GLP-1(9-36)の生物学的特徴

 GLP-1(9-36) は、GLP-1の主要な代謝産物で、intact bioactive GLP-1よりも血中濃度が高く、現在知られているGLP-1受容体 (canonical GLP-1 receptor) とは親和性が低い。

GLP-1(9-36) は、グルコースによるインスリン分泌増強を起こさないが、インスリン非依存性グルコースクリアランスに関与する。食後血糖をインスリン分泌や gastric emptying と関係なく低下させる。血糖低下作用は、intact GLP-1(7-36)に比べ小さい。

GLP-1 (9 –36) の心保護作用はGLP-1受容体欠損マウスでも認められる。

GLP-1 (9 –36)、GLP-1 (28 –36) はミトコンドリアに存在し、肝糖産生を低下させる。

GLP-1(7-37)、 GLP-1(9-37) 、GLP-1(28-37) は動脈硬化モデルマウスで、プラークへのマクロファージの浸潤を抑制し、プラークを安定化させる。

GLP-1 (9 –36) は心筋梗塞後にマクロファージの浸潤を抑制し、拡張期機能不全を改善させる。

GLP-1(7-36) は、心筋虚血時に心拍出量を増加させるが、GLP-1 (9 –36) は増加させない。

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十二指腸のグルコース濃度がインクレチン作用の強度を規定する

 2型糖尿病男性11人、BMI-matched control10人 (食事療法かメトフォルミン)で小腸への比較

小腸へ 2kcal/min〜4kcal/min グルコース注入は、生理的胃排泄量の範囲内 であり、GLP-1、GIP分泌とインクレチン作用は、2kcal/min に比べ、4kcal/minの方が大きい。

グルカゴンは、BMI-matched control で4kcal/min グルコースにより一度抑制され、注入終了後より上昇する。
2型糖尿病では、4kcal/min グルコースによりグルカゴン抑制は認められない。

経口糖負荷試験のグルカゴン分泌はGLP-1、GIP、GLP-1の影響を受ける。
・GLP-1はグルカゴンを抑制、GIP、GLP-2はグルカゴン分泌を促進する。
・4kcal/min グルコース注入は、腸管由来グルカゴンを刺激するかもしれない。

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母体から胎児へのグルコースの移行は濃度勾配による

 母体から胎児へのグルコースの移行は、胎盤を挟んだ濃度勾配に依存している。母親側の高血糖あるいは胎児側の低めの血糖は、濃度勾配が急になり、胎児へのグルコース流入が増強される。
胎児側では、グルコースからトリアシルグリセロール生成が刺激され、脂肪蓄積が起こる

胎生11週から胎児のインスリン分泌が始まる。
胎児の高インスリン血症を防ぐために、妊娠初期の母体の血糖コントロールが必要となる。
胎児の高インスリン血症により胎児が母体のグルコースを奪うため (fetal glucose steel) 、母親の糖負荷試験の血糖値が低めに出ることがある。

Desoye G, Nolan CJ. The fetal glucose steal: an underappreciated phenomenon in diabetic pregnancy. Diabetologia. 2016 Jun;59(6):1089-94.

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FGF1の脳室内注入は糖尿病マウスの血糖値を長期的に改善させる。

 FGF1の脳室内1回投与は、ob/ob マウスの血糖値を7週間後に200mg/dl未満に改善させ、17週間効果が続いた。
糖尿病寛解と判断し18週間後に試験終了。他の糖尿病モデル動物でもFGF1脳室内投与により糖尿病が寛解した。

FGF1を脳室内投与したマウスの血中乳酸値は増加しており、肝臓で解糖系は亢進している。肝臓のグリコーゲン含量は増加している。
血糖値の改善には、肝臓のほか、骨格筋の糖取り込み上昇によるグルコースクリアランス増加が関与している。

Tanycyte は、神経幹細胞と考えられ、mediobasal hypothalamus に隣接して存在する。
FGF1は、Tanycyte を介して糖尿病状態の神経回路を補充することにより、一回の脳室内投与で糖尿病を寛解させた。

Scarlett JM et al. Central injection of fibroblast growth factor 1 induces sustained remission of diabetic hyperglycemia in rodents. Nat Med. 2016 May 23. doi: 10.1038/nm.4101.

Seeley RJ, Sandoval DA. Targeting the brain as a cure for type 2 diabetes Nat Med. 2016 Jul 7;22(7):709-11. doi: 10.1038/nm.4137.


妊婦に対する人工膵臓の使用

人工膵臓は妊娠中に使用した場合でも、厳格な血糖コントロールが可能で、低血糖も少ない。周産期も同じプログラムで対応できる。

まとめ
1型糖尿病の妊婦16人、人工膵臓 (closed-loop system) とsensor augmented pump を夜間のみ使用の後、終日 4週間使用するクロスオーバースタディ、設定された血糖値に入る時間、平均血糖値、低血糖頻度で、人工膵臓の方が良い結果を示した。
人工膵臓、sensor augmented pump ともに、第三者の助けを必要とするような重症低血糖はない。

スタディ終了後、14人が出産まで終日 の 人工膵臓を使った。(14.6 additional weeks)
出産後のインスリン必要量の低下、胎児の肺の成熟のため母体へのステロイド投与に対しても、プログラムの変更や重症低血糖なく対応できている。良好な血糖コントロールであったが、新生児体重が 90th percentileを超える頻度、新生児低血糖の頻度は高かった。

Stewart ZA et al. Closed-Loop Insulin Delivery during Pregnancy in Women with Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2016 Aug 18;375(7):644-54.
プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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