妊娠時の高血圧

高血圧で妊娠希望の患者さんが来られたので、妊娠中の高血圧の管理についてレビューを読んでまとめました。血圧管理の幅は、130/80-150/100で許容していてPreeclampsia は予防しつつ過度の高圧も避けるべきということです。Methyldopa、labetalol (Trandate) をfirst line therapyとして、nifedipine (long acting) 、利尿剤が使用可能です。

まとめ
高血圧の期間が長いほど、複合型子癇前症 (superimposed preeclampsia) のリスクは増加する。
高血圧のある大部分の女性は正常血圧の女性と同じように妊娠中、血圧は下がる。first trimester の終わりにかけて血圧が低下し、third trimester には妊娠前のレベルにあがる。
高血圧があり、子癇前症となる女性に加えて、子癇前症にならなくても5-20%は高血圧が悪化する。
 
妊娠中に使用可能な降圧薬
Methyldopa は、centrally acting alpha agonist で first line therapyに使われるが、しばしば眠気 (somnolence) がおこる。
 
labetalol(Trandate) は、combined alpha- and beta- blocker で、first line therapy あるいは second line therapyとなる。
Nifedipine (long acting) もlabetalol(Trandate) との併用でのスタディがあり、安全としてよさそう。
 
利尿剤は、これまでvolume depletion の点で、妊娠時は禁忌とされてきたが、ランダマイズドされた9のトライアルで、降圧剤非服用者と利尿剤服用者のpregnancy outcome は変わらず。いくつかのガイドラインでは、利尿剤で治療されたことのある、高血圧合併妊婦で利尿剤の継続を支持している。
 
ACE阻害薬、angiotensin receptor blocker (ARB) は禁忌。
胎児の腎機能障害によると思われるoligohydroamnion ,neonatal anuria、growth abnormalities、skull hypoplasia、fetal death が報告されている。
レトロスペクティブコホートスタディでは、first trimesterにACE阻害薬を服用すると、cardiovascular defect のハザード比4.0 、central-nervous defect のハザード比 5.0となっている。
ACE阻害薬、ARB、レニンブロッカーは、妊娠前に他のクラスの降圧薬に変更すべきである。
 
治療目標値
妊娠中の血圧治療開始の値は、159/89 から169/109 mmHg
blood pressure target は、140/90 から160/110 mmHg とガイドラインにより幅がある。
これらのレンジに入っていれば降圧薬の中止を推奨する専門家もいる。
降圧薬を継続する場合でもaggressive な治療は避けるべきである。
ランダマイズトトラアルのメタ解析では、過度な降圧は、fetal growth restriction につながることが示されている。
特にsecond trimester では、妊娠前、およびfirst trimester より血圧が下がることが多いので、降圧薬の減量が必要となることが多い。
 
授乳中に使用可能な降圧薬
ほとんどの降圧薬は、母乳に検出されるが血中濃度より低い。
American Academy of Pediatrics はARBを含む降圧薬を母乳と両立可能 "usually compatible" としている。
Atenololはlethargy、除脈の副作用から注意して使用、他のβブロッカーにはこのような注意はない。
ARBはデータがないため授乳中はほかの薬剤への変更が望ましい。
 
Society of Obstetricians and Gynecologists of Canadaは、Nifedipine (long acting)、labetalol(Trandate)、Methyldopa、captopril、enalaprilが授乳中にはacceptable としている。
 
感想
NEJM誌での症例提示の結論では、Methyldopa はfist line therapy の薬剤で長期的な安全性も確立されているが、副作用がより少なくより降圧効果があるため、labetalol(Trandate)を選択するとしていました。labetalol(Trandate)の安全性も確立されている。血圧は、130/80から150/100 mmHg で維持する。
 
妊娠時の高血圧の病態生理として、first trimester、second trimester では血圧が下がるのが一般的と考えられていた。過度の降圧がfetal growth restrictionにつながるので、preeclampsia を懸念して過度の下げすぎるのもよくない。
Methyldopaが最初に使うべき薬と思っていたが、labetalol(Trandate)、Nifedipine (long acting)も次に使う薬剤として考えておこうと思います。
 
Chronic Hypertension in Pregnancy Ellen W. Seely, M.D., and Jeffrey Ecker, M.D. N Engl J Med 2011; 365:439-446August 4, 2011
 

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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