インクレチン作用の減弱 (Nauckら)

DPP4阻害薬の講演会ではNauckらの論文が良く引かれていた。

Diabetes5月号ではインクレチン作用に関する総説がでています。

Nauckは1986年に2型糖尿病で、インクレチン効果が減弱していることをしめした大御所だった。

 

インクレチン効果の減弱(Diminished Increctin Efect)

食後の腸管ホルモンによるインスリン分泌増加が、2型糖尿病では減弱している。

糖負荷試験でのGLP1,GIPの分泌は2型糖尿病とコントロールで同じ1,2)。⇒作用の減弱

 

インクレチン効果の減弱は、2型糖尿病に先駆けて起こる訳でない。

第一親等に糖尿病がある場合、過去に妊娠糖尿病発症した女性は糖尿病を発症しやすいが、GIP静注によるインスリン分泌はコントロールとかわらず。

慢性膵炎に合併した糖尿病では、インクレチン効果は減弱するが、慢性膵炎で耐糖能正常の場合は、インクレチン効果は耐糖能正常者とかわらず2)。

 

何故インクレチン効果が減弱するのか

Nauckらは、インスリン分泌キャパシティ減少説をとっていた。

経口糖負荷―血液中のグルコース上昇と、腸管ホルモンによるインスリン分泌刺激がある。

静注の糖負荷―血液中のグルコール上昇刺激のみ。

血液中のグルコース上昇(高血糖)を relatively modest activator of insulin release ,

経口糖負荷を relatively potent stimulus of insulin release (より強いインスリン分泌刺激)

としていて、「β細胞機能低下あるいはβ細胞量の低下の際には、最大刺激が一番障害されやすい。そのため経口糖尿病負荷試験(血液中グルコール刺激+腸管ホルモン刺激)で、インスリン分泌が低下してくる」という内容だった。

 

2型糖尿病で、特にGIPのインスリン分泌促進作用が低下する理由

Nauckらは、高血糖がGIP受容体のdown-regulation / desensitization が起こるという説をとっている。

ヒトの膵島での糖尿病と正常コントロールの比較データーはない。糖尿病マウスで高血糖に反応してGIPのmRNAとタンパクが減少するというデーターがある。

NauckらのGIP静注に対するインスリン反応をみたデーター(正常者、2型糖尿病、第一親等に糖尿病がある人、過去に妊娠糖尿病発症した女性)では、空腹時血糖値が100 mg/dl未満では、GIPによるインスリン反応は正常、150から250 mg/dlでは完全にGIPによるインスリン反応は消失。高血糖によるGIP受容体のdown-regulation / desensitization説を示唆するデーターとしている。

 

インクレチン効果は血糖正常化により回復の可能性

8人の肥満2型糖尿病(HbA1C 8.6%±1.3%)患者で、血糖コントロール前後のGIP,GLP1静注によるインスリン分泌を検討。血糖コントロール後は、GIP,GLP1静注ともに、10分から120分後(late phase) のインスリン分泌が血糖コントロール前に比べ改善した3)。

 

感想

インスリン分泌キャパシティ減少説は少し分かりにくかった。

β細胞の機能低下、細胞量の低下がある2型糖尿病では、耐糖能正常者と同じ量のインクレチン刺激があってもインスリンは出ないというように理解しました。GIPのインスリン分泌作用もなくなっていることもインクレチン作用減弱の原因となっている。

 

この総説を読んで、ますますインクレチン関連製剤はインスリン分泌が比較的保たれた人に使われるのが望ましいと考えるようになりました。

SU剤への上乗せ作用を期待するより、インスリンで血糖コントロールをして、糖毒性解除によりインクレチン効果を回復させてから、インクレチン関連製剤を使った方がより良い効果がありそう。


1. Is the diminished incretin effect in type 2 diabetes just an epi-phenomenon of impaired beta-cell function? Meier JJ, Nauck MA. Diabetes. 2010 May;59(5):1117-25.

2 Reduced incretin effect in type 2 diabetes: cause or consequence of the diabetic state? Knop FK, Vilsbøll T, Højberg PV, Larsen S, Madsbad S, Vølund A, Holst JJ, Krarup T. Diabetes. 2007 Aug;56(8):1951-9.

3. Four weeks of near-normalisation of blood glucose improves the insulin response to glucagon-like peptide-1 and glucose-dependent insulinotropic polypeptide in patients with type 2 diabetes. Højberg PV, Vilsbøll T, Rabøl R, Knop FK, Bache M, Krarup T, Holst JJ, Madsbad S. Diabetologia. 2009 Feb;52(2):199-207.





関連記事

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
102位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
13位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム