糖尿病と死亡率

 2型糖尿病では、低年齢、血糖コントロール悪化、腎合併症の重症度に比例して死亡率が上昇する。

2型糖尿病と死亡率
スウェーデンの研究、 糖尿病4.6年、コントロール4.8年のフォローアップ
43万人の登録者のうち、77000人に糖尿病がある。

HbA1c 6.9%未満のハザード比
         全死亡     心血管死
55歳未満      1.92      2.18
75歳以上      0.95      0.92

A1c 6.9%未満、正常アルブミン尿では 
55歳未満.       1.60
55~75歳      0.87
75歳以上      0.76

血糖値コントロールが良く正常アルブミン尿であっても、55歳未満では死亡リスクが高い。
若年者こそ、血圧、資質管理が重要で微量アルブミン尿をさける。
55歳未満、A1c 6.9%未満の2型糖尿病の死亡率リスク上昇は約2倍で、1型糖尿病と同等 2)

正常アルブミン尿であれば、死亡率はコントロールに比べ、65から75歳未満、75歳以上で低い
75歳以上の高齢者で、A1c7.8%未満まで死亡率がコントロールに比べ低い。

フォローアップ期間の最後7年では最初7年と比べ、全死亡、心血管死ともに低下している。(time interaction)

平均A1Cが高いと死亡率も増加
年齢によらず腎保護は重要
55歳未満で、stage 5 CKDがあれば死亡率は15倍となる。

55歳未満の死亡率を減らすためには、
・厳格な血圧コントロール
・スタチンの処方
・よい血糖値にもちこむこと(targetting of good glycemic control)
だけでは不十分で、

・禁煙、
・physical activity をあげる
・新たに心保護作用のある薬剤を開発する(スタチンを服用できない場合の代替薬など)
ということが必要となってくる。

1. Tancredi M1, Rosengren A, Svensson AM, Kosiborod M, Pivodic A, Gudbjörnsdottir S, Wedel H, Clements M, Dahlqvist S, Lind M. Excess Mortality among Persons with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015 Oct 29;373(18):1720-32. doi: 10.1056/NEJMoa1504347.

2. M Lind, AM Svensson, M Kosiborod. Glycemic control and excess mortality in type 1 diabetes. N Engl J Med2014;371:1972-1982

スウェーデンの研究、1型糖尿病 平均年齢35.8歳、フォローアップ8年
A1C 6.9%かそれ以下では一般人口に比べ死亡率、心血管死亡率は matched control に比べ2倍、血糖コントロール不良例ではさらに高い。

1型糖尿病と死亡率

スウェーデンの研究、1型糖尿病で、A1C6.9%かそれ以下では一般人口に比べ死亡率、心血管死亡率は matched control に比べ2倍、血糖コントロール不良例ではさらに高い。

       年齢(歳)フォローアップ(年)
1型糖尿病   35.8     8.0
コントロール   35.7                8.3

       ハザード比     
           全死亡  心血管病死亡
A1c 6.9%未満       2.36          2.92
A1c 7.0~7.8%       2.38          3.39
A1c 7.9~8.7%       3.11          4.44
A1c 8.8 ~ 9.6%     3.65          5.35
A1c 9.7%~            8.51         10.46

この研究では、血糖コントロールのよい1型糖尿病で、心血管死、全死亡がコントロールに比べ増加する理由は未解明としている。

M Lind, AM Svensson, M Kosiborod, Glycemic control and excess mortality in type 1 diabetes. N Engl J Med2014;371:1972-1982

非糖尿病者のA1Cと死亡率―A1C6.0%以上で死亡率が増加

NEJM34日号に非糖尿病者11092人のA1C (NGSP)と心血管イベントリスクや死亡率の解析結果が示されました1)

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HbA1Cと死亡率の関係―U字カーブを描く。

まとめ
イギリスで、約48000人のデーターベース解析、経口剤単独27965人、インスリン治療20005人。全死亡率のhazard ratio (HR) は、経口剤単独、インスリン治療とも、HbA1C7.5%を底とするU字カーブを描く。

両群を合わせた解析で、HbA1C6.4%群は、HbA1C7.5%に比べHR1.52。
それぞれの群のHbA1C7.5%比べ、HbA1C6.7%未満群のHRはインスリン治療1.79、経口剤単独1.3であり、インスリン治療において、HbA1C低値群でのHRが高い。

エディトリアルでは
1) ADVANCE、VADT では、強化療法群で死亡率が低いということはない。

2) UKPDSでは、全死亡率と心筋梗塞の発症率が、10年後のフォローアップで強化療法群で良好な結果が示されている。

3) 死亡原因、経口薬やインスリンの種類と量が不明。ランダマイズトライアルと異なり、データーベース観察では、詳しい解析に限界がある。

4) インスリン治療の方が血糖を起こしやすい。これまでの報告では、低血糖のオッズ比は、インスリン治療3.44、SU剤1.54 (Arch Intern Med (2001年))。低血糖が死亡率上昇の原因かどうかを明らかにするためには、すべての低血糖を知るため持続血糖モニターを行うようなランダマイズドトライアルが必要。

5) 低血糖なしに目標HbA1Cに到達するため、insulin sensitizer の投与が必要。

6) 罹病歴が短く、微小血管障害、大血管障害のない60歳未満の糖尿病患者では、強力な血糖コントロールの利益が多い (more beneficial)(Diabetologia 2009年)
と述べられています。 

感想

ACCORD study などですでに示されていた結果であるけれど、インスリン治療でHbA1Cが低いとHRが高く、U字カーブが著明なグラフを見たときは驚きました。死亡率がHbA1C 7.5%で一番低いということも、一般的な血糖コントロール目標が6.5-7%であるので意外と高い印象。

Currie CJ et al. Survival as a function of HbA1c in people with type 2 diabetes: a retrospective cohort study. Lancet. 2010 Feb 6;375(9713):481-9.

Beverley Balkau, Dominique Simon Survival in people with type 2 diabetes as a function of HbA1c Lancet. 2010 Feb 6;375(9713): 438–440


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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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