初期の尿アルブミン排泄率(ACR)上昇でも、死亡率増加につながる。

Lancet オンライン版にestimated glomerular filtration rate (eGFR)、尿アルブミン排泄率 (Albumin creatinine ratio, ACR)と全死亡率のメタアナリシスの結果が掲載されている。
10 mg/gCre の尿アルブミン排泄率でも、すでに死亡率の上昇を示していた。

まとめ

10万人の尿アルブミン排泄率の結果と、113万人の尿蛋白試験紙結果のメタアナリシスの結果、尿アルブミン排 泄率と eGFRは、traditional risk factors と独立して、全死亡率 (all-cause mortality) および cardiovascular mortality (心血管死)と強く相関した。

eGFRと全死亡率

ACRのスタディで検討した結果、eGFR 75から105 ml /min/1.73m2の間が死亡率は一番低い。

さらにeGFRが低下すると、死亡率は 急激に増加。105 ml /min/1.73m2より高いeGFRでも死亡率は増加。U字型を示す。

95 ml /min/1.73m2に 比べ、全死亡率 のハザード比は、
60 ml /min/1.73m2   1.18
45 ml /min/1.73m2   1.57
15 ml /min/1.73m2   3.14

死亡率はU-字型を描いたが、高いeGFR では、健康状態が悪く(poor health) 、筋肉量が少ないため血中クレアチニン値となっている可能性も考慮が必要。あるいは糖尿病や肥満者が多かったということも関連しているかもしれな い。



尿アルブミン排泄率と全死亡率

6 mg/gCreに比べ、全死亡率 のハザード比は、

10 mg/gCre           1.20

30 mg/gCre           1.63

300 mg/gCre         2.22


尿アルブミン排泄率測定の有用性を示した。

試験紙(dipstick)を使ったタンパク尿の結果(trace, 1+, 2+ or more)も尿ルブミン測定結果と重なる。尿蛋白がtraceeGFR 90-104 ml /min/1.73m2で、ハザード比 1.47となっている。試験紙結果も、尿アルブミン排泄率定量よりやや不正確ではあるが、risk stratification に有用。

感想
eGFR 90-104 ml /min/1.73m2 であっても、尿アルブミン排泄率 10-29 mg/gCreでは、ハザード比1.48となっている。血中クレアチニンから計算したeGFRよりも、尿アルブミン排泄率のほうが、リスク評価に優れている。尿アルブミン排泄率検査は、糖尿病の診断がないと保険診療では検査できない。その意味でも、早期の糖尿病を確実に診断して、尿アルブミン検査をした方がよい。


早期糖尿病腎症(腎症2期) は、尿アルブミン排泄率 30 mg/gCre 以上となっている。「糖尿病治療ガイド」では、「30 mg/gCreを越えると、腎臓に構造的障害があるとされるとされ、早期腎症と診断される」と記載され ていた。動脈硬化のリスクは、10 mg/gCreのレベルからすでに上昇しているので、考慮して ライフスタイル介入をしていかないといけないと感じた。

Association of estimated glomerular filtration rate and albuminuria with all-cause and cardiovascular mortality in general population cohorts: a collaborative meta-analysis. Lancet. 2010 May 17. [Epub ahead of print]


Overall health assessment: a renal perspective Lancet. 2010 May 17. [Epub ahead of print] 

オッズ比とハザード比
生存率解析のように「いつ死亡したか」まで考慮するようなときには,死亡率のかわりにハザー ドという指標が用いられ、その治療法間の比のことをハザード比(hazard ratio)という。

クレアチニン、アルブミンのatomic weight
Creatinine Cr   113
Albumin Alb         68,000







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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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