1型糖尿病はβ細胞特異的な疾患なのか? 1型糖尿病のレビュー

 β細胞が特異的に自己免疫の傷害をうけるのではない。Pancreatic immune attack is not β-cell specific.
1型糖尿病の膵臓で、外分泌腺のatrophyが認められ、外分泌の抗原に対する自己抗体が明らかになっている。 (carbonic anhydrase II, lactoferrin, bile salt-dependent kinase, pancreatic cytokeratin)

insulitis は universal feature ではない
・1/3の患者にはinsulitis を認めないという報告がある。
・insulitis の定義は、最低3個の膵島に、15以上のCD45+ 細胞が浸潤していることと定義された。定量的には、insulitis は非常に少ない。2)
・糖尿病発症時、3タイプの膵島 (insulin-deficient islet, inflamed islet, normal islet) がさまざまな割合で混在している。

1型糖尿病は単一の疾患なのか?  疾患の多様性について
213例のメタアナリシスの結果、14歳以下、1ヶ月未満の経過で発症した場合、73%にinsulitis を認め、15-40歳では、同じ criteriaで、29% にinsulitisを認める。15歳以上では、14歳以下に比べ2倍のβ細胞があると報告がある。β細胞破壊の激しさ (aggressiveness) は年齢と関係する可能性がある。3)
成人では、HLA susceptibility を有する割合が低下する。

Battaglia M, Atkinson MA The streetlight effect in type 1 diabetes. Diabetes. 2015 Apr;64(4):1081-90. doi: 10.2337/db14-1208.

Campbell-Thompson ML, Atkinson MA, Butler AE, et al. The diagnosis of insulitis in human type 1 diabetes. Diabetologia 2013;56:2541–2543

In’t Veld P. Insulitis in human type 1 diabetes: The quest for an elusive lesion. Islets 2011;3:131–138


ピオグリタゾンは、糖尿病がなくインスリン抵抗性のある患者で脳卒中、心筋梗塞の発症を抑制する

糖尿病がなく、HOMA-IR 3 以上、脳卒中、TIAを発症した後にピオグリタゾンを投与
プライマリーアウトカムは致死性、非致死性の脳卒中、心筋梗塞

4.8年後、致死性、非致死性の脳卒中、心筋梗塞のリスクはピオグリタゾンで低下  (HR 0.76)

体重はプラセボに比べ 4.5 kg 増加、浮腫、骨折による外科手術や入院は増加する。

糖尿病発症    リスク低下 HR 0.48
全死亡率     有意差なし
心不全による入院 有意差なし、(心不全のリスクのある患者はリクルート時に除外している)

ピオグリタゾンは、PPAR-γを活性化し、PPAR-αをpartial activationする。

Pioglitazone after Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack

 

mini-stomach に発現させたインスリン産生細胞は、糖尿病マウスの血糖値を改善させる。

胃前庭部の細胞は、遺伝子操作により生後に膵β細胞へreprograming が可能である。
体外で三次元培養したmini-stomach を大網に移植したマウスでは、糖尿病を発症後、mini-stomach でインスリン産生細胞を誘導させることにより血糖値が改善する。
糖尿病の細胞治療に、胃前庭部細胞が有用であることを示した論文です。

簡約
Neurogenin3、PDX-1、MafAの発現をdoxycyclineにより誘導する遺伝子改変マウスでは、胃前庭部、十二指腸、小腸にインスリン陽性細胞を認める。胃前庭部の細胞は、β細胞に類似した遺伝子発現をしめす。
胃前庭部のインスリン陽性細胞では、グリベンクラミド、Exemdin-4によりインスリンが分泌されるが、十二指腸のインスリン細胞では分泌されない。

遺伝子改変マウスの gastric gland をマトリジェルで三次元培養し、mini-stomach を作成した。
移植のため免疫を低下させたマウスの大網に、min-stomach を移植後に、doxycycline でNeurogenin3、PDX-1、MafAの誘導を行うとインスリン産生細胞が出現する。

移植したマウスにSTZ を投与し糖尿病を誘導すると、血糖値は500mg/dlへ上昇、doxycycline でインスリン産生細胞を誘導することにより、血糖値は200~300 mg/dl へ改善し、移植後は血糖値500mg/dlへ上昇する。

腸管特異的なmaster geneであるCdx2が、胃には発現しないためインスリン細胞への転換が十二指腸より容易であると推察される。

Reprogrammed Stomach Tissue as a Renewable Source of Functional β Cells for Blood Glucose Regulation

Chen YJ et al. De novo formation of insulin-producing “neo-β cell islets" from intestinal crypts. Cell Rep. 2014 Mar 27;6(6):1046-58. doi: 10.1016/j.celrep.2014.02.013. Epub 2014 Mar 6.

 

開発中の人工膵臓 (artificial pancreas) の情報です。

 開発中の人工膵臓 (artificial pancreas) の情報です。 Healthline の記事を読むと、2020年頃までには、インスリンポンプの進化型として人工膵臓がアメリカで発売されるのではないかと思われます。

TypeZero
バージニア大学のシステムで、フランス、イタリア、オランダのグループと共に、240人、自宅で6ヶ月間使用するスタディ(international closed loop trial (IDCL)) をおこなっている。 結果は2017年に投稿される。このトライアルは2.5年続き、当初6ヶ月に集められたデータは、FADへの申請に用いられる。

Bigfoot Brain
Bigfoot社は、糖尿病の子供をもつ父親4人が創設した。現在35人が雇用されている。
Bigfoot Brainはインスリンカートリッジと注入ラインを内包し、ボタン、スクリーンはない。全てスマートフォンのアプリで操作する。
2016年4-6月期にユーザーリサーチを開始、2017年、FDAへ認可申請、2018年の発売を目指している。

iLet
Dr Edward Damiano とボストン大学のグループが開発、インスリンとグルカゴンのdual chamber を持ち1つの針から注入する。 より小型のデバイスを使って8時間のスタディを開始する予定。
FDAはまずインスリン単独のスタディ結果を求めている。2017年に重要なスタディが組まれている。
まず、インスリン単独のiLet の発売を目指している。
Dr Edward Damianoも糖尿病の子供をもつ父親である。

Healthline の記事

Closed-Loop Diabetes Tech Update: iLET, Bigfoot, TypeZero & More!

iLet

iLet はインスリンとグルカゴンのdual-chamber

移植時に線維化の起こりにくいmicrocapsule の開発

ヒトES細胞から誘導されたβ細胞を移植する際に用いられる、線維化が起こりにくい microcapsule が、ハーバード大とMITのグループにより開発された。

アルギン酸の誘導体でつくられたmicrocapsule は、異物に対する免疫反応からβ細胞を保護し、移植後、カプセルの線維化が起こりにくい。
1.5mm 径の microcapsuleに、human embryonic stem cell から作成した、グルコース応答性のあるβ細胞(SC-β) 250 クラスターをいれ、STZで誘導した1型糖尿病モデルマウスの腹腔内に移植した。250 クラスターは~106のβ細胞を含む。
移植されたβ細胞は、174日後に摘出するまで血糖値を正常化した。
移植150日後の糖負荷試験では、移植マウスで、healthy mouse と同様な血糖パターンが示された。

1. Vegas AJ et al. Long-term glycemic control using polymer-encapsulated human stem cell–derived beta cells in immune-competent mice Nat Med. 2016 Jan 25. doi: 10.1038/nm.4030. [Epub ahead of print]

2. Vegas AJ et al. Combinatorial hydrogel library enables identification of materials that mitigate the foreign body response in primates Nat Biotechnol. 2016 Jan 25. doi: 10.1038/nbt.3462. [Epub ahead of print]

No more insulin injections? | MIT News
Encapsulated pancreatic cells offer possible new diabetes treatment.

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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