SGLT2阻害薬の腎保護作用

SGLT2阻害薬は、ナトリウム利尿による糸球体内圧低下、酸素消費量抑制により腎保護作用を示す。

ナトリウム利尿による糸球体内圧低下
SGLT2阻害薬は近位尿細管でナトリウム再吸収を抑制するため、ナトリウム利尿が起こる。尿細管糸球体フィードバックにより、理論上、SGLT2阻害薬により、糸球体輸入動脈抵抗は増加し、糸球体内圧は低下する。

低酸素状態の改善
SGLT1、SGLT2は、基底側膜のNa+/K+-ATPase pumpにより駆動されている。したがって腎臓でのグルコースとナトリウムの再吸収はATPを消費し、SGLT2阻害薬は、腎臓のエネルギー消費量を低下させる。
2型糖尿病の近位尿細管では、グルコースとナトリウムの再吸収が亢進しエネルギー消費量が増加している。

尿細管間質の低酸素により、epithelial mesenchymal transdifferentiation (EMT)、間質の繊維化、細胞外マトリックスの蓄積が生じる。細胞外マトリックスの蓄積は正常構造を破壊する。
SGLT2阻害薬は、腎臓の酸素消費量を低下させ、低酸素状態を改善し、chronic kidney disease の進行を抑制する。

Muskiet MH et al. Renoprotection in LEADER and EMPA-REG OUTCOME Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Oct;4(10):812-4.

Gilbert RE. SGLT2 inhibitors: β blockers for the kidney?  Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Oct;4(10):814.

Fine LG, et al. Chronic hypoxia as a mechanism of progression of chronic kidney diseases: from hypothesis to novel therapeutics. Kidney Int 2008; 74: 867–72.

パルミトイル化GADとは

GADはパルミトイル化 (palmitoylation) と脱パルミトイル化を繰り返す。
ER ストレスにより、抗原性の強いパルミトイル化GADがゴルジ小体内に蓄積することが自己免疫反応の引き金となるかもしれない

γ-aminobutylyric acid (GABA)を合成するGlutamic Acid Decarboxylase (GAD)には、GAD65とGAD67があり、それぞれ別の遺伝子にコードされる。 GAD65抗体は、1型糖尿病の70-80%に認められる。

GADは、疎水性分子として細胞質で合成され、まずN末端がパルミトイルされる。
GADのパルミトイル化は、endoplasmic reticulum (ER)、ゴルジ小体への anchoring に必要である。
GADは、ゴルジ小体の acyltransferase によりcysteine 30と45にdouble palmitoylation を受けた後、ゴルジ小体膜にとりこまれる。さらにTrans-Golgi network (TGN) へソーティングされ、peripheral vesiclesへ移動する。
脱パルミトイル化を受けたGADは、ゴルジ小体へ逆行性に移動する。

ERストレス下で、ゴルジ小体内のパルミトイル化 GADが増加する。
パルミトイル化GADは、抗原提示細胞に取り込まれやすい。
GAD抗体陽性者と1型糖尿病患者では、正常コントロールに比べ、ゴルジ小体にパルミトイル化GADの集積が認められる。

Phelps EA et al. Aberrant Accumulation of the Diabetes Autoantigen GAD65 in Golgi Membranes in Conditions of ER Stress and Autoimmunity.Diabetes. 2016 Sep;65(9):2686-99.


1型糖尿病の細胞治療 Boston Autologous Islet Replacement Program (BAIRT)

1型糖尿病の細胞治療 Boston Autologous Islet Replacement Program (BAIRT)
幹細胞由来β細胞による1型糖尿病治療の今後の見通しについて、ハーバード大から記事がでています。
Douglas Melton教授は、バイオ関連企業 Semma Therapeutics (Semma)を設立し、ボストンの他の機関と連携して幹細胞由来β細胞の臨床応用に向けたクリニカルトライアルを来年にも始める見込みです。実際の細胞治療の初回は、3年から4年先となるようです。

ボストンでは複数の機関が共同で、1型糖尿病治療のため、Boston Autologous Islet Replacement Program (BAIRT) を開始する。プログラムのデザインはHSCI、BWH、JDCが行い、SemmaとDFCI が細胞を供与する。

最初のクリニカルトライアルはごく少人数で、難治性膵炎で膵摘出した患者など膵島自己免疫のない患者で行う予定。
まずDFCI、HDCI、Semmaが幹細胞から分化誘導するプロトコールを最適化する。BWH、JDCが候補となる患者を決定する。
次にDFCI の細胞作成施設が、患者から幹細胞を分化させ、Semmaのプロトコールに沿ってβ細胞を分化誘導する。
実際の初回細胞移植は3年から4年先になる見込みとなっている。

DFCIは血液幹細胞移植の実績があり、ボストンで唯一、Good Manufacturing Practice (GMP) cell production program を確立している。DFCIはこれまで、BWH および Boston Children’s Hospitalとパトナーシップを組み骨髄血液幹細胞移植をサポートしている。

Harvard Stem Cell Institute (HSCI)
Brigham and Women’s Hospital (BWH)
Joslin Diabetes Center (JDC)
Semma Therapeutics (Semma)
Dana-Farber Cancer Institute (DFCI)

First area cell transplantation center, Expansive effort by Harvard affiliates will seek a cure for diabetes

Bringing Beta Cells to Market

 

Empagliflozinは、LV mass を低下させ、拡張期心機能を改善せる。

 2型糖尿病患者10人、Empagliflozin 開始前と3ヶ月後で心エコー検査を施行
Empagliflozin 服用により、LV mass が低下し、the early lateral ferocity で評価した拡張期心機能が改善した。
血圧、体重は変化なし。A1C 7.3%から6.81%へ低下
ヒトの心臓にはSGLT2は発現していない。 Empagliflozin が心臓のなんらかのレセプター、基質に結合している可能性もあるかもしれない。
LV mass 低下の要因
・血管内容量の低下
・ナトリウム排泄促進
・arterial stiffness の改善

10例の少ないデーターながら、SGLT2阻害薬が、LV reverse remodeling を望ましい方向へ促進する可能性を示している。

Verma S et al. Effect of Empagliflozin on Left Ventricular Mass and Diastolic Function in Individuals With Diabetes: An Important Clue to the EMPA-REG OUTCOME Trial?Diabetes Care. 2016 Sep 27. pii: dc161312. [Epub ahead of print]


FDAは世界初、ハイブリッドの人工膵臓、MiniMed 670Gを認可した。

 MiniMed 670Gは、持続血糖モニターのデータを受け、5分ごとにインスリンの投与と減量を繰り返す。
ユーザーによるカーボカウンティングに対して、必要インスリンを計算できる。完全なクローズドループ ではなく hybrid である。
夜間はほぼ正常な血糖値となる。

14歳以上の患者で認可されたが、Medtronic 社は、適応拡大に向けて、7-13歳の患者のスタディも開始している。
人工膵臓は少なくとも他に5社が開発中となっている。

JAMA に掲載された MiniMed670G のスタディ結果
124人 、平均年齢37.4歳、 12389 patient daysの使用で、このシステムに関連した重症低血糖やケトアシドーシスは認められなかった。
ベースラインとスタディ終了時のデータ
A1C 7.4% (SD, 0.9) → 6.9% (SD, 0.6)
1日の平均インスリン投与量 47.5 U/day → 50.9 U/day
血糖値がtarget rangeに入る時間 66.7% → 72.2%

FDA Approves The First Automated Insulin System For Type 1 Diabetes (NPR)

FDA approves first automated insulin delivery device for type 1 diabetes (FDA)
'It works by measuring glucose levels every five minutes and automatically administering or withholding insulin.'

Safety of a Hybrid Closed-Loop Insulin Delivery System in Patients With Type 1 Diabetes (JDRF)

Safety of a Hybrid Closed-Loop Insulin Delivery System in Patients With Type 1 Diabetes (JAMA)


プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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