グルタミンはL細胞でGLP-1分泌を誘発する

グルコース刺激による膵β細胞のインスリン分泌と腸管L細胞のGLP-1分泌では、共にグルコース刺激下で、細胞内ミトコンドリアの代謝産物が増加している。

アミノ酸によるインスリン分泌は、生理学的にはロイシンのみで認められる。
β細胞株INS-1でグルタミンは、glutamine dehydrogenase (GDH) activator であるロイシンの存在下でインスリン分泌を誘発する。GDH活性が低いことが正常なβ細胞機能には必須である。

L細胞株GLUTagで、グルタミンはロイシンがなくともGLP-1分泌を誘発する。
L細胞株GLUTagでは、INS-1に比べ細胞内ロイシン濃度が高く、GDHが活性化されている。
Sodium glucose transporter を介さない膜透過性グルタミンアナログdimethylglutamateもGLP-1分泌を誘発する。

Andersson LE et al. Glutamine-Elicited Secretion of Glucagon-Like Peptide 1 Is Governed by an Activated Glutamate Dehydrogenase. Diabetes. 2018 Mar;67(3):372-384.

Haigis MC, Mostoslavsky R, Haigis KM, et al. SIRT4 inhibits glutamate de- hydrogenase and opposes the effects of calorie restriction in pancreatic beta cells. Cell 2006;126:941–954
SIRT4はGDHを抑制する。

DPP4阻害薬、TGR5作動薬、SSTR5阻害薬、GPR40作動薬による内因性GLP-1血中濃度の増加

GLP-1作動薬や metabolic surgery でマウスのGLP-1血中濃度は~50pmol/Lに上昇する。

exenatide 投与1時間後の血中濃度の結果から、GLP-1 10-100 pmol/Lの濃度上昇により糖負荷試験では強力な血糖効果作用が認められる。

DPP4阻害薬、胆汁酸受容体 (TGR5) 作動薬、GPR40作動薬、ソマトスタチン受容体 (SSTR) 5阻害薬は、それぞれ糖負荷試験のGLP-1血中濃度を~5-30 pmol/L に上昇する。
薬剤の併用により血中GLP-1濃度は、~300から400 pmol/Lに上昇する。

糖負荷試験のactive GLP-1濃度の最大値
Sitagliptin、SSTR5 antagonist、TGR5 agonist 350 pmol/L
Sitagliptin、SSTR5 antagonist、TGR5 agonist 、GPR40 agonist 406 pmol/L
GLP-1濃度が supratherapeutic level を超えて上昇するためにはSSTR5阻害薬が必須となる。

Briere DA et al. Mechanisms to Elevate Endogenous GLP-1 Beyond Injectable GLP-1 Analogs and Metabolic Surgery. Diabetes. 2018 Feb;67(2):309-320.

希少糖 D-alulloseは、GLP-1分泌を促進し迷走神経を介して食欲を抑制する。

日本では希少糖として知られる D-allulose が、マウスでGLP-1分泌を促進し、迷走神経を介して食欲を抑制するという報告です。糖負荷試験前のD-alluloseの経口摂取は血糖値を低下させる。インスリン負荷テスト前のD-allulose 投与では、迷走神経を介して肝糖産生抑制も認められる。他の甘味料では、Sucraloseがヒトの糖負荷試験前の摂取で血糖値が低下させGLP-1分泌を増加させると報告されている。

D-allulose はGLP-1分泌を促進する
D-allulose はマウスの摂餌量をコントロールに比べ減少させる。
D-allulose 1g/kg 経口服用後、門脈内活性型GLP-1濃度は30分後に上昇し、1から2時間でプラトーに達する。
糖負荷試験60分前に D-allulose 1g/kg 経口で投与した結果、0分の血糖値および負荷後血糖値が低下する。
高脂肪食マウスで、インスリン1.5 IU/kg 負荷では、 D-allulose 1g/kg 60分前投与により、インスリン負荷30分後の血糖値がコントロールに比べ低下する。D-allulose 経口投与後のピルビン酸負荷試験で血糖値が低下するのため、D-allulose 経口投与により肝糖産生が抑制されている。
D-allulose は、blood-brain barrier を通過しない。

sucralose は、健常者で炭水化物の存在時にGLP-1 分泌を促進する。
健常者で、sucralose 15分前に服用した後におこなった糖負荷試験では、グルコースの the total area under the curve (AUC) が生理食塩水よりも低下し、GLP-1 AUCが増加する。
aspartameではグルコースのAUCの変化はない。
2型糖尿病では、糖負荷試験前のsucralose によるグルコースの AUC低下は認めない。

1. Iwasaki Y et al. GLP-1 release and vagal afferent activation mediate the beneficial metabolic and chronotherapeutic effects of D-allulose Nat Commun. 2018 Jan 9;9(1):113. doi: 10.1038/s41467-017-02488-y.

2. Temizkan S et al. Sucralose enhances GLP-1 release and lowers blood glucose in the presence of carbohydrate in healthy subjects but not in patients with type 2 diabetes Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):162-6. 

3. Wu T et al. Effects of different sweet preloads on incretin hormone secretion, gastric emptying, and postprandial glycemia in healthy humans. Am J Clin Nutr. 2012 Jan;95(1):78-83. 

4. Ingestion of Diet Soda Before a Glucose Load Augments Glucagon-Like Peptide-1 Secretion Diabetes Care 2009 32 (12) 2184-2186
ダイエットコーラには人工甘味料sucralose、acesulfame-Kが含まれていて、糖負荷試験10分前にダイエットコーラ240mlを飲ませたところ、血糖値に差はないが、GLP-1のarea under the curve (AUC) は増加した

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進

脂質は、腸管内腔側 (apical site) のFFA1 (GPR40) やGPR119 を介してGLP-1、GIPを分泌することが知られている。
長鎖脂肪酸はFFA1を、モノアシルグリセロール、特に2-オレオイルグリセロールは、GPR119 を 活性化する。

カイロミクロンは、マウス十二指腸培養細胞やプログルカゴン遺伝子由来産物を産生する培養細胞 (GLUTag)で、GLP-1およびGIP分泌を刺激する。

カイロミクロは腸管細胞で合成される。カイロミクロンの中性脂肪は、血管内皮に存在する lipoprotein lypase (LPL) により長鎖脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解される。

GLUTag で、LPLの抑制やFFA1の阻害によりカイロミクロンのインクレチン分泌促進作用は低下する。
またカイロミクロンよりGLUTag 細胞内カルシウム濃度が上昇する。

カイロミクロンによるインクレチン分泌促進には、毛細血管側(basolateral site) のFFA1あるいは他の脂質受容体が関与している可能性がある。

カイロミクロンはCCK上昇を介してGLP-1分泌を促進することも報告されている。

Psichas A et al. Chylomicrons stimulate incretin secretion in mouse and human cells Diabetologia. 2017 Dec;60(12):2475-2485

Ekberg JH et al. GPR119, a major enteroendocrine sensor of dietary triglyceride metabolites coacting in synergy with FFA1 (GPR40). Endocrinology 157:4561–4569

ヒト腸管L細胞のGLP-1分泌

ヒト十二指腸、空腸のL細胞はグルコースに反応しGLP-1を分泌する。大腸のL細胞はグルコースに反応しない。

SGLT2阻害薬、GLUT2 阻害薬ともにグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する。

Voltage-gated Na+ channel blocker、L-type calcium channel blocker はグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する・

Tolbutamide は、GLP-1分泌を刺激しない。KATPチャネルはグルコース刺激GLP-1分泌を駆動しない。

SucroseもGLP-1分泌を刺激するため、sweet taste receptor (STR) もGLP-1分泌に関与している。
STR阻害剤の存在下でグルコース刺激GLP-1分泌は保たれるため、グルコース刺激GLP-1分泌は、STR経路とは独立している。

Sun EW et al. Mechanisms Controlling Glucose-Induced GLP-1 Secretion in Human Small Intestine. Diabetes. 2017 Aug;66(8):2144-2149. 

胆汁酸は、G-protein coupled bile acid receptor (GPBAR1,TGR5) を介して、GLP-1分泌を促進する。

胆汁酸は、G-protein coupled bile acid receptor (GPBAR1,TGR5) を介して、GLP-1分泌を促進する。
chamber method による検討の結果から、管腔側 (luminal) ではなく基底外側部 (basolateral) の受容体が主要な役割を果たしている。

Brighton CA, Rievaj J, Kuhre RE, Glass LL, Schoonjans K, Holst JJ, Gribble FM, Reimann F. Bile acids trigger GLP-1 release predominantly by accessing basolaterally-located G-protein coupled bile acid receptors. Endocrinology. 2015 Aug 17:en20151321. [Epub ahead of print]

グレリンはGL-1分泌のプライミング効果を示す。

グレリンは食事の前(空腹時)に血中濃度が増加している。
 
マウスで、糖負荷試験の15分前に、グレリンを腹腔内投与すると、グルコース刺激GLP-1分泌が増強する。
 
グレリン受容体拮抗薬 GHRP6投与は、OGTTのインスリン値とGLP-1値を低下させる。
グレリンは、L細胞でGLP−1分泌のプライミング効果を示す。
 
ヒトとマウスL細胞株には、グレリン受容体が発現している。
グレリンは、Mitogen-Activated protein kinase (MAPK)を介し、L細胞に直接作用する。
 
1. DeMarco VG, Sowers JR. Ghrelin: a new incretin enhancer therapy?  Diabetes. 2015 May;64(5):1500-2. doi: 10.2337/db14-1871.
2. Gagnon J et al. Ghrelin is a Novel Regulator of Glucagon-like Peptide-1 Secretion Diabetes May 2015 vol. 64 no. 5 1513-1521 

L細胞のglucose sensing とGLP-1分泌

L細胞は、β細胞と同様の分泌機構を持つが、SGLT1を介したグルコース取り込みがGLP-1分泌量を決めている。
 
SGLT1を介したグルコース取り込みとGLP-1分泌
ラット腸管近位部のみ残して切除したモデルで、腸管のグルコース濃度が高いほどGLP-1分泌は多く、血管内グルコース濃度が高くても効果がない。
 
腸管側にナトリウムなければグルコースによるGLP-1分泌は起こらない。
αMPGは non-metabolized sugar で、SGLUT1の基質となりGLP-1分泌を促進する。
SGLT-1阻害薬は、αMPGとグルコースの効果を棄却する。
 
GLUT2によるグルコースの取り込み
GLUT2阻害薬は、グルコースとα-MGPのGLP-1分泌を抑制した。
管腔側のGLUT2を介して取り込まれたグルコースもGLP-1分泌に関与している。
GLUT2による取り込みはelectrical neutral 
高血糖はSGLT1とGLUT2の発現増加をもたらし、GLUT2の発現増加にはSGLT1が必須。3)
 
KATP channelを介したGLP-1分泌の修飾
VDCC阻害薬ニフェジピン、KATP channel-opener、Diazoxideによるhyperpolarization によりGLP-1分泌は抑制される。50 mM KClは、GLP-1分泌を促進し、ニフェジピンの効果を棄却する。
KATP channelは、L細胞のelectrical toneを制御し、GLP-1分泌反応をmodulateしている。
 
スルフォニルウレアは、ラット腸管モデルでGLP-1を分泌するが、ヒトで、治療域のスルフォニルウレアがGLP-1分泌を促進することはない。
その理由としては、
① SGLT1を介するGLP-1分泌刺激は短時間で起こる。スルフォニルウレアの効果は食事に対するGLP-1のビークがおさまってからとなる。
② L細胞に比べ、β細胞の方がはるかにKir6.2、SUR1の発現が多いため。
があげられる。
 
GLP-1分泌と代謝シグナル
グルコース代謝産物は、ATP 産生、KATP channel 閉鎖を修飾している可能性がある。
代謝を受けないαMGPに比べ、同じ濃度のグルコースの方が、GLP-1分泌が多い。
 
β細胞は、グルコキナーゼを用いて、グルコース濃度とmetabolic rate をリンクさせている。
L細胞でグルコキナーゼが発現しているが、グルコキナーゼ遺伝子異常であるMODY2で、GLP-1分泌は低下しない。
 
Sweet taste receptor GLP-1分泌
腸管L細胞のグルコース感知は、sweet taste receptor とSGLT1が想定されていた。
ラットの腸管を用いたモデルでは、人工甘味料でGLP-1分泌は惹起されなかった。
Sweet taste receptor がafferent vagal nerve を介してGLP-1分泌を促進する可能性もある。
 
1. Kuhre RE, Frost CR, Svendsen B, Holst JJ Molecular Mechanisms of Glucose-Stimulated GLP-1 Secretion From Perfused Rat Small Intestine Diabetes. 2015 Feb;64(2):370-82. 

 
2. Gribble FM An Absorbing Sense of Sweetness Diabetes. 2015 Feb;64(2):338-40. 

3. Gorboulev V. et al. Na(+)-D-glucose cotransporter SGLT1 is pivotal for intestinal glucose absorption and glucose-dependent incretin secretion Diabetes. 2012 Jan;61(1):187-96. 


sweet taste receptorsとGLP-1分泌、L細胞も甘みを味わう。

Diabetologia のGLP-1の総説を読んで、L細胞の甘味受容体(sweet taste receptor) がGLP-1分泌に関与していることが分かりまとめてみました。

GLP-1分泌に関する受容体で、L細胞の絨毛側 (管腔側luminal)にあるのは、ナトリウムとcouple しグルコースを取り込むsodium glucose transporter とsweet taste receptorsである。脂肪酸の受容体である GPR119、GPR120 が絨毛側にあるか基底外側膜 (basolateral membrane) にあるのかはっきりしていない。1)

Gastductin は、taste transduction pathway のkey elementsとなるG蛋白。
Gastductin は、小腸のL細胞の90%以上に存在。K 細胞には50% 未満で存在。
ヒトでは、5-10%にGLP-1とGIP が共染されるL/K 細胞があり、L/K 細胞にはgastductin も存在する。
ヒトの十二指腸のバイオプシーの蛍光免役染色で、Gastductinの発現を認めた。

Gastductin のノックアウトマウスでは、経口グルコース投与後のGLP-1上昇が認められない。
ヒト腸管内分泌細胞NCI-N716細胞で、ブドウ糖、ショ糖sucrose、人工甘味料 sucraloseはGLP-1分泌を分泌させsweet taste receptors antagonist である lactisoleや、gastductin のSiRNAはGLP-1分泌を阻害する。

感想
Enteroendcrine cell であるL細胞は甘味受容体があったり、GLP-1でインスリン分泌させ、食欲抑制をかけたりすることができかなり高度な細胞で、L細胞のGLP-1分泌促進薬も創薬のターゲットとしては面白そうです。

3)の論文は、ダイエットコーラには人工甘味料sucralose、acesulfame-Kが含まれていて、糖負荷試験10分前にダイエットコーラ240mlを飲ませたところ、血糖値に差はないが、GLP-1のarea under the curve (AUC) は増加したという内容です。


1. Secretion of glucagon-like peptide-1 (GLP-1) in type 2 diabetes: what is up, what is down? Nauck MA, Vardarli I, Deacon CF, Holst JJ, Meier JJ. Diabetologia. 2011; 54: 10-18

2. Gut-expressed gustducin and taste receptors regulate secretion of glucagon-like peptide-1 PNAS 2007 104 (38) 15069-15074

3. Ingestion of Diet Soda Before a Glucose Load Augments Glucagon-Like Peptide-1 Secretion Diabetes Care 2009 32 (12) 2184-2186
2018/01/18改訂


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空腹時血糖が高いことはGLP-1分泌の強力なpredictorではない。

2型糖尿病でGLP-分泌は低下していないというのがNauck の見解です。空腹時血糖が高いことはGLP-1分泌の強力なpredictorではないということからです。
肥満、高グルカゴン血症がGLP-1分泌を下げるということは書かれています。
Abstract だけ読んでいたDiabetologia のGLP-1の総説の本文を読んでみました。

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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