1型糖尿病に対するGADワクチン療法

Lancet 7月23日号には、1型糖尿病に対するGADワクチン療法について掲載。negative な結果でも、得られた情報は多い。

GAD vaccine の役割
発症前に抗原であるGADを投与するとregulatory immune response を促進し、自己免疫のdownregulation すなわち、autoaggressive antigen-specific T cells を排除する。モデル動物では、発症前に抗原を投与することによりこのアプローチは成功している。
"Immunisation with target antigens might promote a regulatory immune response, resulting in downregulation of autoimmunity or deletion of autoaggressive antigen-specific T cells."
 
1型糖尿病発症後100日以内の3歳から45歳の患者に、GAD formulated with aluminum hydroxide (GAD-alm) を1から3回投与、1年後のmixed meal tolerance test で2-h AUC of C-peptide は、alm のみのコントロールと有意差なし。
antigen-based therapy は動物モデルで有効であるが、動物モデルでは、糖尿病発症前に抗原を投与している点が異なる。ヒトの自己免疫疾患への応用はまだ道半ばである。
 
comment では、TrialNet がしっかりとしたリサーチをおこなったこと、食事負荷後のCPRという、establish された手法で評価したこと(空腹時CPRや随時CPRではインスリン分泌機能のわずかな増加を評価できない。)ことを評価していた。
 
また、ワクチン療法のタイミング、dose、投与経路、ペプチドの長さ、vehicle (アジュバントの有無) の違いにより、モデル動物での結果も異なっているし、今回のGAD-almをモデル動物で試みた結果は報告されていない。
 
抗CD3抗体療法は、糖尿病発症後でも有用性が報告されている。しかし、全身的でなくβ細胞特異的な免疫寛容が必要であるので、antigen-specific reprograming も重要である。
 
抗CD抗体療法のような低容量の immune modulating drug と、antigen-specific reprogramingの組み合わせが今後の方向であろうということです。
 
“Researchers should not give up hope of preventing or curbing type1 diabetes.”
 
感想
Lancet の comment の方に心を動かされた。なかなかいい結果が出ないが、1型糖尿病発症予知のデータを増やして、発症前に、antigen-specific reprograming を試してみないと、antigen-specific reprograming が無効なのかは断定できない。投与法やワクチンの formula も重要となってくる。
 
 
1. Antigen-based therapy with glutamic acid decarboxylase (GAD) vaccine in patients with recent-onset type 1 diabetes: a randomised double-blind trial
The Lancet, Volume 378, Issue 9788, Pages 319 - 327, 23 July 2011
 
2. Arresting type 1 diabetes after diagnosis: GAD is not enough The Lancet, Volume 378, Issue 9788, Pages 291 - 292, 23 July 2011

3. Induction of GAD65-specific regulatory T-cells inhibits ongoing autoimmune diabetes in nonobese diabetic mice.
Diabetes June 1998 47:894-899; doi:10.2337/diabetes.47.6.894 

TrialNet

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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