リラグルチドによるβ細胞機能の改善は中止後2週間で消失

2型糖尿病 51人、インスリン強化療法を4週間行ったのち、リラグルチドかブラセボで48週間治療する。12週間ごとに糖負荷試験を行い、β細胞機能の指標であるInsulin Secretion-Sensitivity Index (ISSI) -2を評価した。
 
罹病期間 2.6 ± 1.9 years、リラグルチド治療開始前のA1Cは6.8 ± 0.8%
 
ISSI-2は、48週までリラグルチド群がプラセボ群より良好な結果で、リラグルチド治療中止2週間後には両群の差は消失した。
 
リラグルチド治療中はβ細胞機能が改善しているが、この治療がβ細胞の機能低下 (β cell deterioration ) を引き起こす根本的な病因を改善するわけではない。
"Thus, despite the improvement of β-cell function while on liraglutide, the underlying pathology driving β-cell deterioration was not reversed by this therapy."
 
発症早期のインスリン強化療法β細胞機能を回復させる(reverse) 。
リラグルチド治療のISSI-2値がかなり高いので、リラグルチド治療がインスリン強化療法の効果を維持したというよりは、さらに多くのβ細胞機能を回復させる可能性がある。
リラグルチド治療群では、50%以上の参加者がA1C 6%未満を達成している。リラグルチド治療が、β細胞の衰退 decline という2型糖尿病のnatural history や、高血糖、合併症リスクを変えることができるのかは今後さらなる検討が必要。
 
1. Retnakaran R. et al. Diabetes Care. 2014 Dec;37(12):3270-8. doi: 10.2337/dc14-0893. Epub 2014 Sep 23. Liraglutide and the Preservation of Pancreatic β-Cell Function in Early Type 2 Diabetes: The LIBRA Trial.

 

1型糖尿病とエンテロウイルス

ヒトのβ細胞は、enterovirus の受容体 enterovirus entry receptorsを持ち持続感染が起こりうる。
β細胞の antiviral response が自己免疫性と1型糖尿病発症を決めている。
 
消化管に感染するエンテロウイルスは膵島感染のソースとなる。(blood-borne infection) 
急性心筋炎で亡くなった小児の膵島にenteroviral antigen が認められている。
 
RNA5’端の欠失したエンテロウイルスは増殖能をもたず、心筋細胞で非定型的( noncanonical )にホスト細胞に持続感染をおこすことが示されている。
RNA ヘリケースは、α細胞に豊富に発現するが、β細胞では乏しい。そのためβ細胞でエンテロウイルスの持続感染が起こる。
 
抗原提示に働くMHC class I の発現は、1型糖尿病患者のβ細胞で、コントロールに比べ増加している。
 
1. Enteroviruses as causative agents in type 1 diabetes: loose ends or lost cause?
http://www.cell.com/trends/endocrinology-metabolism/abstract/S1043-2760%2814%2900152-0
 
2. Krogvold L . et al. Detection of a low-grade enteroviral infection in the islets of Langerhans of living patients newly diagnosed with type 1 diabetes. Diabetes. 2014 Nov 24.

発症3~9週の1型糖尿病、6例 (24-35歳)で、膵尾部を最小 (3cm) で生検の後、膵島を単離、Enteroviral capsid protein 1 (VP1) 、 class I HLA の発現を検討した。
1型糖尿病患者で、VP1は6/6 の発現、コントロール(非糖尿病臓器提供者)は2/9に発現。
class I HLA6/6に発現、コントロールは1/9
Enterovirus specific RNA sequences は4/6の発現、コントロールは0/6
膵島の1.7% のみがVP-1陽性細胞を含み、エンテロウイルスのRNA量も低い。
膵島で、Low grade のエンテロウイルス感染がヒト1型糖尿病の進行に関与していることを示している。
 
 

メトフォルミンはインスリン感受性を変えない。

NEJM 誌のメトフォルミンのレビューを読んでみました。”メトフォルミンは、ミトコンドリアのglycerophosphate dehydrogenase (mGPD) を阻害して、糖新生を抑制する。”というNature Medicine の解説が主体でした。1, 2)  グルコースクランプの検討では、メトフォルミンはインスリン感受性を改善するとうい結果はないことが書かれていました。
 
まとめ
メトフォルミンは全身のインスリン感受性を変えないが、肝臓での糖産生を低下させる。
"At the whole-body level, metformin itself does not affect insulin sensitivity in muscle or adipose tissue2 but consistently reduces endogenous glucose production by inhibiting gluconeogenesis.”1, 5, 6)
 
メトフォルミンは上部小腸で吸収され、腸管細胞、肝細胞で濃縮され、腎臓で排泄される。
血液中では担体に結合せず (essentially circulating uncoupled)、biotransformation を受けない。 1, 7)
 
生検の結果、空腸上皮でのメトフォルミン濃度は血中の30~300倍
"The concentration of metformin in the jejunum was about 30–300 times higher than plasma concentrations (pre- dose <1.0 μg/ml [<8 μmol/l] and post- dose 1–3 μg/ml (8–24 μmol/l)] .”4)
 
1. Ferrannini E. The target of metformin in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2014 Oct 16;371(16):1547-8. doi: 10.1056/NEJMcibr1409796.

2. Madiraju AK et al. Metformin suppresses gluconeogenesis by inhibiting mitochondrial glycerophosphate dehydrogenase. Nature. 2014 Jun 26;510(7506):542-6.

3. Bailey CJ, Turner RC.  Metformin. N Engl J Med. 1996;334(9):574-9. 

4. Bailey CJ, Wilcock C, Scarpello JH.  Metformin and the intestine. Diabetologia. 2008 Aug;51(8):1552-3.
メトフォルミンが腸管粘膜 mucosa で濃縮され血中より濃度が高くなる。
生検の結果、空腸上皮でのメトフォルミン濃度は血中の30~300倍。
 
5. Natali A, Baldeweg S, Toschi E, Capaldo B, Barbaro D, Gastaldelli A, Yudkin JS, Ferrannini E. Vascular Effects of Improving Metabolic Control With Metformin or Rosiglitazone in Type 2 Diabetes Diabetes Care. 2004 Jun;27(6):1349-57.
ロシグリタゾン、メトフォルミン、プラセボで4週間治療後、正常血糖クランプでインスリン感受性を評価した。
ロシグリタゾンはインスリン感受性を改善するが、メトフォルミンとプラセボは改善しない。
 
6. Natali, A, Ferrannini, E. . Effects of metformin and thiazolidine-diones on suppression of hepatic glucose production and stimulation of glucose uptake in type 2 diabetes: a systematic review. Diabetologia. 2006 Mar;49(3):434-41. 
メタアナリシスの結果、通常服用量で、メトフォルミンはインスリン感受性を改善してない。
 
7. Foretz M. et al, Metformin: From Mechanisms of Action to Therapies, Cell Metabolism, 2014

 

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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