インスリンポンプのレビュー

NEJMにのったインスリンポンプのレビューです。
①時効型を大量にうつと、インスリンの溜まり(depot) ができることにより、吸収の変動率が高くなる。その点で、インスリンの持続注入は吸収の安定性をもたらす。
②Dawn phenomenon に強い。
③コストはかかるが、血糖コントロールに優れ、生活のquality はあがる。という点が強調されています。
ポンプを希望するモチベーションの高い患者さんに使うことが重要。
“It is important for patient to be willing and motivated to use the insulin-pump.”

論文のまとめ
<インスリンポンプの利点>
①インスリン注射のflexibility が高い
持効型インスリンは一度打つと調節できない。現在のインスリンポンプは、 基礎インスリン量をいつでも変えることができる。
インスリンポンプは、Prebreakfast hours に、インスリンの必要量がふえる、Dawn phenomenon に対応ができる。
 
②吸収の安定性
血糖値の変動が少ない(within-day、between-day)
基礎インスリンは持続注入され、皮下にインスリンのdepot(溜まり)を作らないためと考えられている。中性インスリン(NPH)を大量に皮下注射すると、depot (溜まり)ができ、吸収の変動幅が多くなる。
 
③血糖コントロール改善
メタ解析、ランダマイズドトライアルで、インスリンポンプは頻回注射よりも、HbA1Cで、0.3-0.6%低く、総インスリン量が10-20%少ない。
2008年のメタ解析ではインスリンポンプは頻回注射より低血糖が少ない。
妊娠中にインスリンポンプを使用するのは、pump failure などでケトアシドーシスの懸念があるが、より低いHbA1Cを実現するためには合理的といえる。
 
<インスリン治療の実際>
カニュラがなくポンプを貼り付けるタイプ(Patch pump) は、開発が進んでいる。
頻回注射からの移行時は、Insulin 総量を20%減らして開始、総量の50%を基礎インスリンに振り分ける、
食前インスリ量を決めるにはcarbohydrate counting をつかう
insulin-to carbohydrate ratio は、 500ルール
insulin sensitivity factor は、1800ルール を用いて計算
 
穿刺部位は、腹部以外に、大腿、腕、臀部が可能だが、腹部に比べ吸収が遅い。
穿刺位置は3日を超えて同じ場所を使わない。(Lipohypertrophy を避けるため)
infusion cannulaは2-3日に1回交換する。
インスリンポンプに5000から7000ドル、additional pump supplies (インフュージョンセット、リザーバー、バッテリー)
頻回注射よりもコストはかかるが、生活の質の点では頻回注射より優れ、cost-effective であるとされている。
 
インスリンポンプを使っても20%の患者には高血糖、低血糖の問題を抱える。
その場合continuous glucose monitoring(CGM) を併用すると改善が見込めるかもしれない。
needle type あるいはwire type のグルコースセンサーを、5日から7日間皮下へ留置し血糖値をモニターする。
精神的あるいは他のcontraindication があれば中止する。skin infection も重症となることは、まれ。ほとんどのセンターで中止率(discontinuation) は5%以下である。
 
ケトアシドーシスのリスクは、インスリンポンプの方が頻回注射より多いとされる。血糖値のモニタリングが必要。
 
説明できない高血糖の時の理由(possible reason) のチェックリストを使っている。
cannula ねじれ、つまり、漏れ、交換時にプライミングが不良など
infusion site  infection, lypohypertrophy、3日以上同じ場所で注射する。インフュージョンセットが外れている。
ボンプ バッテリー不足、インスリンが期限切れ、インスリンの変性(inactive insulin)、アラームが機能しないなど
患者側 ボーラス忘れ、基礎インスリンが正しくない、低血糖の過補正、illness、ステロイドなど薬剤の使用、menstruation
 
予期せぬ低血糖のチェックリスト
Basal, bolus が正しくない
炭水化物を取らず運動、あるいはbasal, bolusを減らさず運動、運動のdelayed effect, target level が低すぎる。飲酒、gastroparesis
自己血糖測定値が正しくない
 
感想
インスリンポンプ自体とは離れますが、これを読んで、チェックリストの重要性を自覚しました。ポンプをつかっていて、予期せぬ高血糖があると、ファクターが多いので手順を踏んでチェックしないと見落とす。
 

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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