インスリンとグルカゴンの Bihormonal pump、6-11歳の使用結果

 1型糖尿病、インスリンとグルカゴンを使ったポンプ5日間、6-11歳の使用成績、12歳以上と大人での使用成績はすでに公開されている。1)
グルカゴンも使うBihormonal pumpは、インスリン単独ポンプと比べ、5日間の使用では平均血糖値(mean sensor-measured glucose) が低く、A1C はより低くなるはずというコメントでした。2)
まず、メトドロニクス社のhybrid insulin-only system が、アメリカで2017年4月までには発売となる見込みです。2)

まとめ
ボストンのグループ 、19人、6-11歳の子供、平均年齢 9.8歳、
糖尿病キャンプで、5日間、インスリンとグルカゴンを使用した Bionic pancreas とConventional insulin pump therapy (control)の比較、Open-label crossover study

Bionic pancreas で平均血糖値が低い (137 mg/dl vs. 167.4 mg/dl)
血糖値 59 mg/dl以下の時間が短い。
Bionic pancreasは、夜間により効果を発揮し、コントロールに比べ、高血糖、低血糖となる時間が少なく、平均血糖値の差が開く。

Bionic pancreas の使い方
必要なのは身長、体重のみ(body massを計算)
食事のタイプ(朝食、昼食、夕食)、食事のサイズ (通常量 typicalか、多め more than usual、少なめ less than usual、ひとくち small bite) を入力するだけでよく、カーボカウントは必要としない。

1日2回(朝食前、夕食前)にCGMシステムのcalibration を行う
グルカゴンリザーバーは毎日交換する必要がある

insulin-only closed loop systemを5日間使用した4つの試験の設定血糖値 (mean sensor-measured glucose) は154 mg/dlで、estimated A1Cは7.0%、3ヶ月間使用した試験結果では、A1C 7.3% であった。3)

インスリンとグルカゴンの closed-loop system では、大人で平均血糖値133 mg/dl、estimated A1C 6.3%、12歳以上の青少年で平均血糖値142 mg/dl、estimated A1C 6.6%、今回の6-11歳で、平均血糖値137 mg/dl、estimated A1C 6.4%となる。1, 3, 4)

1  Russell SJ et al. Day and night glycaemic control with a bionic pancreas versus conventional insulin pump therapy in preadolescent children with type 1 diabetes: a randomised crossover trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Feb 2. pii: S2213-8587(15)00489-1. 

2 Buckingham B, Ly T. Closed-loop control in type 1 diabetes. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Mar;4(3):191-3. doi: 10.1016/S2213-8587(16)00015-2. Epub 2016 Feb 3.

3 Thabit H et al. Home Use of an Artificial Beta Cell in Type 1 Diabetes. N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2129-40. doi: 10.1056/NEJMoa1509351. Epub 2015 Sep 17.
インスリン単独の人工膵臓 (closed-loop)と sensor-augmented pump therapyの比較
大人33人、 日中と夜間 (day and night)、青少年25人、夜間のみ (overnight)
合計58人、12週間のクロスオーバーステディ

4 Russell SJ, El-Khatib FH, Sinha M, Magyar KL, McKeon K, Goergen LG, Balliro C, Hillard MA, Nathan DM, Damiano ER. Outpatient glycemic control with a bionic pancreas in type 1 diabetes. N Engl J Med. 2014 Jul 24;371(4):313-25. doi: 10.1056/NEJMoa1314474. Epub 2014 Jun 15.
院外で5日間のインスリンとグルカゴンのポンプと自分の(従来の)インスリンポンプの比較試験
大人(21歳以上)20人、青少年(12歳~21歳)32人
2日目から5日目までのデータで、平均血糖133±13 vs. 159±30 mg
血糖値70 mg/dl 未満の期間 4.1% vs.7.3% であり、人工膵臓で良好な結果であった。

膵島炎 はインスリンを産生している膵島に認める

移植ドナーの解析、膵島炎 (insulitis) の頻度は、1型糖尿病罹病歴と逆相関する。
糖尿病発症後12年までは高率に膵島炎を認めた。
膵島炎 はインスリンを産生している膵島に認める。

まとめ
1型糖尿病の臓器移植ドナー80症例で、膵島炎は18症例(23%)に認められる。
2つの膵島自己抗体をもち糖尿病を発症していない18症例で、膵島炎は2症例(11%)に認められる。

膵島炎の頻度(総膵島数に対する)は、糖尿病罹病歴と逆相関し、発症年齢には関係しない。
膵島炎の頻度は今回の検討では0.3%から10.6%
0.3%の症例は12歳、罹病歴9年、10.6%の症例は13歳、罹病歴0年
1型糖尿病発症1年未満では4/4 (100%) に膵島炎を認め、1年以上では14/75 (19%) となる。
罹病歴12年までは高率に膵島炎を認める。18/40 (45%)

膵島炎 はインスリンを産生している膵島に認める。
(islet producing insulinで 33%、insulin negative islet (glucagonが染色される) で 2%)

膵島内のCD45+、CD3+、CD20+、T-cell subset 細胞数は、膵島炎の頻度と相関する。

膵島炎がある 1型糖尿病のドナー方が、膵島炎のないドナーより β-cell mass が多い。
α-cell area は、1型糖尿病の有無に関係しない。

1型糖尿病がない場合、膵島自己抗体の有無で、β-cell mass は同じ

CD3+細胞が6個以上で膵島炎とする
膵島は① insulin+, CD3- ② insulin+, CD3+ ③insulin-, CD3- ④ insulin-, CD3+ のsubset に分類される。

Campbell-Thompson et al. Insulitis and β-Cell Mass in the Natural History of Type 1 Diabetes. Diabetes. 2016 Mar;65(3):719-31. doi: 10.2337/db15-0779. Epub 2015 Nov 18.

Roep BO. Insulitis Revisited. Diabetes. 2016 Mar;65(3):545-7. doi: 10.2337/dbi15-0040.

 

1型糖尿病とGLP-1受容体作動薬

肥満があり、コントロール不良な1型糖尿病患者にリラグルチドを投与した。 (開始時A1C 8.7% BMI 30)
24週間後、プラセボに比べ、A1C変化は同等
低血糖は少なく、bolus insulinは少なく済み (-5.8単位)、体重は減少 (-6.8kg)する。
心拍数は増加、グルカゴン、GLP-1値は変わらず。

Dejgaard TF et al. Efficacy and safety of liraglutide for overweight adult patients with type 1 diabetes and insufficient glycaemic control (Lira-1): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Mar;4(3):221-32.

膵全摘患者における腸管グルカゴンの分泌

膵全摘後も糖負荷試験で、腸管よりグルカゴンが分泌され、内因性グルコース産生が増加する。
腸管のグルカゴンが、膵摘出後の食後高血糖の原因となる。

まとめ
膵全摘を行った10人と正常耐糖能10人で、糖負荷試験、正常血糖グルコース注入 (isoglycemic intravenous glucose infusion, IIGI) を行った。新規サンドイッチELISA法、High-performance liquid chromatography (HPLC) 、mass spectrometry–based proteomics でグルカゴンを測定した。
膵全摘症例で、インスリン、PPは分泌されないが、グルカゴンが分泌される。
IIGIで、グルカゴン分泌は認められず腸管特有の現象 (gut-dependent phenomenon)
内因性グルコース産生は増加しており、腸管由来グルカゴンが、膵切除後患者の食後高血糖に関与している。

グルカゴン受容体の変異のあるヒトやマウスで、高グルカゴン血症とα-cell hyperplasia が認められる
膵切除後患者では空腹時のGLP-1、oxyntomodulin が増加している。
膵切除によるグルカゴンシグナル低下に反応して腸管で プログルカゴン発現細胞が増加している可能性もある。
L細胞が腸管グルカゴン産生の候補で、L細胞特異的にPC2の発現が上昇している可能性があるかもしれない。

Lund A et al. Evidence of Extrapancreatic Glucagon Secretion in Man. Diabetes. 2016 Mar;65(3):585-97

Zhou C, Dhall D, Nissen NN, Chen C-R, Yu R. Homozygous P86S mutation of the human glucagon receptor is associated with hyperglucagonemia, alpha cell hyperplasia, and islet cell tumor. Pancreas 2009;38:941–946
60歳女性、膵腫瘍、高グルカゴン血症あり、膵腫瘍切除後も高グルカゴン血症が持続した。グルカゴン受容体のhomozygous missense mutation が認められた。

Gelling RW, Du XQ, Dichmann DS, et al. Lower blood glucose, hyper- glucagonemia, and pancreatic alpha cell hyperplasia in glucagon receptor knockout mice. Proc Natl Acad Sci USA 2003;100:1438–1443

Sandoval DA, D’Alessio DA Physiology of proglucagon peptides: role of glucagon and GLP-1 in health and disease. Physiol Rev 2015;95:513–548


プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
102位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
12位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム