吸入インスリンが、アルツハイマー病、mild cognitive impairment (MCI) を改善する。

デバイスをつかったノボリンRの吸入が、アルツハイマー病、軽度認知障害(mild cognitive impairment (MCI))を改善したという報告です。脳内のインスリンシグナルの低下が、アルツハイマー病の原因とも考えられていて、加齢や糖尿病によりアルツハイマー病が起こりやすいことはすでに方向されています。しかし、血糖値も変えていないし、今回の結果は、追試がないと信じがたい気もします。

まとめ
アルツハイマー病、mild cognitive impairment (MCI) で、NovorinR (20, 40 IU) を4ヶ月間吸入、20単位、40単位ともにプラセボに比べ、ADAS-cog score、ADCS-ADL scale を改善した。記憶力と機能の変化は、髄液中のAβ42レベルの変化とタウタンパク/ Aβ42 (tau protein –to- Aβ42 ratio) の変化と関連している。

アルツハイマー病では中枢でのインスリンレベルが低下している。(Medpage の解説)
“Because patients with Alzheimer's disease also exhibit decreased levels of insulin in the central nervous system, it has been hypothesized that raising these levels to normal might help maintain cognitive ability.”
 
感想
インスリンの吸入法が、NovorinRとデバイスを使ったものです。この方法だと60単位までの吸入で、血糖とインスリン値に影響しないという結果がすでに示されています。
血糖値は下げないレベルで、インスリン吸入が中枢でのインスリン作用を上げ、認知症を改善している。インスリン受容体を活性化により、Aβ-derived diffusible ligands結合を阻害するというメカニズムによるが、中枢にのみ効くという点が、理解しにくいところです。
 


吸入インスリン量をtitration している(10, 20, 40, or 60 IU)、パイロットスタディ
インスリン投与は、血糖値と血中インスリンレベルに影響しなかった。
“Blood glucose and insulin levels did not differ between memory-impaired and normal subjects, and intranasal insulin administration did not affect these values (data not shown).”
 

インスリン受容体が阻害されていると、Aβ-derived diffusible ligandsの結合が増加する。
インスリンは、インスリン受容体シグナルを介してAβ-derived diffusible ligands の結合を阻害する。 インスリンシグナルは、加齢や糖尿病では低下している。脳内のインスリンシグナルを増強させることがアルツハイマー病の進行を遅らせたり、改善させたりすることができるかもしれない。
“The mechanism of insulin protection entailed a marked reduction in pathogenic ADDL binding. Surprisingly, insulin failed to block ADDL binding when IR tyrosine kinase activity was inhibited; in fact, a significant increase in binding was caused by IR inhibition. The protective role of insulin thus derives from IR signaling-dependent downregulation of ADDL binding sites rather than ligand competition. The finding that synapse vulnerability to ADDLs can be mitigated by insulin suggests that bolstering brain insulin signaling, which can decline with aging and diabetes, could have significant potential to slow or deter AD pathogenesis.”
ADDLs: Aβ-derived diffusible ligands
 
4.Medpage の解説(ログインが必要)


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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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