抗PD-1抗体による1型糖尿病

Programmed cell death-1 (PD-1)は、T細胞の negative regulator で、specific ligand (PD-L1)と結合する。一部のがん細胞はPD-L1を発現し、T細胞の攻撃を逃れている。

抗PD-1/PD-L1抗体は、がん治療に用いられる。ヒト型抗ヒトPD-1モノク ローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ®)を2014年7月4日から2016年3月31日までに使用した推定4888名中12名 (0.25%) が、1型糖尿病を発症ししている。

Iwai Y, et al. Involvement of PD-L1 on tumor cells in the escape from host immune system and tumor immunotherapy by PD-L1 blockade. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002.

免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関する Recommendation (日本糖尿病学会)

Hughes J et al. Precipitation of autoimmune diabetes with anti-PD-1 immunotherapy.Diabetes Care. 2015 Apr;38(4):e55-7.
抗PD-1抗体使用後、1型糖尿病を発症した5例の報告、使用後1週間から5ヶ月で発症 、血中Cペプチドは、非常に低いか感度以下、5例中3例がGAD抗体陽性、2例が自己免疫性甲状腺炎

Melati M. et al. Anti–PD-1 and Anti–PDL-1 Monoclonal Antibodies Causing Type 1 Diabetes. Diabetes Care 2015 Sep; 38(9): e137-e138.
1型糖尿病を発症した2例の報告

Gaudy C. et al. Anti-PD1 Pembrolizumab Can Induce Exceptional Fulminant Type 1 Diabetes. Diabetes Care. 2015 Nov;38(11):e182-3.
劇症`1型糖尿病を発症した1例報告

1型糖尿病と Bystander Lymphocyte Activation

Bystander lymphocyte activation では、抗原提示細胞にMHC molecule とpeptide antigen が提示されずにT細胞が活性化される。 この反応はpre-existing autoreactive cell に依存している。

ウイルス感染は、樹状細胞の表面や、endosomeに存在するToll-like receptor のような pattern recognition receptor (PRR) を介して、樹状細胞から Type 1 IFN などsoluble cell-stimulating factor を分泌させる。soluble cell-stimulating factor は、autoreactive T lymphocytes など、bystander lymphocytes を活性化する。

さらに樹状細胞で、MHC class I、MHC class II 、CD80/CD86 の発現が上昇する。その結果、B細胞が活性化され、CD4+ 、CD8+ T細胞に対して、autoreactive antigen presentation が増加し、autoreactive T cells の活性化と増殖を起こす

NODマウスでは、加齢とともに膵リンパ節に autoreactive cell が蓄積する。
ヒト1型糖尿病の膵リンパ節で、autoreactive T cell のプライミングと増殖(expansion) が明らかにされている
bystander lymphocyte activationは、β細胞障害の開始 initiationというより進行 progression に関与し、膵でのウイルス存在が明らかでない1型糖尿病の病態を説明しうる。

Pane JA, Coulson BS (2015) Lessons from the mouse: potential contribution of bystander lymphocyte activation by viruses to human type 1 diabetes. Diabetologia 58:1149–1159
分かりやすい図があります。


1型糖尿病の膵外分泌腺所見 膵管閉塞を伴う膵管上皮過形成/異形成

緩徐進行型1型糖尿病 (SPIDDM) の膵重量は、急性発症1型糖尿病に比べ有意に低い

SPIDDMでは11例すべてに、外分泌腺単核球の浸潤、線維化、lobular atrophy を伴った広汎な膵炎像を認める。

ムチンによる膵管閉塞像や、膵管の過形成/異型性 (ductal epithelial hyperplasia/dysplasia, DEHD) が、SPIDDMでは、1型糖尿病、2型糖尿病に比べ高率に認められる。

Kobayashi T. et al. Pancreatic ductal hyperplasia/dysplasia with obstructive chronic pancreatitis: an association with reduced pancreatic weight in type 1 diabetes. Diabetologia. 2016 Apr;59(4):865-7. doi: 10.1007/s00125-016-3867-x. Epub 2016 Jan 28.
SPIDDM 11例、急性発症1型糖尿病 10例、2型糖尿病 15例 、糖尿病のない19例の剖検データ

1型糖尿病の膵重量 (nPOD の結果)

糖尿病がないコントロールの膵重量は、大人になるまで体重と相関する。
RPW (膵重量/体重) は、1型糖尿病で有意に低いが、2型糖尿病でコントロールに比べ有意差なし。

興味深いことに、1型糖尿病、2型糖尿病ともに、RPW と罹病歴は相関しない。
1型糖尿病、2型糖尿病ともにRPW とCペプチド値は相関しない。

糖尿病がない場合、膵重量とCペプチドは相関する。

Campbell-Thompson ML, Kaddis JS, Wasserfall C et al (2016) The influence of type 1 diabetes on pancreatic weight. Diabetologia 59:217–221
JDRF Network for Pancreatic Organ donors with Diabetes (nPOD) program の結果

1型糖尿病患者の皮膚線維芽細胞から作成したインスリン産生細胞

1型糖尿病患者の皮膚からiPS細胞を誘導しさらにインスリン分泌細胞を作成した初めての報告。糖尿病マウスの腎皮膜下への移植で、血糖値を5か月以上にわたり、200 mg/dl 未満に改善させた。
1型糖尿病患者由来のインスリン分泌細胞は、非糖尿病者由来の細胞と同等のインスリン分泌能を示す。生体外ではサイトカインに対しての障害性も同等であった。

まとめ
1型糖尿病患者あるいは非糖尿病患者の皮膚線維芽細胞から、human induced pluripotent stem cells (hiPSCs) を誘導する。
さらに約27から34日かけてインスリン産生細胞 (stem cell-derived β (SC-β) cells)を作成する。
1型糖尿病患者由来インスリン産生細胞 (T1D-SC-β cells)と非糖尿病患者由来インスリン産生細胞 (ND-SC-β cell)は、20mM (360mg/dl) グルコース刺激で、2 mM (36 mg/dl) グルコース刺激に比べ、それぞれ1.9、2.2倍のインスリンを分泌する。
これらの細胞は、tolbutamide、liragrutide、glucokinase activator によりインスリン分泌が約2倍になる。

アロキサン alloxan はマウスのβ細胞を傷害するがヒトのβ細胞を傷害しない。
T1D-SC-β cells あるいは ND-SC-β cell を immunocompromised mice の腎皮膜下に移植し、12-16週後にアロキサン注射を行った。マウス由来のCペプチドは検知できなくなり、移植を行わないマウスは高血糖で、29日後までに死亡する。
T1D-SC-β cells あるいは ND-SC-β cell を移植したマウスは、空腹時血糖値は200 mg/dlを維持し、移植細胞は5ヶ月以上機能することが示された。

サイトカインストレスカクテル cytokine stress cocktail (IL-β、TNF-α、IFN-γ) を24時間処置した後のCペプチド+、NKx6.1+細胞数は、T1D-SC-β cellsとND-SC-β cellsで有意差を認めない。
Alk inhibitor は、サイトカインストレスからSC-β cellsを保護する。1, 2)

1型糖尿病のドナー3例から細胞を作成している。1型糖尿病のpopulation を全て反映している訳ではなく、個体差の検討が必要。

1. Milan JR. et al. Generation of stem cell-derived β-cells from patients with type 1 diabetes.Nat Commun. 2016 May 10;7:11463. doi: 10.1038/ncomms11463.

2. Blum, B. et al. Reversal of beta cell de-differentiation by a small molecule inhibitor of the TGFbeta pathway. eLife 3, e02809 (2014).


プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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