持効型インスリン peglispro は開発中止

 2015年12月、リリー社は、肝障害のため持効型インスリン peglispro の開発中止を表明している。

まとめ (Diabetes Care 4月号 Editorialより)
peglispro は末梢組織より肝臓での作用が強い。
肝糖産生を抑制し、筋肉での糖取り込みが低いため、低血糖リスクを低下させ、体重も増加させず減少させることも期待されていた。
"Thus, peglispro might control glucose through the reduction of hepatic glucose release with less risk of hypoglycemia caused by variable peripheral uptake by muscle and might favor weight loss rather than gain (8). Surely, the investigators working on peglispro were intrigued by these possibilities.”

一方、末梢でインスリン作用が低下することが、脂肪肝の原因となった。
・末梢でインスリン作用が低下するためFFAが上昇する。
・FFAの上昇は、脂肪肝を促進しインスリン抵抗性と肝障害を生じる。
・FFA上昇は心血管イベントにリスクマーカーであり、不整脈との関連も指摘されている。

開発中止となったが、臓器特異的に作用するインスリンの可能性は示されており、たとえば脳特異的に作用するインスリンは体重を減少させる。insulin detemir の体重減少作用は脳に作用するためと考えられている。

Riddle MC. Lessons From Peglispro: IMAGINE How to Improve Drug Development and Affordability Diabetes Care April 2016 vol. 39 no. 4 499-501

Lilly Ends Basal Insulin Peglispro Development Program

混合製剤でも、NPHよりデグルデックで夜間低血糖が少ない。

混合製剤でも、NPHよりデグルデックを使った方が、空腹時血糖を下げ、夜間低血糖が少なく、インスリン少なくてすむという結果です。デグルデックとアスパルトの合剤と30ミックスとの比較試験。
 
まとめ
インスリンデグルデックとアスパルとの合剤(IDegAsp) と、30ミックス(biphasic insulin aspart 30, BAsp 30) の比較、1日1回あるいは2回注射
 
26週後、mean A1C は7.1%で両者同じ
IDegAspは、BAsp 30 に比べ、空腹時血糖の低下が大きく、最終的なインスリン量が少なくてすむ (estimated ratio 0.89)。 夜間低血糖、重症低血糖は、IDegAspの方が少ない。
 
Comparison of Insulin Degludec/Insulin Aspart and Biphasic Insulin Aspart 30 in Uncontrolled, Insulin-Treated Type 2 Diabetes: A Phase 3a, Randomized, Treat-to-Target Trial
Published online before print May 8, 2014, doi: 10.2337/dc13-2908 Diabetes Care May 8, 2014
http://care.diabetesjournals.org/content/early/2014/05/09/dc13-2908

インスリン LY2605541は肝臓での作用が強い

まとめ
インスリンは門脈に分泌されるため、肝臓は他組織に比べ、3倍から4倍の濃度のインスリンにさらされ、肝臓を通るインスリンの50から60%を取り込む。
末梢のインスリン投与では、このインスリンの勾配 (distribution) と生理的な metabolic imbalance が失われる。

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デグルデック週3回注射はグラルギン1日1回注射に比べ、血糖コントロールも及ばず、低血糖頻度も高い。

インスリン未使用の2型糖尿病で、デグルデック週3回注射(月、水、金曜日)は、A1C低下率でグラルギン1日1回に及ばず、低血糖の頻度も増加する。週3回うちでは、2日目、3日目の空腹時血糖値が徐々に増加する。
1日1回注射であれば、デグルデックはグラルギンに比べ夜間低血糖が少ないことが報告されている。
グラルギンに1日1回にくらべ、血糖コントロールが劣り、低血糖頻度も高いため、デグルデック週3回注射は推奨されない。(Lancet Diabetes and Endocrinology on line first)

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インスリンデグルデックの注射間隔のフレキシビリティ(1型糖尿病での報告)

1型糖尿病で、夜の血糖が低く夜に時効型インスリンをうつことがためらわれる場合もあると思います。インスリンデグルデックであれば、次の朝まで注射をずらすことも可能なのだと思います。

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2型糖尿病で、インスリンでグルデックの治験結果

ヨーロッパ糖尿病学会で示された、インスリンデグルデック(IDeg)、2型糖尿病での結果です。
 
インスリンデグルデックはグラルギンに比べ、36%夜間低血糖を減少させた。
低血糖のエピソード自体は多くないので、1年間、2型糖尿病患者4人治療して、1回の夜間低血糖を防げる計算となる。
 
低血糖に対してhigh risk の患者さんにデグルデックが望ましい。
 
1.Insulin Degludec Edges Glargine on Hypoglycemia Rate (Internal Medicine News の記事)

2. Lancet での報告
Insulin degludec, an ultra-longacting basal insulin, versus insulin glargine in basal-bolus treatment with mealtime insulin aspart in type 2 diabetes (BEGIN Basal-Bolus Type 2): a phase 3, randomised, open-label, treat-to-target non-inferiority trial Lancet 2012; 379: 1498–507

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1型糖尿病で、インスリンdegludec はglargine に対して非劣性を示す。

1型糖尿病、食前アスパルトとの併用で、インスリンdegludec とglargine を1日1回注射のレジメで比較、degludec はglargine に対して非劣性を示し、confirmed hypoglycemic episodes は同じだが、degludec で夜間低血糖は25%少ないという結果です。1)

・treat-to-target approach で朝食前血糖値は70-90mg/dl を目指したため、低血糖症状があった人は両群とも80%以上と高い。
15%の参加者がスタディを完遂できず。

・degludec は、夕食時に注射するプロトコールに対して、glargine では、インスリン注射のタイミングは決まっていない。(once daily at anytime but at same time everyday throughout the study)   

・オープンラベルのトライアルである。
などの点もcomment 2)で指摘されています。
 
インスリンdegludec
すでに発売されているインスリンデテミルは、ヒトインスリンのB鎖30位のトレオニン残基が欠損し、B29位のリジン残基がミリスチン酸(直鎖脂肪酸)によってアシル化された構造。

degludecは、デテミルとほぼ似た構造で、リジン残基にグルタミン基のリンクをつけ、直鎖脂肪酸をつないでいる。

皮下注射で、soluble multihexamerの depot となる。
terminal half-life は25時間でインスリングラルギンの2倍、duration of action は40時間
 
"Degludec is almost identical to human insulin, but with the last aminoacid deleted from the B-chain and addition of a glutamyl link from LysB29 to a hexadecandioic fatty acid. This feature extends the premise used previously in development of the longacting fatty acid-linked insulin detemir. The extra duration of action of degludec (terminal half-life >25 h and activity >40 h) derives from the formation of multihexamer chains of insulin in subcutaneous depots."2)
 
degludec は最初の12時間と、次の12時間で均等に効果を示すが、glargineは最初の12時間に60%の効果を示す。1)

"These results could be explained partly by differences in the pharmacokinetic profiles of the two insulins: insulin degludec has a longer half-life and exposure to this insulin is evenly distributed (about 50:50) in the first and second 12 h periods after once-daily dosing, whereas roughly 60% of exposure to insulin glargine occurs in the first 12 h after once-daily dosing."1)

1. Insulin degludec, an ultra-longacting basal insulin, versus insulin glargine in basal-bolus treatment with mealtime insulin aspart in type 1 diabetes (BEGIN Basal-Bolus Type 1): a phase 3, randomised, open-label, treat-to-target non-inferiority trial
The Lancet, Volume 379, Issue 9825, Pages 1489 - 1497, 21 April 201
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960204-9/abstract
 
2. Insulin degludec: a new ultra-longacting insulin
The Lancet, Volume 379, Issue 9825, Pages 1465 - 1467, 21 April 2012

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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