Second meal effect―昼食後の血糖値は上がりにくい。

糖尿病学会関東地方会に行ってきました。久しぶりに行った大宮は新幹線も止まり、駅も広く、駅前もにぎやかでした。
 
インスリンアレルギーや妊娠糖尿病のセッションにいて、新しい知識を得て勉強になりました。妊娠糖尿病のADAのマニュアル Medical Management of Pregnancy では、食事指導に朝食を軽くすることが書いてあります。朝食後の血糖値が上がりやすいのでそうしているのだと理解していました。妊娠糖尿病の演題で引かれていた論文を読んでみました。

The Second-Meal Phenomenon in Type 2 Diabetes. Diabetes Care 2009; 32: 1199-1201
一般的に、朝食後に比べ、昼食後の血糖値が上がりにくい傾向があり、Second meal effect 呼ばれ、健常者で広く調べられてきた。 肥満のある糖尿病患者の食事負荷の検討でも、1)朝食あり 2)朝食なしで昼食をとったところ、1)に比べ、2)血糖上昇が著明。
遊離脂肪酸(FFA)が高いとインスリン感受性が低下する。
FFAは、朝食をとることにより昼食前は朝食前より低下していて、そのために昼食後の血糖値が上がりにくい。3)朝食なしでもアルギニンを静注し、FFAを抑えておくと、昼食後の血糖値上昇が抑えられた。
 

昼に比べ朝の血糖は上がりやすいので、食事療法で厳格な血糖コントロールを目指すためには、朝食を少なめにとることが必要で、妊娠糖尿病の食事指導の内容もそれに沿っていることが分かりました。
 
後は、インスリンアレルギーですが、インスリン抗体(IgE)ができた場合に、インスリンの減感作は再度のアナフィブラートなど難しい場合も多く、インスリン治療がどうしても必要か見極める必要があると感じた。
食事療法をきちんとすれば、食事療法と経口薬でコントロールできる症例も多いようでした。
インスリン製剤のゴム栓に対するアレルギーが報告されていて、つい製剤に注意が行きがちだけれどそれ以外にも注意が必要。
医師ブログ20100131

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HbA1Cと死亡率の関係―U字カーブを描く。

1)Survival as a function of HbA1c in people with type 2 diabetes: a retrospective cohort study. Published Online January 27, 2010 DOI:10.1016/S0140-6736(09)61969-3

2)Survival in people with type 2 diabetes as a function of HbA1c. Published Online January 27, 2010 DOI:10.1016/S0140-6736(09)62192-9

イギリスで、約48000人のデーターベース解析、経口剤単独27965人、インスリン治療20005人。全死亡率のhazard ratio (HR) は、経口剤単独、インスリン治療とも、HbA1C7.5%を底とするU字カーブを描く。


両群を合わせた解析で、HbA1C6.4%群はHbA1C7.5%に比べHR1.52。


それぞれの群のHbA1C7.5%比べ、HbA1C6.7%未満群のHRはインスリン治療1.79、経口剤単独1.3であり、インスリン治療において、HbA1C低値群でのHRが高い。


ACCORD study などですでに示されていた結果であるけれど、インスリン治療でHbA1Cが低いとHRが高く、U字カーブが著明なグラフを見たときは驚きました。死亡率がHbA1C 7.5%で一番低いということも、一般的な血糖コントロール目標が6.5-7%であるので意外と高い印象。

 

エディトリアルを読むと少し冷静になれます。

1) ADVANCE、VADT では、強化療法群で死亡率が低いということはない。

2) UKPDSでは、全死亡率と心筋梗塞の発症率が、10年後のフォローアップで強化療法群で良好な結果が示されている。

3) 死亡原因、経口薬やインスリンの種類と量が不明。ランダマイズトライアルと異なり、データーベース観察では、詳しい解析に限界がある。

4) インスリン治療の方が血糖を起こしやすい。これまでの報告では、低血糖のオッズ比は、インスリン治療3.44、SU剤1.54 (Arch Intern Med (2001年))。低血糖が死亡率上昇の原因かどうかを明らかにするためには、すべての低血糖を知るため持続血糖モニターを行うようなランダマイズドトライアルが必要。

5) 低血糖なしに目標HbA1Cに到達するため、insulin sensitizer の投与が必要。

6) 罹病歴が短く、微小血管障害、大血管障害のない60歳未満の糖尿病患者では、強力な血糖コントロールの利益が多い (more beneficial)(Diabetologia 2009年)

と述べられています。

 

またこの論文では、1986年―2008年のデーターベース解析としているのに、平均フォローアップ期間が4.5年となっています。データーベース解析というのは専門家でないと、解析のイメージが湧きにくいと感じました。

医師ブログ010130 ヒューマペン ラグジュラ 2005年度 グッドデザイン賞 受賞

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ADAの糖尿病診断基準

Standards of Medical Care in Diabetes—2010. Diabetes Care January 2010 33:S11-S61;
Diabetes Care 1月号に、新しい糖尿病診断基準が示された。

1. A1C > 6.5% (NSGP)

2.FPG > 126 mg/dl (7.0 mmol/l). (少なくも8時間の絶食後)

3. 75gOGTT 2時間値 >  200mg/dl (11.1 mmol/l)

4. 高血糖の古典的症状があり、随時血糖 (random plasma glucose) が、 > 200mg/dl (11.1 mmol/l)

 
1から4は or でつながれているので、どれか一つで診断確定となる。
2009
年版に比べ、A1C > 6.5% (NSGP) が新規に導入された。
 
日本のHbA1CJDS値を使っており、
A1C (NGSP 値(%))= 1.019 × HbA1c (JDS値(%))0.3
換算するとA1C 6.5HbA1c 6.08 となる。
 
日本でもHbA1c 6.1 が診断基準として、示される見込み。雑誌「糖尿病」に掲載されるのではないかと思います。
医師ブログ010127Diabetes Care_2

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心筋梗塞とApoB/ApoA1(INTERHEART STUDY)

Lipids, lipoproteins, and apolipoproteins as risk markers of myocardial infarction in 52 countries (the INTERHEART study): a case-control study. Lancet 2008; 372: 224–338
 
2008年の論文で、9345症例、12120コントロールの非空腹時採血。ApoB/ApoA1は、心筋梗塞の予測因子としてはT-chol/HDLよりも優れているという内容。
 
ApoBIはすべての民族で総コレステロールより強力なマーカーであり、ApoA1上昇は、Black African 以外でHDLコレステロール濃度よりも心筋梗塞のリスク減少に結びついているということです。
 
脂質管理としてはLDL、HDLを指標にしていたので、非常に興味深かった。今や、ApoB/ApoA1は、多くの論文で言及されている。
 
LDLよりApoBが良い理由は、
―動脈硬化を起こすリポプロテインパーティクルは、1分子のApoBIをもつので、数としては同じ。Small dense LDL が多いとコレステロールが少ない小さい粒子である.。Small dense LDLがあると、LDLコレステロール値だけで判断することは、LDLパーティクルの数を低く評価することになるためではないか―ということ。
 
ApoA1については、
1.ApoA1はコレステロール逆転送をガイドし、抗酸化、抗炎症性であり、NO産生を助ける。
2.ApoBと異なり、ApoA1、HDLコレステロール、HDLパーティクル数との関係はない。
3.中性脂肪が高いと、HDLコレステロールは低下するが、ApoA1は変わらない。HDLは肝臓に取り込まれてクリアランスされるが、VLDLとHDL-2との間の、core lipid exchange がより多くなるため。
 
中性脂肪が高値の時はHDLが低い印象があったが、その理由が少し理解できました。ApoAIの重要性も認識できた論文でした。
 

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メタボリックシンドローム基準の変更―腹囲は必須でない。

The metabolic syndrome Lancet 2010; 375: 181-183
http://www.thelancet.com/journals/lancet/issue/vol375no9710/PIIS0140-6736%2810%29X6109-8

International Diabetes Federation (IDF) American Heart Association/National Heart, Lung, and Blood Institute (AHA/NHLBI)の間で、メタボリックシンドロームの統一基準が提唱された(Circulation. 2009 Oct 20;120(16):1640-5)。IDFでは腹囲が必須であったが必須でなくなり、閾値も国別、地域別の値を使っていくようになるとのこと。
腹囲が必須でなくなると、糖尿病のほとんどが、メタボリックシンドロームに含まれることになると記載されています。
 
この論文の中で興味深かったのは、アメリカの若者(adolescents)で、血中ビタミンD欠乏と心血管イベントリスク、過体重、内蔵肥満との関連が明らかになっているということでした。血中ビタミンDとメタボリックシンドロームは逆相関(relative risk 3·88)。
 
3項目の以上でメタボリックシンドローム(治療中も含む)
1. Increased waist circumference
2. 高中性脂肪血症≥150 mg/dL
3. HDL血症 男性<40 mg/dL ; 女性 <50 mg/dL
4. 血圧上昇 収縮期≥130 and/or 拡張期≥85 mm Hg
5. Increased fasting glucose> 100 mg/dL

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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