SGLT-2ノックアウトマウスの結果、選択的SGLT2阻害薬と糖尿病

DPPIV阻害薬がほぼ出そろったあと、今後期待されるのは選択的SGLT2阻害薬かと思います。Diabetes3月号では、SGLT-2-/- mice の解析結果が出ています。

Sodium glucose transporter (SGLT) family
SGLT-2: SLC5 gene にコードされる。近位尿細管 proximal tube に発現
SGLT-1: enterocyte に広く発現
最新の報告によると、SGLT-1とSGLT-2はグルコースに対する親和性は同じ1) 
sodium : glucose stoichiometry が異なる。  SGLT-2 2:1    SGLT-1 1:1
 
2型糖尿病では尿糖の閾値がnormal subject に比べ20-40%上昇している。(高血糖でも尿糖は少ない。)
 
SGLT-2-/- mice の解析結果
SGLT-2-/- mice では、尿量が3倍、尿糖は500倍に増加、摂餌量、飲水、activity が増加した。
SGLT-2-/- miceは、コントロールに比べ高脂肪食による高血糖や、耐糖能異常から保護され、血液中インスリン値も低下していた。
db/db のバックグラウンドでは、SGLT-2-/- miceのβ-cell mass は60%増加、細胞死も低下していた。
 
SGLT2阻害により、尿糖が増加しても低血糖が起こらない理由
SGLT-2-/- miceでは肝臓のグリコーゲンが低下していた。
肝臓のグリコーゲン低下や、血糖値のわずかな低下が肝臓へのシグナルとなる。脂肪酸がエネルギー源にかわったり代用されたり、神経メカニズムにより低血糖が起こらないと推測されている。
"Clearly, the liver must react to the glycosuria by increasing glucose release, but how does it know that the kidney is leaking glucose? The findings by Jurczak et al. in SGLT-2-/- mice suggest that liver glycogen depletion and/or slight decrements in plasma glucose may signal the liver to open up. Also, the increased reliance on fatty acids for energy production may imply further substrate or neural mechanisms.1)"
 
尿細管でのSGLT1の役割
SGLT-2-/- miceでも、濾過されたグルコースの1/3は再吸収される。
SGLT-2の選択的阻害剤、 dapaglifozin の第3相試験で、高容量での尿糖の阻害は50%であった。
これまで考えられている以上に、尿細管でのSGLT1の役割は大きい。
 
Systemic なシグナルについて
SGLT-2-/- miceでは、尿糖増加がトリガーとなって摂餌量が増加。
尿糖増加が、脳に食欲増加をもたらし、肝臓に糖産生をmodulate するような指令が送られている。
視床などの脳のいくつかの領域で、SGLTの発現が示されている。
 
例外的なGLUT2
膵β細胞のGLUT2はgradient-mediated にグルコースを細胞内に取り込む。
一方、尿細管上皮細胞のGLUT-2は、basolateral membrane に発現し、Na+-K+-ATPase を使って、細胞内のグルコースを間質液 interstitium にくみ出すfacilitated transport をおこなっている。1)3)
グルコースに対してGLUT2はhigh-capacityでlow affinity、近位尿細管S1、S2に発現、
GLUT1はlow-capacityでhigh affinity、近位尿細管S3に発現している。3)

SGLT2
Glucose handling by the kidney Kidney International (2011) 79 (Suppl 120), S1–S6

感想
db/db のバックグラウンドのSGLT-2-/- miceでは、β細胞量が増えることが示されていて、β細胞外に働いて血糖を下げ、β細胞の負荷を取るような薬は、たぶんβ細胞保護作用があるのだと思います。



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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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