Urocortin3を発現しないインスリン陽性細胞は未成熟β細胞

大人のβ細胞はほとんど増殖しない。 未成熟β細胞は糖尿病細胞治療の候補となる。

Urocortin3 (UCN3) は、Nkx6.1、MafAが定常状態になり、MafBの発現が失われた時に発現し、成熟β細胞のマーカーとなる。

UCN3 - インスリン +  細胞の特徴
・膵島の辺縁に存在しマウスでβ細胞の1%でヒト新生児膵島、大人の膵島、罹病歴の長い1型糖尿病の膵島にも認められる。
・核内にPDX-1は発現しないがNKX6.1が発現し、MafB、Neurogenin3 も発現する。
・Lineage tracing の結果、過去にUCN3を発現しておらず、α細胞からβ細胞へ分化転換する途中の細胞である。
・グルコース刺激インスリン分泌、TCAサイクル、酸化的リン酸化に重要な遺伝子発現が低下している。
・電位依存性カルシウムチャネルによる細胞内へのカルシウム流入が認められない。

Virgin Beta Cells Persist throughout Life at a Neogenic Niche within Pancreatic Islets: Cell Metabolism

Blum B, Hrvatin SS, Schuetz C, Bonal C, Rezania A, Melton DA. Functional beta-cell maturation is marked by an increased glucose threshold and by expression of urocortin 3. Nat Biotechnol. 2012 Feb 26;30(3):261-4. doi: 10.1038/nbt.2141.
Urocortin3は、β細胞から分泌される蛋白で、成熟β細胞にマーカーとなる。
生後1日のマウスは、低グルコース濃度でもインスリン分泌が多く、大人のマウスでは低グルコース濃度ではインスリン分泌は低い。E18.5、P1、P10、大人のマウスで膵β細胞の遺伝子発現の比較をおこなった結果、Urocortin3が見出された。

Meier JJ, Butler AE, Saisho Y, Monchamp T, Galasso R, Bhushan A, Rizza RA, Butler PC.  Beta-cell replication is the primary mechanism subserving the postnatal expansion of beta-cell mass in humans.Diabetes. 2008 Jun;57(6):1584-94.
大人のβ細胞はほとんど増殖しない。
 

MiniMed640GはSAPに比べ低血糖を減少させる。

予測低血糖マネージメント predictive low-glucose management (PLGM) 機能を搭載したMiniMed640Gは、sensor-augmented insulin pump (SAP)に比べ、夜間及び日中の低血糖イベントを減少させる。小児で、14日間のスタディ。

Tadej Battelino et al. Prevention of Hypoglycemia With Predictive Low Glucose Insulin Suspension in Children With Type 1 Diabetes: A Randomized Controlled Trial Diabetes Care 2017 Mar; dc162584. 

メトフォルミンによるAMPの低下はcAMP-PKA シグナリングを抑制する。

メトフォルミンは、ミトコンドリアのcomplex1を抑制するため、細胞内AMPが上昇する。

細胞内AMPの上昇は、Adenylyate cyclase を抑制する。その結果、ATPからcAMP産生が低下し、protein kinase A (PKA) 活性が抑制される。
PKA活性抑制により、糖新生に関連する遺伝子の転写活性が低下し、糖新生の酵素である fructose-1,6-bisphosphatase (FBPase) が阻害される。

AMPの上昇は、AMP-activated protein kinase (AMPK)を活性化する。

FBPase は、AMPにより直接阻害を受ける。

Florez JC. Pharmacogenetics in type 2 diabetes: precision medicine or discovery tool? Diabetologia. 2017 May;60(5):800-807.

わかりやすい図があります

Miller RA, Chu Q, Xie J, Foretz M, Viollet B, Birnbaum MJ. Biguanides suppress hepatic glucagon signalling by decreasing production of cyclic AMP. Nature. 2013 Feb 14;494(7436):256-60. 
メトフォルミンはグルカゴンによる糖放出を抑制する。

Hines JK, Kruesel CE, Fromm HJ, Honzatko RB. Structure of inhibited fructose-1,6-bisphosphatase from Escherichia coli: distinct allosteric inhibition sites for AMP and glucose 6-phosphate and the characterization of a gluconeogenic switch. J Biol Chem. 2007 Aug 24;282(34):24697-706.
AMP、glucose 6-phosphateが FBPase を阻害する。

(2017/8/27改訂)

糖尿病では、肝、腎の糖放出、腎臓の糖再吸収共に増加している

糖尿病では、耐糖能正常者に比べ、肝臓、腎臓での糖放出および腎臓の糖再吸収が増加している。1)

Maximal renal glucose reabsorption capacity (
Tmax) をこえるグルコース負荷で、尿糖が排泄される。
Tmax となる血糖値を域値と呼ぶ。コントロール不良の糖尿病では、尿糖排泄域値は上昇している。
耐糖能正常者では、Tmax ~124mg/min、域値~180mg/dl、コントロール不良の糖尿病では、
Tmax~350mg/dl、域値 ~280mg/dlとなる。2)

SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の尿糖排泄域値を低下させ、尿糖排泄量を増加させる。2, 3)

Meyer C et al. Abnormal renal and hepatic glucose metabolism in type 2 diabetes mellitus. J Clin Invest. 1998 Aug 1;102(3):619-24.

Abdul-Ghani MA, DeFronzo RA, Norton L. Novel hypothesis to explain why SGLT2 inhibitors inhibit only 30-50% of filtered glucose load in humans. Diabetes. 2013 Oct;62(10) :3324-8.

Sha S, Devineni D, Ghosh A, Polidori D, Chien S, Wexler D, Shalayda K, Demarest K, Rothenberg P. Canagliflozin, a novel inhibitor of sodium glucose co-transporter 2, dose dependently reduces calculated renal threshold for glucose excretion and increases urinary glucose excretion in healthy subjects. Diabetes Obes Metab. 2011 Jul;13(7):669-72. 

Arx を抑制する抗マラリア薬 Artemether

化合物のスクリーニングにより、Arxを抑制する抗マラリア薬 Artemether が見出された。
Artemether は、核内のArx を細胞質へ移動させることで、その機能を抑制し、α cell identity を失わせる。またこの薬剤は、gephyrinを介して、GABA受容体シグナルを増強する。

 Artemether は、α細胞株 αTC1にインスリンを発現させる。αTC1細胞内にはproglucagonが増加する。グルカゴン添加でArtemether のインスリン誘導効果は減弱する。

Artemether のアナログを飲料水に混ぜ3ヶ月間投与したマウスの膵島径はコントロールに比べ大きい。
streptozotocin で糖尿病を誘発させた後、Artemether を経口投与したマウスでは、血糖値が改善する。
Artemether は72時間の処置で、ヒト膵島のインスリン分泌を増加させる。

Li J et al. Artemisinins Target GABAA Receptor Signaling and Impair α Cell Identity. Cell. 2017 Jan 12;168(1-2):86-100.e15. doi: 10.1016/j.cell.2016.11.010. Epub 2016 Dec 1.

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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