neurogenin3 変異による新生児糖尿病

neurogenin3 (ngn3) 変異による新生児下痢症、新生児糖尿病の論文です。(Diabetes 4月号)
Ngn3 は膵島発生のマスター遺伝子の一つと考えられていて、ngn3 欠損マウスではインスリン産生細胞が発生せず、生後すぐ糖尿病となり死亡。
今回のヒトのngn3 変異症例では、nonketoic でマイルドな血糖上昇で糖尿病を発症、インスリン産生細胞はある程度発生しているということで、ヒトではngn3にindependent なインスリン産生細胞発生経路があるのではないかという指摘が興味深かった。

まとめ1)
Permanent neonatal diabetes PNDM は生後6ヶ月以内に糖尿病と診断される。
monogenic disorder で、40%に遺伝子原因が明らかになっている。
スペインの現在5歳の女児、生後1日で血糖値120-180 mg/dl、20日よりインスリン治療開始。吸収不良の下痢が続き、ビタミンE不足からataxiaあり。
現在は家庭の食事、oral nutrition supplement および夜間の非経口栄養 (parenteral nutrition)
インスリン量は、非経口栄養の時は~0.8 U/kg、経腸栄養なしで0.4 U/kg 、HbA1C 6.1%。
 
患児にはhomozygous なngn3 遺伝子の変異を認めた。
父方からL135P、母方からE28X を受け継ぐ。 (L ロイシンPプロリンEグルタミン酸Rアルギニン)
母方の変異はstop codon となり、bHLHとtransactivation domain を欠いたtruncated proteinとなる。
父方の変異はbHLH ドメインの末端部に近く、種をこえて保存されているアミノ酸の変異。
L135P、E28X変異ともこれまで報告なし。
Mixed meal test 90分後のC-peptide 546 pmol/L 、グルカゴンは空腹時、mixed meal test 後で、測定感度以下。
 
腸管のbiopsyサンプルでは、クロモグラニンA陽性細胞がなく、enteroendocrine cell の完全な欠失、グルカゴン値のデーターから考えると、α細胞は欠損しているかもしれない。
 
 Ngn3欠損マウスではインスリン産生細胞が形成されない。一方ヒトのngn3変異では、糖尿病を発症するが、インスリン産生細胞は形成されている。したがって、ヒトでは、Ngn3にindependent な β細胞発生のpathwayが想定されている。2)
Neurogenin3 はMODYの原因とはならない。
 

新生児下痢症3例で、enteroendocrine cell の著明な減少と、nerugenin3 bHLH domain のhomozygous missense changeが明らかになった。R107S(症例1)、R93L(症例2、3)
症例1は中心静脈栄養中に敗血症を併発し死亡。症例2、3は8歳までに1型糖尿病を発症。
(生下時には糖尿病でない。) 
Xenopus embryo での検討で、missense change があると、Ngn3によるNeuroD転写活性が低下する。
 
chick embryo でプラスミドによりNeurogenin 3 mutant を導入。
R107S、R93Lで、enteroendocrine cell は欠失(null) でなく、低形成 (hypomorphic)。
Embryonic carcinoma cell でR93L、 R107S のNeuroD 活性化はwild type に比べ、25%と、50%で、NeuroD活性化がある程度あることが膵島の形成になっているという意見。
一方2) のauthor は、腸管のprogenitor cell のspecific cofactor とNgn3のbinding が阻害されたか、ヒトにはngn3 にindependent な経路があり、ある程度の膵島とβ細胞が形成されるという主張をしている。
“This discrepancy may be explained by the binding of NEUROG3 to specific nuclear cofactors in intestinal progenitor cells that are disrupted by the mutations but are not required for the generation of beta cells. Alternatively, a redundant, NEUROG3-independent pathway that is unique to humans may result in the production of at least some islet and beta cells.”
 

 

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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