低血糖と不整脈(2)

低血糖時の心筋細胞
低血糖時の低カリウム血症やカテコラミン分泌による細胞内カルシウム上昇が不整脈の原因となる。
 
細胞内カルシウム濃度上昇
カテコラミンにより、細胞内カルシウム濃度が上昇し、心室性頻脈、心室細動の原因となる。1)
 
低カリウム血症
インスリン負荷試験による低血糖では血中カリウム値が低下する。インスリンおよびカテコラミンが、(Na+-K+)-ATPase を活性化し、細胞内にカリウムが取り込まれ、低カリウム血症となる。2)
低カリウム血症は、QT時間延長および心筋細胞内のCa overload の原因となる。
 
 K+ current 抑制
心筋細胞の再分極 repolarizationでは、K+ currentが認められる。
低血糖時は、K+ currentが抑制され、活動電位が延び (prolonged action potential)、QT時間延長と心室性頻拍症の原因となる。2)
 
1. Nordin C. The case for hypoglycaemia as a proarrhythmic event: basic and clinical evidence
Diabetologia, 2010, 53:1552–1561

2. Petersen KG, Schlüter KJ, Kerp L.Regulation of Serum Potassium During Insulin-induced HypoglycemiaDiabetes. 1982 Jul;31(7):615-7.


低血糖と低カリウム血症

低血糖で血中カリウム値は低下する。
糖尿病家族歴のない男性8人、プロプラノロールかプラセボを服用し、2時間後に、Insulin Torrance Test を行った。
 
プロプラノロール、プラセボ服用群ともに、25分後までカリウムは低下、プロプラノロール服用群ではカリウム値は上昇するが、プラセボでは45分までカリウム値は低下する。
 
インスリン投与25分から30分後に血糖値30mg/dl をきり、エピフネフェリンが分泌される。
 
インスリン負荷後30分から45分までのカリウム値の低下はエピネフェリン上昇による β-adrenal receptor stimulation のためである。
 
インスリンは筋肉細胞で、ナトリウムの透過性をあげpHを上昇させる。その結果、(Na+-K+)-ATPase が活性化され、細胞内にカリウムが流入し低カリウム血症となる。
カテコラミンも、ラットの soleus muscle で、glucose-free bicarbonate溶液中では、(Na+-K+)-ATPaseを活性化する。
 
1. Petersen KG, Schlüter KJ, Kerp L. Regulation of Serum Potassium During Insulin-induced Hypoglycemia Diabetes. 1982 Jul;31(7):615-7.

 

低血糖と不整脈(1) 迷走神経の過度の代償による徐脈がおこる

インスリン治療中の2型糖尿病25人、日中と夜間で、正常血糖と低血糖を比較した。
 
除脈、上室性および心室性異所性収縮 (atrial and ventricular ectopic count ) は夜間低血糖で正常血糖に比べ起こりやすい。
 
除脈の頻度は、日中は低血糖と正常血糖で差はないが、夜間低血糖で正常血糖にくらべ8倍のリスクとなる。
低血糖ではQTc が延長し、T波は低血糖から正常血糖値に戻るにつれ平坦化する
 
低血糖ではまず交感神経反応 (sympathetic nerve response) が起こったのち、過度の迷走神経による代償 (vagal nerve compensation) となり、徐脈や不整脈の原因となる。 
 
夜間はグルコースに対するcounter regulationが低下し低血糖が遷延しやすい。
 
夜間、低血糖で正常血糖に比べ除脈リスクが高いのは、迷走神経による過度の代償作用が想定されている。
 
1. Chow E, Bernjak A, Williams S, Fawdry RA, Hibbert S, Freeman J, Sheridan PJ, Heller SR. Risk of Cardiac Arrhythmias During Hypoglycemia in Patients With Type 2 Diabetes and Cardiovascular Risk Diabetes. 2014 May;63(5):1738-47.

2. Clark AL, Best CJ, Fisher SJ. Even Silent Hypoglycemia Induces Cardiac Arrhythmias. Diabetes. 2014 May;63(5):1457-9.

 
 

長時間作用型GLP-1受容体作動薬は中枢性の食欲抑制作用により体重を減少させる。

長時間作用型GLP-1受容体作動薬は中枢性の食欲抑制により、短時間作用型は胃排出能抑制により体重を減少させる。

ラットで、蛍光ラベルしたリラグルチドを末梢投与した。
リラグルチドは、視床下部弓状核 (Arcuate nucleus) のPOMCニューロンに取り込まれる。

長時間作用型のGLP-1受容体作動薬はgastric emptying に影響しないが、中枢に直接作用し食欲を抑制することにより体重を減少させる。

一方、短時間作用型のGLP-1受容体作動薬はgastric emptying を減少させ、食事摂取量を減らすことにより体重を減少させる。

1. Secher A, Jelsing J, Baquero AF, Hecksher-Sørensen J, Cowley MA, Dalbøge LS, Hansen G, Grove KL, Pyke C, Raun K, Schäffer L, Tang-Christensen M, Verma S, Witgen BM, Vrang N, Bjerre Knudsen L. The arcuate nucleus mediates GLP-1 receptor agonist liraglutide-dependent weight loss. J Clin Invest. 2014 Oct;124(10):4473-88.

L細胞のglucose sensing とGLP-1分泌

L細胞は、β細胞と同様の分泌機構を持つが、SGLT1を介したグルコース取り込みがGLP-1分泌量を決めている。
 
SGLT1を介したグルコース取り込みとGLP-1分泌
ラット腸管近位部のみ残して切除したモデルで、腸管のグルコース濃度が高いほどGLP-1分泌は多く、血管内グルコース濃度が高くても効果がない。
 
腸管側にナトリウムなければグルコースによるGLP-1分泌は起こらない。
αMPGは non-metabolized sugar で、SGLUT1の基質となりGLP-1分泌を促進する。
SGLT-1阻害薬は、αMPGとグルコースの効果を棄却する。
 
GLUT2によるグルコースの取り込み
GLUT2阻害薬は、グルコースとα-MGPのGLP-1分泌を抑制した。
管腔側のGLUT2を介して取り込まれたグルコースもGLP-1分泌に関与している。
GLUT2による取り込みはelectrical neutral 
高血糖はSGLT1とGLUT2の発現増加をもたらし、GLUT2の発現増加にはSGLT1が必須。3)
 
KATP channelを介したGLP-1分泌の修飾
VDCC阻害薬ニフェジピン、KATP channel-opener、Diazoxideによるhyperpolarization によりGLP-1分泌は抑制される。50 mM KClは、GLP-1分泌を促進し、ニフェジピンの効果を棄却する。
KATP channelは、L細胞のelectrical toneを制御し、GLP-1分泌反応をmodulateしている。
 
スルフォニルウレアは、ラット腸管モデルでGLP-1を分泌するが、ヒトで、治療域のスルフォニルウレアがGLP-1分泌を促進することはない。
その理由としては、
① SGLT1を介するGLP-1分泌刺激は短時間で起こる。スルフォニルウレアの効果は食事に対するGLP-1のビークがおさまってからとなる。
② L細胞に比べ、β細胞の方がはるかにKir6.2、SUR1の発現が多いため。
があげられる。
 
GLP-1分泌と代謝シグナル
グルコース代謝産物は、ATP 産生、KATP channel 閉鎖を修飾している可能性がある。
代謝を受けないαMGPに比べ、同じ濃度のグルコースの方が、GLP-1分泌が多い。
 
β細胞は、グルコキナーゼを用いて、グルコース濃度とmetabolic rate をリンクさせている。
L細胞でグルコキナーゼが発現しているが、グルコキナーゼ遺伝子異常であるMODY2で、GLP-1分泌は低下しない。
 
Sweet taste receptor GLP-1分泌
腸管L細胞のグルコース感知は、sweet taste receptor とSGLT1が想定されていた。
ラットの腸管を用いたモデルでは、人工甘味料でGLP-1分泌は惹起されなかった。
Sweet taste receptor がafferent vagal nerve を介してGLP-1分泌を促進する可能性もある。
 
1. Kuhre RE, Frost CR, Svendsen B, Holst JJ Molecular Mechanisms of Glucose-Stimulated GLP-1 Secretion From Perfused Rat Small Intestine Diabetes. 2015 Feb;64(2):370-82. 

 
2. Gribble FM An Absorbing Sense of Sweetness Diabetes. 2015 Feb;64(2):338-40. 

3. Gorboulev V. et al. Na(+)-D-glucose cotransporter SGLT1 is pivotal for intestinal glucose absorption and glucose-dependent incretin secretion Diabetes. 2012 Jan;61(1):187-96. 


プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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