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GLP-1の心保護作用

Drucker らは、GLP-1が心筋虚血時に心保護作用を示すという報告をしている。


まとめ
GLP1受容体は心筋に発現している。

・マウスの実験で、リラグルチドは、心筋梗塞後の生存率を上げ、心破裂、梗塞サイズを減らし、cardiac output を上げる。

・リラグルチドは、心保護作用に働く遺伝子群(Akt, GSK3beta, PPARbeta-delta, Nrf-2, HO-1)を誘導させる。

・シタグリプチンもwild type の糖尿病マウスで心筋梗塞時の死亡率を減少させた。メトフォルミンでも同様の効果あり。

 

感想

リラグルチドは薬理学的レベルまでGLP-1濃度を上昇されるが、DPP-4阻害薬は生理学的濃度の2倍程度のようです。(ビルダグリプチンのパンフレット参照)

DPP-4阻害薬によるGLP-1上昇の濃度でも心保護作用が人でもあれば、より好まれることになると思います。メトフォルミンの次、SU剤の前に入る薬剤という印象をもちつつあります。


PPARbeta-delta
 血管新生に働く

Nrf-2:酸化ストレス防御酵素を発現させる転写因子

HO-1: ヘムオキシゲナーゼ、酸化ストレス保護作用がある

1. Cardioprotective and Vasodilatory Actions of Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Are Mediated Through Both Glucagon-Like Peptide 1 Receptor–Dependent and –Independent Pathways Circulation. 2008;117:2340-2350.)


2. GLP-1R agonist liraglutide activates cytoprotective pathways and improves outcomes after experimental myocardial infarction in mice. Diabetes. 2009 Apr;58(4):975-83. Epub 2009 Jan 16.


3. Genetic deletion or pharmacological inhibition of dipeptidyl peptidase-4 improves cardiovascular outcomes after myocardial infarction in mice. Diabetes. 2010 Apr;59(4):1063-73. Epub 2010 Jan 22.


 

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SNPsと糖代謝

Genetic variation in GIPR influences the glucose and insulin responses to an oral glucose challenge.  Nat Genet. 2010 Feb;42(2):142-8. Epub 2010 Jan 17.


ビルダグリプチンの発売記念講演会で知った論文。

GIP受容体のSNPs は糖負荷試験2時間血糖値と関連。2型糖尿病とは関連しない。

さらに、rs10423928A lociがあると、インスリン分泌低下、インクレチン作用の減弱 を示す。

ADCY5VPS13CGCKRTCFL2も糖負荷試験2時間血糖値と関連。

ADCY5GCKRTCFL22型糖尿病と関連。

 

New genetic loci implicated in fasting glucose homeostasis and their impact on type 2 diabetes risk. Nat Genet. 2010 Feb;42(2):105-16. Epub 2010 Jan 17.


上の論文と同じ号に掲載されていたSNPsと耐糖能の論文。

1. 空腹時血糖と関連 :in or near ADCY5, MADD, ADRA2A, CRY2, FADS1, GLIS3, SLC2A2, PROX1, C2CD4B

2. 空腹時インスリン、HOMA-IR と関連:near IGF1.

3. 2型糖尿病と関連:ADCY5, PROX1, GCK, GCKR, DGKB-TMEM195

 

Nature Genetics誌 にはアクセスできずabstract を読んだのみ。

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DPP-4の総説

Diabetes 4月号には、インクレチンがcardioprotective であることを示す論文が出ていて、もう少し基礎知識を増やさないと理解できないので、孫引きしたDPP-4の総説へ。

1DPP-4は、リンパ球に発現するCD26 と同一のもの。

2. 生理学的にはGLP-1GLP-2 GIPSDFSDF-1α/β、Substance P に作用。

3. DPP-4は、GLP-1(7-36) amide GLP-1(9-36) amideへ変換。GLP-1(9-36) amideは、犬で心保護作用が示されていた。拡張型心筋症を誘発した犬で、心筋の糖取り込みと左心室機能を回復したということです。


“Remarkably, GLP-1(9-36) amide increased myocardial glucose uptake and improved left ventricular function in dogs with panching-induced dilated cadiomyopathy.”

Dipeptidyl peptidase-4 inhibition and the treatment of type 2 diabetes: preclinical biology and mechanisms of action. Drucker DJ. Diabetes Care. 2007 Jun;30(6):1335-43.

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健常者の空腹時血糖値はIGRP遺伝子のSNPsに関連する。

先週の講演会で知った論文。正常血糖値とは何かという話の中で紹介された。生理的な空腹時血糖値も遺伝的要素が関与している。

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日本の糖尿病診断基準の変更案について

糖尿病診断基準の学会理事会合意案は3月の「第44回糖尿病学の進歩」で公表されている。

①空腹時血糖値 ≥ 126 mg/dl

糖負荷試験2時間値 ≥ 200 mg/dl

③随時血糖値 ≥ 200 mg/dl

および

HbA1CNGSP≥ 6.5%  (HbA1CJDS≥ 6.1%)

 

のいずれかとで糖尿病の診断。

同日に血糖値基準のいずれかとHbA1Cの基準満たした場合糖尿病の診断となる。HbA1C の反復検査では糖尿病の診断とならない。

 

感想

HbA1CJDS≥ 6.1% であっても、血糖値が基準を満たしていない場合は、糖尿病診断としていない。HbA1CJDS6.1%程度の場合、空腹時、随時血糖値で診断基準の満たさないことも多く、OGTTが必要となってくる。こういう診断手順は、現状に近く受け入れやすいと思います。

 

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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