1型糖尿病のレビュー、膵島ダメージのメカニズム

Diabetes 5月号の1型糖尿病に関するレビューを読みました。
免疫のメカニズムについては、専門的で完全には理解できないが、膵β細胞の特異性についてよく書かれていた。1型糖尿病はβ細胞のみにダメージがおこるが、その理由はβ細胞に特異的に見られる、精密な (exquisite) な機能のためという説明が非常に興味深かった。

なぜ、β細胞だけがターゲットになり破壊が起こるのか? 免疫機構の新しい知見
・Chromogranin A はprocessing によりWE14を生じる。これが抗原性をもつ。他の組織ではChromogranin A から抗原性をもつpeptide はprocessing されてこない。

・抗原となるペプチド (antigenic peptide) は、β細胞の中にあるだけでよく、antigen-presenting cells (APCs) に提示される必要はない。APCsは、インスリンペプチド B:9-23 とインスリンgranule を process して、直接 anti-B:9-23 T-cell clone を刺激する。
 
・T細胞が、Islet-specific glucose-6-phospahte catalytic subunit-related protein (IGRP) と、インスリンペプチドB:9-23 の両者をターゲットとしたとき、糖尿病の原因となることが報告されている。T細胞はmultiple antigen を認識している。

β細胞がダメージを受けやすい理由
食後、β細胞はインスリン分泌だけでなく、プロインスリンを合成しprocessing する。β細胞が産生するタンパク質の20%がプロインスリンである。→ER stressは、β cell loss の原因となる
"After a meal, under normal circumstances, the β-cell is stimulated not only to secrete insulin but also to replenish the intracellular stores by a parallel upregulation of proinsulin biosynthesis and processing. As much as 20% of the total protein synthesized by a β-cell is (pro)insulin and may occur under such conditions."

NADPHはミトコンドリア膜を通過しない。β細胞にはlactate dehydrogenase がほとんど存在しないので、glycerophosphate shuttle 、malate shuttle が非常にactive である。

解糖系で産生されたピルビン酸はトコンドリアのTCAサイクルに入り、ATP/ADP 比の上昇をATP-Sensitive K+ channel がsensing し、L-type Ca2+ channel が開いてカルシウムが流入、インスリンが放出される。

ミトコンドリアで産生されるH2O2などreactive oxygen species (ROS) 、および酸化脂肪酸 (oxidize fatty acids) に対してcapacity が低い。pentose phosphate pathway 活性が低い。
⇒β細胞は、インスリン分泌のための精密な (exquisite) な機能により、高血糖、代謝によりダメージを受けやすい。
 
Juvenile Diabetes Research Foundation (JDRF)は、1型糖尿病、および抗GAD抗体陽性者から、死後の膵臓をはじめとした臓器提供を受けて研究が行われている。NODマウスに比べ、ヒトでは膵島炎の所見は少なく、1型糖尿病の病理所見は、heterogeneity である3)。

感想
自己免疫と高血糖、代謝によるダメージについて書いてあり、後者の部分は2型糖尿病でも当てはまり、非常に興味深かった。
解糖系のシグナルが乳酸にいく経路はほとんどなく、高血糖がダイレクトにインスリン放出につながっていることを改めて認識させられた。そのために、β細胞は高血糖、代謝異常によりダメージを受けやすくなっている。
血糖値の正常化がβ細胞保護につながっている。
 
1. How Does Type 1 Diabetes Develop? The Notion of Homicide or β-Cell Suicide Revisited Diabetes May 2011 60:1370-1379;
 
2. Harper's Illustrated Biochemistry, 28th Edition (LANGE Basic Science)  McGraw-Hill Medical; 28版
 
3. Juvenile Diabetes Research Foundation (JDRF) for Network for Pancreatic Organ Donors with Diabetes (nPOD)
 
4. Dimorphic histopathology of long-standing childhood-onset diabetes Diabetologia (2010) 53:690–698



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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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