グルカゴン測定キットの問題点、高グルカゴン血症となる病態

グルカゴン測定キットの問題点
グリセンチン glicentin とオキシントモデュリン oxintmodulin はプログルカゴンから産生されるため、グルカゴンと共通の配列をもつ。
グリセンチン 、オキシントモデュリンとの cross reactivity を避けるため、インタクトグルカゴンは、N端とC端のsandwich assay による定量が信頼される。
 
高グルカゴン血症となる病態
1. 2型糖尿病
2. 肥満
3. 末期腎臓病 (end-stage renal disease) 
4. Roux-en-Y gastric bypass (RYGB)
5. 迷走神経切除を伴う胃切除 (pyroplasty)
 
膵切除後、腸管L細胞で、pancreatic glucagonが産生される可能性がある。
迷走神経切除をともなうpyroplastyでも同様
 
ESRDがある場合、グルカゴン値は、 C端を認識する高感度RIA測定で、sandwich assay に比べ高値をしめす。
ESRDではプログルカゴンを含むN-terminal elongated glucagonが増加している 
 
1. Wewer Albrechtsen NJ, Hartmann B, Veedfald S, Windeløv JA, Plamboeck A, Bojsen-Møller KN, Idorn T, Feldt-Rasmussen B, Knop FK, Vilsbøll T, Madsbad S, Deacon CF, Holst JJ. Diabetologia. 2014 Jun 3. [Epub ahead of print] Hyperglucagonaemia analysed by glucagon sandwich ELISA: nonspecific interference or truly elevated levels?


2型糖尿病の高グルカゴン血症、腸管由来のグルカゴン

2型糖尿病では、正常血糖クランプ下のグルコース注入 (isoglycaemic i.v. glucose infusions (IIGIs)) で、グルカゴン分泌抑制が認められるが、経口糖負荷でグルカゴンの抑制は認められない。
 
健常人では、経口糖負荷25gとIIGIsでグルカゴン分泌は抑制されるが、経口糖負荷量が増加するともにグルカゴン値は上昇する。1)
 
2型糖尿病で、経口糖負荷によりグルカゴン分泌が上昇する理由1)
① 腸管由来のグルカゴン (Gut-derived glucagon secretion)
腸管内分泌細胞のL細胞からグルカゴンが分泌される可能性
L細胞では、proglucagon から、PC1/3により GLP-1とGLP-2が産生される。
α細胞では、proglucagon から、PC2 によりglucagon が産生される。1, 3)
腸管内で、高濃度グルコース負荷となった場合に、L細胞でもPC2によりグルカゴンが産生される可能性がある。
 
② 腸管からグルカゴン分泌促進因子が分泌される。(glucagonotropic factors released from the gut in response to the oral glucose)
腸管で分泌されるGIPが、グルカゴン分泌促進に働く。
 
1. Bagger JI, Knop FK, Lund A, Holst JJ, Vilsbøll T. Diabetologia. 2014 Aug;57(8):1720-5.  Glucagon responses to increasing oral loads of glucose and corresponding isoglycaemic intravenous glucose infusions in patients with type 2 diabetes and healthy individuals.

 2. Holst JJ, Pedersen JH, Baldissera F, Stadil F (1983) Circulating glucagon after total pancreatectomy in man. Diabetologia 25:396–399
膵全摘後もグルカゴンが測定される。
 
3.  Rouillé Y, Westermark G, Martin SK, Steiner DF. Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Apr 12;91(8):3242-6.
Proglucagon is processed to glucagon by prohormone convertase PC2 in alpha TC1-6 cells.
α細胞では、PC2によりプログルカゴンからグルカゴンが分泌される。
 

カプセルに入れたES細胞由来インスリン産生細胞で1型糖尿病を治療する。

アメリカのViaCyte社は、ES細胞から分化させたインスリン産生細胞による1型糖尿病の治験 phase1/2を開始する。順調にすすめば、8月か9月には第1例目の治療が始まる。
 
ES細胞から分化誘導したインスリン産生細胞 (VC-01) をカプセルにいれ移植する。
移植細胞とカプセルは、 Encaptra Drug Delivery System と名付けられ、ISO 13485:2003 を取得している。2)
 
感想
1型糖尿病の細胞治療で、エポックメーキングとなりうる治験の開始です。
・インスリ注射量を減量あるいは中止できるほどのインスリン分泌がえられ、維持できるのか
・グルコース量に応じたインスリン分泌が可能なのか
・ES細胞由来の細胞の腫瘍化リスクはどうか
という点に注目しています。得られた結果の蓄積は、今後の細胞治療システムに生かされると思います。
 
1. Diabetes stem cell therapy readied | UTSanDiego.com
 
2. ViaCyte Achieves Significant Milestone with ISO 13485:2003 Certification for its Encaptra Drug Delivery System - MarketWatch

アメリカのViaCyte社は、ES細胞から分化させたインスリン産生細胞による1型糖尿病の治験 phase1/2を開始する。順調にすすめば、8月か9月には第1例目の治療が始まる

インスリン分泌における亜鉛の役割 ZnT8と糖尿病2

1) 亜鉛はインスリンのクリスタル形成に重要
2) 亜鉛はインスリン分泌を抑制、肝臓ではインスリンのクリアランスを抑制している。
3) 血中亜鉛濃度が高いと糖尿病のリスクが低下する。

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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