グルカゴン受容体拮抗薬 LY240902 のphase 2 スタディ

 グルカゴン受容体拮抗薬 LY2409021 Phase 2a 、2b studyの結果、LY2409021は、プラセボに比べA1Cを低下させた。基準値に対し3倍以上の alanine aminotransferase (ALT) 値上昇が、それぞれ 4/85、8 /191 に認められた。

グルカゴン受容体拮抗薬のまとめ
グルカゴン受容体欠損マウスでは、血中グルカゴン、GLP-1、FGF21が上昇することが知られている。LY240902投与で、血中グルカゴンとGLP-1の上昇が認められた。グルカゴン受容体ブロックに対するフィードバックとして、α細胞でグルカゴンとGLP-1が産生されていると推測され、グルカゴンのクリアランスが低下している可能性もある。今回のスタディで、空腹時活性型GLP-1は増加していないため、血糖降下作用にGLP-1は関与していない。LY2409021投与中止により、グルカゴン値は正常化する。

LY2409021により基準値3倍を超えるトランスアミナーゼの上昇を認めた患者では、ビリルビン、ALPは正常で、FDAの基準範囲内。(FDAのガイドラインで、 liver injury は、ビリルビン、ALPで基準値の2倍以上の上昇を伴った AST/ALTで基準値の3倍以上とされている。)

glycogen storage disease では、トランスアミナーゼの上昇が認められる。
LY2409021では、げっ歯類で肝臓のグリコーゲン量は変化なし。
LY2409021投与12週間で、MRIにより、肝臓の脂肪蓄積を評価するスタディが始まっている。

今回の治験で、重症低血糖は認められない。グルカゴン受容体拮抗薬中の低血糖は、グルカゴン投与により改善する。

1型糖尿病に対するグルカゴン受容体拮抗薬投与はインスリン必要量を減らすという報告がある。

Clinical Trials, Triumphs, and Tribulations of Glucagon Receptor Antagonists. Diabetes Care 2016 Jul; 39(7): 1075-1077 

Evaluation of Efficacy and Safety of the Glucagon Receptor Antagonist LY2409021 in Patients With Type 2 Diabetes: 12- and 24-Week Phase 2 Studies. Diabetes Care 2016 Jul; 39(7): 1241-1249. 

Omar BA et al. Fibroblast Growth Factor 21 (FGF21) and Glucagon-Like Peptide 1 Contribute to Diabetes Resistance in Glucagon Receptor–Deficient Mice Diabetes. 2014 Jan;63(1):101-10. doi: 10.2337/db13-0710. Epub 2013 Sep 23.

グルカゴンの生理作用 (2)

 ・インスリン、GABA、レプチン (leptin) は、グルカゴン分泌を抑制 する。insulin のParacrine 濃度は、2000-4000 μU/ml
・中枢神経系からも制御される。

グルカゴンはグルカゴン受容体を介して細胞内 cAMP濃度を上昇させ、Protein kinase A (PKA) を活性化する。
PKAは、糖新生に重要な glucose-6-phosphate、PEPCK の発現を増加させ、糖新生へ誘導する。
さらに、PKA は、cAMP-Responsive Element Binding Protein (CREBP)、peroxisome proliferator–activated receptor γ coactivator (PGC)1aを活性化する。
Salt-inducible kinase (SIK) 2 はPKAにより活性化される。SIK2 は、CREBP-regulated transcription coactivator 2 (CRTC2) をリン酸化し活性化する。

Pearson MJ, Roger H. Unger RH, Holland WL. Clinical Trials, Triumphs, and Tribulations of Glucagon Receptor Antagonists Diabetes Care 2016 Jul; 39(7): 1075-1077

Maruyama H, Hisatomi A, Orci L, Grodsky GM, Unger RH. Insulin within islets is a physiologic glucagon release inhibitor. J Clin Invest. 1984 Dec;74(6):2296-9.

SGLT2阻害薬とケトン体

 SGLT2阻害薬のDiabetes Care のレビューです。
・血中ケトン体は、エネルギー効率が良い。SGLT2阻害薬により増加したケトン体が心臓や腎臓でエネルギー源として利用されるため、EMPA-REG で、心血管、腎臓保護が示された可能性がある。
・SGLT2阻害薬は、糸球体の hyperfiltration を改善させ、腎臓の酸素消費量を低下させることにより、腎臓を低酸素状態から保護している。

まとめ
消費酸素原子あたりのATP産生量 (P/O ratio) は、グルコースより脂肪酸の方が低い。脂肪酸のエネルギー利用では、グルコースよりも酸素を消費する。糖尿病の心臓では、インスリン作用が低下し脂肪酸酸化が起こりやすく、グルコースに対する脂肪酸エネルギー利用が増加している。
ケトン体は血中濃度が増加した時にエネルギーとして利用される。
3-βhydroxybutyrate (BHOA) とピルビン酸の比較で、消費酸素原子あたりのATP産生量は同等だが、2炭素原子あたりのエネルギー産生量はBHOAの方が多い (243.6 vs. 185.7 kcal)。心筋、腎臓によるケトン体利用は、エネルギー効率が良い。

腎臓での組織当たり酸素消費量は心臓に次いで多い。
糖尿病では、糸球体のHyperfiltration のため、腎酸素消費量が上昇している。SGLT2阻害薬は、糸球体のhyperfiltration を低下させ、酸素消費量を減少させる。
SGLT2阻害薬による腎臓での低酸素状態の改善は、CKDへの移行予防効果があると考えられる。

Mudaliar S, Alloju S, Henry RR. Can a Shift in Fuel Energetics Explain the Beneficial Cardiorenal Outcomes in the EMPA-REG OUTCOME Study? A Unifying Hypothesis Diabetes Care. 2016 Jun 11. pii: dc160542. [Epub ahead of print]

Layton AT, et al. Modeling oxygen consumption in the proximal tubule: effects of NHE and SGLT2 inhibition. Am J Physiol Renal Physiol. 2015 Jun 15;308(12):F1343-57.
“Diabetes increased TNa and QO2 and reduced TNa/QO2 , owing mostly to hyperfiltration. Since SGLT2 inhibition lowers diabetic hyper filtration, the net effect on TNa, QO2 , and Na(+) transport efficiency in the proximal tubule will largely depend on the individual extent to which glomerular filtration rate is lowered."

Layton AT at al. Predicted consequences of diabetes and SGLT inhibition on transport and oxygen consumption along a rat nephron | Renal Physiology Am J Physiol Renal Physiol. 2016 Jun 1;310(11):F1269-83.

エンパグリフロジンの腎保護作用

心血管イベントハイリスクの2型糖尿病患者で、エンパグリフロジンは、プラセボに比べ腎症の進行を遅らせる。

EMPA-REGは、心血管イベントハイリスクの2型糖尿病患者対象としたエンパグリフロジンとプラセボの比較、フォローアップ3.1年。エンパグリフロジン群で、心血管死、心不全による入院、全死亡が有意に少ない。さらに低血糖の頻度が少なく、体重、血圧は低下する。
secondary outcome で、糖尿病性腎症の悪化のハザード比は 0.61、血中クレアチニン値の2倍上昇、Renal replacement therapy のリスク低下は、それぞれ44%、55% であった。

エンパグリフロジンの腎保護作用では、腎血管への直接作用が重要な役割を果たしていると考えられている。
エンパグリフロジンは、遠位尿細管でナトリウムの再吸収を抑制する。その結果、近位の macula densaでナトリウム供給が増え、輸入細動脈の血流が変化し (afferent modulation)、 hyperfiltration が低下する。
Renin-Angiotensin-aldosterone system (RAAS) 阻害薬は、輸出細動脈を拡張し、糸球体内圧を低下させ、腎保護作用を示す。EMPA-REGでは、RASS阻害薬と併用でもエンパグリフロジンが腎保護作用を示した。

一方、糸球体内圧を低下させるにもかかわらずアルブミン尿の頻度を抑制することはできなかった。 (マクロアルブミン尿への進行は抑制)

Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes

リラグルチドがプラセボに比べ心血管死亡を抑制 LEADER試験

リラグルチドとプラセボの比較、対象は心血管病高リスクのある9340人、3.8年のフォローアップ、リラグルチドで心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中が少ない。プライマリーアウトカムのハザード比 0.87  
リラグルチドで、A1C が0.4%低い。

リラグルチドで、macroalbumiuria の発症が少ない。 
網膜症のイベントは有意差がつかないがリラグルチドで多い。

対象者の心血管病の罹患率は72.4%で、EXAMIN、SAVOR-TIMI 53、TECOSに比べ低い。

Mario SP et al. Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):311-22.

Ingelfinger JR, Rosen CJ. Cardiac and Renovascular Complications in Type 2 Diabetes — Is There Hope?
N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):380-2. 

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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