低血糖に対する経鼻経鼻吸入グルカゴンは有効

1型糖尿病72人、インスリンで導入した低血糖に対して、グルカゴンの筋肉注射1mgあるいは経鼻吸入3mgで比較

血糖値が70 mg/dl を超えるか、底値より20 mg/dl 上昇を低血糖からの回復とする。

経鼻吸入では1例を除き、筋肉注射では全例が低血糖から回復。
低血糖からの回復時間は、経鼻吸入16分、筋肉注射13分、経鼻吸入で回復時間が有意に遅い。

両剤とも投与5分で薬理学的な濃度に到達、血糖上昇カーブは筋肉注射と経鼻吸入で同様。

グルカゴン注射の溶解など準備時間が必要。臨床上、針のない経鼻吸入薬が好まれる。
グルカゴン投与後の吐き気や嘔吐は、消化管平滑筋の弛緩の結果であるとことがよく知られている。

経鼻吸入のグルカゴン投与はインスリンによる1型糖尿病の低血糖で非常に効果的である。

Rickels MR et al. Intranasal Glucagon for Treatment of Insulin-Induced Hypoglycemia in Adults With Type 1 Diabetes: A Randomized Crossover Noninferiority Study Diabetes Care. 2015 Dec 17. pii: dc151498. [Epub ahead of print]

 

食物線維と腸内細菌 腸内細菌プレボテラ属 (Prevotella) は、食物繊維摂取後の血糖値改善に関与する

 腸内細菌プレボテラ属 (Prevotella) は、食物繊維摂取後の血糖値改善に関与する

空腹時血糖110mg/dl 未満の39人(男性6人女性33人)
食物繊維が豊富なパン (barely kernel-based bread, BKB) を3日間摂取した後、朝食後の血糖値が改善した群 (Responder) では、腸内のプレボテラ属(Prevotella) /バクテロイデス属比が上昇している。
プレボテラ属とバクテロイデス属は同じNiche に存在すると想定される。

Diet fiber がプレボテラ属のcolonize に重要

Responder の便を移植した無菌マウスでは耐糖能が改善、プレボテラ属が増加、肝臓でグリコーゲン含有量が増加した。

Kovatcheva-Datchary P et al. Dietary Fiber-Induced Improvement in Glucose Metabolism Is Associated with Increased Abundance of Prevotella Cell Metab. 2015 Nov 6. pii: S1550-4131(15)00517-3. doi: 10.1016/j.cmet.2015.10.001. [Epub ahead of print]

メトフォルミンと腸内細菌

2型糖尿病の腸内細菌は酪酸産生群が減少している。1, 2)

メトフォルミン投与後2型糖尿病患者の便では、酪酸、プロピオン酸の代謝産物が増加している。
これらの短鎖脂肪酸は、マウスで腸管内糖新生のトリガーとなることが報告されている。
腸管内糖新生の増加は、肝糖産生低下、食欲低下、体重低下作用があり、血糖値に好影響となる。3)

メトフォルミンは血糖低下効果のある短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌を増加させる。3) 

他の糖尿病薬では、腸内細菌の変化を示す結果は認められなかった。4)

メトフォルミンは2型糖尿病の腸内細菌異常 dysbiosis をシフトさせる。

1. Qin, J. et al. A metagenome-wide association study of gut microbiota in type 2 diabetes. Nature 490, 55–60 (2012).

2.Karlsson FH et al. Gut metagenome in European women with normal, impaired and diabetic glucose control. Nature. 2013 Jun 6;498(7452):99-103. doi: 10.1038/nature12198. Epub 2013 May 29.

3. Forslund K et al. Disentangling type 2 diabetes and metformin treatment signatures in the human gut microbiota. Nature. 2015 Dec 2. doi: 10.1038/nature15766. [Epub ahead of print]

SPRINT試験、血圧120mmHg 未満の管理は140 mmHg 未満に比べ致死的、非致死的心血管イベント、全死亡が少ない

心血管イベントリスクが高く糖尿病がない場合、血圧120mmHg 未満の管理は140 mmHg 未満に比べ致死的、非致死的心血管イベント、全死亡が少ない。

SPRINT試験の概要
年齢50歳以上、血圧130mmHg 以上、以下の心血管イベントリスクを一つ以上持ち糖尿病、脳卒中既往のない9361人
・CKD (eGFR 20-60 ml/min/173m2)
・フラミンガムリスクスコアで10年間の心血管病リスク15%以上
・75歳以上

収縮期血圧120 mmHg未満あるいは140 mmHg未満の管理に振り分け。プライマリーアウトカムは心筋梗塞、他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管死とした。
1年目の血圧121.4 mmHg vs. 136.2 mmHg 、120 mmHg未満管理群でハザード比0.75となり3.26年で中止となった。120 mg未満管理群でacute kidney injury、acute kidney failure が多い。
糖尿病が除外されたため、スタディ全体で、致死性、非致死性心血管イベント率は低い。

ACCORDとSPRINTの比較
・ACCORDは糖尿病患者のみ、SPRINTは糖尿病を除外
・SPRINTは規模が大きく高齢者が多い。 参加者4733 人vs. 9361人、年齢 62 vs. 68 SPRINTでは参加者の28%が75歳以上
・ACCORD試験では、血圧120と140mmHg未満を比較、有意差はつかないが複合心血管アウトカムの12%のリスク低下が示され、95%信頼区間では27%リスク低下の可能性が示されている。この結果はSPRINTと一致する。
・ACCORD試験の二次解析で、血糖値標準療法の血圧140mmHg 未満群に比べ、血圧120 mmHg 未満群は、26%の複合心血管アウトカムの減少を示し、この結果は血糖値、脂質管理とは独立していた。

The ACCORD trial showed a (nonsignificant) 12% lower risk of its primary composite cardiovascular outcome, with a 95% confidence interval that included the possibility of a 27% lower risk, which is consistent with the cardiovascular benefit observed in SPRINT.

・収縮期血圧の低下が心血管に与えるベネフィットが、糖尿病の有無で変わらないと思われるが、その点はまだ明らかにできていない。

SPRINT Research Group A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control. N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2103-16. doi: 10.1056/NEJMoa1511939. Epub 2015 Nov 9.


 

Virginia 大学の人工膵臓、2ヶ月間、日常生活で使用、target range に入る時間が長い

オランダ、フランス、イタリアのグループから、人工膵臓 (AP) あるいはSensor augmented pump (SAP) を夜8時から朝8時にかけて2ヶ月間装着したクロスオーバーランダマイズドトライアルの報告

人工膵臓はVirginia 大学が開発した the Diabetes Assistant (DiAs) を使用し、血糖値119 mg/dlとなるように設定している。
APでは、血糖値70-180 mg/dl に入った時間が長く(66.7% vs. 58.1%)、高血糖(>180mg/dl)、低血糖 (<70 mg/dl) の時間が短い。
平均A1cはAP期で0.3% 減少 コントロール期 0.2% 減少 p=0.047

32人中 23人がより長期のAP使用を望んだ。
23 (74%) of 31 patients who responded fully agreed with the statement "I would want to use the AP for a prolonged period of time".

デバイス間のワイアレス接続不良で、AP期間のうち2.6%でAPが機能していなかった。

Kropff J et al. 2 month evening and night closed-loop glucose control in patients with type 1 diabetes under free-living conditions: a randomised crossover trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Dec;3(12):939-947. doi: 10.1016/S2213-8587(15)00335-6. Epub 2015 Sep 30.

 
プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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