妊娠糖尿病の総説(Lancet 5月23日号)

Gestational diabetes: the need for a common ground

Lancet 2009; 373: 1789–97

感想

アジア人は白人に比べ5-10倍、妊娠糖尿病になりやすいということでした。

妊娠糖尿病は、妊娠というインスリン抵抗性状態に、インスリン分泌がついていかない状態なので、インスリン分泌不全を主体とするアジア人で妊娠糖尿病が多いというのは理解しやすい。

北米での妊娠糖尿病のスタンダードは、100g、3時間のOGTTであり、日本は75gOGTTなので、国際的な基準がどうなるか注目。

なかなか私は受け入れられないが、SU剤の一部とメトフォルミンは妊婦に使えそうという見解が示されていました。

実際の状況は、妊娠中はインスリンのみの使用が一般的。

妊娠糖尿病は、出産後改善したとしても糖尿病発症リスクが高いので、妊娠時の介入が今後のためにも重要。

 

簡約

イギリスで11202人の妊婦の妊娠糖尿病の人種別の罹患率

白人0.4%、アフリカ系1.5%、アジア人3.5-7.3%、インディアン 4.4%、mixed origin woman 1-4%アジア人は白人に比べ5-10倍、妊娠糖尿病になりやすい。

エストロゲン、プロゲステロンはFBSを下げ、脂肪沈着を促進、gastric empty を遅らせ、さらに食欲を増進させる。インスリン感受性が低下し、食後血糖が上がる。

妊娠糖尿病は、インスリン抵抗性に応じて、インスリンが出せない病態。

母の血糖が高いと、胎児のインスリン分泌が増え巨大児になる。

北米での妊娠糖尿病診断のゴールドスタンダードは、50gOGTT、1時間値が130-140 mg/dlを超えたら、false positive を避けるため100gOGTTへ

空腹時95mg/dl、1時間180、2時間155、3時間140以上を妊娠糖尿病の診断基準とする。

WHOは75gOGTT、ワンステップを推奨。

ライフスタイルの介入として、30分/日の運動。ADAは、炭水化物を総カロリーの35-40%へ、BMIが30を超える場合は、実際の体重に対して25 kcal/kg となるよう炭水化物を30-33%へ制限することを推奨。

リスプロとアスパルトは、胎盤移行性は最小限であり食後血糖を改善し、低血糖リスクも少ない。

グリベンクラミドは臍帯血血清に認めない。メトフォルミンも催奇形性なし、early pregnancy lossを防ぐ。

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妊娠糖尿病の女性は2型糖尿病発症リスクが7倍

Type 2 diabetes mellitus after gestational diabetes: a systematic review and meta-analysis. Lancet 2009; 373: 1773–79

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2809%2960212-9/abstract

Lancet 521日号

20研究のメタアナリシス、196061日から2009131日の期間、

675455人女性と108592型糖尿病発症イベントを解析。2型糖尿病で妊娠糖尿病ありなしで比較。

妊娠糖尿病があった方が、7倍のリスクで2型糖尿病を発症しやすい。

出産後6週にOGTT を行うべきだが、あまり行われていない。

1型糖尿病の発症は除外。1997年に糖尿病診断基準が厳しくなっているので、発症リスクを低く見積もっているかもしれない。

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高中性脂肪血症の治療

Hypertriglyceridemia. N Engl J Med 2007;357:1009-17.
http://content.nejm.org/cgi/content/full/357/10/1009
 
20079月の高中性脂肪血症に関する総説。
アメリカで、ナイアシンが認可されていることもあってか、この総説ではフィブラートの評価が思ったほど高くない。
アルコールに関しては重症な高中性脂肪血症がなければ適当量(moderate alcohol intake)可と、意外と寛容でした。
 
要約
高中性脂肪血症をおこす遺伝性疾患-家族性複合型高脂血症(FCH)、低αリポプロテイン血症(人口の1%
2型糖尿病は人口の5%、この両者で冠動脈疾患の50%を占める。
単一遺伝の家族性高中性脂肪血症は冠動脈疾患との関連はない。
FCHはアポBが上がり、家族性高中性脂肪血症はアポBが低い。
 
検査
非空腹時の中性脂肪が冠動脈疾患との関連があるという報告があるが、正常値がないので、非空腹時の中性脂肪測定は推奨されない。
nonHDL 値(T-chol – HDL)は中性脂肪が多いリポプロテインコレステロールを示し、LDLコレステロールに比べ、より良い冠動脈疾患発症の予測因子である。
 
治療
治療上の問題は、中性脂肪を減らすか、あるいはIDLLDLHDL異常を補正するのかということ。中性脂肪10001500 mg/dl 異常の場合は膵炎を減らすため、フィブラートで治療する。
減量は、中性脂肪を減らしHDLを上げる。
禁煙は体重を増やしたとしても脂質プロファイルを改善する。
アルコールは、動脈硬化性の心血管疾患を減らすが、血圧を上げたり、脳出血のリスクを上げる。
適当量のアルコール(moderate alcohol intake)―男性2杯/日、女性1杯/日はアルコール依存がなければ許容。
TG 2000 mg/dl を超える重症な高中性脂肪血症があれば禁酒すべき。
TG500 mg/dlより低ければ、適当量のアルコールは排除しない。

冠動脈疾患の既往あるいは家族歴があれば投薬治療を開始。ニコチン酸は、small, dense LDLを減らしHDL2を上げる。フィブラートは非致死性心筋梗塞を減らすが、非致死性の冠動脈疾患、死亡率は変わらなかった。

ガイドラインでは、
LDLがターゲットレベルに達したら、中性脂肪が200mg/dlを超えないようにすることを推奨している。(これをサポートするデータはまだない。)

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糖尿病性網膜症とRAS阻害薬

2008年にカンデサルタンのDIRECT study では、1型糖尿病で網膜症の新規発症予防効果、2型糖尿病でmild からmoderately sever な網膜症の進展予防効果を示していたが、カンデサルタン32mg/日と容量が多かったので、通常容量ではどうなのかと思っていました。

1型糖尿病、網膜症なし、正常血圧、正常尿アルブミン尿の症例で、ロサルタン
100mg、エナラプリル20mgで網膜症新規発症予防効果を示しています。

RAS阻害薬は、血圧と独立して、網膜症新規発症防があるようです。Angiotensin II の作用を眼で直接ブロックするメカニズムが想定されています3)。

2型糖尿病

1) Effect of candesartan on progression and regression of retinopathy in type 2 diabetes (DIRECT-Protect 2): a randomised placebo-controlled trial.  Lancet 2008; 372: 1385 – 1393

正常アルブミン尿、正常血圧か高血圧治療中でmildからmoderately sever retinopathy ある症例
4.7年のフォローアップで、カンデサルタン32mg/日は、13%の網膜症進展リスク減少を認めた。

1型糖尿病、
2) Effect of candesartan on prevention (DIRECT-Prevent 1) and progression (DIRECT-Protect 1) of retinopathy in type 1 diabetes: randomised, placebo-controlled trials
. Lancet 2008; 372: 1394 – 1402

正常血圧、正常アルブミン尿、網膜症なし
―prevent 1、網膜症あり―protect 1
新規発症予防効果は18%のリスク減少をみとめたが、すでに発症した網膜症の進展予防効果なし。

3) Renal and Retinal Effects of Enalapril and Losartan in Type 1 Diabetes. N Engl J Med 2009;361:40-51.
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/361/1/40

正常血圧
正常アルブミン尿、網膜症なし
血圧の変化とは独立して、重症度分類の2段階以上悪化抑制効果はエナラプリル65%、ロサルタン70%でであった。

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RAS阻害薬は、血圧正常、正常アルブミン尿の1型糖尿病患者では、微量アルブミン尿への進展予防効果を認めない。

Renal and Retinal Effects of Enalapril and Losartan in Type 1 Diabetes. N Engl J Med 2009;361:40-51.http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/361/1/40
かなりの情報量のある論文で以下は要約です。

285
人の血圧正常、正常アルブミン尿、網膜症を認めない1型糖尿病患者をエナラプリル (20 mg/day)、ロサルタン(100 mg/day)、プラセボへ振り分け5年間フォローアップ。プライマリーエンドポイントは、メサンギウム細胞で占められた糸球体ボリュームの変化。網膜症のエンドポイントは、重症度分類の2段階以上の変化。

プライマリーエンドポイントは、3群で有意差なし。5年間で、微量アルブミン尿出現は、プラセボ(6%)、ロサルタン(17%,p=0.01))、エナラプリル (4% p=0.96)。

カンデサルタンを用いたDIRECT study でも、1型、2型糖尿病で、4.7年のフォローアップで正常アルブミン尿からの進展予防効果は認めない。カンデサルタンの方がプラセボに比べ微量アルブミン尿の出現が多いということはなかった。1)
GFR減少率は、健常な同年代に比べ2倍であるが、3群で同等。正常アルブミン尿でもGFR低下が認められれば、腎組織はより悪いことがわかっている。
RAS阻害薬は2型糖尿病においては、間質のexpansionが抑制されることが示されているが、今回のスタディでは3群とも間質のvolume 50%以上増加した。進行した腎症と早期腎症の違いがあるのかもしれない。2型糖尿病では高血圧、肥満、他のアルブミン尿のリスクなどもあることが関連しているのかもしれない。今回のスタディでは腎の2次的な構造変化もさまざまで、腎症の進展予測は難しい。1型糖尿病で、正常血圧、尿アルブミン正常でリスクの高い症例であれば違った結果になったのかもしれない。
血圧の変化とは独立して、重症度分類の2段階以上悪化抑制効果はエナラプリル65%、ロサルタン70%であった。Discussion には、血圧の効果も否定できずとの記載あり。網膜症の進展予防について、AngiotennsinIIは眼でも産生され、網膜症のリスクとなっているので、RAS阻害薬の直接効果かもしれないということでした。

1)
Effect of Candesartan on Microalbuminuria and Albumin Excretion Rate in Diabetes: Three Randomized Trials Ann Intern Med July 7, 2009 151:11-20;

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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