チアゾリジン誘導体とCDK5

チアゾリジン誘導体は、PPARγのligandであり、PPARγの転写活性を上げ、小型の脂肪細胞を増やしインスリン感受性を上げることで血糖値を下げると考えられてきたと思います。
Nature2010年7月22日号では、ロシグリタゾンが、cyclin-dependent kinase 5 (CDK5) によるPPARγのリン酸化を阻害し、その結果インスリン感受性をあげているという論文を掲載、NEJM12月30日号でレビューされています。

まとめ
MRL24 はnon-TZD compound でPPARγにhigh affinity を持つが、PPARγの転写活性を上げる効果は低い。2)
adipogenesis の効果は低いが、PPARγのCDK5-mediated phosphorylation を効果的にブロックする。
CDK5は、PPARγの273位のセリン残基をリン酸化する。

High fat diet はCDK5を活性化する。
ロシグリタゾンは、PPARγの転写活性を上げ、CDK5によるPPARγリン酸化を阻害する。

10人をロシグリタゾンで治療後、皮下脂肪生検でPPARγ273位のセリン残基リン酸化を定量したところ、7人ではリン酸化が低下、2人はmodestな変化、1人は上昇。
上昇した1人は空腹時インスリン、空腹時血糖値などインスリン感受性の指標はほとんど改善していなかった。Euglycemic, hyperinsulinemic clump では、グルコース注入率の変化(インスリン感受性改善)が、PPARγリン酸化と負の相関。(リン酸化が下がればインスリン感受性が改善する。)
 
レビューの方では、
マイクロアレイの結果では、チアゾリジン誘導体それぞれで、オーバーラップしながらも動かす遺伝子は異なっているし、clinical study でもチアゾリジン誘導体がplasma lipoprotein にさまざまな影響を与えている。
CDK5の生理的、肥満、インスリン抵抗性時の割について結論付けるのは早急としながらも、PPARγのligandが、PPARγの転写活性を上げることとインスリン感受性をあげることは分けて考えるべきと。
インスリン抵抗性は、糖尿病がなくとも、心臓病、がんを起こし、寿命を短くするので安全なインスリン抵抗性改善薬の開発が必要ということです。
 
感想
PPARγの転写活性を上げない、PPARγのligand MRL24もロシグリタゾンと同様に抗糖尿病作用を示し、MRL24とCDK5の関係から詰めていって、CDK5の重要性を明らかにしたのだと思います。
CDK5と肥満の論文はNCBIで見ても見当たらず、Wikipedia では CDK5が脳の発達に重要であるように書いてありました。チアゾリジン誘導体には脂質プロファイルの改善や抗動脈硬化作用も報告されていて、そのメカニズムもあまりわかってない。今後明らかになってくると面白いと思います。

1. Anti-diabetic drugs inhibit obesity-linked phosphorylation of PPARgamma by Cdk5.
Choi JH, Banks AS, Estall JL, Kajimura S, Boström P, Laznik D, Ruas JL, Chalmers MJ, Kamenecka TM, Blüher M, Griffin PR, Spiegelman BM. Nature. 2010 Jul 22;466(7305):451-6.
Natureですが、NCBI で全文が読めます。
 
2. Benzoyl 2-methyl indoles as selective PPARgamma modulators. Bioorg Med Chem Lett. 2005 Jan 17;15(2):357-62.
1の孫引論文
 
3. Rosiglitazone, PPARγ, and Type 2 Diabetes Barbara B. Kahn, M.D., and Timothy E. McGraw, Ph.D. N Engl J Med 2010; 363:2667-2669 December 30, 2010

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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