インクレチン治療とα細胞過形成、microadenoma

インクレチン治療歴のある脳死ドナー8例で、膵全体のmass が増加し、膵β細胞量は増加している。
α細胞の過形成も伴い、8例中1例にグルカゴンを産生するneuroendocrine adenoma が認められた。(Diabetes online first)

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地中海食と心血管イベント抑制効果 (PREDIMED study)

心血管イベントの既往がなく糖尿病も含む集団7447人で、地中海食が低脂肪食に比べ心血管イベントを3 /1000 person per years 抑制する。(PREDIMED Study, NEJM online first)   低脂肪食では、すでに心血管イベント抑制が示されている魚の脂、オリーブオイル、ナッツを避ける設定で、低脂肪食には不利な条件でした。質の高い脂質を取るということが重要と思います。
まとめ
心血管イベントリスクが高いが既往がなく、2型糖尿病が46-50%含まれる7447人で、エネルギー制限のない地中海食にエクストラバージンオリーブオイルあるいはナッツの補充と低脂肪食の比較、4.8年のフォローアップ
 
288のプライマリーアウトカム (Major cardiovascular events) で、 
96 地中海食+エクストラバージンオリーブオイル、 93地中海食+ナッツ、109低脂肪食
地中海食は、Major cardiovascular events を 3 /1000 person per years 抑制する。
 
地中海食、オリーブオイル、くるみはそれぞれ心血管イベントリスクの減少効果が知られている。クルミは植物に含まれるオメガ3不飽和脂肪酸であるα-linoleic acid を含む。
 
<地中海食>
オリーブオイル >ティースプーン4杯/日
ナッツ         >3回/週
フルーツ       >3回/日
野菜          >2回日
Fatty fish 、シーフード、鳥肉をそれぞれ週3回は食べる
white meet をとる
食事時のワイン   >7杯/週
 
<低脂肪食>
低脂肪の食品をとる
パン、パスタ、米   >3回/日
フルーツ       >3回/日
野菜          >2回日
Lean fish とシーフード >3回/週
オリーブオイルなど食物油は取らない
Nutsは避ける
 
二つの食事で共通して避けるもの
炭酸飲料水 (soda drinks)
市販のお菓子、スイーツ、ペイストリー (commercial bakery goods, sweets, and pastries)
Spread fats
加工肉
-------------------------------------------------------------------------------------------
 
なぜオメガ3脂肪酸がよいのか
オメガ3脂肪酸は抗不整脈作用、血小板凝集抑制作用、血管拡張作用、抗増殖作用、プラーク安定化などが認められる。2)
"N-3 polyunsaturated fatty acids have antiarrhythmic effects and other beneficial effects,such as reduced platelet aggregation, vasodilation, antiproliferation, plaque-stabilisation,and a reduction in lipid action."  
 
オリーブオイルは一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)が主体、ポリフェノールを含む。4)

α-Linoleic acid は omega-3 fatty acids で、くるみや、 Canola 西洋アブラナ、Flaxseed  亜麻などの食物油に含まれる。5)
 
低脂肪食と地中海食の違いは、低脂肪食でオリーブオイルなど食物油、オメガ3脂肪酸を含むFatty fish、ナッツ類を取らないこと。これらはすでに心血管保護効果が示されているので、これらの制限が二つの食事で心血管イベントに差が付いた理由となっており、低脂肪食は不利な条件だったと思います。今後はオメガ3脂肪酸をさけるようなスタディは倫理的に困難という印象を受けました。
 
動脈硬化学会は、伝統的な日本食が動脈硬化性疾患を防ぐとして推奨している。6)
和食に、二つの食事で共通で避けている炭酸飲料、お菓子類、加工肉を避け、オメガ3多価脂肪酸を含む品目をとりいれるのが実践しやすいやり方かと思います。
 
1. Estruch R et al. Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet. N Engl J Med. 2013 Apr 4;368(14):1279-90. doi: 10.1056/NEJMoa1200303. Epub 2013 Feb 25.

2. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis Lancet 2007; 369: 1090–98

3. Fat and Lean Fish
http://www.fooduniversity.com/foodu/seafood_c/resources/composition/fat_lean.htm
Fatty fish (マグロ、サーモン、イワシ、ニシンなど)
Lean fish (ヒラメ、タラ、カレイ、スズキなど)

4. Olive oil
http://en.wikipedia.org/wiki/Olive_oil 
 
5.Omega-3 fatty acids, fish oil, alpha-linolenic acid 
http://www.mayoclinic.com/health/fish-oil/NS_patient-fishoil 
 
4. 日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版. 日本動脈硬化学会, 20
http://www.j-athero.org/publications/guideline.html
動脈硬化学会は、伝統的な日本食を推奨。「伝統的な日本食では、主に飽和脂肪酸を肉類(獣鳥)、一価不飽和脂肪酸を肉類、魚類と食物油、n-6系多価不飽和脂肪酸を食物油と大豆製品、n-3系多価不飽和脂肪酸を海産物と食物から摂取している。ただし日本食の欠点は塩分摂取量が多くなることであり、減塩を心がける必要がある。」

追記 (2016/11/7)
PREDIMED スタディ、4.8年のフォローアップの結果、オリーブオイルの摂取群でコントロールに比べ体重が、-0.48kg ( p=0·044)、 ナッツ群は-0.08kg (p=0·73)、腹囲がオリーブオイルで -0·55 cm (p=0·048)、ナッツ群で-0·94 cm (p=0·006) となった。

Estruch R et al. Effect of a high-fat Mediterranean diet on bodyweight and waist circumference: a prespecified secondary outcomes analysis of the PREDIMED randomised controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Aug;4(8):666-76

 


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GAD抗体陽性糖尿病(LADA、SPIDDM)のインスリン分泌低下

講演会を聞いてまとめです。GAD抗体陽性の糖尿病では、GAD抗体価が高く(> 10 IU/m)、抗体陽性数が多いとインスリン依存状態へ移行しやすい。一方、GAD抗体値1.5-10 IU/mlでは長期にわたりインスリン治療が不要な症例も多い。疾患抵抗性ハプロタイプを有しているとインスリン依存状態となりにくい。

まとめ
コマーシャルベースで測定できる自己抗体は4つ(GAD、IA2、IAA、ICA)
抗体陽性数が多いほどインスリン分泌が低下しやすい。
1型糖尿病抵抗性のHLAハプロタイプをもっていると、インスリン分泌低下がおこりにくい傾向がある。1)
 
欧米で使われるLADAと日本のSPIDDMはentityが異なる。LADAは発症様式に、SPIDDMはインスリン分泌低下に重きを置いている。(by Y. Dr)
 
発症時にインスリン非依存状態で抗GAD抗体の抗体価が10 IU/ml 以上であれば、インスリン治療がSU剤治療に比べインスリン依存状態への移行を抑制する。2)
 
GAD抗体値1.5-10 IU/mlでは長期にわたりインスリン治療が不要な症例が多い。
抗体価が1.5-10 IU/mlの症例の治療について2012年糖尿病学会のディベートでもとりあげられた。
UKPDSでは、年齢45歳未満では早期にインスリン治療が必要となることが報告されている。2)3)
 
1型糖尿病疾患感受性 HLAハプロタイプ4)
DQB1*0405-DQB1*0401
DQB1*0802-DQB1*0302
DQB1*0901-DQB1*0303
 
疾患抵抗性HLAハプロタイプ
DQB1*1501-DQB1*0602
DQB1*1502-DQB1*0601
 
1. Clinical, Autoimmune, and Genetic Characteristics of Adult-Onset Diabetic Patients With GAD Autoantibodies in Japan (Ehime Study) Diabetes Care June 2002 vol. 25 no. 6 995-1001 
疾患抵抗性ハプロタイプをもっているとインスリン依存状態になりにくい。
 
2. Insulin intervention in slowlyLADA progressive insulin-dependent (type 1) diabetes mellitus.
Maruyama T, Tanaka S, Shimada A, Funae O, Kasuga A, Kanatsuka A, Takei I, Yamada S, Harii N, Shimura H, Kobayashi T.J Clin Endocrinol Metab. 2008 Jun;93(6):2115-21. doi: 10.1210/jc.2007-2267. 

3. 2型糖尿病として発症したGAD抗体価低価の患者をどう扱うのか 糖尿病 55 Supplement 1: S-67
 
4. 1型糖尿病の疾患感受性遺伝子  糖尿病 42(10):817~819,1999

2013/06/02 糖尿病学会で聞いてきて追記しました。
劇症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病、急性発症1型糖尿病と関連するHLA (日本人のデータ)
 
急性発症1型糖尿病
DRB1*0405-DQB1*0401, 
DRB1*0802-DQB1*0302 
DRB1*0901-DQB1*0303 
 
DRB1*0405-DQB1*0401/DRB1*0802-DQB1*0302 genotype はオッズ比42.7となる。
DRB1*1501-DQB1*0602 DRB1*1502-DQB1*0601 は疾患抵抗性 (protective) のgenotype
 
同様の傾向が、 緩徐進行1型糖尿病に認められる
 
劇症1型糖尿病と急性発症で共通するgenotype はDRB1*0405-DQB1*0401 のみ。
DRB1*0405-DQB1*0401/DRB1*0405-DQB1*0401 genotype はオッズ比 11.2. 
 
DRB1*0901-DQB1*0303 はコントロール14.8%、急性発症1型糖尿病30.9%、劇症1型糖尿病23.8%、緩徐進行1型糖尿病24%で、オッズ比は急性発症1型糖尿病 2.3、劇症1型糖尿病1.8 (コントロールに比べ有意差なし)、緩徐進行1型糖尿病1.9 (有意差あり)
 
DRB1*0802-DQB1*0302、DRB1*0405-DQB1*0401/DRB1*0802-DQB1*0302、DRB1*1501-DQB1*0602 は劇症1型糖尿病と関連しない。
 
Kawabata Y. et al. Differential association of HLA with three subtypes of type 1 diabetes: fulminant, slowly progressive and acute-onset. Diabetologia. 2009 Dec;52(12):2513-21. doi: 10.1007/s00125-009-1539-9. Epub 2009 Oct 8. 




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インスリンデグルデックの注射間隔のフレキシビリティ(1型糖尿病での報告)

1型糖尿病で、夜の血糖が低く夜に時効型インスリンをうつことがためらわれる場合もあると思います。インスリンデグルデックであれば、次の朝まで注射をずらすことも可能なのだと思います。

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糖尿病キャンプでのArtificial Pancreas のトライアル

イスラエルのグループからArtificial Pancreas (AP) の報告です。
イスラエルのグループから、糖尿病キャンプ(10歳から18歳対象)でArtificial Pancreas (AP) の報告です。APの方が、Sensor-augmented insulin pump よりも低血糖のエピソードが少なく、血糖値 60 mg/dl未満となる期間も短かい。平均血糖もAPの方が良いという結果となっています。

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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