レプチンは1型糖尿病のモデルマウスの血糖値を正常化した。

レプチンが、1 型糖尿病モデルマウスの血糖値を、インスリンと同等に改善させたという論文です。
2010年3月のPNASに掲載。

まとめ
NODマウスで、レプチン単独療法は、インスリン治療と同様に血糖値の正常化をもたらした。
Lipogenic およびCholesterologenic な転写因子、酵素を抑え血液中、組織のlipidを減らした。
(cholesterologenic な転写因子SREBP-1、SREBP2、コレステロール生合成のrate-imitating enzyme である、HMA-CoA reductase の発現を減少させた。)
摂食量は未治療マウスと有意差なし。インスリン治療マウスは体重が増え脂肪量増加。
 
レプチンで治療したマウスでは血液中グルカゴン濃度が低下
高グルカゴン血症を抑えることにより、catalytic state を 改善 (reverse) させた。
レプチンもインスリンと同様にグルカゴン分泌を抑制することが明らかになった。
 
インスリン欠乏による臨床上の異常はグルカゴンなしではおこりえない。
マウスの1型糖尿病で、グルカゴン抑制でインスリン欠乏のフェノタイプが改善された。
 グルカゴン受容体欠損マウスでは、アロキサンでβ細胞を減少させ、血中インスリン量を減らしたにもかかわらず血糖上昇は見られなかった。→Diabetes 2011年2月号へ続く
 
レプチンと低用量インスリン併用療法 (bihormonal therapy) と、インスリン単独療法を比較
インスリン単独療法に比べ、インスリン、レプチンの併用療法は1型糖尿病モデルマウスの血糖値の不安定性(lability) を改善させた。肝臓の中性脂肪含有量も併用療法の方が少ない。
 FFAが上昇すると、インスリンのantilypolytic effect インスリン抵抗性が惹起される。
レプチンはFFAを下げる効果があることが血糖の変動を減らした要因。
 
レプチンは1994年に発見、lipodystrophy の治療に使われてきた。1型糖尿病への効果を検討することに興味が持たれるところ。
注意すべきは、このマウスでは高血糖があり、レプチン欠乏状態であったのでレプチン治療の効果があった。インスリン欠乏状態で脂肪細胞が減ると、レプチンが減少する。レプチンとレプチン受容体量は逆相関 (inverse relationship) となっている。インスリンで充分コントロールされ、脂肪量が正常あるいは増加している場合は、レプチン受容体の発現は逆に減少しているので、レプチン治療の効果は低いかもしれない。
 
感想
マウスの1型糖尿病では、レプチン単独療法は血糖値を正常化したが、ヒトの1型糖尿病で、インスリン治療なしにレプチンのみを投与することは危険でできない。ヒトに応用する時の事を考慮して、少量のインスリンとレプチンの併用の結果を示していたのは、レプチンの臨床応用の可能性を理解する点で分かり易かった。
Diabetes 2011年2月号に、続きがのっていて、その論文からこちらの論文にたどり着きました。
このグループのlast author の Dr. ROGER H. Unger を調べてみたら医学部卒業64年となっていて、もう80歳代後半だと思われますが、研究にかかわられていて見習いたいものと思ったのでした。
 
1. Leptin therapy in insulin-deficient type I diabetes PNAS 2010 107 (11) 4813-4819
 
2. Glucagon Receptor Knockout Prevents Insulin-Deficient Type 1 Diabetes in Mice
Diabetes February 2011 60:391-397

3. Glucagon as a Critical Factor in the Pathology of Diabetes
Diabetes February 2011 60:377-380
 
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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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