ヒト腸管L細胞のGLP-1分泌

ヒト十二指腸、空腸のL細胞はグルコースに反応しGLP-1を分泌する。大腸のL細胞はグルコースに反応しない。

SGLT2阻害薬、GLUT2 阻害薬ともにグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する。

Voltage-gated Na+ channel blocker、L-type calcium channel blocker はグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する・

Tolbutamide は、GLP-1分泌を刺激しない。KATPチャネルはグルコース刺激GLP-1分泌を駆動しない。

SucroseもGLP-1分泌を刺激するため、sweet taste receptor (STR) もGLP-1分泌に関与している。
STR阻害剤の存在下でグルコース刺激GLP-1分泌は保たれるため、グルコース刺激GLP-1分泌は、STR経路とは独立している。

Sun EW et al. Mechanisms Controlling Glucose-Induced GLP-1 Secretion in Human Small Intestine. Diabetes. 2017 Aug;66(8):2144-2149. 

腸内細菌の変化がGLP-1によるNO産生を抑制する

高脂肪食による腸内細菌の変化が、GLP-1によるNO産生を抑制しgut-brain axisを変化させる。
高脂肪食マウスの腸管ニューロンで、GLP-1受容体および、neuronal nitric oxide synthase (nNOS) のmRNA発現が低下する。

まとめ
高脂肪高炭水化物食で肥満となるが、高脂肪食単独のマウスの体重は、通常食マウスと同等であった。
高脂肪食のマウスでは、通常食に比べ、糖負荷試験で門脈中のGLP-1が増加するがインスリン分泌は低く、GLP-1抵抗性がみとめられた。
通常食では、GLP-1刺激によりthe nucleus of the tracts やthe dorsal vagal nucleus のcFos の発現が認められる。
高脂肪食ではGLP-1刺激によるcFos の増加が認められられなくなるなど、腸管神経系 (enteric nervous system) が変化している。

高脂肪食マウスの腸管ニューロンで、GLP-1受容体および、neuronal nitric synthase (nNOS) のmRNA発現が低下する。

高脂肪食後の腸内細菌の遺伝子解析では、核酸とアミノ酸代謝に関与する遺伝子が増加、Nitrate reduction (nitrate → ammonia) に関与する遺伝子が豊富となる。
高脂肪食による腸管細菌変化が、腸管ニューロンで GLP-1によるNO産生を抑制、求心性迷走神経活性を低下させる。

Grasset E, Puel A, Charpentier J, Collet X, Christensen JE, Tercé F, Burcelin R. A Specific Gut Microbiota Dysbiosis of Type 2 Diabetic Mice Induces GLP-1 Resistance through an Enteric NO-Dependent and Gut-Brain Axis Mechanism. Cell Metab. 2017 Jul 5;26(1):278.

Claus SP. Will Gut Microbiota Help Design the Next Generation of GLP-1-Based Therapies for Type 2 Diabetes? Cell Metab. 2017 Jul 5;26(1):6-7.

SGLT2阻害薬の尿糖排泄域値とSGLT1による代償

 糖尿病では、maximal renal glucose transport (TmG)が上昇する。SGLT2阻害薬は、糖尿病及び非糖尿病者の
TmG を低下させる。

Empagliflozinは、尿糖排泄域値を血糖値40mg/dlまで低下させる。生理的に正常な血糖値以下でも尿糖が排泄される。
ベースラインのTmGは、SGLT1とSGLT2のTmG を反映し、Empagliflozin服用14日後のTmGは、SGLT1のTmGを反映する。

         TmGベースライン    Empagliflozin服用14日後の減少率
2型糖尿病患者   459 ± 53 mg/min   65 ± 5 %
非糖尿病                337 ± 25 mg/min         75 ± 3%

Empagliflozinによる尿糖排泄効果の約30%は、SGLT1により代償されている。

Al-Jobori Het al. Empagliflozin and Kinetics of Renal Glucose Transport in Healthy Individuals and Individuals With Type 2 Diabetes.  Diabetes. 2017 Jul;66(7):1999-2006. doi: 10.2337/db17-0100. Epub 2017 Apr 20.

GABAとα細胞

GABA受容体活性化により、β細胞でクロライドが流出、α細胞でクロライドが流入する。
TypeA GABA受容体 (GABAAR) は、α細胞、β細胞ともに発現している。
他のクロライド流入型 (chloride-intruding)、クロライド排出型 (chloride-extruding)トランスポーターの発現の違いから、細胞内クロライド濃度は、β細胞で高く、α細胞では低い。
GABAARの活性化により、β細胞でクロライドが流出し、細胞膜の脱分極によりカルシウムが流入、インスリン分泌が促進される。
α細胞では、GABAARの活性化により、クロライドが流入し、膜の過分極によりカルシウム流入が抑制され、グルカゴン分泌が低下する。1)

インスリンはGABAARのトランスロケーションを介してグルカゴン分泌を抑制する。
インスリンは、α細胞で、インスリン受容体を介してAktを活性化し、GABAAR を細胞膜にトランスロケーションさせる。インスリンはGABAAR 活性化によりグルカゴン分泌を抑制する。2)

1型糖尿病モデルマウスでは、GABAシグナルが低下、mTORが活性化するため、α細胞が増殖する。
STZ処置したマウスのβ細胞で、GADとGABARの発現が低下、α細胞ではGABARの発現は低下しない。
β細胞から分泌されるGABAが低下するため、GABA受容体を介したCl-の流入が減少、Ca2+の流入が増加、mTORが活性化し、α細胞が増殖する。
STZ処置マウスへのGABA投与は、α細胞の細胞質内カルシウム濃度とp-mTOR 活性を低下させ、STZ処置後のα細胞の増殖を抑制する。

1) Feng Alte al. Paracrine GABA and insulin regulate pancreatic alpha cell proliferation in a mouse model of type 1 diabetes Diabetologia. 2017 Jun;60(6):1033-1042. doi: 10.1007/s00125-017-4239-x. 

2) Xu E, Kumar M, Zhang Y, Ju W, Obata T, Zhang N, Liu S, Wendt A, Deng S, Ebina Y, Wheeler MB, Braun M, Wang Q. Intra-islet insulin suppresses glucagon release via GABA-GABAA receptor system.Cell Metab. 2006 Jan;3(1):47-58.


プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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