに結合する。血中半減期は70時間
・吸収促進のためカプレン酸ナトリウムsodium caprate が使われている。中鎖飽和脂肪酸であるカプレン酸ナトリウムはFDAにより認可されており、タイトジャンクションを変化させapical membrane fluidity を増加させて吸収を促進する。

・食事や他の薬剤とは30分以上空けて服用が必要である。このスタディでは、I338を夜間8時間以上の絶食の後、100mlの水とともに服用、服用1時間前から水分摂取を控え、服用1時間後まで水分と食事の摂取を控えている。

・血中濃度を得るために高容量のインスリンを服用する必要がある。このスタディで、体重で補正した結果、I338 347 nmolがグラルギン1Uに相当した。インスリン1単位は6 nmolなので、 注射剤に比べ経口インスリンは約58倍のモル数が必要であった。

論文のdiscussion では、以下の点から腸間膜での高濃度による増殖能亢進への効果は低いとしています。
・服用した容量に比べ血中濃度が低いので、生物学的利用能 bioavailabilityは低い。
・インスリン受容体とIGF-1受容体は主に基底外側Basolateral side に存在する。I338 は、腸管のインスリン受容体、IGF-1受容体を活性化せず、腸管上皮細胞から血中に移行する。
・カプレン酸と結合しないI338は半減期が短く腸管内腔に長くは存在しない。

Editorial では、腸管細胞に対する安全性を明らかにする必要性と高容量のインスリン使用するため薬剤費が高くなることへの懸念を示しています。

Halberg IB et al. Efficacy and safety of oral basal insulin versus subcutaneous insulin glargine in type 2 diabetes: a randomised, double-blind, phase 2 trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Jan 21. pii: S2213-8587(18)30372-3. doi: 10.1016/S2213-8587(18)30372-3. [Epub ahead of print]

Mathieu C et al. Oral insulin: time to rewrite the textbooks. Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Jan 21. pii: S2213-8587(19)30005-1. doi: 10.1016/S2213-8587(19)30005-1. [Epub ahead of print]

スマートインスリン MK2640

スマートインスリン(MK2640)は、インスリンに糖鎖 (saccharide units) が付加されているため、レクチンに結合する。

マンノース受容体は膜貫通型レクチンである、MK2640 はインスリン受容体だけでなくマンノース受容体にも結合する。インスリン受容体に対する結合率はレギュラーインスリンに比べ30%減弱している。

低グルコース濃度で MK2640 がマンノース受容体によりクリアランスされるので、MK2640 ではレギュラーインスリンに比べ低血糖が起こりにくい。

Engineering Glucose Responsiveness Into Insulin Diabetes 2017 Nov; db170577

経口糖尿病薬に、吸入インスリン上乗せ試験

経口糖尿病薬でコントロール不良な2型糖尿病に吸入インスリン(TI) あるいはプラセボ (TP) を上乗せ24週間後、

A1Cの低下       TI -0.8% TP -0.4%
HbA1c ≤7.0% 達成率   TI 38% TP 19%
体重増加       TI +0.5kg TP -1.1kg
両群とも軽度の咳がみとめられる。

Rosenstock J et al. Inhaled Technosphere Insulin Versus Inhaled Technosphere Placebo in Insulin-Naïve Subjects With Type 2 Diabetes Inadequately Controlled on Oral Antidiabetes Agents Diabetes Care. 2015 Aug 7. pii: dc150629. [Epub ahead of print]



吸入インスリンAfrezzaの承認

アメリカで、吸入インスリンAfrezza がFDAにより承認されました。
超速攻型インスリンの皮下注射よりもA1C低下効果は低いが、吸入という簡便な投与経路が再び可能となったことは進歩であると思います。気管支ぜんそく、閉塞性肺疾患などがある場合は禁忌となっている。
 
FDAのホームページより
Afrezzaは、食事のはじめか、食事開始20分以内に吸入、
喫煙者には使用しない。
 
1型糖尿病1026人、食前はアスパルトあるいはAfrezzaを使い、持効型インスリンを併用、
24週後、Afrezza はアスパルトに比べ、A1Cの低下率は少ないが、事前に設定した非劣性のポイントは満たした。
2型糖尿病 1191人、経口糖尿病薬服用で、Afrezzaかプラゼボの服用で比較、24週、プラセボに比べ大きくA1Cを低下させた。
 
警告(Boxed-Warning) として
気管支ぜんそく、COPD患者では、気管支のスパズムが認められた。
気管支ぜんそく、COPDなど、慢性肺疾患のある場合は使用するべきでない。
 
治験での副作用は、低血糖、咳、喉の痛み、違和感
 
FDAは以下の市販後調査を要求している。
小児での、薬物動態、安全性、効果の検証
肺がん発症リスク、心血管イベントリスク、長期使用における肺機能への影響の検証
 
FDA approves Afrezza to treat diabetes
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm403122.htm
 


吸入インスリン Afrezza

2010 年、Lancet に載った吸入インスリン(超速攻型)は、Mankind社のTechnosphere 。
アメリカでは商品名 Afrezza でFDAの承認待ち。(一度、差し戻されている。)
追加の臨床試験を求められていて、2011年8月、その臨床試験デザインが決まった。
 
週刊ダイアモンドの記事(2011/11/14)
http://diamond.jp/articles/-/14843

November 14 is the World's Diabetes Day resolved in the United Nations.
Port Tower was lit up in blue.

 P1010178_4.jpg

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

吸入インスリン Technosphere

ファイザー社の吸入インスリン Exuberaは呼吸機能への影響があり、発売中止になった事は知っていたが、新規の吸入インスリンTechnosphereが治験に入っていた。今週号のLancetでは、毎食前吸入インスリン+グラルギンと30Mix 1日2回注射との比較でTechnosphereのefficacyとtolerabilityが示された。
 

続きを読む

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
125位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
14位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム